「し、勝負!?」
「紫、問題ねぇだろ?」
「フフフ、えぇ。何一つとして問題ないわ。」
突如として魔理沙に勝負を挑んだ灰。非常識なのだろう…ただ皮肉な事に幻想郷にそれは通用しない。それを幻想郷の住人である魔理沙に痛い程分からせた。
「ま、まぁいいんだぜ?でも灰は弾幕ごっこ初めてだろ?」
「問題ねぇよ。んで、ルールは?」
いや分からないんかい!!っと全員が思ったが声には出さないでおく。
「まぁ初めてだから、一被弾で終了でいいんじゃないの?」
霊夢が助け舟を出す。この提案は魔理沙からすると大変ありがたいものだった。
「そうするんだぜ。変に長引いても冷めるだけなんだぜ。」
魔理沙が危惧しているのは初心者によくある逃げ一辺倒の勝負。これをやられるとまるで自分が悪者かのように見えるのであまり好きではないのだ。
「まぁいいか。んじゃ早速…。」
そう言って魔理沙の方をじっと見つめる。
「はぁ…。あんまり気乗りしないんだぜ。けどまぁ、売られた勝負は買わなきゃ気が済まない性分なんだぜ!」
お互いに距離をとり何時でも動けるように意識を整える。
「じゃあ、始め♪」
気の抜けた紫の合図の同時に魔理沙が動く。
「先手必勝!!マスタースパーク!!!」
灰の目の前に広がる極太の光線。目前に迫っても身動きすらしない姿を見て、霊夢は困惑する。
(私の勘は間違ってないはず。明らかに実力者なのに、なんで避けないの?魔理沙のあの攻撃は受ければタダじゃ済まないくらい分かるはずなのに…。)
無抵抗のままマスタースパークに呑まれた灰。魔理沙自身手応えを感じていた。
「…なんだ?大したこと無かったぜ。」
勝利を確信し警戒を解く。
「いやぁ…いいもん見せて貰ったわ。」
「っ!!?」
確実に当たっていたはず。そう思っていたが避けられていた。寸前で避けられていたのだ。ましてや背後を取られた。今ここで攻撃されていたら…。
「な、なんで攻撃しなかったんだぜ!?」
舐められている。今理解した。霧雨魔理沙は色無灰に舐められている。
「あ?ハハハ!そりゃお前…まだまだ隠してる技、いや魔法か?あんだろ。それを見ずに終わらせるなんてもったいねぇ。」
屈辱だ…。自分の渾身の一撃を容易く避けられ、あろう事か情けをかけられた。これが屈辱以外のなんであるか!
「オーケー。わかったぜ。こっからは本気も本気…。目に物見せてやるんだぜ!!」
だが悪手。この色無灰の前で怒りに身を任せるなど愚の骨頂。
「アホが。」
行動に移そうとした瞬間に頭を押さえつけられる。
「うっ!?」
何が起きたかわからなかった。
「怒りに呑まれて何になんだ?そんなつまんねぇマネすんじゃねぇよ。冷めるだろうが。」
そう言って魔理沙の頭を掴む手を離す。
「さ、仕切り直しだ。ドンと来い。」
「ハハハ…勘違いしてたぜ。灰、お前は強かったんだな。だからもう、手加減は無しだぜ!」
魔理沙は複数のビーカーのような何かを投げる。
「なんだぁ?魔法じゃねぇのかよ。」
落胆…。だがそれも束の間。
ビーカーが割れ、多色の弾幕が放たれる。
「っ!あぶね!」
速度はない代わりに高密度の弾幕。隙間を縫うようにそれを避ける灰。
「ブレイジングスター!!」
避ける事に意識を割いた結果、魔理沙の次手を許す事になった。
「うおっ!?」
あの高密度の弾幕を避けながらの超高速の突貫。生半可な度胸で出来るものでは無い。
「今の避けるとか、どんな反射神経なんだぜ!?」
避けはしたが、危機は去ってはいない。無理に魔理沙の突貫を避けたせいで、不安定な体勢の灰に高密度の弾幕が襲う。
「くっ…!」
それでも何とか避ける灰。
「コイツがアタシの最大火力だぜ!!」
灰が避けに徹しているが故に、技を溜める時間が出来る。これが魔理沙の必勝パターン。
「ファイナルマスタースパーク!!!」
先程のマスタースパークとは比にならない威力。状況的に避けることは不可能。
ドゴォォン!!!!
地鳴りのような轟音。先程とは違い避けることは不可能。確実な手応え、だが拭いきれない不安。土煙に隠れて灰がどうなったか分からないため、警戒は解かない。
「ハァ…ハァ…。」
「ハハハッ。中々痺れる魔法だったぜ?」
「な、に…?」
その場から動かず避けた?どうやって?意味がわからない。
「今回ばかりは避けれなかった。だから受けた。」
「…は?それじゃあ、」
弾幕ごっこのルールに反すると言おうとした。
「俺の能力で受けたんだ。勘違いすんじゃねぇ。」
「能力って…。移動系の能力じゃ無かったんだぜ?」
「まあ答え合わせは終わってからでいいだろ。いいもん見せて貰った礼だ。俺も一つ見せてやる。」
考えがまとまらないまま話が進む。まとまらないが、勝負中。意識を切り替える。
「お前の好きな色はなんだ?」
「え…?」
質問の意味が分からなかった。能力の発動条件?いや違う、それだとマスタースパークを防げない。思考が空回りし続け答えを導き出せない。
「まぁお前は黄色っぽいから黄色でいいか。」
そう言って手のひらを魔理沙に向ける。
「雷光」
その瞬間魔理沙の視界は光に包まれた。