D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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迷いましたが、数値は原作と変えないでいこうと思います。


第91話 始まる若手の決戦

 耳に響く大歓声、それに相反するかのような緊張感、命を懸けるようなテロリストとの戦いとは方向性は違うものの、それに匹敵する感覚に身体が包まれる。

 だがその感覚を理解しているからこそ初戦に出場した仲間の一言は心強いものであった。

 

「当然勝つよ」

 

 ダイス・フィギュアの1戦目の数値は3。最低数字から火蓋が切られたこの戦いは「騎士」同士の戦いであった。グレモリーチームからは木場祐斗、サイラオーグチームからはベルーガ・フルーカスが広大な平原で地を駆ける一騎打ちを行った。

 ベルーガは西洋甲冑に身を包み、円柱型の槍を構え、馬にまたがっているという騎士という言葉がそのまま形作られたような出で立ちであった。家系であるフルーカスは代々馬を司る悪魔である。彼がアルトブラウと名付ける青白い炎に包まれた馬は「青ざめた馬(ペイル・ホース)」はコキュートスの深部に生息する特別な魔物で、当然そのコンビネーションは外野からでも感嘆するほどのものであった。

 だがそのスピードに祐斗は追いついていた。互いに高速で得物をぶつけ合い、高速の勝負を展開していく。目で追うのもやっとなこの勝負は足場の確保が重要かと思ったが、祐斗が剣を地面から出すのに対し、空中をも駆けるペイルホースに祐斗は苦戦を強いられる。

 それでも祐斗は確実にベルーガを追い詰めていった。持ち前の手数の多さと幻をも見せる超スピードは相手を消耗させる。

 

『自信満々のようですな。たしかに貴殿の才能は私とアルトブラウをいずれ上回る。だが!ただではやられませんぞ!後続のため、手足の一本でも切り落とし、体力を奪う!』

 

 たしかに実力においては祐斗の方が上だろう。しかしベルーガは馬に乗っているためスタミナの面では最後までくらいつけるだろうし、なによりも彼の気迫がそれを成し遂げるだろう。

 この勝負において、決着をつける要因になったのは祐斗の新たな力であった。

 

『そう、だからこそ、あなたが怖い。覚悟が完了した使い手ほど、怖いものはありませんから。僕は───もうひとつの可能性を見せようと思います。───禁手化』

 

 聖剣を構えた祐斗のつぶやきと共に、地面から大量の聖剣が突き出し、その近くに龍を模したような兜を被った甲冑騎士が現れた。騎士たちは聖剣を手に取ると祐斗の周りに立ちベルーガ達と向かい合う。

 さながら騎士団を率いるような祐斗の新たな力は、彼が後天的に得た神器「聖剣創造」を禁手化したものであった。その名を「聖覇の龍騎士団(グローリイ・ドラグ・トルーパー)」、京都でジャンヌが使っていた禁手の亜種を見て思いついたものであった。

 圧倒的な物量と聖剣による攻撃、そして彼のスピードから展開される戦闘は見事にベルーガを打ち倒した。

 

────────────────────────────────────────────

 

「お疲れ、祐斗」

「ありがとうございます」

 

 戻ってきた祐斗は主の労いの言葉に短く答える。他の仲間達も彼の奮戦と勝利に賞賛するが、余韻に浸っている間もない。実況のナウドの声が響いた。

 

『初戦を制したのはグレモリーチーム!さあ、次の試合はどうなるでしょうか!』

 

 そのままの流れで2戦目のダイスを振る。合計は10と数値としては、かなり高い。会場中もこれからの試合に大いに期待するように歓声を上げた。そんな試合にリアスが選んだのは…

 

「手堅くいきましょう。ロスヴァイセ。それとサポートに小猫。2人にお願いするわ」

「わかりました」

「…了解」

 

 「戦車」のコンビという基準値を限界まで使った組み合わせであった。確実な勝利を目的とするこの布陣に、指名された2人もやる気に満ちていた。

 移動用魔法陣に乗る前に、小猫が大一の元へと駆け寄る。

 

