D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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オリ主はオリ主でタガが外れたらヤバい方だと思っています。


第86話 我慢なしの接近

 学園祭の準備を含めた一連の活動を終えたリアス達が向かったのは、グレモリー領にある高級ホテルであった。シンプルながらも豪華さを漂わせる造りのこのビルで、今夜行われるのは試合前の意気込み会見であった。

 現在、彼女らは控室で待機していた。この控室も広い一室で、豪華な家具が揃い、ケーキや菓子が並んでいる。そんな部屋の中でグレモリー眷属は各々過ごしていた。リアスや朱乃、ゼノヴィアのように落ち着いている者もいれば、一誠やアーシア、ロスヴァイセのように落ち着かない者もいる。そんな中で大一は微妙な表情で座っていた。その原因は外にも内にもあった。

 

(あー、甘い匂いが鼻をくすぐる。舌が濃い味を欲している)

(…そうか)

(おい、アホ小僧。このわかりやすい主張をお前は聞かないのか?)

(だってここに来る前にお前がなにか食いたいと言うから、おにぎり食べてきたじゃん…)

(あんなので俺が満足すると思うなよ!俺は今甘い物の気分なんだよ!)

(これから会見だっていうのに、そんなに食べられないよ)

(だいたいな、戦いの前に意気込みなんて語る方がおかしいんだよ!戦いがもたらすのは生と死、勝利と敗北で十分だろうが!)

(ここで持論を語っても仕様がないだろ…)

 

 頭の中で騒ぎまくるディオーグに、大一は弱ったように返答する。沈み込むような低温の声でドスを利かせながら脅してくるので、苛立ちが湧くどころかすっかり気圧されてしまっていた。食べられないことも無いのだが、人前に出るのに満腹で行くのは勘弁したい。

 そんな大一を見て、小猫が声をかける。

 

「先輩、顔色悪いですよ?」

「ディオーグが頭の中で騒いでんだよ…」

「…それは大変ですね。私で良ければ慰めてあげますよ」

「俺の膝の上に乗っている後輩の言葉とは思えないな」

 

 呆れるような大一の返しを気にも留めず、小猫は彼の膝の上でくつろいでいた。と言っても、彼は脚を開いていたため片脚にちょこんと乗っかるような形であったが。待合室に案内されてから、彼女は自然に先輩の膝の上を独占していた。

 

「…迷惑ですか?」

「別にそういうわけじゃないんだが…思うことはいろいろあるな。まず座りづらくないか?」

「先輩は身体大きいので、大丈夫です」

「…それじゃ、もうひとつ。こういうのは女の子がやると、あらぬ誤解を受けるぞ」

 

 我ながらズルい言い方だと、大一は思った。小猫のことを気遣った言葉ではあったが、同時に付き合っている相手の反応を気にしたものであった。しかし小猫を無理に下ろして、不穏な空気になるのも避けたかった。彼の言葉を無視した、小猫はそれくらいくつろいでいたのだ。

 大一はちらりと朱乃へと視線を移す。彼女はいつもと変わらない様子でリアスと話していた。その態度に安心を感じたのと同時に、女々しい自分本位な感情に嫌気が差した。

 その考えを振り払うように頭を振ると、彼はこの機会を利用して小猫に話を振った。

 

「そういや小猫。リアスさんと一誠から聞いたぞ。レイヴェル様と仲が悪いようだな。なにか理由あるのか?」

「別に…馬が合わないだけです」

 

 渋い表情で答える小猫であったが、その感情が穏やかでないものは彼にも理解できた。大一は自然に周囲を見回すと、他の者には聞こえないような小さな声で彼女に耳打ちする。

 

「あのな、一誠を取られるかもしれないことで焦るのは分かるが、あの人はまだこっちに慣れていないんだ。もうちょっと仲良くしてくれよ」

「…は?イッセー先輩は関係ありませんよ」

「…あれ?そうだったのか?」

 

 目を丸くする大一に、小猫は不満を全面的に押し出した表情をする。勘違いの内容を察した彼女は自分でも信じられないほど険しい顔つきになっていた。そして感情も相応の苛立ちを感じており、それをぶつけるかのように少し早口に話し始める。

 

「焼き鳥娘がイッセー先輩を特別に思っているのは知っています。私もイッセー先輩は尊敬してますが、あっちとは違う感情ですよ」

「…ゴメンな。これは俺の早合点だった。言い訳させてもらうなら、ほら…あいつの周りってそういう人多いから」

「先輩の勘違いは不快ですが…まあ、その理由は理解できます」

 

