フクキタルがめちゃくちゃに誕生日を祝われるお話 作:家葉 テイク
原作:ウマ娘プリティーダービー
タグ:マチカネフクキタル サイレンススズカ タイキシャトル エアグルーヴ 女性トレーナー コメディ 独自解釈
※オリジナルのチームを組んでいる設定です。
《big》※連載化しました※《/big》
https://syosetu.org/novel/264048/
| 登場人物 | |
|---|---|
| マチカネフクキタル | チームレグルスのお調子者。中・長距離担当。本日お誕生日。 今回のお話の主人公。ボケ担当になりたいツッコミ担当。 |
| サイレンススズカ | チームレグルスのエース。マイル・中距離担当。 自分のことをツッコミ担当だと思い込んでいる大ボケ担当。 |
| タイキシャトル | チームレグルスのムードメーカー。短距離・マイル担当。 ツッコミもボケもほどほどにこなせるオールラウンダー。 |
| エアグルーヴ | チームレグルスのリーダー。中距離担当。 押しも押されぬツッコミ担当。この人がいるとみんなボケだす。 |
| トレーナー | チームレグルスのトレーナー。女性。元エアグルーヴ専属。 本日出番なし。 |
「あ……そうだ。フクキタル、誕生日おめでとう」
チームのたまり場にもなっているトレーナー室にて。
談笑している最中、スズカさんが不意に話題の切れ目でそんなことを言い出しました。
それまで密かにその話になるのを期待しつつ、でも『自分から言い出すのもなー』ということで黙ってうずうずしていた私は、ようやく時が来ましたか! と言いたくなる本音を隠し、平静を装いながら顔を上げます。
横でスマートフォンを使って何かのアプリゲームをやっていたタイキさんも、同じく話題に興味を持って顔を上げていました。
「ぬふっ、あー? そういえば? 確かに誕生日だった気がしますねぇー。いやぁー全然、全然! 忘れていましたけども」
「オーゥ……。フクキタル、今日が誕生日だったんデスカ? おめでとうございマース! ……でも私、お誕生日のプレゼント用意できてまセーン。ソーリー……」
「いえいえ! 良いんですよタイキさん! 特に言ってませんでしたし! 私は皆さんにお祝いしてもらえるだけで……、」
「? 私も特に用意はしてないわよ」
「じゃあ何で平然と話を振ったんです!?」
けろっとした表情で言うスズカさんに、私は思わずツッコミを入れてしまっていました。
いや、別に誕生日プレゼントとか期待していたわけじゃありませんけども! 朝の占いで『今日のアナタの運勢は死ぬほど誕生日プレゼントがドバドバ吉!! プレゼントに圧し潰されて死なないように気を付けましょう!』と出たから超ウキウキしていたとかありませんけど!!
しかしツッコミを入れられたスズカさんは相変わらず呑気なもので、
「なんでって……カレンダーを見たら、そういえば五月二二日はフクキタルの誕生日だなぁって……」
「あぁ~!! スズカさんスズカさん! それ以上ダメ! ダメですよ! それ以上やったらもう今日一日全部スズカさんがボケ倒す日になっちゃいます! 今日の主役! 私! わ・た・し!!」
これはヤバいです。
このヤバさは、去年の夏合宿で肝試しをしたときに、私が企画した渾身のホラー要素を全て『何かいるわね……』で済ませた時の大ボケ以来のヤバさです!! なんとかして、なんとかして主導権を取り戻さねば……!
「ア~……じゃあこうしまセンカ? これから、フクキタルの誕生日プレゼントを買いに行きまショウ!」
およ?
「やっぱり、誕生日なのにプレゼントも何もナッシングじゃ寂しいですカラネ、せっかくですし、フクキタルの希望通りのプレゼントでベストな誕生日プレゼントをプロデュースデース!」
「おぉ……おぉ……!」
さ、流石はタイキさん! 外国からの帰国子女組を集めてパーティを開催したりしているだけのことはありますね! 流石の企画力です! このどうしようもないスズカさんのボケ逃げの流れから、無事に私が主役になれる流れに持ってきてくれました!!
