倦怠期の夫婦みたいになっちまった幻影の魔女と淫魔の王   作:京谷ぜんきまる

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淫魔王は女の心が分からない

 聖修学園地下の淫魔宮殿内にあるホームシアターは一度、荒ぶった淫魔王の力で半壊したがすぐに修繕されて利用可能となっていた。

 

 魔界九貴族の一人・・・・・・幻夢卿こと淫魔王カーマ・デヴァと少年の姿をしたエドウィン・ブラックはそこでまた、某超有名なSF映画の、今度はアニメシリーズを視聴していた。

 例によって数日間ぶっ通しの視聴である。

 

「なるほどな・・・・・・いささかアナキン・スカイウォーカーのダークサイド転向が急展開過ぎるとEP3を観ていた時は思ったものだが、この3Dアニメシリーズを見た後では納得できる。ジェダイ騎士団の組織としての硬直ぶりは実に興味深い」

 

 そう言いながら、淫魔王はまじめくさった顔で両手を組んだ。

 

「まあ、このクローン戦争という壮大な茶番劇に付き合っちゃった時点でジェダイ・オーダーの破滅は免れなかっただろうね。全てはパルパティーンの掌の上だったんだから。長期計略とはかくありたいもんだね・・・・・・結構危ない橋を渡ってた気もするけど」

 

 そう言いながら酒をあおるブラック。

 

「だが・・・・・・一つ解せぬことがある」

「ん? なに?」

「アソーカ・タノのことだ」

 

 アソーカ・タノ。

 映画シリーズしか知らぬ者には聞き覚えの無い名前だろうが、3Dアニメ『クローン・ウォ-ズ』においては実質、主人公ともいえる女ジェダイである。

 赤い肌に二本角のような白い感覚器官が特徴のトグルータという種族の少女でEP2からEP3までの中間期にアナキン・スカイウォーカーの弟子(パダワン)だった彼女の作中での活躍はめざましく、勝ち気で無鉄砲な性格は女性版アナキンともいえる存在だった。

 

 彼女をアナキンの弟子に割り当てたのはあのジェダイ・グランドマスター・ヨーダだ。

 

 よく似ていながらも楽観的な性格のアソーカを弟子に持つことで、アナキンの成長を促そうとしたのだ。ジェダイの師弟関係はいずれ終わりが来る。その時にアナキンが執着を捨てる教訓を得られるように・・・・・・と。

 

 しかし実際はそうはならなかった。

 

 クローン戦争もいよいよ煮詰まってきた頃、アソーカはジェダイ聖堂の爆破テロと殺人の容疑にかけられた。

 

“アソーカ・タノは銀河共和国とジェダイの教義に背き、罪を犯した”

 

 それを殆どのジェダイマスターが疑わなかったことに彼女は衝撃を受け、汚名を晴らすために逃亡するのだが・・・・・・。

 

 結果としてアナキンの活躍によって無実は証明されたものの、ジェダイへの信頼を失った彼女はジェダイ・オーダーに背を向け、アナキンの元を去ってしまうのだ。

 この別離は耐えがたいものとしてアナキンの心に刻まれ、またジェダイ評議会への不信を募らせるきっかけともなる。

 

 

 

「アソーカがどうかしたの?」

「なぜアナキンはアソーカを引き留めなかったのだ」

「いやだってそれは――」

 

「本当に手放したくないなら手籠めにしてでも側に置きたい・・・・・・いや置くべきだろうが」 

 

「おいっ!?」

 

 淫魔王の発言に珍しくブラックは動揺し、驚き混じりの声をあげた。

 

「ちゃんと観てたのか? アナキンはパドメ一筋だったろう!!?? 彼にとってアソーカは妹のような存在で――」

 

「で?」

「は?」

妹のような存在だから何の問題があるのだ?

 

「ああそうだったわ!! 目の前に居る色黒イケメンは人間じゃ無かったわ! 淫魔だったわ! しかも淫魔の王!」

 

 ヒステリックなブラックに淫魔王は思わず心の中でほくそ笑んだ。

 これほど動揺している始祖吸血鬼の姿などそうそう拝めるものではない。

 

「何を今さら」

「いいか!? どんなカップリングを脳内設定するのもお前の勝手だが私の前で口にするんじゃない! 耳が穢れる!」

「大げさな・・・・・・そなただってこれまで散々、鬼畜の所行を為してきたくせに」

「今回の世界じゃやらかしてないから! 大体君は、人間の、女の心を理解したいんじゃ無かったのか!? ひとっっっっつも学んでないじゃないか! 頭ん中ヤることだけかッ」

「それ以外に何があるというのだ。“試しなどいらん。やるか、やらぬかだ”とヨーダも言っていたではないか」

「やかましい!」

 

「あら、ダメよ黒斗くん。我らが王に女心なんて分かるはずないんだから♪」

 

「不知火? いつからそこに」

「シーズン7が始まった辺りからいたわよ?(シーズン7だけまだ観てなかったのよね・・・・・・)」

 

 不知火の思念をストーキングすることを止めていた淫魔王も黒斗ことエドウィン・ブラックも、彼女の気配を察知できなかったことに大いに驚いた。

 

「それはどうかな? 余ほど“女”を理解している男はいないと思うが」

「・・・・・・本気で言ってるのかい? それ」

「多分本気で言ってるわよ彼・・・・・・」

「あのね? 魔力で強制的に洗脳したり官能を支配して堕とすのと、心を理解するのとは全然違うことだよ?」

「・・・・・・・・・・・・違うのか」

「ほらぁ! 全然分かってないじゃないか」

「はぁ」

 

 呆れ顔のブラックと不知火に押され、淫魔王は反論した。

 

「いやまて。余にとって魔力を使わずとも女を御すなど造作も無いこと。ならば理解することもまた可能なはずだ」

「なんなのその屁理屈」

「口ではなんとでも言えるんだよなぁ・・・・・・」

「ぐぬぬ・・・・・・ならばどうすればいいのだっ。これは愛の概念と同じで、証明のしようが無いではないかッッ」

「あら、そんなことはないわよ。たとえば困っている女性がいて、その女性の悩みを理解し、救うことが出来れば心を理解できたと言えるんじゃないかしら」

「ほう? 面白いではないか。余は淫魔の王。すべての女を支配する者ぞ。救うことだって容易いわ」

 

 淫魔王の大言に不知火とブラックは顔を見合わせた。

 そして、まるで示し合わせたかのように同時に淫魔王を見つめる。

 

「・・・・・・・・・・・・言ったな?」

「・・・・・・・・・・・・言ったわね?」

「・・・・・・・・・・・・ゑ?」

 

 なにやら乗せられてしまったと気づいた淫魔王だったが“時すでに遅し”である。

 

 

 この後、忍の里・五車町にある対魔忍養成学校『五車学園』の新任カウンセラーとして黒井竜司という名の男が着任することとなった。

 

 

 魔力を使わない。

 

 女に手を出さない。

 

 R18カテに該当することをやらかさない。

 

 この三つの縛り条件で『対魔忍の女性をカウンセリングで救う』という淫魔にとって地獄のようなゲームが開始されるのであった。




多分、初日でアウトになるんやろなぁ・・・・・・。

続き書くかどうか一切不明である。

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