倦怠期の夫婦みたいになっちまった幻影の魔女と淫魔の王   作:京谷ぜんきまる

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淫魔王「パルパルっぽい台詞回し気持ちよすぎだろ!」

エドブラ・不知火「」


お前の激しい性欲を感じる

“お前の激しい性欲を感じるぅ・・・・・・ッ”

 

“そ、そんな・・・・・・嘘、嘘です”

 

“お前こそ、自分を偽っておる。性欲はそもそも全ての動物に備わっている最も原初的な本能の一つだ。そしてお前達人間はさらに性欲を『色欲』へと進化させた。呆れ果てるほどの性快楽への渇望・・・・・・実に素晴らしい! しかもそなたは敵組織の虜囚となり調教を受け、淫乱の気質を開花させられた。”

 

“で、でも、治療を受けました ”

 

“肉体は治療されたかもしれん。媚薬も抜けたことだろう。だが心はどうか。分かっているのであろう。対魔忍の女よ。淫らな衝動が常にくすぶっているのをッ。さあ、己を解き放つのだ。お前に必要な物は余が持っている――」

 

 

「だめみたいね・・・・・・」

「初っぱなからゲームのルールを守る気無いのはさすがに興ざめ・・・・・・」

 

 盗聴器で黒井竜司こと淫魔王・カーマデヴァの診察室の音声を拾っていた水城不知火と黒斗はため息をつきながらイヤホンを外し、突入準備をするのだった。

 

 

 五車学園の心理カウンセラーは重要な役職だ。

 学園裏の地下には対魔忍本部もあるため、カウンセリングの対象は五車学生のみならず現役の対魔忍全般にわたる。

 五車学園は対魔忍を育成するための施設だが、政府による対魔忍の監視機関としての役割も兼ねているため、長期間現役を遠ざかっていた対魔忍達が復帰する前のメンタルチェックなども行うので重要かつ激務でもある。

 

 任務中の負傷や戦闘ストレス障害、虜囚の身になった時に受けた洗脳・調教からの治療と療養の後、心身共に健常かどうか。任務に復帰できるかの最終診断を下すのだ。

 

 繰り返しになるが重要な仕事なのである。

 

 

 バァン!

 勢いよく五車学園・カウンセリング室のドアが開けられ、不知火が現れた。

 その後ろには黒斗が控えている。

 

「そこまでよ!」

 

「まったく黒井先生、あなたにはガッカリ・・・・・・ん?」

 

 

 室内には女性対魔忍が一人いた。見るからにモブっぽい忍装束を着ている。

 顔も忍頭巾と鉢金をキッチリ装備し、顔を隠しているが、それでもプライバシーが守られているはずのカウンセリングでの闖入者二人に、顔を真っ赤にしているのが不知火達には見て取れた。

 

 対面の黒井竜司が差し出していたアイテムをさっと奪うように受け取ると、診断を受けていたくノ一は不知火と黒斗の間を猛スピードで駆け抜け、一目散に退室していった。

 

「そなたたち、さすがに無作法であろう・・・・・・」

 

 やや憮然とした表情で黒井こと淫魔王は立ち上がった。

 

「・・・・・・えっと」

「ねえ君、さっきの女性に渡していたのって・・・・」

 

「避妊具と薬だ。ゲームは続行中だぞ。今、まさしく余は一人の女を救ってやった。どうだ不知火よ」

 

「えぇ・・・・・・」

「真面目に仕事してたのか。それはそれでちょっとつまらない――っていうか、言い方が不穏すぎるんだよ。相手をダークサイドに引きこもうとするような台詞回しやめろ!」

 

「なぜだ。性交は陰と陽二つの側面をもっている。先ほどの女は明らかに陰の部分を否定しようとしていた。自らの淫ら心をな。それでは精神のバランスを崩し、愛を否定したジェダイのように身の破滅を招きかねないではないか。清濁併せ呑み、調和を保つことが肝要なのだ。淫魔の長として色欲地獄に堕ちないための極意を教えるのは甚だ遺憾だがゲームだからな・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 何か言い返そうとして黒斗は結局止め、くノ一が腰掛けていたソファーに座る。

 

「で、さっきの彼女に避妊グッズを渡してどういうアドバイスをしたの?」

 

 腕組みして聞く不知火に淫魔王はこともなげに言った。

 

「性欲を解消するように五車内の施設を使えと言っただけだ。だが出来ることなら体だけでなく精神の結び付きもある正式な“つがい”としてのまぐわいが一番だとも助言しておいたので、今頃はマッチングアプリでも活用しているのではないか」

 

「施設? マ、マッチングアプリ?」

 

「あれ? 知らないのかいレディ。いまの対魔忍達には少子化対策や結婚推奨のだめの様々な設備やシステムが用意されているんだよ。気軽に()()()()()()()()()()()やVRMMOルームとか、対魔忍専用マッチングアプリ『対魔忍でも恋がしたい』とかね」

 

「不知火は長らく五車町不在であるから知らぬのも無理からぬことだ」

 

 しれっと言う淫魔王に不知火は口角を引き攣らせた。

 

(誰 の せ い だ と 思 っ て ん の よ)

 

「・・・・・・・・・・・・なるほど。せっかく五車に来たんだからそのジムやVRMMOルームってのに寄ってみようかしら」

 

「そんな必要は無いだろう不知火。ムラムラしたなら余が――」

 

「あなたはゲームの途中でしょうが」

「いやまて、もう女を一人救ったではないか!?」

 

「一人じゃまぐれかも知れないでしょ? それにさっきの彼女が本当に悩みを解消できたか経過を見る必要もあるし・・・・・・そうねえ、その間あと百人ぐらいはカウンセリングしてもらわないと」

 

「百!?? ぐぬぬ・・・・・・分かった。だが余がゲームに勝った暁には一緒に宮殿に帰るのだぞ!」

 

(そこはキレて強引に犯したりはしないんだなぁ)

 

 淫魔王と不知火を交互に見ながら、肩をすくめる黒斗だった。

 

 

 黒井竜司のカウンセリングは五車内で評判になった。

 成果も上々で、黒井の薬を使用しない治療を求める対魔忍達は日に日に増していった。

 

 ゲームの目標も軽く達成できそうな勢いだった。

 

 ただ、若手の中では最強と目される対魔忍剣士、秋山凜子が潜入任務中に体を汚された(任務は成功)ことでカウンセリングを受けに来た時は、淫魔としての欲望衝動が不知火の時を除けば過去最大級に膨れあがり、ほぼ襲いかけた――いや襲ったのだが、R18モードになることだけはギリギリ免れ、事なきを得る――などという一幕もあったが、淫魔王のカウンセリングは順調だった。

 

 

 

 ――だが一人のくノ一の業、その人間の心の闇に触れ、淫魔王が鬱になりかける事態になったことがあった・・・・・・。

 




これはポリコレ批判になりそうな予感がします(適当)

次話更新予定は未定。

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