その名の通り、サマポケの主人公『鷹原羽依里』の誕生日を記念したSSです!
内容はざっくりいうと、『二年ぶりに島へ訪れた羽依里が、その場所、その人であった思い出を思い出しながら、ある場所へと向かう』というものです。
本来なら、もっと早めに投稿したかったのですが、こちらの事情と疲労等でかなり遅れてしまいました。
急いで書いたので、もしかしたら誤字脱字があるかもしれませんが、ぜひ読んでいただけると幸いです!

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眩しい夏を振り返る~鷹原羽依里誕生日記念SS2021~

「もう、二年が経つのか‥‥‥」

 

 ‥‥‥と俺は船を降り、久しぶりに来た『鳥白島』の光景を見ながら、思わずそんな台詞が出た。

 最初は部活の出来事で荒れて、どこか逃げられるような場所へ行きたいと思ったタイミングで、自身の叔母である鏡子さんから届いた手紙がこの島へ来るきっかけだった。亡くなった祖母の遺品整理を名目に、逃げるようにこの島へ来た。そして、それが新しい出会いと自分と向き合うきっかけにもなった。そのおかげで俺は部活の仲間と家族とのわだかまりも解け、そして初めて女の子と恋をした。

 

 *****

『こんな夜中だから暗いし、危ないと思うんだ。だから‥‥‥』

 

『‥‥‥こい』

 

『え?‥‥‥こい?』

 

『どすこい!!』

 

『‥‥‥ぐっ!!』

 

『‥‥‥』

 

 鳴瀬しろは。彼女との出会いは、まさに最悪な出会いから始まりだった。人とあまり接したことのないその子の性格上、最初はなかなか仲良くいかなかった。けど、何度か接していくうちに彼女の本来の優しさ、そして他人とあまり関わらなくなった本当の事情を知って‥‥‥俺はそんな彼女の力になりたいと思った。そして、俺としろはは恋人になったんだ。

 

 *****

 

 また夏に、といっておきながら自分が直面していた問題解決に奔走しすぎて、結局この日になってしまった。彼女は‥‥‥うん、きっと怒ってる。今日まで手紙でやりとりするだけで、デートとかそういったことを一切していないから、下手をすれば愛想を尽かされている可能性が高い。最近の手紙の内容も『いつ会えるのか?』といったことぐらいしかなかったから‥‥‥。出来る限り早く会いたいが、でもまず俺が今持っている手紙の手順に従わないと‥‥‥。

 手紙の内容は、『まず駄菓子屋で、これと同じ内容の手紙を受け取ること。手紙の内容を守らないと、私‥‥‥今度こそ愛想が尽いてしまうかも』というものだ。

 

「改めて見るとなんか、ある種の脅迫状だよなこれ」

 

 そうぶつぶつ呟くと、近くに駄菓子屋が見えてきた。最初に来た時と様相は何も変わっていない。

 

「いらっしゃい」

「こんにちは。お久しぶりです」

「お、久しぶりだねぇ~」

 

 そういって笑顔で出迎えてくれたのは、ここの駄菓子屋のお婆さん。今もずっと、この駄菓子屋で商売しているみたいだ。良かった。相変わらず元気そうだ。

 

「今日は何を買うんかね?」

「久しぶりに、かき氷で‥‥‥。ってまだ五月だからやってないですよね」

「いいや、あるよ。もう暑くなってきたでよ‥‥‥早めに始めたんよ」

 

 確かに、今年の五月は暑くなるのが早かった。去年でも、ここまで早く暑さがくることは無かった記憶がある。

 

「味は何にするんだい?」

 

 氷を取り出したお婆さんが尋ねる。

 

「ブルーハワイで」

「味はどれも同じだけどね」

 

 ああ‥‥‥その台詞。最初に来た時にも言ってたな。どのシロップも味は同じだっていうのを知ったのも、この駄菓子屋のおかげだ。まあ、正直あまり知りたくなかったけど‥‥‥。

 

「練乳は?」

「無しで」

「あいよ。百万円」

「百円で」

「九十九万九千九百円足りんよ」

 