「素晴らしい!! 是非ともそうしましょう! それでは善は急げ! 急いては福がやってくると言いますし!」
「仕損じるんじゃなかったかしら……?」
いいんですよ!! この機を逃してトレーナー室にいればスズカさんのボケ波状攻撃でまんまと大逃げを完遂されます! ここから私がこの誕生日ステークスを差し切るには、ここらでイベントを無理やりにでも起こさなければいけないのです!!
……あ、でも、待ってくださいよ?
「そういえば、お金はどうしましょう。お二人とも誕生日プレゼントを買うつもりがないなら、そんなに大したモノは買えませんよねぇ……」
「オー! 確かに! 困りマシタネ……私の家はお小遣い制なので、あまりマニーを使うことはできまセーン……」
「どんなモノをプレゼントにするつもりなの……? でも、そこについては心配要らないわ。ほら」
頭を抱えるタイキさんの横で、スズカさんはやはりけろっとした顔で言います。
その手には、濃紺の……カード?
「トレーナーさんのクレジットカード。そこの机の上に置いてあったわ。これを使えばお金の問題は大丈夫よ」
な……何を言ってるんですかこのウマ娘は!?
「何も大丈夫じゃありませんよそれ!?」
「Yeah! 流石スズカデース! 最高のBBQにしまショウ!!」
「テーマが完全にタイキさん色になってるんですよぉ! それはもうタイキさんのイベントであって私の誕生日とか関係なくなってるんですよぉ!!!!」
──私は、その場に崩れ落ちるしかありませんでした。
もう……もう駄目です。このチームは駄目駄目の大凶です。私がツッコミ役に回らざるを得ないチームなんて完全にどうにかなっちゃってます。ああ……エアグルーヴさん、早く来てください。私一人じゃ荷が重すぎますよ……。
「……フクキタル?」
と、そこで私はスズカさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいたことに気付きました。
ああ、こういうところできちんと立ち止まれる良識が、スズカさんにはあります。お隣のチームのタキオンさんなんか、ここで嬉々としてアクセルを踏むヤバい人ですからね。私のチームのエースがスズカさんで良かっ、
「心配しないで。トレーナーさんも、フクキタルの誕生日プレゼントの為ならちょっとくらい奮発しても許してくれるわ」
「…………………………、……ヴぁーァァああああああああああああ!!!!」
フクキタル誕生日ステークス、第一コーナーを曲がって先頭は後続を大きく離して“大ボケ”サイレンススズカ!!!!
というわけで、私たちはトレセン学園近くのショッピングモールまでやってきたのでしたっ!
「フクキタル? もう大丈夫デスカ?」
「はいっ! お陰様でバッチリです! ご心配おかけしましたが、これからは誕生日プレゼントを楽しみますよー!」
「ほどほどにしてね、フクキタル……。トレーナーのカードは使用禁止になっちゃったから」
「当たり前でしょうがっ!!!! あとでエアグルーヴさんにバレたら、雷を落とされて全員黒焦げの失敗BBQですよ!!」
「オーゥ! エアグルーヴはサンダーバードだったんデスカ?」
「サンダー……バー……? ええと、とにかく大凶です! 大殺界です!」
スズカさんのクレカへの執着をブロックするのは、それはそれは大変でした……。
私の全ツッコミ力を駆使して、それとなくタイキさんに窘めてもらったから何とかなったものの、私の誕生日にトレーナーさんのクレカを使ったなんて知れた日には……私はトレーナーさんに叱られ、エアグルーヴさんにも叱られていたことでしょう。そして机の上にクレカを置きっぱなしにしていたトレーナーさんもエアグルーヴさんに叱られていたことでしょう。
あまりにツッコミを入れすぎて、多少体調が悪くなったりもしましたが……なんとか持ち直せました! ハイ! 今はもう元通りです。
