D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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思い返せば、オリ主は「女王」ばかりと戦っている気がします。


第94話 やれることの遂行

 大一が降り立った場所は人気のないコロシアムであった。ここにきてあまりにもシンプルなフィールドであった。

 彼と相対するのは、サイラオーグの「女王」クイ―シャ・アバドン。朱乃を破ったその実力は折り紙付きだ。

 大一を見たクイ―シャは眉をひそめて不審げな表情になる。

 

「あなた一人だけですか?」

「『兵士』でしかも駒ひとつ…『女王』には不満でしょうが」

「いえ、少し意外だっただけです。ここは少しでも確実に勝利を狙ってくる…だからあなたと赤龍帝のコンビで来ると思っていました」

 

 クイ―シャの考えは正しい。2人がかりであれば、クイ―シャを倒すことは間違いなく可能だろう。最悪、大一が盾になってでも一誠を守れるだろう。ただその場合は次の試合の数値が12以外であることが必要だが。

 

「少しでも不安な要素は排除しておきたいだけですよ。これで次の試合がどんな数値でも一誠が完璧な状態で出られる」

「…舐められたものですね。あなたひとりで私を止める気でいる」

 

 静かに答えるクイ―シャの声には怒気が含まれていた。この采配では大一が間違いなく彼女を倒すということを意味しているのだから当然の感情だろう。

 一方で、大一はただ頭の中で彼女を倒すことだけを考えていた。サイラオーグと戦いたがると思っていたディオーグもなぜかこの時は静かにしていた。もっとも大一の感情や考えを推し量っていただけで、彼なりにこの采配には不満を抱いていたのだが。

 いずれにせよ、もはや決まったこと。互いに今は自分のやるべきことをやるだけなのだ。

 

『第7試合、開始してください!』

 

 審判の合図と共に、大一は錨を出してすぐに龍人状態へと変化する。もはや手札を見せている上に、相手は格上の「女王」なのだから躊躇して勝ち筋を狭める道理は無い。

 ほぼ同時にクイ―シャも攻撃を開始する。まるで巨大な蛇のようにうねる強烈な水流が大一に向かって突き進んできた。

 

『真っ向から…いや』

 

 大一は呟くと脚部に魔力を集中させて水流をかわす。受けても下手に捕らえられて溺れさせるのを狙っている可能性もあったからだ。そのまま走り込み、クイ―シャへと接近していく。相手のスピードは決して速くない上に、大一は近接戦でしか強力なダメージを期待できない。同時に魔力を主体にした戦いかつ近接戦が絶対的なサイラオーグの「女王」であるならば、彼をサポートするために近接戦は不得手だろうと踏んだ。

 だが大一の動きを読んでいたクイ―シャはすぐに飛ぶと、火球を何発も放ってくる。錨でそれを薙ぎ払うがいつの間にか後ろには先ほどの水流が迫っていた。

 体をひねって水流を再び避けるが、クイ―シャがその水流に広範囲の火炎をぶつける。一瞬でその周辺に霧が広がっていった。

 

『目くらましか…』

『こんなもん、魔力を辿れば意味がねえだろうが!』

 

 すぐに魔力の探知を始めるが、横から強力な力が向かってくるのを感じる。風がかまいたちのように斬撃となって向かってきたが、魔力を込めた錨でその攻撃をはじくと追撃がてら口から魔力を数発撃つ。

 当たった感触はしないため防がれたと思ったが、その割には音すらしないのは不自然であった。さらにあらゆる方向から同じような斬撃が飛んでくるのを感知する。

 

『これはマズい…!』

 

 さすがに全て捌くのは無理だと判断した大一は硬度と体重を上げて、さらに手と錨の先から魔法陣を生みだし攻撃を防ぐ準備をする。その結果、数発は魔法陣で防いだものの、それ以外は身体で受けきった。とはいえ、その身体に傷はほとんどつけられることは無かった。

 風の魔法のおかげで霧は霧散しており、クイ―シャは離れたところに陣取っていた。彼女の周囲には「穴」があり、大一から少し離れたところにも「穴」がある。どうやら「穴」を通して遠距離から自分の攻撃を撃っていたようだ。

 