 小猫は表情を変えずに首を振る。一誠のモテっぷりは仲間なら皆が知るところであろう。唯一、それに気づいていないとすれば当事者の一誠くらいなものであった。

 申し訳なさに誤魔化すような苦笑いを浮かべる大一に対して、小猫は言葉を続ける。

 

「私が心配しているのは…先輩が取られると思ったからです」

「俺がレイヴェル様に?どうしてだよ?」

「だって焼き鳥娘は末っ子で、お兄さんもたくさんいるから…不安になって先輩が見かねて助けることもあるでしょうし…」

 

 もにょもにょと言葉を引き出しづらそうに、小猫は話す。要するに妹気質のレイヴェルに、兄としての大一を取られるのではないかと心配していた。ましてやレイヴェルが憧れを抱いている相手の兄なのだから、接点は自然と多くなるはずだ。

 大一はあごを撫でて考える素振りを見せると、落ち着いた様子で言葉を紡ぐ。

 

「レイヴェル様は頼れる兄が3人もいるんだ。俺なんか当てにしないだろうよ」

「先輩は自分を過小評価しています。少なくとも私にとって、先輩には信頼と安心があるんです」

「俺はいい後輩を持って幸せだよ。それでも膝乗りはやり過ぎな気もするが…」

「…これくらいしないと置いていかれるんです。朱乃さんがいても…私だって…」

 

 小猫は顔を赤らめると、彼の身体に寄りかかる。猫耳を出したリラックス状態でも無いため精神的な余裕は皆無であった。

 一方で、大一は小猫の表情を彼女の本心とは違う解釈したようで、慰めるように肩に手を叩きながら声をかける。

 

「何を思っているかは知らないが、そんなにギラギラするなよ。お前への態度は変わらないつもりだよ。仲間としても、兄としてもお前のことは大切だ」

「…聞きたかったのはそうじゃないですけど。今はそれでいいです」

 

 間もなくスタッフがやってきて、記者会見の始まりを告げられるのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 記者会見は圧巻の一言であった。写真のために多くのフラッシュがたかれ、会場の広さを感じさせないほどの人数の記者がいる。何度か、冥界のパーティを見てきた大一にとっても初めての光景であった。ここに来るまでに匙たちと偶然会って、アガレス家との試合の記者会見についてぼやいていたが、彼の言うことが納得できるほどリアスとサイラオーグの試合が注目されているようだ。

 だがこの空気に圧倒されないほど、張り詰めた緊張感がサイラオーグ側にはあった。見るだけでも全員が強い意志に満たされており、彼らにとってこの試合への意気込みがどれほど大きなものであるかが物語られている。

 飛び交う質問にそれぞれの「王」であるリアスとサイラオーグは堂々と答える。さすがは眷属を持つことを許されている上級悪魔、その立ち振る舞いは間違いないものであった。

 当然、その眷属たちも相応の振る舞いが求められる。主が話す間はただ静かに、おかしな挙動ひとつ許さぬ凛とした佇まいが要求された。

 徐々に眷属にも質問が振られていくが全員難無く…というのは語弊があるが、ファンが望んでいるであろう解答をしていく。そんな中、次に振られたのはリアスやサイラオーグに勝るとも劣らない人気を博している一誠であった。

 

『冥界の人気者おっぱいドラゴンこと兵藤一誠さんにお訊きします』

「は、はい」

『今回もリアス姫の胸をつつくのでしょうか?つつくとしたら、どの場面で?』

 

 この質問に一誠は頭に描いていたことがあっという間に白紙になる。エロいことにはストイックな彼でも、これには戸惑いしかなかった。

 しかし顔を引きつらせる一誠に、記者の質問は手を緩めなかった。

 

『特撮番組同様、リアス姫のお乳をつつくとパワーアップするという情報を得ています。それによって何度も危機的状況を乗り越えてきたと聞いているのですが?』

 

 こんな質問がまかり通るのだから、冥界の常識は自分たちの通用しないところにあると大一は改めて思った。もっともそれはリアスの眷属となったことで目の当たりにしたスケールの大きさの違いではなく、何度も弟の件で苦労していたことが現在の冥界では一切問題がないかのように扱われているという別ベクトルな内容なのだが。

 一誠もこの質問がイカレた内容であるのは承知しているが、聞かれた以上は答えなければならない。しかし緊張故に言葉を嚙んだことが会見の空気をさらに変な方向へとシフトさせた。