「でも……本当にこの雑貨屋さんでよかったの? 流石に、もうちょっと高いところでも私はよかったけど……」
「此処でいいんです。いや、此処がいいんですよ! 見てくださいこのラインナップ!」
私は両手をいっぱいに広げて、店内を腕で指し示します。
「このお店にあるのは、厳かな数珠に深遠なプラスチックの置物、霊験あらたかな狸の信楽焼に神聖な割りばし。押しも押されぬ最強スピリチュアル雑貨が無数にあるのです! さらにお値段もリーズナボォ(ネイティブ発音)……。完璧の布陣です!」
「えぇ……まぁ、フクキタルがいいならいいのだけれど……」
「ヘイヘイ、スズカ! こういうのはフクキタルが満足するのがベストデスヨ! 細かいことは言いっこナッシングデス!」
「……うん、そうね。せっかくの誕生日だもの。素敵なプレゼントを選びましょう……!」
そうして、私も参加しての(それって本末転倒じゃありませんか? って思ったけど誰もツッコミを入れてなかったので結局言いそびれました)誕生日プレゼントが始まったのでした。
まず私達は、タイキさんの先導で屋外雑貨コーナーへと足を運びます。
プロである私はこの時点でちょっと雲行きの怪しさを感じますが、ここでわざわざ指摘したりはしません。あえて『泳がせ』る形で、私はスズカさんと一緒にタイキさんの後をついていきます。
「タイキ、何をプレゼントするつもりなの?」
「ふっふーん! 雑貨店では色々と限界がありマスガ……これは私の中では鉄板デス!」
そう言いながら、タイキさんが指差したのは……、
「いやこれは誰の中でも鉄板ですよっ!?」
…………『鉄板』でした。
いや、なんで!? なんで鉄板が雑貨店にあるんですか!? しかも屋外雑貨コーナーに!? ……あ、これBBQ用じゃないですか! タイキさん地味に自分のキャラ完遂してるじゃないですか! 抜け目ない!
「やっぱり、BBQといえば鉄板デス! 日本ではレギュラーメニューのことを鉄板と呼ぶそうデスシ……アッハッハ! ナイスジョークだと思いままセンカ?」
「えぇ……?」
ドヤ顔のタイキさんに、困惑するスズカさん。
そこに被せるように、私もツッコミを入れます。
「ほら、スズカさん困惑しちゃってるじゃないですか! そんなんで喜ぶのはネイチャさんとかルドルフ会長だけなんですよ!」
「ムーゥ、だめデスカー……。ジャパニーズ・ダジャレは奥が深いデース……」
無事やりきったタイキさんは、あんまりウケなかったことに不服そうにしつつ鉄板を棚に戻しました。マジで一発ネタの為だけのチョイスだったんですかそれ。いやまぁ、鉄板単品だけだと何のために使えばいいんだって話なんですけど。
そこで一部始終を見ていたスズカさんがきょとんとしながら、
「あれ? タイキ、鉄板戻しちゃうの? タイキが鉄板にするなら、私はBBQ用のコンロかなって思ってたんだけど……」
「そこで合わせるんですかっ!? どれだけBBQの流れに持っていきたいんですか!?」
もう誕生日がBBQパーティと化す未来しか見えないんですけど! 私もう嫌ですよ! 神社で初詣だから私の主役回だー! と思ったら境内でBBQパーティを始めたタイキさんに巻き込まれて全部奪われていくの!
「じゃあ次は私の番ね……!」
ぐっ、と胸の前で両拳を握って、気合いを入れるスズカさん。こういう仕草を見ると、健気で可愛らしいなぁって思うんですけどね。
私知ってるんですよ。スズカさんって意外と男性人気があるの。なんだか儚い雰囲気というか、守ってあげたくなる気持ちにさせられるんですよね、多分。……まぁ本人は守ってもらう必要なんてないくらい色々と『強い』人なんですけど。
スズカさんは小走りになりながら、今度は『プチプラ電化製品』売り場に向かいます。
はて……? 電化製品売り場といえば色々ありますが、どれもお役立ち商品ばかりです。ここでスズカさんは何をチョイスするのでしょうか……?