『さっさと生命力を感知すればよかったのによ』

『俺のミスなのは否定できないな…』

 

 ディオーグの指摘に、大一は苦々しく答える。おそらくディオーグはわかっていただろうが、基本的に彼がこの試合でアドバイスを送るようなことはしなかった。あくまで彼にとってはこの試合は大一のものという意識があるのだろう。

 

「頑丈ですね」

『それはどうも』

 

 クイ―シャの言い方はシンプルながらも、彼にダメージを与えられなかったのは想定の範囲内であった。ラードラの攻撃を防いだほどの男がこの程度で倒れるとは思っていなかった。

 大一の方は自分の予想が少しだけ外れていたのを実感した。先ほどの試合で朱乃の方が攻撃力は上だと思ったが、それは雷光があったからこそだろう。通常の魔法であれば、彼女の攻撃力は勝るとも劣らないほどの威力なのだ。それでも頭の中で組み立てている勝ち筋を変えることは無かったが。

 

「兵藤大一。あなたでは私に勝てません」

『「兵士」相手には負けないと踏んでいると?』

「勘違いしないでもらいましょう。私はあなたを侮っていません」

 

 出し抜けに放ったクイ―シャの言葉はどこまでも実直な響きがあった。よく通るその声に大一は訝しげに彼女へと視線を向けていた。

 

「あなたには他のメンバーと比べると派手さに欠ける上に、突出した能力は見受けられません」

『否定はできませんね』

「しかしこれまでの2回のレーティングゲームで最後まで残り、同時に格上の相手や多数の相手にきっちりと自分の役割を果たしている。そんなあなたを侮る理由があるでしょうか」

 

 リアス・グレモリーの両翼、自称こそしているものの、この認識は現在ではほとんど形骸化したものだ。彼女の横には雷光の巫女である姫島朱乃、主戦力として赤龍帝の兵藤一誠や才能豊かな騎士の木場祐斗が特に名高く、他にも優秀な能力や実力を持った眷属が揃っている。大一は他のメンバーよりも少し古株である程度が世間の認知であった。

 だからこそ戦いにおいては、純粋な力だけではなく経験や根性など自分の使えるものを全部使って勝利に貢献してきた。それにあたって、ひとつ武器になっていたのは…

 

「同時に相手の油断を突いて勝利してきたのもあなたです。私はあなたを倒すにあたり、全力を出します」

 

 クイ―シャの指摘は当たっている。ライザー戦では「兵士」ひとりということで、相手は様子見の立ち回りを最初に取っていた面があり、ソーナ戦では手の内を知られていたからこそ椿姫の足元をすくえた。

 だがクイ―シャはそれを踏まえた上で、確実に大一を倒すために手を打っていた。

 

「先ほどの動きで大方わかりました。ここからが本番です」

 

 大一の上から強力な魔力を感じる。見上げるといくつもの氷塊が宙に浮いていた。規模を見れば一瞬で準備できたとは思えない。会話はあくまで時間稼ぎだったのだろう。

 これには大一も不穏な表情になる。硬度を上げるのはともかくとして、上からの攻撃では体重を上げて受けるのはあまり意味をなさない。そこまで理解した攻め方なのだろう。

 クイ―シャが指を鳴らすと、氷塊が一斉に落ちてくる。どんどん降り注いでいくが、雨のように細かく、一部の隙間すら埋めてくるわけではない。大きな塊だからこそ、ところどころに入り込む隙間があるものだ。

 脚部に魔力を集中させ、さらに氷塊の動きも探知する。大一は素早く空いている場所を感知するとそこに向かって攻撃を避けていった。

 周囲に氷塊が落ち、地面から砂埃が舞って視界を塞いでいく。間もなくクイ―シャの力強い声が耳に届いた。

 

「狙い通り!」

 

 正面から強力な魔力を感じ、大一は錨で防御態勢を取る。彼に大質量の雷光が迫り、錨に命中した。その勢いは激しく、発動の余波で砂煙が晴れていく。雷光はクイ―シャの前に現れた「穴」から発生しており、その威力に錨がはじかれて吹き飛んでかなり後ろへと飛ばされてしまった。

 武器を吹き飛ばされてしまった大一は静かに呟く。

 

