D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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グレモリー眷属でありながら、ルシファー眷属との繋がりもあるため、便利扱いされることもあるのがオリ主です。


第75話 京都の仕事

 場所は京都駅付近にある「京都セラフォルーホテル」のひとり部屋。その名の通り、セラフォルー・レヴィアタンが関連するホテルであった。近くには一誠達が泊まる「京都サーゼクスホテル」もあり、大一は同じ学園の後輩たちと鉢合わせしないように、このホテルの一室に泊まることになっていた。

 部屋で着替えて、ジャージ姿になった大一は電話をしていた。

 

「とにかくしばらくは京都の妖怪の大将捜索のために、数日帰れません。早く見つかれば帰れるでしょうが…」

『わかったわ。学園祭の準備は私達で進めるし、学校やご両親もなんとかしておく』

「申し訳ありません…」

 

 電話の相手はリアスであった。今回の一件と、数日間京都に滞在することを報告する為であった。炎駒の方は繋がらなかったため、アザゼルに任せたが今の彼にはそんなちょっとした頼みすらも懐疑的な感情が入り込んでいた。

 

『振り回されているわね。あんまり無理しないでよ』

「お気遣いありがとうございます。でも任された以上はなんとかやらないと…」

『下僕がそんな状態で「もっと頑張れ」なんて言えないわよ。まったくアザゼルは私の下僕をなんだと思っているのかしら』

 

 リアスの不満げな声が電話越しからも伝わる。互いに信頼はあるかもしれないが、どうも余計に利用されているような気がした。もっとも大一もディオーグの件でそれなりに無茶振りをしていたため、仕方ないという気持ちもどこかにあったのだが。

 もちろんリアスとしては自分の信頼する下僕が勝手に使われているということで腑に落ちていない様子であった。そのおかげ、一誠と他の後輩たちの修学旅行での関係性の気がかりが頭の中で吹っ飛ぶほどであった。

 

『とにかく無茶は禁物よ。今のあなたはイッセー達とはまったく別の立場なのだから』

「肝に銘じておきます」

『しかし最初に連絡したのが私で良かったのかしら?朱乃に妬かれるわよ」

「話の内容は事務的なものなので、まずは主に報告するのは当然でしょう」

『あなたの生真面目さであり、たまに無茶をやるイッセーとは違うところね。まあ、話はすぐにでもつければいいわ。ということで、朱乃に替わるわね』

「…はい?」

 

 どうやら彼女らは同室にいたようだ。リアスが朱乃と電話を替わるほんの短い時間、大一はどうにも具合の悪い感覚であった。先ほどのリアスの話を踏まえると、その態度など予想ができる。

 間もなく、朱乃の声が耳に届いた。

 

『もしもし、京都は楽しんでいるかしら?』

「修学旅行じゃないんだから、そんな当てつけみたいな言い方しなくても…なんか気にしている?」

『別にそんなことありませんわ。私への連絡よりもリアスの方を優先させて、明日はレヴィアタン様と護衛なんでしょう。好きに楽しめばいいじゃないのかしら』

「別に好きで行ったわけじゃないって…」

 

 大一は困ったように頭を掻きながら答える。いきなり呼ばれた上に致し方ないことの連続なのだから、ここで朱乃に責められることはお門違いとも言えた。

 ただ大一の中ではそういった考えは一瞬で、すぐに思い直した。元をたどれば、リアスの言う通り、彼女を安心させることを優先させるべきだったのだろう。

 

「たしかに、これは俺が悪かった。朱乃の言う通り、リアスさんよりも先に連絡して心配させないようにするべきだったよ。本当にごめん」

『もうそんなに本気で謝らないで。私だってグレモリー眷属の『女王』としてわかっているわ。まったく妬いていない、と言ったらウソだけどもね』

 

 朱乃自身はできるだけ大一に不信感を抱かれないように振舞っていた。実際のところは不満が無いといえば嘘になる。頭では理解しているものの、先日のリアスから指摘されたことも相まって大一だけでなく、彼以外の女性の立ち振る舞いまで気になってしまっていた。それでも彼女も理性的に振る舞い、この不安をさらけ出さないようにしていた。大一に余計な心配をかけさせることなどは彼女もしたくないのだから。

