D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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タグを増やしました。他にもいくつか思いついたけど、場合によってはネタバレになるのでは?などと思って控えました。いや原作読めば、流れはわかりますが。


第78話 向かう道中

 場所は京都駅付近のバス停。敵陣に乗り込むメンバーはここからバスで二条城へと向かう予定だった。一誠達はいつものように制服姿、大一とロスヴァイセはスーツ姿と傍目にはただの学生集団であったが、全員がこれから向かう場所へと気持ちを引き締めていた。

 一行がバスを待っていると、一誠の背中にいきなり九重が飛び乗ってきた。

 

「おい、九重。どうしてここに?」

「私も母上を救う」

「危ないから待機しているよう、うちの魔王少女様や堕天使の総督に言われたろ?」

「言われた。じゃが!母上は私が救いたいのじゃ!頼む!私も連れて行ってくれ!お願いじゃ!」

 

 一誠としても彼女の気持ちは理解できる。母親を自分の手で助けたいと思うのはおかしくないだろう。ましてや、彼女は母のために必死で行動し続けた。それを考えれば、九重の気持ちを尊重したいと思うのは当然だろう。

 そんな中で、大一が一誠に声をかける。

 

「一誠、アザゼル先生に連絡して迎えを寄こしてもらおう」

「待ってくれよ、兄貴。俺は九重の気持ちを尊重したいんだ」

「この方は、京都妖怪の大将の娘だぞ。なにかあってからでは遅い」

「それはわかっている。でも俺が責任を持って守るからさ」

「…俺にはお前みたいな言葉は出せないな」

 

 そんな会話が繰り広げられる中、足元に薄い霧が立ち込めていく。肌にはぬるりとした生暖かい感触を覚え、間もなく全員が霧に包まれていった。

 

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「これは相手に動きを読まれていたな」

 

 大一が周囲を見渡しながらつぶやく。見慣れない街並みが広がっており、夜とはいえ明かりも人も見当たらなかった。すぐ後ろには地下鉄行のエレベーターがあり、「西大路御池駅」と書かれていた。日中に受けた「絶霧」の件を考えれば、この場がレーティングゲームなどでも使われるような疑似フィールドであることは疑いようもないが、見慣れない土地だけあって場所がどの辺りなのかがすぐにわからなかったため、大一は懐から持たされた地図を広げて調べ始めた。

 すると携帯電話を持ったアーシアが呼びかける。

 

「お兄さん、木場さんから連絡がありました。あっちは匙さんとロスヴァイセさんが一緒で京都御所にいます。イッセーさんともすでに連絡が取れていたようで、九重さんと一緒に京都駅の地下ホームにいるそうです」

「となると、二条城を中心に各地に3組で分けられたか…」

「えらく人数が偏っているが、相手に狙いでもあるのか?」

 

 情報を統合すると、ゼノヴィアが疑問を口にする。この場には大一、アーシア、ゼノヴィア、イリナと人数としては一番多かった。そういう意味では、一誠と九重のペアが一番心配なのは否定できない。

 

「二条城まで歩いてせいぜい30分ってところか。かなりの広さに展開されたな」

「私達と戦うつもりなら直接こちらに転移させればいいような気がするけど…」

「それをしなかったということは…ここで相手をする奴がいるということだろ」

 

 制服を脱いで下のボディスーツ姿を露わにしたゼノヴィアが正面を見ながら、新たに改良されたデュランダルを抜刀する。彼女の視線の先には4人のローブを被った人間が横に並んで立っていた。わかりやすく向けられた敵意に大一とイリナも戦闘準備をする。

 

「アーシアは下がっていてくれ。私達でやろう」

「わ、わかりました。気を付けてくださいね、皆さん」

「任せておいて!ところでお兄さん、誰がなにをしてくるとかってわかる?」

「イリナ、お前もなかなか無茶振りしてくるな。…ただ右端の奴は光の力、左端の奴は闇の力を感じる。おそらくそれに即した神器持ちだろうな。真ん中2人はわからん」

「だったら、光の方はイリナに頼もう。今後を考えれば無駄なダメージは避けたい」

「OK!ミカエル様のエースとしての実力、見せちゃうんだから!」

「じゃあ、残った3人は俺とゼノヴィアでやるぞ。俺が前で守りを固める」

「わかった。よし、行こう!」

 

 ゼノヴィアの言葉と同時に大一は龍人へと変化しながら突撃していく。イリナは並んだ敵を分断するように光の剣から斬撃を飛ばして、手早く右端の敵との一騎打ちに持ち込んだ。

 だが相手はうろたえた様子も見せずに、ただ一言呟いた。

 

『禁手化』

 