『朱乃の雷光…』

「ご名答。あの攻撃力は凄まじいものでした。だからこそ、次の試合のために温存させてもらったのです」

 

 錨が吹っ飛ばされてしまったとはいえ、龍人状態が解けるわけではない。発動さえしていれば手から放れても、能力は使えた。とはいえ、慣れ親しんだ武器が無いのは厳しいものがあるだろう。

 さらに雷光が使えるのは厄介であった。龍の皮膚に守られているとはいえ、光の攻撃は悪魔にとって強力な効果がある。なによりも朱乃の雷光なのだから、その威力は大一がよく知るところであった。

 おそらくこの雷光を当てるために、氷塊にわざと逃げ込める場所を用意したのだろう。避けられる場所にまんまと誘導されたというわけだ。

 

『だがこれで負けが決まったわけではない』

「その通り。だからこそ私は負けられないのです」

 

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 試合の様子を見ていた一誠は腕を組んでその様子を見守っていた。この体勢でもなければ、気が気でなくて身体を揺らしていたことだろう。実際アーシアの方は、不安げに身体を上下に揺らしていた。

 今のところ戦況はお世辞にも有利と言えるものではない。大一の戦い方ではクイ―シャとはそもそも相性が悪い。近接戦を仕掛ける前に、大質量の魔力の攻撃がそれを防ぐからだ。しかも相手は油断なく立ち回り、付け入る隙すらも見せない。

 大一には考えがあるようであったが、今の時点では打開策がわからなかった。

 

「やっぱり俺が行っておけば…」

「終わったことを話しても仕方がないわ」

 

 小声でつぶやく一誠にリアスはピシャリと言い放つ。彼女の目にはわずかな後悔も見られなかった。

 一誠はなんとも言えなかった。自分なら間違いなくすぐに決着をつけられたし、仲間のやられた怒りをぶつけることも出来た。本気で勝利を目指すなら、自分が行くべきだったと今でも考えている。それなのに兄がわざわざ説教まがいのことをしてまで、自分を押しとどめた真意がわからなかった。

 なぜリアスはここまで大一を信用しているのだろうか。彼女は兄の真意を理解しているのだろうか。懐疑的になる一誠にリアスは言葉を続ける。

 

「イッセー、よく見ておきなさい。あなたの兄の強みのひとつは、どんな時でも自分の仕事を遂行する精神力よ」

「でもどうも旗色が悪いように見えて…」

「今の時点ではね。でも大一は相手の『女王』を必ず倒すわ。あなたの気持ちと一緒にね」

 

 最後に付け加えるようにリアスは締める。その意味を一誠はすぐには理解できなかった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 短期決戦にしては少々間延びしている状況であった。クイ―シャは傷ひとつ無かったが魔力の消費が激しく、大一は手負いながらも体力的にはまだ余力があるように思える。その様子を見て、クイ―シャは眉間にしわを寄せる。時間をかけた耐久勝負が狙いなのだろうか。だとすれば、見通しの甘さも良いところだ。すでに彼女は勝利のために手を打っているのだから。

 

「だいぶ長引きましたが、終わりにしましょう」

『そういうのは勝ちを確信してから言うものですよ』

「では問題ないですね」

 

 クイ―シャが指を鳴らすと、大一の横から「穴」から強力な火炎が噴き出していく。彼は龍の翼を盾にその火炎を防ぐが、それによって動きが止まったところをクイ―シャは見逃さなかった。大一の足元が砂へと変化し、両足を埋め込むように捕える。きっちりと受ける攻撃、避ける攻撃を判断する大一には足止めはかなり重要なものであった。

 気づいた大一はすぐに足を引き抜こうとするが、間髪入れずに「穴」から火炎を止めると朱乃の時と同様に「穴」を彼の周囲に発生させると、あらゆる角度から水流を複数撃ち出す。

 

『受ければ溺れる可能性もあるなら…これでどうだ!』

 

 両手から魔法陣を形成して、水流を受けきる。大きく展開された魔法陣は向かってくる水流を完全に防ぎ切っていた。これほど大質量の攻撃や足止めを同時に展開するのだから、クイ―シャの魔力の消費は大きい。それでも…それでもサイラオーグの勝利のために彼女は命を投げ出す覚悟で戦っていた。だからこそこれほど大きな足止めをしたのだ。動きさえ止めれば、この一撃で仕留められるのだから…

