紫に連れられて、スキマ?というよく分からない気持ち悪い空間に入っていた。
「んだよ、この気持ちわりぃ空間…。」
「あら、お気に召さなかったかしら?それよりも幻想郷について説明するわね。」
曰く、妖怪と人間、その他多数の種族が共存する
曰く、常識が非常識に非常識が常識になる。
曰く、幻想郷は全てを受け入れる。
「これらが概要ね。何か質問はあるかしら?」
「妖怪ってのは?」
「貴方も見たでしょ?あの研究所にいたアレよ。」
「おいおい…あんな理性の欠片も無い奴らと共存してんのかよお前ら。」
早くも幻想郷に行くと言ってしまったことを後悔してる俺がいるぞ?
「安心して頂戴。ちゃんと知性もある妖怪を幻想郷に招き入れてるわ。ただ生まれ落ちたばかりの妖怪もいるから全員が全員ってわけじゃないわよ。」
なるほど…。
「次、常識云々のヤツはなんだ?意味わかんねぇんだけど。」
「簡単に言えば文化の違いよ。そう難しく捕らえなくて良いわ。例を挙げるとすれば、能力がある事かしら?」
「能力だぁ?」
「そう。今いるこの空間も能力によって生み出されているの。」
確かにそりゃ非常識だわ。
「最後の質問だ。幻想郷で起きてしまった殺しについて。」
「原則禁止よ。妖怪と人間の地力の差を埋めるために弾幕ルールって言うものがあるの。それによって共存を可能としてるわ。モノ好きは殴り合いを申し込んだりするけどお互いの了承が無い限り、禁止よ。」
「それによってどちらかが死んでしまった場合は?」
「状況にもよるけど、基本お咎め無し。そもそも面倒が嫌いな妖怪が多いから手加減してくれるのよ。」
ほぉ〜。俺の中の妖怪のイメージが変わったわ。自己中、傲慢、怠惰、厚顔無恥、そんな感じだったが、意外と考えて行動してんだな。
「さて、色々話しちゃったけど理解出来たかしら?」
「あぁ、大体な。」
「よろしい。それじゃあ後のことは向こうに任せてるから♪」
「は?向こうって?」
「行ってらっしゃい♪」
と言われた瞬間足元に穴が空いた。
「あら、つまんない反応。叫ぶくらいしてくれてもいいのに。」
自分のイタズラが成功しなかった時の子供の表情をする紫。
さて、どうするか。
「あのクソアマ今度会ったら殺す。」
今の自分の状況を整理しよう。落ちている。その一言に尽きる。そんな事を考えている間にも地面が迫って来ている。
「ったく…。」
が、何事も無かったかのようにフワッと地面に着地する灰。
「んで、ココはどこだぁ?」
「博麗神社だけど…アンタ何者?」
札とお祓い棒を持つ紅白の巫女服を纏った女が居た。
「ハハハッ。色無灰だ。お前は?」
とりあえず話は通じると分かったのか少し警戒を解く。
「博麗霊夢よ。ここの神社の巫女をやってるの。それで?アンタは何者?」
鋭い目付きで先程と同じ質問をする。
「あぁ?」
「別に空から落ちてきたとか、服が奇抜とかそういうのはいいのよ。ただ私の勘がアンタは只者じゃないって言ってるわ。だから最後にもう一度聞く…アンタは何者?」
そういう事か…。別に危害を加える気はねぇが、ちゃんと説明しねぇと後々面倒くさくなりそうだな。
「そーいうことか。なら八雲紫ってヤツに聞いた方がいいぜ?俺も俺の事はよくわかってねぇからよ。」
「……そう。ならそうするわ。」
そう言って霊夢は目を閉じてその場から一切動かなくなった。
「ちょっと霊夢!結界は緩めないでって言ってるでしょ!」
「こうでもしないと来ないからでしょ。で、コイツは何?」
「あら!灰!さっきぶっ!!!」