 大一は電話越しの言葉に目を細める。

 

「…帰ったら、一緒にデートとかしないか?朱乃が満足するまで付き合うよ」

『私は別にそういうつもりで言ったわけじゃ…』

「俺がそうしたいんだ。それが理由じゃダメかな」

『…ズルいわ、いつも私を安心させてくれるもの。なにをお願いするか考えているからね』

「期待しているよ」

『もう…仕事、あまり無理しないでね。それじゃ、小猫ちゃんにも替わるわ』

「あっ、小猫もいたの…」

 

 電話でまさかここまで話すとは思っていなかったが、ここで無下にするわけにもいかない。間もなく小猫の声が電話越しから聞こえた。相変わらず淡々とした様子であったが、それが一種の頼りがいにも感じた。

 

『もしもし、先輩。お元気ですか?』

「ああ、なんとかな。というか、夕方近くまではいただろう」

『…でもそこから数日経つことが確定しているんですよ。いきなりしばらく会えないこっちの身にもなってください。先輩と特訓だってしたかったのに…』

「あー…それはすまなかった。サイラオーグさんとの試合前にはお互いに特訓してしっかり仕上げておこう」

『約束ですからね。…それともうひとつ訊きたいことが』

 

 小猫の声のトーンが下がる。それだけで聞かれたくないような内容であることは察しがついた。

 

『お昼に話したことなんですけど…』

「昼?朝に同級生たちと話したことか?」

『いえ、そっちではありません。先輩は…イッセー先輩と同じように…その…』

 

 小猫が言いづらそうにしていることを察して、大一は意外そうに眉を上げる。彼からすれば、小猫が胸の大きさにそこまでコンプレックスを持っていることに驚いたのだ。しかし考えてみれば、先輩勢が軒並み胸の大きさには一般女性と一線を画すレベルな上に、そんな人たちと一緒にいれば、イヤでも目に付くのだろう。

 

「ギャスパーが話していたことか。あんまり考えたことは無かったけど、特にそういう趣味嗜好はないぞ」

『でも朱乃さんはおっぱい大きいですし…』

「なんで朱乃と比べるんだよ…。そんなにコンプレックス感じることないと思うけどな。小猫はあの人に無い可愛らしさを持っているんだし、他にもいくらでも強みがあるんだから。ちょっと無責任に聞こえるかもしれないけど、俺はそのまま強みを活かせればいいと思うぞ。…ってなんの話だよ、これ」

 

 電話で話すどころか、直接でも話すような内容とは思えなかった大一は困惑しながら答えるが、その一方で小猫の方は顔が見えないはずなのに笑顔が想起されるような満足した声色であった。

 

『いいじゃないですか。私はまた自信がついたので、嬉しかったですよ。それじゃ、お土産を楽しみにしています』

「だから旅行じゃないって…」

 

────────────────────────────────────────────

 

 旅行じゃない、そんなことは分かっている。そしてはしゃぐ気持ちも大一は持ち合わせていない。だが翌日の朝から、大一は着物姿のセラフォルーについていき2人で祇園を歩いていた。街並みは美しいが、疲れ切った大一の表情とその真逆の雰囲気を見せるセラフォルーにはなんともミスマッチな雰囲気であった。

 

「やっぱり京都は最高よね☆」

「レヴィアタン様、京都妖怪の誤解を解かなければいけないんですよ。そもそも他の護衛や秘書の人とかどうしたんですか?」

「大丈夫よ。妖怪の上役さんと会う時間は決まっているし、こういう場で大勢でいるのが不自然でしょ?大一くんもここで名目上の仕事はさっさと終わらせちゃったら楽でしょう。ということで、楽しもー!」

(やっぱり苦手だ、この人…)

 