「…先輩、見ていてくださいね」

「なに当たり前のこと言っているんだ。お前の新しい力も含めて、存分に振るってこい」

 

 覚悟の仲にも満足そうな表情を浮かべた彼女は、そのままロスヴァイセと共に魔法陣へと移動し転送された。

 2戦目のバトルフィールドは神殿の内部のような場所であった。頑丈そうな柱や祭壇が確認できるが、いかんせん天井が崩れているのでミスマッチな印象が感じられる。

 そんな場所に現れた小猫とロスヴァイセに対するのは、軽鎧に身を包んだ優しげな表情の金髪男性と3メートルはある巨漢であった。

 金髪男性の方は「騎士」のリーバン・クロセル、断絶したはずの72柱のひとつであるクロセル家の末裔だ。そして巨漢は「戦車」のガンドマ・バラム、怪力が売りのバラム家の男だ。

 まるで雰囲気が違う互いのメンバーが揃ったところで2戦目が始まった。先に仕掛けたのは小猫。仙術の力を全身に行きわたらせた「猫又モードレベル2」により純粋なパワーと身体能力が向上した彼女の拳がガンドマの顔面へと打ち込まれた。だが正面からもろに受けたにも関わらず、彼は意に介さずにその長い腕を振るってきた。素早くロスヴァイセが後ろから魔法攻撃を与えるも、これもガンドマはダメージを受けた様子が無い。その防御力の桁外れさは間違いなかった。

 その隙をついてリーバンも動き出す。魔法剣士であり、さらに神器「魔眼の生む枷(グラビテイ・ジエイル)」を持つ彼はその力を使ってロスヴァイセに膝をつかせる。視界の範囲に重力を発生させるこの神器は、相手の動きを封じるものであった。

 

(動きを止める程度か…)

 

 試合の様子を見たディオーグがポツリと呟く。彼がどういう意図で発した言葉なのかはわからないが、さすがに試合中にまでわざわざ追及はしなかった。

 視界を用いるタイプの神器は強力な効果があっても、対策は取られやすい。それこそ視界を封じればよいのだから。

 しかしそれ故に強者は取られがちな対策について、さらに対策を用意するのであった。ロスヴァイセが手元に魔法陣を展開させたのを確認すると、リーバンは即座に魔法で鏡を召喚する。おそらく彼女が視界を封じるために発する光を防ごうとしているのだろう。

 この駆け引きに置いて、上であったのはロスヴァイセの方であった。彼女が撃ち出した光は鏡に跳ね返され、そのままガンドマへと当たる。すると彼女とガンドマの居場所が入れ替えられて、仲間の重力に押さえつけられる形になった。どうやらロスヴァイセは跳ね返されることを前提に動いていたようだ。

 

『小猫さん!攻撃は通ってますか!?』

『…はい。もう魔法に対する防御力が展開できないほど、あの大きな人のオーラと内部を乱しました』

『了解です!フルバースト、2人とも食らいなさい!』

 

 幾重にも展開された大量の魔法陣から撃ち出される魔法の一斉掃射が2人の相手を襲う。その破壊力は京都でも見せた通り、フィールドを揺らすほどの破壊力であった。

 この強力な攻撃が止み、巻き起こった塵芥も晴れていくと…そこにいたのはリーバンただひとりであった。

 

『…隙があるって…さっきも言ったろ…?倒したと…思っているときが一番隙を生む…』

 

 今にもリタイアするであろう瀕死のリーバンの瞳が、彼女らを捉える。その瞬間、小猫とロスヴァイセの動きが重力によってわずかに封じられた。当然、それを見過ごすような相手ではない。血だらけのガンドマが現れると、力のかぎりその拳を小猫へと入れ込んだ。

 間もなく、リーバン、ガンドマ、そして小猫の身体がリタイアの光に包まれる。悔しそうに謝るロスヴァイセに対して、小猫の表情は満足げであった。

 