 この台詞もあったな‥‥‥。この駄菓子屋の鉄板ネタだった気がする。それで‥‥‥。

 

 *****

 それは、俺が駄菓子屋でバイトをしていたとある女の子にかき氷をぶつけてしまったことが原因だった。というのも、その子が無理矢理練乳のチューブを押し出そうとしたからだ。

 先端が固まっているのに無理にやるんだから、そうなるのは分かりきっていた事なのに。その時飛び出た練乳にその子はかかってしまい、その様子を見ていた俺は、気が動転して自分が持ってたかき氷をその子に向かって投げつけてしまった。その子の名は空門蒼。かき氷を投げられてご立腹だった彼女は、目には目をとハンムラビ法典に乗っ取って、自分も彼女から投げたかき氷を被ろうとしたんだが‥‥‥。

 

『ひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~』

『あっははははは~』

『ってきゃあああああ~なんで?なんで?』

『ひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~目が~』

『いやぁぁぁぁぁぁ~』

 

 あまりにも冷たすぎて投げ返してしまい、その流れでかき氷を掛け合う遊びになってしまった。

 

 *****

 

 しばらくして、お婆さんがブルーハワイ味のシロップがかかったかき氷を両手で持ってやって来た。

 

「ありがとうございます」

 

 俺がスプーンを持って口にかき氷を運ぼうとした時、お婆さんが「あっ!」と突然声を上げた。

 

「忘れておった。アンタが来た時にこれ渡しておいてくれと言われたんだったね」

「俺にですか?」

「そうそう。アンタ、あの手紙持っとるかい?」

 

 俺はすぐにカバンからその手紙を取り出し、お婆さんに見せる。それを見たお婆さんが、エプロンのポケットから俺が持ってる手紙と同じ色をした手紙を取り出した。

 

「そう、アンタが来たらこの手紙を渡してくれって、鳴瀬の娘さんから」

「え?しろはから?」

「そうだよ」

 

 俺はお婆さんからその手紙を受け取り、紙を広げて中身を読んだ。

 

「ごめん!ちょっと急いで出ます」

「ほっ?」

 

 お婆さんが何事かと首を傾げているのを気にせず、急いでかき氷を食べて、駄菓子屋を後にした。急いで食べたから頭がキーンと痛みだしたが、なんとかこらえて急いである『目的地』へ行った。

 かなりきつくなっていたので、海沿いの道の途中で走るのをやめた。ふと、目の前の道を見てある出来事が思い浮かぶ‥‥‥。ここでも、思い出があったな。

 

 *****

 蘇ったのは、この島にあるとされる海賊船を目指して冒険をする少女に、ここで出会った思い出だ。その人物は久島鴎。鴎はこの島の人間ではないが、俺よりいくらか島と縁があった。彼女は、俺と会うのは初めてなのにいきなり『羽依里』と呼んでいた。

 

『このスーツケース毎、私をお願い』

『はぁ‥‥‥分かったよ』

『お手間をかけます』

 

『ねぇ?そろそろ疲れてきたんだけど』

『もうちょっと!そろそろコツが掴みそうなんだ』

『ひ~ん』

 

 いきなり、馴れ馴れしく声をかけてきたから戸惑ったけど、段々それも気にせず、いつの間にか早く彼女と親しくなっていた。今も彼女はこの島に来ているのだろうか?

 

 *****

 

 しばらくして、灯台に辿り着いた。さっきの手紙によれば、灯台の扉の前にぬいぐるみと手紙がセットで置いてあるらしいが‥‥‥。

 

「あった!」

 

 すぐさま、俺は扉の前にあった茶色のクマのぬいぐるみと手紙を手に取った。手紙の内容は、

 

『加藤さんのところへ行ってください。そこで鏡子さんが待っています。by紬』

 

 どうやら紬が書いた手紙だった。紬もこの島にいるということだよな?