「私が選ぶのは……これ。ウマ娘用のイヤホンよ」
果たして、スズカさんが選んだのはごく普通のイヤホンでした。
……特に何もおかしな部分はないような? いや、おかしなところがあったら困るんですけど! むしろそっちの方がツッコミを入れちゃうのでダメなんですけど!
「これね、けっこう優れもので……お値段の割に耳にキレイにフィットしてくれて、遮音性……? っていうのもいいの。これをしながら走ると……すべての音が遠ざかった、静かな世界で走ることができるの──」
「それただの耳栓じゃないですか!!!!!!」
急転直下の大ボケに、私はまたしてもツッコミを入れざるを得ませんでした。
いやでも……イヤホンをべた褒めした後でそれが全部耳栓としての評価だったなんて、そんなことあります??? それならまだ耳栓をストレートに薦めた方が傷は浅かったと思うんですけど!
「音楽を! 聞きましょうよ!! 音楽をぉ!!!! なんでそこで耳栓になっちゃうんですか! じゃあ耳栓買いましょうよ耳栓!!」
「耳栓はなんだか耳の中に詰まって取れなくなりそうで、怖くて……」
「ああ~~ちょっと分かります! けっこう奥まで入りますもんね、我々! ヒトの耳と違ってって共感させないでください! 今私はツッコミをやってるんですぅ!!」
……はー、はー。まさかノリツッコミまでやらされる羽目になるとは……スズカさん、恐ろしい人っ!
私は度重なるツッコミで乱れた呼吸を一息で整え、改めてスズカさんの持つイヤホンを見てみます。よく見れば、スズカさんの使い方がアレなだけで、ちゃんとした品じゃないですか……。スズカさんの使い方がアレなだけで、私がしっかりとちゃんとした使い方をすれば、普通に素敵なプレゼントですよ、ウン。
何事も、良いことを探すのです。シラオキ様もいつかの夢で言っていました。『いいところ探しをすると、気分がいいです』と!
「うーん……。私も一応、たまには音楽を聴きながら走る時だってあるのよ?」
「一応とかたまにはとかが入って来てる時点でちょっとアレですけど……」
「スズカはどんなミュージックを聞くんデスカ? 私地味に気になりマス!」
同じくイヤホンをいじくっていた鉄板却下済みのタイキさんが、そこでイヤホンを弄る手を止めてスズカさんに問いかけます。
あ、それは私も気になっていました。なんというか、スズカさんって走ることにしか興味がないというか、それ以外の楽しみを全部パドックの中に置いてきてしまったかのような方の印象があるので……。
「ええとね、川のせせらぎとか……」
「自然音じゃないですかっっ!!!!」
音楽ですらなかった!! そんな疲れ切ったサラリーマンが寝る前に聴くようなチョイスなんですか!? まともに走れませんよねそんなリラックスしきった音聞いてたら!?
「それじゃあ、そう言うフクキタルはどんな音楽を聴いてるの?」
「私ですか? ふっふん! よくぞ聞いてくれました! 私はもちろん、自分で録音したシラオキ様への祈りの音声を、」
「あ! 私聞いたことありマース! 流行りのラヴ・ソングを、」
「タイキッさァァあああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!」
フクキタル誕生日ステークス、第四コーナー曲がって最終直線、マチカネフクキタルは後方ぽつんと一人!!!!