『…ゴメンなさい、小猫さん』

『…謝らないでください、ロスヴァイセさん。嬉しいです…。私、役に立てましたから…2人も倒せたんですから…』

 

────────────────────────────────────────────

 

(…ガンドマ・バラムは手負いだった。小猫も「戦車」なのだから防御力が低いわけではないのに、満身創痍の一撃で彼女を倒すとは…改めてサイラオーグさんの眷属が一筋縄ではいかないことを認識させられたよ)

(やけに冷静じゃねえか)

(命のやり取りをしているわけじゃないんだ。試合を見てしっかりと勝利へと繋げるようにしなきゃな。ましてや後輩が立派な試合を見せてくれたんだから)

 

 ディオーグの言葉に、大一は冷静に答える。小猫の敗北に当然悔しい気持ちはある。しかしそれで冷静さを欠くのは、自分から可能性を潰しているのと同じだと思った。元より無傷で勝てるほどこの試合は甘くない。戦った者達への敬意は忘れずに、その上で頭を回転させて勝利を目指す必要があるのだ。戦いはあらゆる要素をひっくるめるのだから。

 2試合目が終わり、3試合目の数字が決定する。数値は8とこれまた高く、互いの強力な「兵士」を出せるものであった。

 これにあたり、サイラオーグはこの試合に「僧侶」のコリアナ・アンドレアルフスを出すと宣言する。その理由を実況に問われると…

 

「兵藤一誠のスケベな技に対抗する術を彼女が持っているとしたら、兵藤一誠はどう応えるだろうか?」

 

 この理由に大一は露骨に眉をひそめる。相手はウェーブのかかった金髪が特徴的な女性でたしかに一誠の好みそうなグラマーな体型であったが、それだけであの倫理を考えるような技を打ち破れるかは疑問であったが。当然、大一としては疑問を遥かに超える嫌な予感と見たくないものが視界に入りそうな気がする不安さが大半であった。

 しかしアザゼル、ベリアル、観客は疑問の方が大きかったようだ。あっという間に会場中が一誠の出場を期待するようになっていた。

 

「いいッスよ!俺、その挑戦受けます!」

 

 半ば、やけ気味に答える一誠の発言にリアスは困り顔をする。

 

「…まったく。罠だろうけど、どうなの?実力的にはあなたの方が圧倒的に上でしょうけど、おそらく相手は何かを企んでいるわ」

「興味あります。俺の技に対抗できる女性だなんて。それにこれ、サイラオーグさんからの挑戦状でもあるんだろうし…『これを超えられるか?』って。あんまり酷いハメ技はしてこないんじゃないんでしょうか?」

 

 一誠の回答に、大一は少しだけ首をひねる。正直なところ、その可能性は半々といったところだろう。サイラオーグとしてはこのゲームは是が非でも勝利を得たいはずだ。数的有利を取られている以上は、この第3試合は勝っておきたいはずだ。しかし同時に一誠にもかなり期待しているのも事実であった。結局、どのような可能性もありえる試合なのだ。

 

「数値が8なら俺も出られる。いざという時に盾になろうか?」

「いやここで兄貴が出たら、もしもの時に次の試合に出られなくなる。それにこの挑戦を俺は受けたいと思うんだ」

「…わかったわ、行ってきなさい。私もあなたのあの技を破るという相手の術が気になるわ。でも、決して気を抜かないでね」

 

 リアスの注意のもと、第3試合は一誠がひとりで出場することになった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 やはりというべきか、彼の出場は会場が大きく湧きあがる。「おっぱいドラゴン」のコールが何度も響き、大一はすぐにでも耳を塞いで大声を出したいものであった。しかしそうもいかない。この勝負を最後まで見届ける必要があるのだから。

 

『第3試合、開始してください!』

 

 広大な花畑というフィールドで試合が始まった。コリアナは魔力による氷の槍で攻めたてるが、「女王」へとプロモーションした一誠はそれを難なく避けていく。間もなくカウントも終わり禁手化により赤い鎧をまとった。これにより子供たちの声援はいっそう強力なものになる。