 

 *****

 そう、その紬と初めて出会ったのはこの灯台だった。灯台の上で、のんびり鼻歌を歌っているのを俺が偶然見かけたのだ。

 

『何をしてるの?』

『探し物で~す』

『探し物って?』

『自分で~す』

 

 あの時、自分と同じ心境の人と出会えたと俺は心底喜んでいた。良かった、仲間がいたって思った。だけど、それからしばらくあの子を見かけることは無かった。願わくは、あの子とも友達になりたかったな。

 

 *****

 

 時刻はもう昼を過ぎていた。やっとのことで加藤家に辿り着く。いいタイミングで玄関から、鏡子さんが出てきた。

 

「あ、羽依里くん」

「お久しぶりです。鏡子さん。あ‥‥‥折角の再会で悪いですけど」

「分かってるわ。これのことでしょ?はい、どうぞ」

 

 そういって、鏡子さんは新たな手紙を俺に渡す。話が早くて助かる。あまり、時間をかけてはいられなさそうだし‥‥‥。あまりのんびりしていると、日が暮れる。俺は、その受け取った手紙を開ける。

 

『放送塔で、ハイドログラディエーター改を。秘密基地にはピンポン玉とラケットを持って、空門の神域へ来ること』

 

 なるほど‥‥‥。そこに行けばいいんだな。どの場所も行ったことがある場所だから、問題ない。俺は、改めて鏡子さんに一礼して、まず放送塔のある役所へ向かった。

 

 *****

 放送塔では、いつものみきこと野村美希という人物が、島の風紀と治安を守る名目で見張りに立っていた。島にはよくところ構わず半裸になる奴がいたため、そいつとの攻防をよく目にしていた。

 

『そこの露出狂。海水浴場以外で服を脱ぐことは禁止されているとなぜ分からん』

『げっ!!』

『そこまで言っても分からないなら、もはや痛みをもって思い知らさなければなぁ?』

『ひぃ‥‥‥』

『今度こそ、生まれ変わったらちゃんと服を着てから出直せ』

 

 バシュッバシュッ

 

『ぎゃあああああああああ~!!!!!』

 

 *****

 

 俺はのみきの愛用している水鉄砲、『ハイドログラディエーター改』を片手に秘密基地へ山へ入っていった。まだ、蝉の声は聞こえないが、虫か何かが葉にあたって擦れる音とが、そんな色んな音とかが聞こえていた。ここではみんなと色々したな‥‥‥。

 

 *****

 秘密基地は、基本島の少年たちの遊び場だったり、とある男の特訓場だったりしていた。ある時なんか、卓球用のテーブルが壊れて、皆で運んだこともあったな‥‥‥。あれは、相当苦労した。

 

『うわ!?なにこれ重っ!!』

『これはキツイな』

『みんな、足元に気をつけろよ』

『それじゃあ‥‥‥せーのっ!』

 

 *****

 

「よし、ラケットとピンポン玉をゲット!!」

 

 秘密基地を出て、俺は急いで目的地へ向かう。もうすぐだ。もうすぐみんなに会える。そして、しろはもそこで待っている。ふと、目の前に開けた場所が現れる。ここが『空門の神域』本来は、限られた人間にしか立ち入ることは許されない禁忌の領域。でも、そこにみんなが本当に待っているのなら、ちゃんと偉い人に許可を取ってやっているのだろう。辺りを見回しても、人一人の姿は見えない。どこかで隠れているのだろうか?

 

「ふぅ‥‥‥」

 

 俺は一度深呼吸をして、足を踏み入れる。その瞬間、俺を囲うように、あちこちで草むらがガサガサと揺れはじめる。思わず身を屈めた。そして、草むらから何かが飛び出し、クラッカーと思しきものが鳴り響く。

 

「「「「「羽依里(さん)。誕生日おめでとう(ございます)」」」」」

 

 現れたのは、見慣れた姿たち。そう、しろはたち島の少年団たちだ。

 

「もう、遅いよ羽依里」

 

 第一声は、鴎からだった。

 

「まさか、迷子にでもなっているのではと思ったが‥‥‥」

「その心配はなかったな」

「久しぶり!羽依里」

 

 続いて、のみきと天善、蒼がそれぞれ俺に話しかけてくる。

 