──そんなこんなで、結局誕生日プレゼント購入の旅は特に何も買わないままお開きとなり、私達はトレーナー室へと戻るのでした。何だったんでしょうあの時間。
トレーナー室へ戻る道すがら、トレーナー棟への連絡通路を歩きながら、
「はぁー……。でも、なんだかんだ楽しかったですねぇ。やっぱり皆さんとお外でお出かけするのは気分転換にもなるし、良いですね!」
「なら良かったわ。フクキタル、最近トレーニングもいっぱい頑張っていたものね……」
「新学期から一ヶ月、色々な疲れが出てくる頃デスモンネー。気分転換になったなら何よりデス!」
う……ううッ! 不慣れな環境の疲れが出始めてくるのは皆さん一緒なのに……誕生日だからってこんなにも気を遣ってくれるなんて!
もう、この心遣いだけでも最高のプレゼントです!! ああ、私はなんて幸せ者なんでしょう~~~っ!!!!
「(……それに、良い時間稼ぎにもなったものね)」
「……? スズカさん、今何か言いましたか?」
「! いいえ、何も! それより、そろそろトレーナーさんとエアグルーヴもトレーナー室についている頃でしょうし……急ぎましょう!」
おっと、そうでした! 今日はトレーニングはお休みですが、今後のレース計画やトレーニング計画を詰めるミーティングがあるんでした。
まだ時間には余裕がありますが、あんまり時間ギリギリに到着するとエアグルーヴさんの機嫌が悪くなってしまうので、急がなくては!
「ヘイ! それじゃあ私は一番乗りデース!」
「……先頭の景色は譲らない……!」
スズカさん、それ持ちネタにしていい感じのノリなんでしたっけ?
ともあれ、さっさと私の前に出てしまった二人が、トレーナー室の扉を開けると──
「──フクキタル、誕生日おめでとう」
そこには、少し照れ臭そうにしながらも両手を後ろ手に回しながら私達を待ち構えているエアグルーヴさんの姿がありました。
それだけじゃありません。彼女が背負うトレーナー室は──私達が出て行った時とは全く様変わりしていました。
折り紙で作った輪っかのチェーン、随所にちりばめられたキラキラのボンボン、それに何より、整頓されたテーブルの上に置かれたおいしそうな御馳走の数々。
それを見た瞬間、謎だったプレゼント購入未遂の旅という名の大ボケ大会の意図が、すんなりと腑に落ちた気がしました。
呆然とタイキさんとスズカさんへ視線をやると、タイキさんは満足げに頷き、スズカさんは恥ずかしそうにそっぽを向いています。
「まさか……エアグルーヴさんが飾り付けをする為の時間稼ぎをする為に、一旦私を外に出す目的で……?」
「そういうことだ。二人とも、よくやったな。──もっとも、このくらいの飾りつけであれば、この半分の時間で対応できたがな」
……うう。
み、皆さん~~っ……!!
「だっ、大好きですーっ!! スズカさんも、タイキさんも、エアグルーヴさんもっ!! あといないけどトレーナーさんもっ!! みんなみんな、大好きです~~~~っ!!!!」
感極まった私は、飛びつくように三人まとめていっぺんに抱き着きました。
今なら、私秘蔵の木彫りのシラオキ様をプレゼントしちゃってもいいくらい……!
「むふん。むふん♪」
──当然、そんなおめでたいテンションでミーティングなんてできるわけもなくて。
というか、私以外のチームの皆さんは全員揃いも揃ってミーティングなんかするつもりは最初からなかったようで。
その日は、トレーナー室で盛大な誕生日パーティを開催したのでした。
おいしいにんじんケーキに、タイキさんとの早撃ち合戦(エアグルーヴさんに流れ弾が当たってしこたま叱られました)、特に皆さんからのプレゼントは、不覚にも涙腺が緩んでしまいました。
ほんと、プレゼントなんて用意してなかったなんて言っておいて、皆さんちゃんと用意してるじゃないですか……。
で、今の私はパーティの帰り。
両手に収まりきらないほどのプレゼントを抱えて、寮に戻っているところなのでした。他の皆さんはパーティでこれでもかというほど散らかしたトレーナー室のお片付けです。私もお手伝いしようと思ったんですが、エアグルーヴさんが『お前は今日の主役なんだ。片づけは私達に任せろ』と凄い笑顔で言っていたので帰ることにしました。
エアグルーヴさん、なんかいつもお掃除のときは楽しそうにしてますよねぇ……。綺麗好きなんでしょうか。トレーナーさんは曖昧に笑ってましたけど。
「はぁ~、よいしょ」
しかし、皆さんちゃんとしたプレゼントを贈ってくれたのは嬉しいんですけど、ちょっとこれ……大きすぎて前が見えませんね。
落とさないように気をつけな、いとぉゎあ!?
