D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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原作を読んでいて、9巻までに一誠のトラウマを看破できた人がどれくらいいたのかは真面目に気になります。


第85話 弟への見直し

 ある日のこと、先日の話通りにリアスは一誠を連れて冥界に行っていた。平日の出来事であったため、学校を終えてから彼女らは向かった。そうなると残ったメンバーで学園祭の準備をしていたのだが、悪魔の仕事もあって早々に切り上げていた。

 一度帰宅して夕食を食べたりするのだが、大一は父親と一緒に倉庫の整理をしていた。

 

「ったく、帰って早々に釣り竿探すの手伝ってくれって息子に言うかな」

「息子だからだろう。それにいい機会だから、倉庫の整理もしよう」

「だからって別に平日にやる必要無いだろ」

「お前はいつも文句言いながらも手を動かすからな。助かるよ」

 

 大一は軽く舌打ちだけして、再び倉庫の中を探す。父親の趣味が釣りであることは知っていたが、これに協力することはあまり乗り気でなかった。元々悪魔になる前は静かに本を読んでいるタイプであったため、どうも外に出るのは好まなかった節があったからだ。

 もっともこのような状況を作ったのは、なにか話があるからだと思った。両親ともに決して器用な性格でないからこそ、こういった2人だけの状況を作るなどして話をしようとしていた。

 

「…ところで大一。イッセーがおかしくなったと思わないか?」

「いつも通りだろ。修学旅行でもエロい妄想して表情はだらしなかったし」

「ん?なんでお前がそんなこと知っているんだ?」

「あっ、いやー…アーシアからちらっとそんな話を聞いたんだよ、うん」

 

 実は京都にいたなどと口が裂けても言えない大一であったが、父は少し首をかしげただけで特に追及もしなかった。大一がいなかった間は、朱乃の使い魔が変化して大一の代わりを務めていた。幸い、バレることは無かったようだが。

 

「それで俺にはわからないんだけど、どのあたりがそう思ったの?」

「なんというかな…親の直感?母さんも気になっていたみたいだし」

「具体性に欠けるな」

 

 大一は慎重な態度で、父から明確な言葉を引き出そうとしていた。もしかしたら両親が悪魔の真実に感づいたのではないかと危惧したからだ。これほど連続で信じられないような出来事が連続で起こっているのだから、もっと疑いを持ってもいいような気はしたが。

 

「うーん、説明が難しいな。父さんたちとしてはな、こんなふうに女の子だらけになるとイッセーがもっと積極的に動くものだと思っていたんだよ。普段が普段だったし。いや、さすがに一線は守っているのは、父さんでもわかるけどさ。それにもしものことがあって、相手方のご家族にご迷惑をおかけするわけにもいかないし…」

「あのさ、俺はこのまま作業が終わるまで、あいつの性格について父さんの話を聞かなきゃいけないわけか?」

「ああ、すまんすまん。要するに、もっと積極的に行くと思ったんだ。なにか理由があるのかなって」

 

 父の言葉には安心と不全感の両方が含まれていた。彼からすれば、一誠に対して息子として信じているのと同時に、やはりそのエロさは看過できないものがあった。とはいえ、この家にリアス、アーシアを筆頭に多くの女性たちが住むことになって、息子への評価のひとつであった「性欲の権化」も改善されていた。だからこそ、いまだに女性に対してまともにアプローチひとつしていないのは気になったようだ。

 一方で、大一は特別気にしていなかった。弟の一誠が実際どう思っているのかは知らないが、男女の恋愛関係なのだから当事者で決めれば良いことだ。直接の相談でも受けない限りは協力するつもりはないし、下手に首を突っ込むつもりも無かった。

 ただ先日のリアスの様子を思い返すと、父の指摘にも引っかかるものがあった。学園でのセクハラ行為は、悪魔になってから時間的制約や大一がより近いところで目を光らせることもあったため、以前よりは多少は減った印象がある。もちろんその代わりに、リアス達からの好意や誘惑を受けてきた。ここで父の指摘を受けてふと思ったのは、恋愛方面ではたしかに彼からアプローチをした話はまるで聞かなかった。

 たしかにエロいことには並々ならぬ情熱を持つ彼であったが、恋愛にも相応の感情は抱えていたはずであった。それこそ騙されたとはいえ、レイナーレと付き合うことになった際のはしゃぎっぷりを兄として見てきたのだから。

 それともセクハラ行為だけを目的としているのか、好意に気づかないほど鈍感なのか…そうは思いたくなかった。

 

