天与呪縛はギフテッド! 作:天与呪縛って凄い。
ここは、東京都立呪術高等専門学校の広大な敷地の中の一部。校庭、又は訓練場に当たる部分であろうか。釘崎野薔薇がパンダに投げ飛ばされていたりした場所だ。
そこで自分は、
「へえ⋯⋯その子が悟の言っていた天与呪縛の子かい?」
「うん、そう。ほら、静、コイツが傑」
知ってる。
闇堕ちして志半ばで果てた挙句、黒幕に身体乗っ取られてる人だ。
五条悟が自らと同じ制服姿の特徴的な前髪をした優男
取り敢えず、ぺこりと礼をして様子見することにした。
「おぉ、ちゃんと挨拶出来て偉いね。⋯⋯悟そっくりなのに⋯⋯」
「聞こえてるからな?」
「聞かせてるんだ」
おっと、一触即発。
この二人、仲めちゃくちゃ良いのに簡単に喧嘩するし、一度ぶつかり合うと絶対にタダじゃ済まないからなぁ。術式的に。漫画では語られていないだけで、絶対に山の一つや二つ更地にしてるだろ。
巻き込まれたくないので、正直言って今すぐにでもここから離れたいのだが。
しかし、その一触即発の空気も一瞬にして霧散した。
多分、この場に第三者であり幼女である自分がいるからであろう。そう思っておく。
「それで、私に何をして欲しいんだい?」
「静の呪霊、食べてくんない?」
「ああ、例の⋯⋯」
例の、ということは自分に憑いているのか、本当に生成されているのか分からないアレのことを夏油傑は知っているということなのだろうか。普通に五条悟に聞いたのか。
というか、六眼持ちのはずなのにどういうわけか自分の目では何一つわからないアレは、本当に呪霊なのかも定かでは無かったのだが、五条悟的にはアレは呪霊らしい。
ということで、身から出た呪霊と呼ぼう。
「よし、静。吐いて良いぞ」
「⋯⋯分かった」
「悟、もう少し言葉を選びなさい。君も二つ返事で頷くんじゃない」
自分もその言い方はどうかと思う。流石はデリカシーをかなぐり捨てた男。
文句のひとつも言ってやりたいところである。
まあ、この身体は余計なこととか一言も喋れないコミュ障の呪いを抱えたスマートボディなので、ここは肯定することしか出来ないのだが。
仕方が無いので五条悟への文句も吐き出すつもりで、はぁ、と軽くため息を吐いた。
本当に、ちょっと紗夜丸の仕返しでもしてやろうと軽い気持ちだったのだ。
「っ!?」
その瞬間、
□
『痛イ⋯⋯ヒヒャッ⋯⋯ヒヒヒヒッ⋯⋯』
どろり。
悍ましさを伴って、空気を黒く淀ませながらソレは這い出た。
容貌こそ、蒼黒い焔の塊である。
だが、その中心にひとつ、ギョロリと大きな血走った目玉。呪詛と哄笑とを垂れ流す大きな魔物の口。そこに在るだけで、世界を魔に塗り替えるような存在の圧力。
それらが、その人魂のようなナニカを確かに
『痛イ、苦シイ⋯⋯何デ、私ダケ⋯⋯ヒヒヒッ』
「っ、悟、その子を連れて逃げろ!」
「言われなくてもッ!」
最初、何が起きたのか分からなかった。
少なくとも、今、五条静を抱えてその場を離脱しようとしている五条悟にとっては、あれが本当にその腕に抱える少女から解き放たれたモノなのかと信じられなかった。
「クソっ、前までは二級程度だったはず⋯⋯!」
しかし、先程この世に顕現したアレは、まず間違いなく
今の夏油傑の手持ち的、実力的には荷が重い。
そして、それはともすれば自分も含めである。
あの呪霊と五条静との間にはパスのような物が繋がっており、ほぼ無限に近い彼女の呪力をエネルギー源としている。欠損しようと瞬く間に再生する。あの呪霊がどれだけの大技を繰り出そうとも、エネルギー切れなどというものは無い。
あの呪霊と戦っても、直接的に殺される可能性は低い。
だが、六眼を持つ五条悟の呪力燃費を以てしても、先に力尽きるのは五条悟だろう。
アレを殺し切るには一度で消し飛ばさなければならないのだ。
五条悟に、それだけの火力は無い。
五条静に関わる呪力量は、その内心の憎しみ、悲しみ、苦しみに起因するということを、この数年で五条悟は理解していた。
たった一年だ。
たったの一年で、彼女の内に巣食う憎しみはここまで肥大化していたというのか。
普段から、並の呪術師の平均的な呪力保有量を上回る呪力の漏出。
それすらもセーブしていたと言わんばかりの、もはや放出にも等しい現在の出量。
自分の見通しの甘さに苛立ちを覚えるが、今はそれよりもやるべき事がある。
「静! アレを戻せるか!?」
「⋯⋯うん」
肯定に安堵の息を漏らしながら、自分の不甲斐なさに歯噛みする思いを抱いた。
頼む、そう言おうとしたその時である。
何かが、二人の横を通り過ぎて行った。
「ぐぁぁっ!」
「傑ッ!?」
高専の建物の壁を何層も突き破りながら現れたのは夏油傑。
突然の出来事に驚くのも束の間、上から飛来したナニカが砂埃を上げながら石畳の上に着地する。
『還セ⋯⋯還セェエ!!! ヒヒャヒャヒャッ!』
そう言って手を伸ばし、五条悟の手から五条静を奪い取ろうとする。
その手を蹴り飛ばして距離を取ると、五条悟の脇から抜け出した五条静がその呪霊に抱き着いた。
何を、そう問い掛けようとして五条悟は目の前で起きた事象に得心する。
「⋯⋯ごめんなさい」
『ヒ、メ⋯⋯ヒヒッ⋯⋯』
五条静の頭を慈しむように撫でながら、その身を崩壊させてゆく呪霊。
最後の焔が弾けると、魔の空気は完全に消え失せる。
その様子を見ながら、苦笑ひとつ、ふらつきながら夏油傑は五条悟の隣に立った。
「⋯⋯とんだハズレくじを引かされたものだね」
「悪い」
「今度なんか奢れ」
「応」
それくらいは吝かではない。
今回の件に関しては、さしもの五条悟も罪悪感を抱くに足る事であった。
犠牲になった四体の一級呪霊のことを惜しみながら、夏油傑は伝えておくべきことを思い出し、五条悟の方へと向き直って口を開く。
「後、あの呪霊の術式、恐らくだけど分かったよ」
「っ! 本当か!?「おい」あいたっ!」
その真相を問い質そうと詰め寄った五条悟の頭に拳骨が落ちた。
五条悟は後ろできっと鬼のような形相で立ち塞がる恩師の顔を思い浮かべ、また、それを見ている夏油傑はその怒りの度合いを図り知り、両者共これからの説教に辟易とした思いを抱くのであった。
それを見ながら、五条静は内心、
感想、アドバイス、原作設定との相違の指摘などなどください!