新選組顛末記ー桜セイバーと男の幕末譚ー 作:とある
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みんなはタイムスリップという言葉を聞いたことがあるだろうか?
普段日常なんかでは使われたりしないが、映画やドラマなどでよく聞く単語だと思う。ほらローマから現代にタイムスリップしたやつとか有名だろ。俺もあんまり詳しくはないけど、過去から未来、未来から過去に時間旅行する話。
ああ、なんでこんなことを聞いているのか分からないって顔だな。
大丈夫。今からなんで俺がこんな話をしているのか、その経緯を3行で教えてやる。
———夜中に飲み物を買いに出かけた俺。
———いつの間にか知らない山奥に。
———調べてみたら、今は徳川幕府が支配する江戸時代だった。
どうだ、簡潔にまとめられているだろう。
え、意味が分からないって?
うん、俺も意味が分からない。
だって本当にいつの間にか山奥にいたし。別に穴に落ちたとか、変なゲートを潜ったとか、ましてや風呂に溺れたとか、そんな予兆らしきものなど一切なかった。
本当にふと気がついたら山奥にいた。
これが純然たる事実なのだからタチの悪い話だと思う。
まあ、今更そんな話をしたところで仕方がないのだが、如何せん謎が多い出来事だった。
さて、今「だった」という語尾に少々疑問を抱いた人がいたと思う。
え、現在進行形でタイムスリップした直後じゃないの? なーんて思ったことだろう。それか、タイムスリップしてから二、三日くらいしか経過してないのかな、と思ったのではないだろうか。
残念ながらそんなことはない。良くも悪くも俺はタイムスリップしてから長い間、この江戸時代に滞在している。年月で言えばおよそ3年間。俺の歳が今年で18歳くらいになるので、大体1/6の以上を過去で過ごしています。幸いなことに、今ではこっちの時代の名前も獲得し、さらには義理だけど家族まで出来た。江戸の町にも馴染んできたし、それなりに俺は楽しくやっている。
やっているのだが……、そんな俺は現在進行形で大ピンチを迎えていた。
「丁ッ! 絶対に丁ッ!!」
新緑も盛りを過ぎた5月の終わりのことである。
俺の目の前には壺振りを務める18歳くらいの男と、もう一人、顎に砂鉄でもまぶしたかのような金魚の顔をした男が座っていた。なぜこのような状況になっているのかというと話は少し前に遡る。
今日は昼から新しい門下生を迎えに行く用事しかなかったため、朝は適当に町でもふらつこうと思い散歩をしていたのだ。そんな時、行きつけの賭場からこの金魚の顔をした顔馴染みが俺と勝負をしたいと言ってきた。いつも俺のことを鴨にしている節があるジジイである。嘲笑めいた挑戦状を叩きつければ、武士としてここは引き下がるわけにいかない。そうと決まればと、俺は意気揚々にその男の挑戦を受け、賭場に足を踏み入れたのだ。
しかし結果はどうだろうか。かれこれ10回ほど賭博をしているが、顔馴染みの男に俺はてんで勝てていない。時折、勝ったりはするのだが、すぐにそれを奪い返される。しまいには俺の手持ちは残りあとわずかとなっていた。次で負ければ確実に一文無しが決定づけられる大勝負。壺振りの男も俺の「丁」という選択に唾を飲み、対面に座る顔馴染みは「半だ」と言って浅く笑った。
「コマ揃いました」
壺振りの男がそう言ってサイコロの上に被せていたザルを持ち上げた。ザルが退いて、盆布に残されたサイコロの目を見てみれば2と5つまり半である。
「どうやらワシの勝ちのようですねぇ、島崎くん」
島崎くん。
俺の名前をそう呼んだ顔馴染みの男が、そう言って勝ち誇ったように笑うと、「それじゃ」と言って俺が賭け金として出していたお金を懐にしまった。
嘘だ。そんな間抜けた感想しか今は出てこない。これでは全ての持ち金を俺は溶かしたことになる。義母にバレたら小一時間くらいは正座で説教されそうだ。
「ま、まだだ! まだ賭けるもんはある!」
こうなりゃヤケだと俺は腹の底から叫んだ。