 

「この勝負…もらった!」

 

 大きく宣言するクイ―シャの言葉と共に、上空に最大規模の「穴」が展開され、そこから朱乃から奪った雷光の全てを一気に落とし込む。脚は捕らえられ、両腕と尾は水流の処理で埋まり、武器である錨もない。ただ耐えるしかないのだ。

 フィールドを揺らすほどの一撃が大一に撃ち込まれるのであった。

 

『これは決まったああああああっ!』

 

 実況、歓声共に大きく湧きあがる。傍目にはそれほどの破壊力であったのだ。これをまともに受けて無事であるはずがないのだ。

 それでもクイ―シャは油断しなかった。水流は止めたものの、脚部への魔力は解除していない。審判の脱落のアナウンスがされるまで、わずかな隙も見せるわけにはいかなかった。

 煙が晴れる時間がクイ―シャにはかなり長く感じた。しかしその瞬間は訪れる。煙が晴れると、そこには全身から黒煙を噴出して致命的なダメージを負った大一が立っていた。

 

「本当に…頑丈です」

 

 クイ―シャは驚きを隠せなかった。あれほどの一撃を受けて、まだ立っているのだ。それまでも少しずつであるが攻撃を受け、さらには悪魔にとって有害である光を全身に浴び続け、それでもまだ立って気絶まで持っていけない。この耐久力を目の当たりにして、平常心でいる方が難しいものだ。

 しかし同時に勝負は決まったと実感した。呼吸は明らかにおかしいし、全身が震えている。龍人状態は解除されていないものの、そのダメージが間違いないものであることがわかる。魔力の波長もぶれており、雷光が身体に帯電して今もなおダメージを与え続けているのだ。

 こんな状態ながらも、大一は静かに言葉を紡ぐ。

 

『な、なるほど…、朱乃の雷光を…確実に当てるために…ということですか…』

「その通り。あなたの防御力を破るにあたり、もっとも効果的な一撃だと感じましたからね」

『…見事ですよ』

 

 これほどの攻撃を受けながらも、大一の態度は戦い始めた頃と変わらなかった。どこか余裕を感じ、いまいち熱量が感じられない。自分の身を削ってでも突撃するような雰囲気が無かった。

 彼の態度にクイ―シャは不満げな表情を隠さずに見せる。

 

「呆れましたね。これまでのグレモリー眷属の戦い方は見事でした。己の命を賭してでも勝利をもぎ取ろうとする…しかし今のあなたには力強い気迫はない。そんなあなたに負ける道理はありません!」

 

 正直なところ、肩透かしを食らったような気分であった。クイ―シャは自分を含め、今回の試合は眷属全員でサイラオーグの勝利のために命をかける覚悟と想いがあった。それはグレモリー眷属も同じだ。自分が戦った朱乃、意地を見せた小猫やギャスパー、サイラオーグを相手に捨て身で挑んだ祐斗、ゼノヴィア、ロスヴァイセ…これほどの覚悟を目の当たりにすると、大一の今回の戦い方はどうも決定打に欠ける雰囲気があったのだ。

 試合中、何度か過大評価したかと思ったが、それでも徹底して油断なく彼を倒す算段を立てた。そして現在、勝利はもはや目前というところまで来ている。

 大一は静かに息を吐く。いまだに身体に帯電している雷光のせいなのか、口から出る息が煙のように見えた。

 

『…あなたが俺に勝つ理由についてはわかりました。しかしそれを言ったら、俺だって負ける理由はありませんよ。だいたい想いだけで勝負が決まるのなら苦労しません。それに死ぬ覚悟がない方や負ける方が想いが弱いというわけでもないでしょうに』

「…バカにしているのですか」

『そんなことはありません。俺だってこれまでの試合を見てきて、その覚悟を目の当たりにしたのですから。ただひとつ勘違いしないで欲しいのは…死ぬ覚悟が無いからと言って俺の気持ちが弱いということになりませんよ』

 