スキマとやらから出てきて、こちらに顔を向けた瞬間、右のハイキックを喰らわす。
「……っ!」
「ふぅ。スッキリした!」
この時霊夢は驚愕していた。見えなかったのだ…灰が放った蹴りが全く見えなかった。
「痛たた〜。何するのよ〜。」
「人をいきなり空に落とすバカにはちょうどいい薬だろ。」
なぜ警戒していたか理解した…。単純だ、色無灰は厳密には人間じゃない。そこだけなら良かったのだ。しかしコイツは私より強い。幻想郷にとっての異分子、その上巫女より強いとなれば警戒するに決まっている。
「なんてもん拾って来たのよ…紫。」
もしこいつが敵になったら自分じゃ太刀打ち出来ない。
「大丈夫よ、霊夢。彼はそんな事をする子じゃ無いわ。」
紫には確信があった。色無灰は幻想郷に害を及ぼさないという確信。
「あん?何の話してんだ?」
「アンタが幻想郷の敵になったらどうぶっ飛ばすかの話。」
少し棘のある言い方になってしまったが、状況が状況の為仕方ない。
「あー、そうなってもおもしれぇな。」
その瞬間に霊夢がお祓い棒を構える。
「ハハハッ!そう身構えんな。俺は手を出されなきゃ特に何もしねぇよ。」
「そうよ霊夢。彼は外の世界にいてもつまらないなんて理由てココに来たの。」
「そうだぜ?俺が楽しきゃどーでもいい。せっかく楽しい場所に来たのに追い出されるような事はしたくねぇからな。そういう訳で俺から先に敵対する可能性はねぇよ。」
「…ひとまず信じるわ。」
灰の言葉を聞きお祓い棒を下ろす。
「そりゃありがてぇ。ま、ヤリたきゃいつでも来い。美人からのお誘いなら是非もねぇからな。」
カラカラと笑いながら茶化す。霊夢はその反応が気に入らなかったが、もう面倒だの一言で心を落ち着かせる。
「あら?今日はお客さんが多いのね霊夢。」
「…まためんどくさいのが来た。」
はぁ…と溜め息をつく霊夢。2人の視線の先を見れば、箒に跨り空を飛ぶ何かが見えた。
「おいおい…ココには魔女なんてもんもいるのか?」
「もちろんいるわよ?」
「マジか…奇天烈な技を使うんだろ?まさかこの目で見れる時が来るとはなぁ…!」
新しいおもちゃを与えられた子供のように目を輝かせながら、魔女が来るのを今か今かと待つ。
「よ、よう!霊夢!遊びに来たぜ!?」
「そう。用は済んだみたいだから帰ってちょうだい。」
「えっ!そりゃないんだぜ!せっかくに来てやったのにー!」
明らかにアポ無しの訪問な為、素っ気なさすぎる態度をとる霊夢。
「な、なぁ。さっきっからアタシにスゲェ熱烈な視線をくれるアイツは誰なんだぜ?」
「自分で聞いてみたら〜。」
最早興味無しと言わんばかりの反応。
「え、えーっと…はじめまして?」
「あぁ、はじめまして。色無灰だ。よろしくな?」
「き、霧雨魔理沙だぜ。よろしく。」
魔理沙は思った。コイツ苦手だと。
「…あぁ、悪ぃな。魔女ってヤツに初めて会うもんで、好奇心がよ…。」
不気味な笑みを向けながら魔理沙に話しかける灰。
「そうなの、か?ってことはお前は外から来たんだぜ?」
「そうだ。そこのアホ賢者に連れられてな。」
「そいつは災難だったんだぜ。まあここは色んな意味でいい場所だぜ?肩肘張らずにゆっくりするといいぜ。」
魔理沙にとって今の台詞は社交辞令みたいなものだった。ただ、灰にとってはそうではなく「そんなかしこまらずなんでも言え」と言う意味に何故か捉えてしまった。
「ハハハ…。そいつはありがてぇ。なら早速いいか?」
「え?何がだぜ?」
「決まってんだろ…。勝負だよ勝負…。ヤろうぜ?」