現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

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12話 服きよう!

 

 

「これとかどー?ウチも使ってるし、曲もいっぱい入るし、音がまだいい方だし、それに・・・・て感じで、オススメだけど」

 

 本当に、雄英を出て知らない街へと二人でくりだす。

 案内されているために迷う事はなく、今は俺の家と響香の家への道中にある携帯ショップの中で、壁一面に並ぶ端末達を眺めていた。

 

 そのうちの一台を手に取り話しかけてくるも、ちんぷんかんぷん。

 細かく説明してくれたのはいいが、何も入って来ず頭がショートしそうだ。

 生まれてこの方、機械の扱いなどレンジとオーブンくらいでそっち方面は全くわからん。

 

「ん……任せる」

「それとも、コレにする?」

 

 ニヤニヤと笑ってるけど、それは流石の俺もわかる。

 

「おーい。響香さんや、それは俺用じゃないぞ」

 

 60歳以上にオススメ!という札のついてる端末を出してきた。

 それはジジイにでもくれてやれっての。

 

「じゃあどーすんの?」

「響香と同じのにする。使い方は…教えて」

「オッケー。じゃあ決めちゃお」

 

 チャチャっと決めていく姿はカッコいい。

 他人との関わりが少ないので正直買い物だったりは苦手だ。

 その後は契約の用紙に諸々書いていくのだが、ほとんど響香に聞きながら行い、なんだか昔を思い出した。

 

「おぉー。コレがスマホ。これでどーやって電話すんの?」

「…… 一回貸して」

 

 ゲットしたばかりのスマホをふんだくられて、トントンと画面を叩いていく。

 

「はい。コレで良いよ。ウチの番号入れといたから、あとはココをこうして……」

 

 うーむ。

 近い。

 見えるように操作してくれてるから仕方ないんだけど、めっちゃ良い匂いするし。

 画面ではなく、成長した幼なじみの顔をボーッと見ていると、怪訝な顔を向けられた。

 

「……何その顔?」

「え?良い匂いするなって顔」

「はっ!?」

 

 あ、普通に口から出た。

 猫みたいな目を鋭くさせているのを見るのも久しぶりで感慨深い。

 話してくれなくなってしまい宥めるのに苦労したけど、良かった。

 響香も変わってなくて。

 

 

 

 その夜、一人部屋の静かな空間に、突如ピロンと音が鳴った。

 その発生源であるスマホを見てみると、いつのまにかダウンロードとやらをされていた、メッセージのやりとりができるというアプリに赤い丸に数字の1が付いている。

 不思議に思いそれをつつくと、【耳郎響香】からのメッセージだった。

 

『明日からもがんばろーね』

 

 悶々としながら、なんて返そうか、どうやって文字を打つのか格闘し尽くした後、2時間後にようやく返信ができた。

 

『おお。がんばるうな』

 

 読み返して、恥ずかしくて死にたくなった。

 

 

 

 

 翌日、今日こそ早めに到着し、教室に入るとすぐにポンポンと肩を叩かれる。

 

「おはよ。がんば"る"うね」

 

 プププと、口から空気が漏れてますよ響香さん。

 

「うっせ。文字の打ち方はまだ習っとらん」

「でも、あんな深夜に返してこなくても良かったのに。教えてあげるから、携帯貸して」

「えー!唯くん携帯買ったの?私にも番号おしえてよー!響香ちゃんも交換しよ!」

 

 二人で盛り上がってるところ、悪いが……

 

「持ってきてないけど?」

 

 呆れたように俺を見る二人の顔に、若干の憐みが含まれているのを感じた。

 

 

 

 はじめての授業は必須科目の英語から。

 その身なりと発言からどんな授業になるのかと思ったが、プレゼントマイクの授業は、ごくごく『普通』であった。

 その後も、教師がプロヒーローとはいえ通常の授業は基本的に普通で、中学校の時と大差はない。

 ついていけないわけではないが、進みが早い。

 ヒーロー科はヒーローとしての授業の単位が多く、通常の科目がどうしても減るためだろうと思うが。

 そして、昼食を取るのはクックヒーロー【ランチラッシュ】の一流の料理を安価で食べられる大食堂。

 透も響香も別のグループで既に向かっていたようなので、俺も一人で向かおうとしたのだが、話しかけられるうち、いつのまにか三人組のようになっていた。

 

「スッゲーよなぁ!間の個性って、結局なんなんだよ?」

「ん?結界だよ。コレを俺の意思で生成できる」

 