「…それで俺にどうしろって?」

「いや、大一はなにか思い当たる節は無いかなと思ってさ。言ってはなんだが、イッセーが女の子と知り合う機会なんて今後どれだけあるか分からない。ただちょっと可能性の話だが…もし今いる子達の中でよかったら誰かが…」

「そういう話、俺や母さん以外の前ではしないでくれよ。あと、思い当たる節は無いな」

「大一だったら、なんか知っていると…いや父さんの杞憂かな。忘れてくれ」

 

 その後は男2人で静かに目的の釣り竿を探し、同時に倉庫の整理を続けていた。正直、竿は見つからないわ、整理するべきものが多すぎるわで夕飯前に少しやるというには多大な時間を要することがすぐにわかったのだが。

 

「こりゃ、ダメだな。別の日にしよう」

 

 結局、この日は作業を断念した。疲れたように大一は肩を回していると、父が自分を見ていることに気づいた。

 

「…どうしたの?」

「いや、お前も大きくなったなと思って。身長なんて170後半くらいあるんじゃないか。高校になってからぐんぐん伸びたよな」

「あー…たしかに伸びたね」

「昔は身体は健康そうなのに、目のクマは酷くて母さんと一緒に心配したもんだよ」

 

 父の発言に大一は肩をすくめる。力強い体つきや鋭い目つき、髪の色が弟よりも暗めなのもあってかずっと一誠とは似ていないと言われ続けたものであった。もっとも顔つきはどことなく似ているし、一誠自身もかなり筋肉をつけてきたので雰囲気は近くなってきたかもしれないが。

 

「でも、最近は顔つきが身体同様に健康的になってきたな。彼女もできていろいろ変わったか?」

「朱乃は関係ないよ」

「いや真面目な話、母さんはお前が朱乃さんと結婚して欲しいと思っているらしいんだよ。それこそイッセー以上にお前は女っ気が無いからな。父さんもけっこう不安だったんだ。ほら、リアスさん達が来てからお前には───」

「あー、言いたいことはわかったから言わないでくれよ。とにかくまだ学生の身にそんなことを言うなよ」

「わかっているって。ただやっぱり孫の顔を期待しちゃうなー」

 

 父の言葉を取り合う様子は見せずに、大一はただ呆れた表情を作る。なぜ我が家は揃いも揃って、そちらの方向に考えが及ぶのだろうか。もっとも亡くなった祖父なんかも一誠と引けを取らない性欲ありきの人物ではあったが。

 自分の両親なら、ハーレムができると言えば悪魔のことも受け入れるんじゃないかと思いつつ、大一は父と共に家の中に入っていった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 それから2日後、グレモリー眷属はグレモリー領の地下にあるフィールドで特訓をしていた。今回は全員がその場にいて、それぞれ分かれて特訓している。

 大一は一誠と祐斗の模擬戦を見ながら、ロスヴァイセから借りた魔法の本を読んでいた。使い方は理解しても、それを即座に出すことが難しく実戦で活用できるとは思えなかった。学べば学ぶほど、ロスヴァイセの魔法の扱いが見事であることが身に染みる。

 一方で、一誠、祐斗の模擬戦は新たに身につけた力を存分に使ったものであった。ただ双方ともに魔力を消費しやすい能力のせいか模擬戦自体はそこまで長くかからなかった。特に一誠の方は終わった後に祐斗との反省会の中で、「赤龍帝の三叉成駒」の「僧侶」の使い方に苦慮していた。肉弾戦が主流である彼は「騎士」や「戦車」の方は、他のメンバーと模擬戦を重ねていく中で、その有用性をめきめきと発揮していた。反面、「僧侶」の方は砲台を見せつける上に、そこから魔力を撃ち出すまでに時間がかかる。曹操に決めた魔力を曲げることも難しい。決まれば「戦車」以上の破壊力を見込めるが、ひとりで使うにはどうにも難しい代物であった。

また一誠にとってはもうひとつ、体力の消耗が大きいのも悩みの種であった。京都で初めて発揮した時よりはマシであったが、それでも2、3回連続で変化するとあっという間に消耗するようだ。

 一誠の話を聞いた祐斗は、大一に振る。

 

「大一さんは、龍人状態になってもあまり消耗が無いように見えますけど、初めて変化した時はどうだったんですか?」

「消耗無いというか、解いた時に疲労が来る感じだな」

 