歩調を整えようと、ちょっと歩幅を変えたのがいけなかったのでしょうか。
私はそこで何かに躓き、体勢を崩してしまいます。──皆さんからもらったプレゼントが危ない!!
私は咄嗟に身を捻り、もらったプレゼントを庇うようにして地面に肩から倒れ込みました。倒れ込んでから、あ、肩を痛めたらヤバい……と顔を青ざめさせたのですが──幸いにも、倒れ込んだ場所は芝生の上で、特にどこも痛みはありません。
ただ、問題があるとすれば……。
「うう、重…………」
プレゼントの山に圧し潰されて、けっこう苦しいっていうことでしょうか。
……『今日のアナタの運勢は死ぬほど誕生日プレゼントがドバドバ吉!! プレゼントに圧し潰されて死なないように気を付けましょう!』。やっぱり、占いは当たりますね……。
なんとかプレゼントの山から這い出て、私はもらったプレゼントの安全点検をします。せっかくのプレゼント、こんなことで駄目にしちゃったら大凶ですもん。中に柔らかい物や食べ物が入っていないのは確認済みですけど……。
えーと……。
これはタイキさんのミニBBQセット。
こっちはエアグルーヴさんのお掃除お役立ちセット詰め合わせ。
こっちはスズカさんのおいしい水と扇風機(『風水ってこういうことじゃないの?』と言ったのでエアグルーヴさんに死ぬほどツッコミを入れられまくってました。私はおいしい水と扇風機で占いをしてエアグルーヴさんに死ぬほどツッコミを入れられまくりました)。
こっちはトレーナーさんのジューサー。
うん、全部ありますね。
……ってあれ? これ、なんでしょう?
スズカさんのおいしい水の蔭に転がっていた、綺麗にパッケージングされたはがきくらいのサイズの薄い箱を手に取ってみますが……やっぱり覚えがありませんね?
まぁ、誰かがサプライズで入れておいてくれたんでしょうか。おいしい水と扇風機のスズカさんあたりでしょうか。あの人は色々と油断なりませんからね。
落とさないように、制服のポケットにそれをしまいこんだ私は、暗がりのせいもあってそこに仕込まれていたメッセージカードの存在にはついぞ気付きませんでした。
……もしもその場でメッセージカードの内容に気付いていたら、多分絶叫した私はエアグルーヴさんにお叱りを受けていたことでしょう。だって、寮に戻った私はやっぱり絶叫してフジキセキさんにしっかり怒られたんですから。
もしもこれがサプライズなら……きっとその人は、私の喜ぶことを知り尽くした、世界で一番のマチカネフクキタルマニアであることでしょう。正直ドン引きするレベルで。
そこには……こんなことが書いてありました。
『いつもお祈りをありがとう。誕生日おめでとうございます。
私の方こそ、いつもありがとうございます、シラオキ様。
天から、これからも私の頑張りを、見守っていてくださいねぇぇぇぇ~~~~~っ!!!!
| ファンアート紹介 |
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【挿絵表示】 |
【挿絵表示】 |
| 丸焼きどらごんさん(@maruyakidragon)より、スズカさんがトレーナーのクレジットカードを手にしているシーンのファンアートをいただきました!! これもシラオキ様のお導き……! ちなみに「すずか~ん」の方がメインで、「トレーナーさんのクレジットカード」の方が差分だそうです。す、スズカさん……。 |