 その一言に大一達は驚く。間もなく強力な魔力と共に、それぞれ神器が強化されていた。目の前の2人は全身を鎧に身を包んでいた。片方は燃えるような赤と黄色が交互に入った無骨さを感じる堅牢な鎧であるのに対して、もう片方は毒々しい緑色ながらもすらりとした女性的なフォルムが特徴的であった。闇の力を感じた相手は肩に砲台のようなものをつけていた。イリナと相手をしている者は光の力を帯びた鋭い爪を装備する籠手をつけている。

 

『全員、禁手に至っているとは』

「前に話していたイリナの疑問は正しかったわけだな」

「だからって負けるつもりもないけどね!」

 

 堅牢な鎧を包んだ方が真正面から突進してきた大一を受け止める。錨を相手が蹴り飛ばすと、互いに組み合った。片や化け物のごとき龍の混じった皮膚、片や戦士のごとき強靭な鎧と重さのかかる力強さがそこにあった。このまま組み合った状態が続くかと思った矢先、相手の鎧の各所から炎が噴き出してきた。

 

『炎の神器か』

「逃がしはしない。このまま燃やし尽くす」

『俺の防御を知らないようなら…』

「知っているから、こちらも手を打っているの!」

 

 女性の声とともに、大一の後ろに先ほどの緑の鎧をまとった人物がつく。その背中からは蜘蛛の脚のような触手が伸びており先端は鋭利に尖っていた。

 大一の背中に狙いをつけた女性は、その触手をすべて突き刺す。

 

「この毒はあなたの魔力を弱める。これと合わせてそのまま貫き殺す!」

『これくらいじゃまだ刺さらないな』

「だが正面には俺の炎、背中には彼女の毒の刺突、いつまで持つかは見ものだな」

 

 この膠着状態で徐々に相手の力を奪っていくのが目当てだろう。相手なりにどのようにして対策をするかは考えていたようだ。

 相手の意図を察したディオーグの言葉が響く。

 

『要するに我慢勝負ってことか。くだらねえ、こんなもので俺らを止めると思われるのは癪だぜッ!』

『そもそもお前らが2人がかりであるように、こっちも仲間がいるんだ』

「そういうことだ」

 

 大一の言葉に呼応するように、ゼノヴィアが姿勢を低くしてデュランダルを構える。彼女に手を出させないようにもうひとりの敵が肩の砲台から闇の力を数発撃ち込んだ。規模からして後ろのアーシアにも狙いをつけているのだろう。

 だがゼノヴィアは構えを解かず、ただ静かに向かってくる闇の魔力を待ち構えていた。そして魔力が彼女に近づいたところで、デュランダルを薙ぎ払うように振る。目の前に迫っていた闇の力どころか、その後ろに続く魔力すらも余波で吹き飛んでいった。

 

「闇があれば光を打ち消せると思っているのなら、舐められたものだな。この新たなデュランダルの破壊力とそれを操る私はその程度では止められないぞ!」

 

 かなり撃ち込んだ魔力をたった一振りで無効化されたのには、さすがに相手も衝撃的であったようだ。すぐに砲撃の体勢を再びとるが、一瞬怯んだ隙を見逃すようなゼノヴィアではなかった。

 ゼノヴィアは騎士の特性で距離を詰めると、そのまま相手を斬り伏せた。さらに倒れた相手には目もくれず、今度は大一の背中を刺す女性へと目を向けた。

 

「一撃で…!」

『敵を前によそ見は禁物だ』

 

 そう言うと、大一は体重を重くする。組み合った相手は自身の腕や肩にかかる重さが急激に増したことに鎧の中でうめき声を上げた。

 さらに翼の付け根から伸びる尾で、素早く女性の方を捕らえた。

 

『頼むぞ、ゼノヴィア!』

「任されたッ!」

 

 ニヤリとゼノヴィアは笑みを浮かべると、再びデュランダルを構えて大一と戦っていた2人を斬りつけた。女性の方は鮮血を出しながらそのまま倒れ込むが、大一と組み合う男の方は鎧のおかげかその一撃を耐えきった。

 

「ぐううううぅぅぅッ!」

『耐えたところで…』

『潰れるのが落ちだろうがァ、小僧が!』

 

 ディオーグの荒々しさが表に出ると、大一は腕の力を強める。手負いの相手は組み合う腕にも力が入らず、振りほどく腕力など尚更残っていなかった。相手は腰を逸らせて大一の押し込みに耐えるが、対して大一は膝を上げて敵の顔面に蹴りを数発入れる。さしものこの蹴りには相手も参った様子で足取りをふらつかせつつ、そのまま地面に叩きつけられて気を失った。

 龍人状態を解いた大一は腕をさする。多少の火傷と背中の傷、まったくの無傷の勝利とまではいかなかった。

 

「ふぅ…正直、侮っていたわ」

 