 腕を上げてはしゃぐセラフォルーを見て、大一は心の中でつぶやく。たしかに京都の妖怪と会うのは数時間後な上に、すでに誤解はほとんど解けているようなものではある。さらにこの日の午前中だけでも仕事をすれば、あとはアザゼルが報告するだけなので本来の仕事に戻れる。その仕事を少しでも楽しめるようにするセラフォルーの配慮(?)も理解はできる。

 しかしそれゆえに傍から見れば、真面目さを感じられない彼女とはどうにも馬が合わなかった。彼女がそれなりに生真面目で、悪魔の将来を考えているのはわかるのだが、サーゼクス同様にノリで事を進める面は、気圧されてしまった。ましてや彼女としては配慮したつもりの2人だけという状況も、前日に電話したことを思い返せば朱乃に対しての申し訳なさが湧いてくるようであった。紅葉とは、京都の妖怪たちと会う際に合流するのも結果的に大一を後悔の想いを引き出していた。

 そんな大一の渋い表情を見て、セラフォルーはまったく違うことを思ったようであった。

 

「やっぱりその恰好暑いんじゃない?せっかく京都に来たんだから、それ相応の恰好しようよ!」

「お気遣いありがとうございます。しかし自分は護衛ですし、下手に服装を変えて駒王学園の生徒にバレるわけにもいきませんので」

「魔法少女にコスプレは鉄板よ!そんな付け髭だけではダメだわ!」

「俺は目指していませんって…」

 

 大一の姿は前日同様にスーツ姿に深く帽子をかぶっており、さらにアザゼルから貰った付け髭とサングラスまでかけているという正体を隠すためのフル装備であった。

 

「うーん、真面目系魔法少女ってどうなのかしら…でもそこはソーナちゃんこそが相応しい気も…」

「ソーナさんの意見も尊重させませんかね…」

「だって、私はお姉ちゃんとしてソーナちゃんと魔法少女姉妹をやりたいんだもの!きっとソーナちゃんが私の想いにいつか気づいてくれるはず…!だってソーナちゃんはね───」

 

 下手にソーナのことに突っ込んでしまったおかげで、セラフォルーの妹愛に火がついてしまった。彼女はソーナの魅力を強い想いに乗せて語り始めた。

 大一は困りながらも相槌を打ち、どうしようか考えていたが真後ろから誰かが走ってくる気配を感じた。後ろを見ると、若い男性が強烈かつ誰かを思い出させるようなぎらついた視線でセラフォルーへと迫っていた。

 

「おっぱーいッ!!」

「なんだ、いきなり!?」

 

 飛び掛かろうとしてきた男性を、大一は素早く地面へと取り押さえる。普通の人間の力であったが、抑えられても落ち着かないようにバタバタと動いていた。

 

「いくらなんでも見境なさすぎだろ!なんだ、あなたは?」

「俺にはおっぱいが!おっぱいがァ!」

「話にならん。レヴィアタン様を狙うとは、いくらなんでも…」

「赤龍帝くんみたいだね」

「ちょっと止めてくださいよ。あいつだってそこまで…そこまで…」

 

 セラフォルーの言葉に大一は強く否定できなかった。以前より学園生活ではセクハラ行為は減ったとはいえ、完全に無くなったわけではない。むしろ「おっぱいドラゴン」や「乳龍帝」という名称のせいで、悪化しているような気までしていた。

 

(この男、お前の弟と同じような匂いがするな)

(お前までそんなことを言うか…)

(そうじゃなくて、そんな魔力を感じるんだよ。いや魔力か、これ?とにかくお前の弟の龍の力と同じような雰囲気があるんだよ)

 

 ディオーグの追撃に、大一は取り押さえながらもさらにうなだれる。先ほどの眼光も思いかえせば、一誠と同じようなものに思えてしまった。

 ディオーグの感知能力を考慮すれば、もしかしたら本当に一誠が関連しているのかもしれないが、なぜこうなったのかは検討もつかなかった。

 結局、応援を呼んでその悪魔たちにこの人を任せるしかなかった。助けられたことにセラフォルーは大一を連れてきたことは間違いなかったと確信したように頷くと、約束の時間いっぱいまで京都を楽しみながら、大一にソーナの魅力と兄姉としての想いをほとんど一方的に話したのであった。