 

「えーとですね、ぶ、ぶ、ぶちょ、じゃなくて」

『ぶちゅう!?いま、ぶちゅうと言おうとしてませんでしたか!?それって、ぶちゅうぅぅぅっと吸うということですか、胸を!?』

 

 フラッシュの量が増え、記者たちの熱量が上がる。一誠が噛んだことと記者たちの勘違いが会見の方向性を捻じ曲げたようであった。

 当然、このような内容なのだからリアスにも振られる。

 

『リアス姫!これについてコメントをお願いします!』

「…し、知りません!」

 

 あまりの晒上げの状態に、彼女の隣に座っていた朱乃は噴き出す。その胆力に大一は羨ましさを覚えた。

 

『サイラオーグ選手はどう思いますか?』

「うむ、リアスの乳を吸ったら、赤龍帝はおそろしく強くなりそうだな」

『おおおおおっ!』

(従兄弟がそれでいいのかよ!)

(だから意気込みなんざくだらねえんだよ)

 

 ディオーグの言葉を完全に否定しきれない記者会見がすぐに終わることを大一は祈るしかなかった。

 

────────────────────────────────────────────

 

「こんなにキツイものだとは思わなかった…」

「あら、大一もリアスの眷属としてそこそこ年数を重ねているんだから、こういうのは慣れていたのかと思ったけど」

 

 記者会見も終わり、自宅に戻った大一のぼやきに朱乃はおかしそうに笑う。場所は彼の自室で2人の手には温かいハーブティーの入ったカップが握られていた。大一はジャージ、朱乃は薄い着物と入浴を済ませた寝間着姿で、就寝前に話し込んでいた。

 

「パーティは問題ないが会見は…というか、大半が一誠関連でだけど」

「質問もあなた自身のものがほとんど無かったものね」

 

 記者会見で大一に向けられた質問は、仲間関連のものばかりであった。同じ兵士の一誠に期待すること、主であるリアスの誇れる点など、通り一遍な内容であった。もっともルシファー眷属の弟子であることやディオーグの件など世間一般で公になっていない面が彼には多数あったため、記者も彼に関連した質問は限られるのだろう。

 

「まあ、それは仕方ないよ。みんなと違って露出多いわけではないし」

「あらあら、負け惜しみかしら?」

「そういう負け惜しみが出るとしたら、俺じゃなくてディオーグの方だな。言っても、あいつも知名度が無いのはもう諦めているような気もするが」

「そっちも知名度無いものね」

 

 朱乃の言葉に、大一は少し歪んだ笑顔を作る。ディオーグが聞けば、彼の頭の中で不平不満を怒気に包んで騒ぐことがわかっていたからだ。幸い、彼が風呂に入っている間に眠り込んでいた。

 

「朱乃はもうすっかり有名人だしな。あいつの特撮番組出ていないのに」

「うふふ、私達の関係を話せば注目されるかもね。リアス達みたいに」

「そっちのファンに俺が殺されそうになるイメージしか湧かないよ。俺はあいつみたいなヒーローでも無いし」

「あなたの魅力は私が一番わかっているわ。もっと自信を持って」

 

 先ほどとは違い、からかいを抜きにした朱乃の言葉は優しかった。どうもこの無自覚な自信の無さは、朱乃にとっては彼氏に対する不満点のひとつであった。以前よりかはマシになったとはいえ、言動の端々にそういったものが感じる気がしていた。

 この自信の無さは、弟である一誠にもあるのだろうか。

 

「…そう考えれば、イッセーくんがリアスの想いに気づかない理由にもなるかしら」

「どう考えれば、とかは聞かないがあいつにも何らかの理由があると思いたいがね」

「兄の直感かしら?」

「俺はそういうの考えない方だ。ただそう思ないと、リアスさんが不憫すぎるだろ」

 

 紅茶の中身を見つめる大一の表情は渋かった。先日のリアスの言葉は、いつも自分たちを引っ張ってきた彼女らしくないものであった。矢面に立って強く、仲間達を先導してきた主であり親友の弱さが、弟によって引き出されていることには何とも言えない気持ちであった。サイラオーグ戦前の不安のような、任されたお目付け役としての視点とは違った。

 彼の内心を読み取って、朱乃も話を続ける。

 

「親友として出来ることはしてあげたいわ」

「同意する。助けられっぱなしだからな」

 