 顔の汗を拭いながらイリナが2人に近づく。いくらか傷があったものの、致命傷は受けていない様子であった。後ろには彼女が倒した相手がすっかり気絶していた。

 短い勝負であったが、現れた刺客が全員「禁手」に至っていたのは想定外であった。幸い、相手の練度がそこまででも無かったが、より習熟した状態であれば潜り抜けることすら危うかったかもしれなかった。

 

「よし、先輩とイリナの傷の手当てが済んだら移動しよう」

「イリナだけで大丈夫だろ」

「お兄さん、そういうのはやせ我慢って言うのよ」

「そうです!回復させるまで私達は動きませんからね!」

 

 後輩たちの主張に押されて、大一は仕方なく傷をアーシアに見せるのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

「しかし先輩も災難だったな」

 

 アーシアからの治療を受けた大一は、ゼノヴィアの言葉に疑問符を浮かべる。

 

「なんだ、藪から棒に?」

「いやここまで巻き込まれるのは想定外だったんじゃないかと思ってな」

「こればかりは仕方ないしな。それにあっちにいたところで、問題に巻き込まれただろうし…あっ、リアスさんに連絡するの忘れていた!いやどっちにしろ繋がらないか…?」

 

 頭を掻きながら大一は答える。実際、リアス達も現状は忙しかった。というのも、冥界のグレモリー領で旧魔王派…といっても禍の団とは無関係なのだが、その暴動の鎮圧に乗り込んでいた。リアスやグレイフィアだけでなく、グレモリー家の夫人であるヴェネラナまで動いており、二つ名を持つほどの実力者がいるのだから京都と比べればかなり楽ではあるだろうが。

 この会話にアーシアから治療を受けていたイリナが入ってくる。

 

「せっかく朱乃さんと付き合い始めたんだから、いきなり離れるのは寂しくない?」

「この恋愛脳が。すぐにそっちの話に持っていくなよ」

「で、でも私も気になります!お兄さんと朱乃さんが何をしているのか!」

「言い方が誤解に溢れているぞ、アーシア!」

 

 イリナの治療をちょうど終えたアーシアの声は興奮が垣間見えた。その顔も茹蛸のように赤面しておきながら、期待の感情が間違いなく表れている。

 この話にゼノヴィアも興味津々であった。実際、大一が朱乃と付き合い始めてからきわどい質問をしていたのだから、当然の反応とも言えるだろう。だが大一の頑として話そうとしない態度に口を尖らせる。

 

「先輩こそ教えてくれていいじゃないか。私は参考にしたいんだ」

「お前の押しの強さで参考もなにもあったものじゃないだろうに。最近はアーシアと一緒にアピールが露骨すぎるぞ。アザゼル先生から聞いたが、昨日の夜中に一誠の部屋に忍び込んだらしいじゃないか。ロスヴァイセさんにも迷惑かけて…イリナも断る時は断れよ。教会時の付き合いでそこまで合わせることはないんだから」

「ふえっ!?わ、私はさ~、え、えっと…」

 

 イリナは歯切れ悪く顔を赤らめながら指をいじる。いつもの元気が取り柄な様子は鳴りを潜めて、しおらしい雰囲気が彼女を包んでいた。

 

「むう…イリナもまんざらではないと思うんだがな。その時に胸だって揉まれたし」

「お前もそっち側かよ!いつから一誠とそこまで許すような仲になった!?」

「事故よ、事故!」

 

 イリナの反論が大一の耳にどれだけ入っているかは不明であった。大一としてはイリナは勝手に連れまわされたものだと考えていたため、このゼノヴィアの告白には衝撃を受けた。

 さらにはアザゼルが一誠に話していたことを思い返す。どうにも祇園でセラフォルーへと向かってきた人間が痴漢未遂をしたのは、一誠の才能が漏れ出て京都へと散らばったことが原因だ。その才能は回収されて現在一誠が持っているが、一般人にこれが入ると一誠のように胸を求めてしまうらしい。

 弟の件でスイッチが入った大一はうろつきながら、頭を掻く。こうなってしまっては放心状態になるのも多かったが、これから強敵と戦うことが彼に理性を保たせていた。

 大一は大きく息を吐くと、後輩たちに視線を向ける。

 

「…まあ、本気なら応援するけどよ。しかしあいつにそれだけの甲斐性はあるものかなぁ…」

「先輩、考えすぎだ。私とアーシアはイッセーが独立するなら行く気満々だぞ」

「それってハーレム入りを希望ってことじゃないか。…3人とも、帰ったら話し合おう。この際、全部聞いてやるからさ。お兄さん、いろいろ心配になってきたよ…」

「それでこそ赤龍帝の兄だ!」

「お兄さん、よろしくお願いします!」

「それよりも私の話を聞いてよ…」

 

 先ほどまでの戦いのひりついた感覚とは打って変わった空気のまま、彼らは目的地の二条城を目指すのであった。

 




原作読んでいると、この辺りはアーシアも強力な発言が増えてきた印象でした、
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