 今話しかけてきたのが、上鳴電気。

 見た目は金髪黒メッシュの少しチャラい奴。

 個性把握テストでは活躍できてなかったところを見ると、あれには向いてない個性だったのだろう。

 

「いいよなー色々使えそうで!」

 

 そう言ったのは紫色の玉が頭に乗ってるような見た目で、見た感じ1mくらいしか身長のない峰田実。

 歩きながら三人組と化したこのメンツで固まって席に座る。

 情報交換じゃないが、ほぼ初めて自己紹介のような事をする事となった。

 それもひとしきり終わり、上鳴は名前の通り電気系の個性で、峰田は男の欲望に忠実という事は理解した。

 食事も食べ終わり、そろそろ移動しようかというところで、唐突にその言葉は発せられた。

 

「ひとつ確認させろ……葉隠とは付き合ってんのかよ?」

 

 峰田から透の事を振られたことに少し驚くが、そんなのじゃない。

 透はそもそも中学では男女問わず人気者だったし、俺とは違って友達も多くいる。

 俺がぼっちだから知らないだけで、俺より仲良い奴もきっといただろうし。

 

「……普通に違うけど?」

 

 少し遅れて答えた俺にニコリと笑いかけ、その短く小さな腕で握手を求めてきたが、なぜだろうか?

 少し、怒りが湧いてくるような。

 

「なぁ上鳴。こいつ殴っていいか?」

「まぁまぁ。雄英可愛い子多いもんな。でもさ、ココに来たからには、次の授業がやっぱ楽しみだよな!」

 

 場の空気を戻してくれた上鳴の言葉にコクコクとうなづいてる峰田だが、一体どっちに同意をしているのやら。

 

 次の授業は、【ヒーロー基礎学】

 最も単位数が多く、その内容はヒーローの素地を作るための訓練がほとんど。

 

「まぁ。そうだな。俺もみんながどんな個性で、どんなことできるのか見てみたいしな」

「おぉ!俺の個性にビビんなよ!?テストじゃ発揮できなかったけど、その内見せてやっから」

 

 上鳴とは仲良くなれそうな気がする。

 というか、ヒーロー科のみんなとだけど。

 小中の奴等とは違い、群れのように固まり、誰かひとりを標的として馬鹿にし、妬み、蔑むような事など全くしそうにない。

 小学校では完全にそれを浴びていたので学校というものが面倒になり、中学では透と話すまでは自分から人も学校も避けていた。

 そもそもそんな子供では無くなったというのもあるが、きっとこのヒーロー科の人間は、響香や透と同じで、全員が全員、当たり前のように対等なんだ。

 ヒーロー目指してる奴って、やっぱカッコいいな。

 学校って、意外と楽しいかも。

 

「どうせやるなら男女対抗相撲訓練とかだと良いな」

 

 と、学校生活を見直していたはずの俺を、峰田が現実に戻してくれた。

 

 

 

 

「わーたーしーがー!!」

 

 全国のちびっ子達、誰しもが一度はマネしたであろうセリフ。

 生で聞けるとは思ってなかったな。

 

「普通にドアから来た!!」

 

 このちょっとダサい感じもまた、らしい。

 ナンバーワンヒーロー【オールマイト】。

 誰もが知る日本の、あるいは世界的に見てもトップヒーローである彼は、『平和の象徴』とも呼ばれている。

 大人も子供も、ヒーローでもヴィランでも、彼を知らない人間はこの日本にはいないと言える程の人物。

 そんなとんでもない有名人が、今年から雄英の教師となる事は散々ニュースで取り上げられていたし、透もずっと騒いでいたので流石の俺でも知っていた。

 とはいえ、ナンバーワンのヒーローからヒーロー基礎学を学ぶというのは、確かにヒーロー科最高峰だなとしみじみ思う。

 

「早速だが、今日はコレ!!!」

 

 そんなオールマイトが、バーンッと掲げたその手に持っているのは、『BATTLE』と書かれた顔くらいもありそうなボード。

 その後の補足的な発言からもわかるように、"戦闘"訓練。

 ヒーローとなるからには、救助や防衛、はたまた避難誘導や場所の確保まで様々だと思うが、恐らくそのどれもに関わってくるのが、戦闘能力。

 この世に蔓延るのは妖よりも圧倒的にヴィランの方が多く、守る為の行動が発生する原因もまた、災害よりヴィランの方が圧倒的に多い。

 とはいえ、いきなり戦闘すんのかとは思うが、個性把握テストで大まかな使い道を、この訓練で各々の判断能力とかを見たいってところなのかな。

 