俺が最後に賭けるのは身に付けている小袖。先日、全てを剥がされた時は着流しだったが、今回は門下生を迎えに行くためにきちんと袴と小袖を着ていた。
だが、そんな俺の醜態を見かねたのか壺振りをしていた男はおもむろに、
「おいおい、かっちゃん。悪いことは言わねーからやめておきな。あんたは博打の才能がこれっぽちも無いんだから」
サイコロとザル、それに盆布を仕舞いながらそう告げた。
「うるせー! こっちとらこのオヤジにめちゃくちゃ大損させられてんだ! 今日という今日は取り返してやらねーと気が済まねぇ!」
「それ毎回言ってるじゃない。大体、このオヤジは強過ぎて、かっちゃん以外は誰も賭博をやりたがらないほどの腕前だ。勝とうってのが土台無理な話なんだよ」
「———なに、勝つのが無理だって?」
壺振りをしていた男の片付けをする腕を掴みながら俺は言った。
「誰がそんなこと決めたんだ。やってみなきゃ分かんねーだろ」
そんな俺の言葉を飲み込んだのか、壺振りをしていた男は諦めたように長い息を吐く。そして片付けようとしていたサイコロたちを再び畳の上に並べ、さっとザルとサイコロだけを手に握り直した。
「もう何も言いません。オヤジは良いんで?」
「ああ、構わねーよ。小袖だって立派な賭け金さ」
「そうこなくっちゃ、よーし、振ってくれ!!」
俺の言葉を合図に、壺振りの男は二つのサイコロをザルに入れ、そのままひっくり返して盆布に置く。
むむ、今度はどちらに掛けよう。壺振りの男も小慣れているため、ザルに入る時のサイコロは見えないような手捌きをする。故に完全に1/2の確率の当てずっぽう。確率の計算なんてできない俺は、適当な勘で「半!」と宣言をした。
◯
その日、私の気分は最低まで沈んでいました。
私の家———沖田家は貧乏で、齢9歳の私を育てるのも不可能なくらい困窮している家柄です。本来であれば大黒柱を務めるはずの父は、私が生まれて2年後に他界。母もその頃に亡くなったと姉に聞かされています。
そのため一番上の姉であるみつ姉は、沖田の家を相続させるために婿をとりました。それが私の義理の兄にあたる沖田林太郎という人です。
別にそれについて私がとやかく言うことはありませんでした。女である私や姉では父の後を継ぐことはできませんし、もとより当時の私は幼過ぎたのです。現代において家が潰れるということは、そのまま生死に直結する問題なため、姉の判断は賢明だったというほかないでしょう。私が姉の立場だったら、それほど的確な手段を選べていたかも分かりません。
しかし、この婚約は同時に私に不幸を知らせることになりました。
それが姉夫妻の計らいにより私を試衛館という道場に預けるというものです。
姉はこのことについて「貴方はきっと人の役に立つ。だから貴方の成すべきことのために道場へ送るのよ」と言いますが、私からすればそれはただの建前だと思いました。
だって最初にも言った通り、私の家は貧乏なのです。働き口にもならない私など、足手まといとしか姉夫婦は思っていないでしょう。だから私を、意味も分からない試衛館というところに押し付けるのです。
今日はその試衛館の人が私を迎えに来る日。つまり大好きな姉との暮らしが終わりを告げる日なのです。そうと分かれば私だって気分が落ち込みます。身支度をしている今でさえ、地獄が刻一刻と迫っているような錯覚さえ起こしてしまいます。
しかしそんな私を見かねた姉は、やはりどこか諭すように「しっかりやれば大丈夫よ」と言ってくるだけなのでした。
◯
明け方に身支度を終え、家からここまで歩くこと一刻半。
とうとう試衛館の人との待ち合わせ場所に到着するそうです。さっと姉が進む先を見れば、そこには古い木材で作られた甘味処がありました。江戸の町にはこういう茶屋が軒並み多いのですが、ここはその中でも一段と古臭いように思えます。
「宗次郎、ここが約束の場所です。少し茶でも飲んで待ちましょう」
いつもよりも丁寧な口調に思える姉が、そう言って私の手を引っ張りました。
ここでこの力に抗えたならば、私はどれだけ幸せ者でしょうか。この甘味処に入らなければ、きっと試衛館の人と会うこともなく、そして姉との生活を打ち切られることもないはずです。