「ああ‥‥‥待たせたな。それと‥‥‥誕生日って言ってたけど」

 

 俺がきょとんとした表情で話すと、みんな一斉に呆れた表情を浮かべていた。

 

「そりゃ、お前の誕生日だろう。何言ってんだ?」

「そうでなきゃ、わざわざこんなサプライズを貴方に仕掛けないでしょう?」

「良一、静久さん」

 

 そして、後ろには、

 

「タカハラさん、おひさしぶりです♪」

「紬、久しぶりだな」

「はい!」

 

 満面な笑みでダブルピースをする紬がいた。

 

「みんな、俺のためにありがとう」

「いや、この企画を考えたのはしろはだ」

「え?」

 

 天善からの一言で、俺はもう一人いるはずの当人を探した。そして、当人は俺のすぐ後ろに‥‥‥。

 

「しろは‥‥‥」

「どすこい」

「んな!?」

 

 久しぶりに出会った愛しい人からかけられた言葉は、この島での一番キツい方言。その一言で俺は見事に膝から崩れ落ちた。しろはは、そんな俺の元に寄っていく。まあ、ここまで待たせてしまったから、言われるのも当然か‥‥‥。

 

「羽依里」

「はい」

 

 名前を呼ばれて、俺は彼女の方へ顔を上げる。彼女は薄っすら涙を浮かべていた。

 

「本当に会いたかった」

「うん、待たせてごめん」

「許さない」

「許さなくてもいい。でも、これからはしろはの傍にいる」

「ああ‥‥‥勿論。今度こそ、大丈夫だから」

「ありがとう‥‥‥羽依里」

 

 そう言って、俺たちは周りにいる人間なんか気にせず、ギュッと抱きしめていた。そこから、パチパチと周りから拍手が送られた。

 

 

 

 

「よし、私の相棒が戻ってきたところで‥‥‥良一、お前はいつまで裸でいるつもりだ?」

 

 のみきが戻ってきた自身の相棒を手に取ると、即座に殺気を込めて隣にいる良一を睨みつける。

 

「なんでだよ!?今日だけはいいって言ってたじゃねぇかよ!!」

「私は、ハイドロが戻ってくるまでは、特別に許そうと言っただけだ。早く服を着ろ!」

「あっはい、すいません」

 

 一方、俺は持っていたぬいぐるみを、持ち主に返していた。

 

「案内役として、この子を手紙と一緒に置いておいたのですが、どうでしたか?」

「ああ‥‥‥優秀なガイドさんだったよ」

「それは良かったです」

 

 そんな会話をしていると、遠くから蒼がカメラを持ってきた。

 

「これはまた、見ないタイプだな」

「これは最新のタイプで、自動で撮れるやつなのよ」

 

 のみきが興味深そうに尋ねると、蒼は嬉しそうにそう答えた。

 

「で、どうするんだ?それ」

「勿論、みんなで記念写真よ♪」

「何と言っても、特別な日だからね」

 

 そして、蒼の指示でみんな並び、蒼が写真を自動で撮れるようセットする。

 

「それじゃあ、みんな撮るよ。はい、チーズ!!」

 

 

 *****

 あれから数年後、俺としろはは結婚した。みんな『やっとか』とそれぞれ口々にそう話した。今、俺は自分の部屋で、当時みんなで撮った写真を眺めていた。

 

「何してるの?」

 

 扉から、しろはが入ってきた。

 

「ああ‥‥‥あの時の写真を眺めているんだよ」

「あ、懐かしい。ちょうど羽依里が二十歳になった時のだよね?」

「ああ‥‥‥」

 

 俺は、彼女の方へ振り返る。今、彼女のお腹の中には新たな命が宿っている。俺としろはによって結ばれた、俺たちの大事な家族の一人が‥‥‥。

 

「いずれこの子も、私たちと同じように色んな人と出会って、恋人とかも作るのかな?」

「かもな。そうなってくれると嬉しい」

 

 俺たちは願う。いずれ生まれてくる子にも、俺たちが体験した”眩しい夏”の思い出が出来ますようにと‥‥‥。

 

~FIN~


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