「そして、それに伴って……こちら!!!」

 

 他のクラスメイト達はナンバーワンヒーローから本当に学べるのだと高揚している中、オールマイトの言葉が終わると同時に、教室の左側前方の壁が順番にせり出している。

 

「入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた……戦闘服(コスチューム)だ!!!」

「「「おおお!!!」」」

「こいつに着替えて順次、グラウンドβに集まるんだ!!」

「「「はーーーい!!!」」」

 

 オールマイトの言葉に、いちいちみんなは大きく返事をしている。

 まぁ、オールマイトの授業に、ワクワクするしかない戦闘訓練、そしてコスチュームが登場したわけだし、気持ちはわかる。

 俺も俺で、同い年連中の『強さ』を知れる良い機会になる。

 

 コスチュームは、出席番号順か。

 俺のは……あった。

 

 自分の出席番号である17番のケースに手をかけたところで、ひとつ上の16番を引き抜いた奴に絡まれた。

 

「……テメェはぶっ飛ばすからな…!」

「え…今?なんで?」

 

 なんだ突然。

 着替える前にぶっ飛ばされるのかと聞いてみるも、鼻を鳴らして無視。

 そのまま更衣室へと向かっていく唯我独尊爆豪を呆然と眺めていると、今度はひとつ下の18番を手に取った緑谷が声をかけてきた。

 

「かっちゃんは、たぶん間くんが昨日一位だったから…」

「喧嘩を売ってきたと?」

 

 かっちゃんって、流れからして爆豪の事だよな?

 友達なんかな?

 昨日えらい揉めてる感じはしたけど。

 

「自尊心の塊みたいな奴だから。でも、強いよ…」

「ふーん。でも、首席に対抗心燃やされるのは悪い気分じゃねーかも」

 

 アイツが入試一位って、昨日言ってたしな。

 俺と同じで止められた口だろう。

 そんで昨日は一位が俺だったから、あぁなったと。

 トップじゃないと気が済まない系かな。

 

「うん。個性も、自信も、凄い…」

 

 そう言う割には、ちょっとだけわくわくしてるように見えるけど。

 

「じゃあ、負けたくねーな。俺たち」

「え?」

「お前もそーじゃねーの?」

 

 俺にじゃなくて、自分に言い聞かせてるようにしか聞こえなかった。

 まぁ、俺も負けたかないから、俺たちと言ったつもりだったんだけど。

 

「そう、だね。うん、間くん。頑張ろう!」

「ん。やったんぞ」

 

 そう言った緑谷の眼は火が灯ったかのように輝きと力強さを増した。

 なよなよしてるだけかと思ったけど、昨日のボール投げの時といい、根っこはどっしりしてるんだな。

 ちょうど更衣室にも着いたので、コスチュームに着替えることにした。

 

 

 グラウンドβに着替えて出たのだが、普段から着てた戦装束とほぼ同じコスチュームなので俺が一番早かったらしい。

 間の八芒星ではなく、ただの四角形に変えている黒い袈裟のようなコスチュームに身を包んだまま、オールマイトと二人きりとなった。

 子供の頃憧れていたヒーロー像は、テレビで見るオールマイトと、我が家に伝わる22代目と開祖。

 折角だし、間流結界師の衣装と変えておくならその二人と同じ印を使いたかったし、後は多少デザインを変えておいたけど、機能的にはほとんど変わらない。

 

「そのコスチューム似合ってるぞ間少年!ところで、【サイロック】は元気かい?」

 

 ……なにそれ?

 全く聞き慣れない言葉だし、その意味はわからない。

 元気か?と言う時点で人物を指している事はわかるが、ヒーロー名っぽいけどそんな知り合いはいない。

 

「さいろっくって、なんスか?」

「んんんん!?君がサイロックを知らないのかい…?」

「はい。まったく知らんです」

 

 首を捻りまくっているオールマイトだが、誰かと勘違いしてるんだろうか?

 そのうちに、みんなも着替え終わったようで、次々とグラウンドに出てきているのを見ると、

 

「知らないならいいんだ。私の勘違いだったのかもね!」

 

 最後にHAHAHAと大げさに笑って話を切られた。

 まぁ、気にしないでおこう。

 

「さて、始めようか有精卵共!!! 戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 全員のコスチュームを見ながらカッコいいぜと言ってくれてる。

 確かに、みんな凝ってんなー。

 俺は普段と全然変わんねーけど、着慣れてるから楽なんだよな。

 響香は黒いジャケットに黒パンとバリバリのロックンローラースタイル。

 目の下の涙みたいなメイクがなんか、良い!