しかしそれは、同時に姉にとって私がなんと不孝な者と見えるのでしょう。建前では「私のため」と言いつつも、本当は口減らしをするために連れてきたはずなのに、私の我儘のせいで生活は苦しいままになるのです。そうなれば昨日までの暖かな家庭は無くなってしまいます。それどころか、もっと酷い所に売られるかもしれません。
私は姉が大好きで大好きで堪らないゆえに、姉との暮らしを捨てたくはありませんが、それと同じくらい姉の困る顔を見たくはないのでした。
「みつ姉、私はどうすれば良いんですか?」
気がついたらボソリと、私の口から言葉が溢れていました。
「貴方が心配するのも無理はありません。ですが、試衛館は林太郎さんが通っていた道場です。先生である近藤周助さんは女好きとは聞くけど、人柄は悪い人じゃないらしいですし。それに———」
私が聞きたかったのはそういうことではないのですが、みつ姉は色々な尺度から、私が行くことになる試衛館について教えてくれました。
一つ、試衛館で教えている天然理心流では剣術のみならず、柔術なども教えている。
二つ、現当主である近藤周助殿の今の妻は9番目らしい。
三つ、試衛館の跡取り候補と言われている人間はこの江戸の町でも有名。
どれもこれもあまり必要とは思えない知識ばかりでしたが、これも最後になるかもしれない姉との会話と思えば、どれも華があるような気がしました。
「亡くなった父は貴方を男として育てるために、宗次郎と名付けましたが、今の貴方は女の子です。だから試衛館に行っても内弟子とはならないでしょう。それでもきっと、試衛館の方々は快く受け入れてくださります。忘れないでください。私は住むところが離れても貴方のことを愛おしく思っているのだと」
みつ姉はそれだけを言うと、私の頭を大層大切そうに撫でました。
けれど、それが逆に私の疑念を燻るのです。
だったらなぜ私は捨てられるのか。どうして他の道場などにいかねばならないのか。愛しているのなら置いていかないで欲しい。
そんな感情が口から出そうになったのですが、私はグッと堪えます。目頭が熱くなり涙が出そうになるけれど、必死にそれを食い止めました。私はこれ以上、姉の苦しむ姿を見たくないのです。
「さ、宗次郎。お茶のついでに甘いものでも食べましょう。貴方、甘いものが好きでしょう。これから門出だと言うのに、そんな悲愴な顔をしていては、迎えに来た人が驚いてしまいますよ」
「そう、ですね」
気丈に振る舞いながら、私はみつ姉が甘味処に入っていくのに続きました。
甘味処に入ればこの店の看板娘のような女が一人、私たちに声をかけます。姉は慣れた立ち振る舞いで、「お茶と団子を一つずつくださる?」と言うと、看板娘は可憐な笑顔でそれに応えました。奥の方へ頼まれた品を発注しに行く姿もさることながら、一挙一動がとても女の子らしいです。みつ姉も私には将来ああいう風になって欲しいのだろうか、と考えるも、虚しくなるだけなのでその思考は閉じることにしました。
しばらく外に置かれた縁台に座って待っていれば、先程と同じ看板娘が茶と団子を二人分置いてくれました。私とみつ姉はそれを手に取り、今まで滅多に食べることのできなかった甘い団子を口にします。
「団子は美味しいですか?」
私が頬張っている姿を見つめながら、隣に腰掛けるみつ姉がそう尋ねてきました。
聞かれるまでもなく、今頬張っている団子は美味しいです。絶妙な甘さ加減に、程よく塩が効いており、こんな時でもなければ泣いて喜んだことでしょう。
「ゆっくりお食べなさい。喉に詰まらせては大変ですから」
私の鬱屈な表情に苦笑いところりと浮かべた姉は再度そのように言うのです。
「宗次郎。あちらに行っても、食事はしっかり摂ってくださいね。1日の活動は食事にあります」
「……」
「睡眠も取らなければ私のように大きくなれません。貴方はまだまだ小さいのですから、夜はたっぷり眠ることです」
「……」
みつ姉の放つ言葉達に私は全てなんとも言えない沈黙で答えました。