 

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 数時間後、京都の妖怪の本拠地ともいえる裏の都の屋敷に大一はいた。すでに誤解は解けており、一誠達とも合流している。そして彼らにひとりの少女が深く頭を下げていた。

 

「先日は申し訳なかった。お主たちを事情も知らずに襲ってしまった。どうか、許して欲しい」

 

 狐耳を生やした巫女服を着ている少女は、渦中の人物である九尾の御大将の娘「九重」であった。この前日に一誠達は彼女の勘違いで襲われており、その件を彼女自身も深く反省していた。

 大一の隣では先ほど合流した紅葉が笑みを浮かべている。彼の場合はもともと笑みが普通の表情らしいため、感情は読めなかったが、その笑みのおかげで前日の零の態度をいやでも思い出してしまう。

 

「ま、いいんじゃないか。誤解が解けたのなら、私は別に良い。せっかくの京都を堪能できれば問題ないよ。もう二度と邪魔をしないならね」

「そうね、許す心も天使に必要だわ。私はお姫さまを恨みません」

「はい。平和が一番です」

 

 ゼノヴィア、イリナ、アーシアは九重のことを素直に許していく。心配はしていなかったが、実際に目の当たりにすると大一としては安心する思いであった。

 

「てな感じらしいんで、俺も別にもういいって。顔あげてくれよ」

「し、しかし…」

 

 九重は歯切れ悪く、そうとう気にしていた様子であった。すると一誠は目線を合わせるようにしゃがみ、彼女を見る。

 

「えーと、九重でいいかな?なあ、九重、お母さんのこと心配なんだろう?」

「と、当然じゃ」

「なら、あんなふうに間違えて襲撃してしまうこともあるさ。もちろん、それは場合によって問題になったり、相手を不快にさせてしまう。でも、九重は謝った、間違ったと思ったから俺達に謝ったんだよな?」

「もちろんだとも」

「それなら俺達は何も九重の事を咎めたりしないよ」

「…ありがとう」

 

 一誠の言葉を聞いた九重は顔を赤らめて体をモジモジと動かす。そんな彼女の姿にアザゼルは一誠を小突いた。

 

「さすがおっぱいドラゴンだな。子供の扱いが上手だ」

「ちゃ、茶化さないでくださいよ。これでも精一杯なんですから!」

「いやいや、さすがおっぱいドラゴンだ」

「はい、さすがです!感動しました!」

「本当、見事な子供の味方よね」

「ちょっと見直しました。教師として鼻が高いです」

 

 それぞれの仲間達からも一誠への賛辞が入る。その様子を見ていた大一の頭にディオーグの声が響いた。

 

(お前は言わなくていいのか?「偉いぞー」とかよ)

(今さらそんなことで褒めるつもりはないよ。むしろ兄からそう言われてもあんまりいい気はしないだろ。あと午前のあの男性の件がひっかかるし、俺は「おっぱいドラゴン」を認めたくない!)

(ハッハー!それくらいの感覚は必要だ!)

 

 そして大一ともうひとりセラフォルーも一誠の態度には賛辞とは別の感情を抱いていた。

 

「ま、負けていられないわ!こんなところでおっぱいドラゴンの布教だなんて!魔女っ子テレビ番組『ミラクル☆レヴィアたん』の主演として負けていられないんだから!」

(ライバル意識かい!)

 

 すっかり闘志を燃やしているセラフォルーに大一は心の中でツッコむ。出来ることなら口からぶちまけたい気持ちであったが、さすがにそこまで理性を失うような真似はしなかった。

 

「…咎がある身で悪いのじゃが…どうか、どうか!母上を助けるために力を貸してほしい!」

 




真面目な話、京都で被害にあって痴漢と化した男性陣はどうなったんでしょうか。悪魔たちが総力を挙げてなんとかしたと思いたい…。
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