 龍人状態になった際の持続時間や消耗は、大一にとって課題にはならなかった。初めて変化した時は身体が追いつかない感覚があったが、何度かやっていくうちに自然に身体の方が慣れていた。また一度引き上げれば解除するまでは持続するため、魔力のコントロールも肉体強化や体重のコントロールの方に集中できる。そのぶん解除した際に疲労がまとめてやって来るのだが、戦いの場で変化を繰り返すことはそう多くはない上に、この疲労も再び龍人状態になればある程度はリセットされるため、あまりデメリットにならなかった。もちろん、京都の時のように龍人状態で怪我を負えば、その時はダメージを負うし、勝手に怪我が回復することも無い。ただ一誠が悩むような神器や体力による時間制限、魔力の消耗などは問題にならなかった。おそらく彼らと違って、神器由来のものではないのだから根本的に違うのかもしれない。

 大一の回答に、一誠は一瞬いぶかし気な表情をするが、そこに見学に来ていたレイヴェルが挙手をしてきた。

 

「あ、あの、ふと思ったのですが…先ほどの特化型の『僧侶』ですが、砲身から砲撃ではなく、譲渡の力を撃つことはできないのでしょうか?そうすれば援護射撃にも幅が出るような気がしますわ」

「「…それはいいね!」」

 

 一瞬の沈黙の後に、一誠と祐斗は笑顔で答える。純粋な攻撃力だけではなく、倍加の譲渡を遠距離にいる味方に撃てれば戦略の幅は広がるだろう。2発目からも敵に揺さぶりをかけるという意味では効果的だ。

 相手に利用される可能性もあるが、着眼点としては目から鱗な考え方だと大一は思った。だてにフェニックス家である故か、兄たちの戦いを見て学んでいるのだろう。

 

「おおっ!すげえな!チーム戦になれば大活躍できそうだぜ!てか、実戦で大いに役立ちそう!」

 

 テンションが上がり興奮している一誠を見ながら、大一はあごを撫でる。その直情的な様子は美点であると同時に、視野の狭さを感じた。それが女性からの好意に気づきにくい鈍感さに繋がっているのだろうか。

 先日のリアスの発言から、父との会話を通して、大一なりに弟を観察していた。しかし一向に違和感など抱かなかった。せいぜい父の指摘が、言われてみればそんな気がする程度のレベルで見受けられるものであった。これだけでは、彼だってどうしたらいいのかはわからない。サイラオーグの母親の件で冥界に行った際の話もリアスから聞いたが、目覚めなかったとはいえ最後まで全力で手を尽くそうとしたのは弟らしいと思った。ただリアスはその話すらも、物悲し気な様子を見せていた。

 現状で出来ることは無いものの、このまま何もしないのも納まりが悪かった。父からの指摘は暗に弟のことを任されたような気がした。兄としての責任だけはある彼からすれば、無視は出来なかった。もっともリアスの発言もあったので、サイラオーグとの勝負前に不安要素は取り除いておきたいというのも大きいのだが。

 そんな中でリアスが話に参加してくる。先ほどのレイヴェルの話を聞いていたようだ。

 

「問題はゲームフィールド、でしょうね。集団戦ができる場所ならいいのだけれど…。

サイラオーグは私たちの全てを受け入れると上役に打診し、上役もそれを許可したわ。私たちにとってシトリー戦ほどの束縛はないでしょう。けれど、上役はそれを踏まえた上での特殊ルールを強いてきそうだわ」

 

 リアスの話では、今回の会場は大公アガレス領土の空中都市で行われるらしい。大勢の観客が呼ばれるため、それに伴って興行的な面もあるレーティングゲームは短期戦のルールが見込まれる。サイラオーグ、リアス共に冥界ではすでにトップクラスの人気や知名度を誇っているのだから、当然の措置とも言えた。

 一誠はレイヴェルにお礼を言いつつ(彼女は顔を真っ赤にしながらテンプレごとくツンデレの態度であった)、すぐにまた練習を再開しようとしたが、リアスがそれを制止した。

 

「今日はここまでよ。明日は記者会見だもの。あまり練習ばかりしていると、明日酷い状態で記者たちの前に出ることになるわ」

 

 リアスの発言に、一誠は間の抜けた表情で目を丸くする。そんな彼にお構いなしで、彼女は言葉を続けた。

 

「あら、言ってなかったかしら。ゲーム前に私たちとサイラオーグのところが合同で記者会見をすることになったのよ。テレビ中継されるのだから、変な顔しちゃダメよ?」

「え、ええええええええっ!?」

 

 度肝を抜かれた一誠の叫び声がフィールド中に聞こえる。こんな様子で弟の違和感を察知するなど、両親だからこそできるものだと大一は耳を塞ぎながら考えた。

 




まあ、オリ主も大概ツッコむべき点は多いのですが。
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