 仲間、親友、家族、自分たちを救ってくれた人たち…理由などいくらでもつけられた。男女間の関係に首を突っ込むのも野暮なのは理解している。しかし2人ともこの不全感と心配は無意味なものとは思えなかったのだ。

 

「私達よりもいろんなことやっているのに不憫だし…」

「あの2人を見本にしないで欲しいものだけどなぁ。朱乃がそっち方面に興味津々なのを知らなかったし」

「考えてみれば、大一にはそんな態度を取ったこと無かったものね。でも私だって好きな人には心を許してしまうわ」

 

 そう言うと朱乃は自分のカップを持ったまま大一の脚の間に座って体を預ける。甘えるような寄りかかりであった。

 

「小猫ちゃんがやっていたことに嫉妬しちゃったんだから」

「そ、それは悪かった…」

「悪かったと思うなら、膝に乗せて」

「いや、朱乃は小猫より重いからけっこう厳しいような…痛いって!耳を引っ張らないでくれ!」

「女の子相手にそれを言えば当然の結果ですわ」

 

 まったく優しさを感じられない笑顔で朱乃は、大一の耳を引っ張る。そこには一切の容赦もなく、ここぞとばかりに不満を口にした。

 

「あなたももっと気を付けた方がいいわ。小猫ちゃんのこともあるし、最近はロスヴァイセさんから魔法を教わっているんでしょ?」

「そこは強くなるために必要だし…」

「…信頼関係を築けば、ほんの少しのきっかけで好意に変わるなんてあるもの」

 

 彼の耳から手を放した朱乃は頬を膨らます。彼女自身、リアスに勝るとも劣らず自信はある方だが、自らの経験と彼の人の良さを考えると全く可能性が無いとも思えなかった。

 引っ張られた耳を抑える大一には目も向けず、誰に言うでもなくポツリと呟く。

 

「別に悪魔だからいいけど…私ばかり嫉妬するのバカみたい」

「…それ本気で言ってる?」

「え?」

 

 テーブルにカップを置くと、大一は静かに朱乃を後ろから抱きしめる。いつものような優しさがあるが、同時に少しだけ力が入っていた。

 

「朱乃が俺以外のことを好きになったら、仕方ないと思っている。それは俺に魅力が無くて、繋ぎ留められないのが悪いんだから。でもいまだに一誠の龍の気を吸い取るのとか、冥界でも人気があるとか…俺は俺でけっこう嫉妬しているよ」

「…ごめんなさい」

「いや、謝るのは俺の方だよ。結局、好きな人を不安にさせたんだから。ごめんな」

 

 そう言うと、大一は腕の力を弱める。らしくないやり方だと思った。あまり強引で押しつけがましい方法は、感情を露骨に見せているようで心穏やかでなかった。

 一方で、朱乃の方は少し強い彼に顔を赤らめていた。いつもは自分が攻めている立場であったが故か、意中の相手が見せた力強さに胸が高鳴る思を感じた。

 だがそのままの気持ちでいるのも癪に感じた朱乃は大一へと声をかける。

 

「ねえ、大一。その腕貸して?」

「貸すって?」

 

 大一の問いを無視して、朱乃は彼の腕をつかむとそのまま手のひらを自分の胸へと誘導する。

 彼が意図を察した時にはすでに遅く、その手には彼女の柔らかい胸の感触に包まれていた。彼女の大きな胸の感触は、男にとっては流涎ものであろう。

 朱乃は艶っぽい声を上げながら、上目遣いで彼に視線を向ける。

 

「ん…揉んでいいよ…」

「む、無理してやるもんじゃないだろって…」

「私がしたかったの。大一だって…イヤでは無いんでしょ?」

「…その聞き方はズルいって」

 

 数分も無い短い時間のはずなのに、2人とも数時間は触れ合っている気がした。だんだん根競べのような状況になっていくが、先に音を上げたのは大一の方からであった。

 

「…マジで理性が保てなくなりそうだから止めよう」

「じゃあ、代わりにどうしてくれるの?」

「…今日、一緒に寝る。それでどうでしょうか…?」

「許してあげる」

 

 朱乃の見惚れるような笑顔に、大一は安心感と別の緊張感に支配される。落ち着くためには慣れるしかないのだろうが、彼にとっては相当な難題に思えた。

 同時にこれ以上のことをやっていながらも、いまだに関係性が変わらない一誠とリアスには首をかしげる想いであった。

 




原作だと彼女の積極性は強力だと思いました。
この裏では一誠とリアスがサウナで結局ダメだった状況が繰り広げられています。
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