 そんで、もひとつ気になるのは……

 

「葉隠、間と似たようなコスチュームだな」

 

 うん、俺もそう思ったよ。

 上鳴が言ったように、透が来ているのは間流結界師の女性用、昔は雪村の一族が愛用していたらしい、うちの白い戦装束に若干似た感じのするもの。

 方印の位置には木の葉がワンポイントで入っており、グローブをつけていたりとデザインもちょこちょこ違うけど、意識してんのはわかった。

 間流はゆったりしてるけど、透が着ているのは忍者のように割とピッタリとしたデザインでよく似合っていた。

 上鳴に対して「そうなのー」と言った後、俺の方へと駆けてくる。

 

「あはは。時織さんが、強すぎてカッコよかったからマネしちゃった!大丈夫だった?」

 

 まぁ、突然現れて一瞬で鬼をぶっ倒したの見たら……でも、アレに憧れるかなぁ…。

 

「ん。別にいいんじゃないか?印は違うし」

「え?時織姉(しおりねぇ)、帰ってきてるの?」

 

 と、透と話してたら昨日の下校から普通に話せるようになった響香が横から聞いてくる。

 そういえば姉ちゃんに少し憧れてたっけ。

 あのサバサバを通り越した鉄仮面ぶりがクールでロックだとか言ってたような。

 まぁ、楽器を弾けるようになったばかりの頃の響香から見たら、とても小学生とは思えない程に落ち着いてた姉はクールに見えなくもないとは思うけど。

 

「ちょうど2月にな。そのせいで地獄だったけど」

「そっか。良かったね」

「いや、地獄だったんだっての」

「もー。響香ちゃんは久しぶりに家族で過ごせて、って意味で言ったんだよー!」

 

 朝も思ったが、いつのまに仲良くなったんだろ。

 そうこうしている間に飯田がまたもなにやら話していたらしく、その内容は入試と同じ、市街地での演習なのかと聞いていたよう。

 

「いいや!今回はもう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!」

 

 真に賢しいヴィランは屋内に潜む。

 屋外でのヴィラン退治が取り上げられるのでそちらに目がいきがちだが、実際の統計上は屋内のほうが凶悪なヴィランの出現率が高いらしい。

 確かに、妖相手は屋外でしかしたことないし、屋内戦闘って、ちょっと楽しそうだな。

 

「そこでだ! 君らにはこれから『ヒーロー組』と『ヴィラン組』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!」

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知るための実践さ! ただし、今度はブッ壊せばオッケーなロボットじゃないのがミソだ!」

 

 そう言ったのち、一気に質問が飛び交う中、青山だけはコスチュームを見せつけているが、なんだこいつは。

 オールマイトは全ての質問を聖徳太子というワードだけで乗り切り、まさかのカンペを懐から取り出して訓練の状況設定を説明し始めた。

 

 設定はこう。

 『ヴィラン』がアジトに『核兵器』を隠していて、『ヒーロー』はそれを制限時間以内に処理しようとしている。

 それぞれの勝利条件として、『ヒーロー』は制限時間内に『ヴィラン』を捕縛するか『核兵器』の回収が条件。

 『ヴィラン』側は制限時間まで『核兵器』を守るか『ヒーロー』を捕縛すること。

 シンプルではあるが、核兵器だったりと大味な設定はなんともアメリカンなシチュエーション。

 狙うものが二つある時点でヒーロー側が有利な気もするが、その分ヴィランは罠を張れるし、核兵器ってののサイズ次第なところもあるか。

 

「コンビ及び対戦相手は、『くじ』だ!」

「適当なのですか!?」

「飯田くん、プロは他の事務所のヒーローと急造でチームアップすることも多いし、そういうことじゃないかな……!」

 

 飯田の質問であった"分け方"の答えは帰ってきたのだが、次はくじで決めるってことにも質問を飛ばす飯田。

 待てを知らんのかアイツは。

 と思っていたら緑谷がすかさず自分の考えを話し、それに納得。

 テンション高いなーみんな。

 

「いいよ!早くやろ!」

 

 オールマイトのその言葉には、賛成。

 早くやろう。

 

 ペアの相手は誰になるのか、戦う相手は誰になるのか。

 俺も周りの連中のテンションのせいか、ちょっと楽しみになってきた。

 

 

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