別に喋りたく無いわけでは無いのですが、こういった時、どのようなことを口にすればいいのか分からないのです。いつものように笑顔を浮かべて「はい」と告げられたら良いのですが、私の顔はまるで土塊でできたかのようにピクリとも動きませんでした。
そのような私の言動に、挙げ句の果て姉は言葉を詰まらせてしまい、食べようとしていた団子を皿の上に戻します。
「あと、それから……そうですね……」
何事か考え込むかのように空へ目線を投げる姉。
私はその姿を目に焼き付けておこうと、姉の端正な顔をまじまじと見つめました。
「宗次郎。貴方を手放す不届きな姉の頼みなのですが———」
頼み、と言ってみつ姉は声を振るわせます。
「———どうか、どうか……私を忘れないでくださいね」
泣いていました。
私を口減らしするために送り出すはずの姉が、そう言って泣いていたのです。
ここに来るまで、いいや試衛館に私を預けると決心した日から、一度も姉が私を手放すことで悲しんだことはありませんでした。それが当たり前だと私も思っていました。食い扶持が減れば、それだけ生活は楽になります。姉夫妻は喜んで私を手放したがっているのだと思っていました。
けれど、この涙はどうやら本物のようで姉は袖で流れた涙を拭きながら「ごめんなさい」と気弱な生娘のように謝ります。私もそれを見てとうとう耐えきれなくなりました。いや、もう耐えることをやめたのです。
「絶対に、絶対に忘れません……! 私は、みつ姉のことが日の本一大好きですから。私のことを愛してくれるみつ姉を、日の本一愛していますから」
私はそう宣言し、先ほどよりも塩っけの効いた団子をかっくらいました。
姉はそんな私の言葉を聞いて大層嬉しかったのか、
「それは……最後に良きことを聞けました……」
と、私と同じように皿に置いた団子を震えた唇で噛み締めるように食べるのです。
そんな時、私たち姉妹の別れを邪魔する怒号が町内に響きました。私たちは、はっとした様子でその声の元であろう大通りへ視線を向けます。そこには一人の幼い坊主が、落ちた風車を拾うためか大通りの真ん中に立ちすくんでいました。
「きゃああああああ!」
「危ない! そこのガキ! 目の前から大八車が来てるのが見えねーのか!!」
「おい! 大八車を押してる奴ら止まれ!! 目の前に子供がいるぞ!!」
「はぁっ!!? ふざけるな!! これだけ荷物載せてて急に止まれるわけねぇだろう!!」
幼い坊主とは対象の位置、つまり坊主の正面から走ってくるのは、どう見ても積荷を載せすぎた大八車。それが、これまたどう見ても出し過ぎの速度で大通りを縦に走行していました。
大八車に驚いて足が竦んでしまったのか子供はその場をピクリとも動きません。このまま大八車が方向転換できず、真っ直ぐ走り続けた場合、あの坊主を轢き殺すのは必然のように思えました。その悲惨な未来に、見ていた誰もが思わず口や目を塞ぎます。
しかし、目を逸さなかった私の視界に、一つの影が大八車へ颯爽と飛びかかるのが見えました。よく目を凝らして見てみれば、その影は上半身を裸で染め上げた総髪の男です。その男が今にも坊主を轢き殺しそうになっていた大八車を横へと蹴り飛ばし、かつその後見事な着地を披露したのです。
あまりの出来事に、その顛末を見た通行人は皆同様に目を丸くさせていました。同じように、大八車と一緒に吹き飛ばされた野郎ども全員も呆気に囚われていました。見たところ怪我らしい怪我はしていないのですが、その代わりに運んでいた荷物は道路にぶち撒けられています。さらにはそれを載せていた大八車からは車輪が外れ、台の部分が盛大に割れていました。
しかしそんなことなど知らぬ存ぜぬと、それらの大惨事を引き起こした当人である上半身裸の男は、助かった子供を男は優しく撫でてやります。見たところ男は刀も差しておらず、あんな大それたことをしたくせに身分は低いように見受けられました。
「あ、お前らが沖田さんっていう人たち?」
身分の低そうな男が、そう言ってみつ姉が付けている髪飾りを指さしました。