 そして一誠は例のごとくパイリンガルで相手の動きを読み取ろうとするが、コリアナは上着に手をかけてそれを脱ぎ去った。さらにそのままスカートにまで手をかけて脱いでいく。あまりの突然の行動に一誠もその場に釘付けの状態で攻撃の手を止めている。つまりサイラオーグの対策というのは…

 

『おおっと!これは!バアルチームのコリアナ・アンドレアルフス選手が、突然脱ぎだした!男性のお客さんも無言でガン見している状態です!アザゼル総督、これはいったい!』

『…』

 

 実況の問いを無視してアザゼルもガン見していたが、この状況で相手の手がわからないほど彼らもバカではない。最初に脱衣を始めることで相手は一誠のドレスブレイクを封じ、さらにパイリンガルをしても次に脱ぐ服を知るだけで動きを読ませなかった。相手も羞恥心をかなぐり捨ててこの戦法に出る辺り、曲がりなりにも本気度が垣間見られる。

 

(だとしても、お前の弟にしか効かねえだろ)

(そうだと思います)

 

 完全に興味を失っているディオーグの声に、大一は申し訳なさそうに答える。当たり前のように行われるこの攻略法に頭の中でも閉口したい気持ちであった。

目のやり場に困る試合であったが、間もなく大一は肩を誰かに掴まれると無理やり後ろを向かせられる。そこには黒い感情を隠さない笑顔で、朱乃が立っていた。

 

「はい、大一はこのままね。それと後でこの件については話し合いましょう」

「…いちおう言い訳させてもらうとこれは不可抗力だと思うんだよ」

「だったら、ここで雷光を出すのも不可抗力にしてもいいのよ?」

「勘弁してくれよ…」

 

大一の弱い反論にも朱乃は耳を貸そうとはしていない様子であった。

 

「試合中だからしませんわ。でも貸しひとつね。…見たいなら言ってくれればいつでも見せるのに」

「小声とはいえ人前で言うことじゃないだろうに。誰か、試合が決まったら教えてくれ」

「いやそれなんだが…」

 

 ゼノヴィアが何かを言い出す前に、一誠の大声が響いた。

 

「ブラジャー外してから、パンツでしょッッ!」

 

 気がつくと、一誠が巨大なドラゴンショットを撃ち出してこの勝負は勝利を収めていた。相手がパンツから脱ごうとするのに対して、一誠はブラジャーから外して欲しかったらしい。

 

────────────────────────────────────────────

 

 レーティングゲーム史上ある意味最低な戦いであったが、なんとか第3試合もグレモリーチームが勝利した。

 次の4試合目の合計数値は同じく8と、高数値であった。相手の残りメンバーを考えるなら出場選手を絞れそうなこの状況、名乗り出たのはゼノヴィアであった。こうなると祐斗かロスヴァイセの組み合わせが考えられるが、ギャスパーが恐る恐る手を上げて立候補した。

 

「…ぼ、僕が行きます。え、えっと、そろそろ中盤ですから…何が起こるかわかりませんし…、ゆ、祐斗先輩とロスヴァイセさんは強いですから、後半に向けて控えていただいたほうがいいかなって…」

 

 いつものようにビビり気味で頼りない雰囲気であったが、彼の目は決意に満ちていた。それほどの覚悟には応えるのが、リアスであった。

 

「じゃあ、ギャスパー、ゼノヴィアをサポートしてくれるかしら?あなたの邪眼やヴァンパイアの能力でゼノヴィアをサポートしてほしいの。

 あとは勝利を確実にするために───」

「お任せを」

 

 リアスが向ける視線を合図に、大一は立ち上がる。今さら彼女の指示に言葉は必要なかった。

 

「さて勝とうか、2人とも」

「もちろんだ。頼りにしているぞ、ギャスパー」

「は、はい、ゼノヴィア先輩!」

 




オリ主はちょいちょい表向きにはドライな面もあります。
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