 大一の言葉は淡々とした響きがあった。仲間も相手もこの試合で命を懸ける覚悟を目の当たりにしてきた。しかし大一としては、熱い想いや感情が頭を支配する恐ろしさも同時に知っていた。自分を支配した神器、弟の覇龍の暴走…その危険性を理解している上に、この試合はこれからの悪魔の未来を担っていくべき存在同士のものであるからこそ、一歩引いた視点でいることを意識した。

 そんな立場だからこそ、勝つために頭を働かせることができた。一誠に対して激情を抑え込む時間を与えられた。主であるリアスの勝利のために、それこそが自分の“やれること”であった。

 

『勝つのは我々です。サイラオーグさんは、主と弟が倒します。そのために俺がここで戦う必要があるのです』

「しかし結果が伴わなければ、意味もありません」

『おっしゃる通りです。正直、俺ひとりではあなたに勝てる確率はありません。しかしこの試合があなたにとって2試合目であることが勝利に繋がるのです』

 

 クイ―シャは痺れを切らしたのか、大一の頭上に「穴」を展開させる。朱乃の光は無いが、まだ雷はある上に自分の残る魔力を使って攻撃を通すことくらいはできる。

 しかし大一は気づいていない…というよりも、まるで気にしていなかった。

 

『あの試合であなたが朱乃の雷光を温存していたのは、カウンターの際の規模でわかりました。そしてあなた達の覚悟を目の当たりにしたからこそ、使える力はすべて使ってくる。あなたは俺を侮っていないと言ってくれましたが、そういったことも予想通りでした。そしてあなたの最大の弱点はスピードよりも、あなた自身の防御の低さであることも…』

「まるですべて手のひらであったかの言いぶりですね」

『誤算もありました。あなた自身の魔力の強さです。おかげで想像以上にダメージを受けました。だからこそ、ぎりぎり勝利をもぎ取れるはずが、そうもいかなくなりましたが…』

「言い訳は敗北してから考えなさいッ!」

『事実ですよ。あなたはあなたで気づいていないことがある…最初の雷光で錨をはじいた時、俺がわざとやったということを』

 

 意外な言葉に、クイ―シャはなにか背筋が寒くなるような不穏な感覚を抱いた。同時に彼女を後ろから雷光がレーザービームのように貫いた。

 会場の全員、何が起きたのかが理解できなかった。どこからともなく現れた雷光がいきなりクイ―シャを撃ち抜いたのだ。彼女は驚きに目を大きく開くと、後ろを振り返る。遥か後ろに地面に突き刺さった錨が、大一と同じように帯電しているように光を帯びていた。

 

「ま、まさか…あれを狙って…」

「俺はあなたのように魔力で強力な攻撃を扱うことは出来ない…しかし合わせることは出来ます。それが何度もコンビを組んできた相手の魔力ならなおさら…」

 

 龍人状態が解除された大一は肩で息をしながら答える。自分の身体にも錨にも同じ魔力が通っている今、自身がその魔力を引き寄せることで錨から噴出した魔力が大一へと向かっていった。大一と錨が点になり、その点を結ぶように雷光が突き進み、そのライン上にいたクイ―シャを撃ち抜いていた。

 だが本来なら仲間とのコンビネーションとして使うものであり、ひとりで行った大一はもろに雷光を受けて龍人状態を維持することも出来なくなっていた。

 クイ―シャは自嘲気味に呟く。不意を突かれた一撃は強力で彼女は自分のリタイヤを悟っていた。

 

「…甘かったのは私の方ということですか」

「いや、あなたが俺に対してまったく慢心しないで全力でかかってきたからこその戦法です。なにより俺ひとりでは、あなたには勝てなかった…その実力と覚悟には敬意しかありません」

「なるほど、見事なものです。私も先ほどの言葉を撤回しましょう。あなたも見事なものでした」

 

 このやり取りを最後に両者共に倒れ込む。最後まで互いに出し切ったこの勝負は審判のアナウンスによって終結へと向かった。

 

『サイラオーグ・バアル選手の「女王」1名、リアス・グレモリー選手の「兵士」1名、リタイヤです』

 




コカビエル戦でやっていた魔力を合わせる戦法の応用となります。それでも身を削った戦法ですが…。
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