私たちのことを知っているということは、もしかして、この人は私の引き取り手である試衛館の関係者なのかもしれません。それを姉も気が付いたのか、「え、えぇ、そうですけど」と戸惑ったように返します。
「あー、よかったぜ。少し遅れたみたいだけど、時間潰しててくれたんだな」
男はそうからからと笑いました。
しかし、男に倒された大八車の四人の野郎たちが起き上がります。顔色から窺うに、どう見ても怒り心頭に発した様子。そして、彼に蹴飛ばされた鬱憤からなのか、男の肩をつかんで自分たちの方へ振り向かせると、そのまま男へ喧嘩腰に話しかけました。
「おい、兄ちゃん。なにしてくれてんだ。こちとら商売で大八車を押してるんだぞ……? あんたこれが誰の積荷か知っての狼藉でい?」
男は指さされている壊れた大八車と、それに載っていた積荷を見ました。
「どう見ても載せすぎだろ。それにスピードの出し過ぎ。テメーら、あれで子供を轢き殺してたら死罪だったぞ」
「す、すぴーど……? ええい! 知るかんなもん! 轢き殺してねーんだから、罪は兄ちゃんだけだろうがい!!」
男の言葉がよく分からなかったのか、頭領格と思わしき男を皮切りに、荷物を運んでいた野郎どもが口々と、「そうだ、そうだ!」「積荷の弁償をしやがれ!」「俺たちの商売道具を壊しやがって、この不届きものが!!」寄って集って野次を飛ばします。
非難の声を一身に浴びる男。
それでも男はあっけらかんとした態度で、続けます。
「ああー、悪いけど今は一文無しだから。弁償とか無理なんだわ。すまんな」
「「「「はぁ?」」」」
「いやだから、一文無しだから弁償は無理って」
「聞こえてんだよ! 無理で済ませられるって思ってんじゃねぇーこのくそが!!!」
頭領格らしき男が、とうとう我慢の限界に達したらしく先陣を切って殴りかかりました。
けれど、それを男は鮮やかな膝蹴りで返り討ちにします。男の膝が差さった頭領格らしき人物は、その一撃だけで地に臥しました。
「な、なにしやがんだテメェ!!?」
「いやそいつが急に殴ってきたから、つい条件反射で……」
「ふざけんざじぇねー! うちの商売道具だけじゃなくて、仲間まで傷つけやがって!」
それを口火に残った3人が一斉に男へ殺到します。
右、左、正面。それぞれが違う方向から足技や拳を繰り出しました。それでも男は焦ることなく、それら全てを完璧にいなしてみせると、そのまま彼らの腹部へと強打を繰り出すのです。
「話を聞けって」
一人の例外もなく倒れ伏した野郎どもを眺めながら男は言いました。かろうじて意識を保っていたのは、我先に男へ一撃を食らわそうとした頭領格らしき男だけ。他の野郎どもはみんな白目を剥いて、完全に意識を失っていました。立ち上がれるものなど誰一人としていません。
「て、テメェ何者だ……なんだその出鱈目な強さは……!?」
まるで三文芝居のお約束ごとのようなことを口走る頭領格らしき男。
その質問の意図に気がついた男は少し戸惑ったように続けるのです。
「あー、俺? 俺は———
———試衛館の島崎勝太。いつか天下一の武士になる男だ」
それが私を迎えにきた男の名前———島崎勝太という男です。
「みつ姉。私、試衛館に行くの不安です」
「奇遇ね、宗次郎。私も同じことを考えさせられました……」
通行人達から拍手喝采を浴びる男を尻目に、私と姉はいつの間にか枯れた涙を思い出しながら、深く長いため息を吐くのでした。
話の進め方についてのアンケート。
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余計な話は省いて、展開を早く
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余計な話は省いて、もう少し展開を早く
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このままの感じで、遠回りしながら
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もっと話を入れて