現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

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19話 未知との遭遇

 

 

「あの術、もしかしなくても結界術じゃんかー」

「しかもアイツ執拗に俺たち狙ってんだけど、呪力からしても確実に殺る気じゃん?」

「牙銀様を一瞬で殺った、あの纏う黒い結界使われたらひとたまりもねーぞ……」

「つってもあん時の結界師より、ましてやガキどもより未熟そうだし、いけんじゃねー?」

 

 緊張感を感じられないし何を話しているのかと思えば、結界術を知っている?

 黒い結界と言うのはわからないが、俺の知っている間流は決まって青か緑だ。

 別の流派の結界師が、まだ生きているのか?

 ただ、纏うという結界は考えた事なかったな。

 いかん、今は戦闘に集中しろ。

 デカすぎたので強度不足だったとはいえ、俺の結界を切り裂くくらいの力はあるか。

 それなりの妖力は持っているようだし、一人は妖混じりなのか、それとは別の何かなのか。

 とにかく、俺の目に映るアレが人間ではない以上妖だとは思うんだが、妖力も呪力も全く感じないのはなんだ?

 まるで力を隠しているような……

 何か仕掛けがあるのかもしれないな。

 妖同士が意思疎通を行い徒党を組むなんて、大昔の話だろうに。

 もしかして、妖にも今更変化が起き始めているのか。

 式神で応援を……いや、それは式神に呪力を割いていい相手かを見定めてからか。

 

 横目に相澤先生の戦闘を見ると、流石だがアッチはなんの問題ないようだ。

 除籍にされても仕方がない。

 たぶん俺と、透にしか見えていないんだ。

 俺がやらなきゃ。

 

「唯くん!」

 

 戦闘を再開しようとしたところで、聞きなれた声。

 それはすぐ側から聞こえた。

 

「バカ!なんで来た!?離れてろって!」

「3対1は流石にでしょ?私もやるよ!先生!見えないヴィランは2人います!なので見える私と唯くんに任せてください!」

 

 そう言った透を相澤先生は一瞥し、口を開く。

 

「潰せるなら即潰せ、そして即離脱」

「ん…?」

 

 そして吐き出された言葉は予想だにしないものだった。

 

「合理的に今の状況を判断しただけだ。引き際は誤るな。時間がかかるようなら今すぐ逃げろ。俺の指示には従え。それが守れないなら2人まとめて除籍にするぞ」

 

 俺たちを信頼してくれたのか…?

 でも、もともと除籍覚悟だったんだ。

 やる事は変わんねーが、やる気は出た。

 3人のうち、2人の妖はたぶん問題ない。

 一番左のやつだけがよくわからんが、なんとか…するしかない。

 

「やったろ!唯くん!」

 

 そう言って構えをとる透だが、これは試験でも訓練でもない。

 拘束テープなんてない。

 ここは俺一人で……

 

「そんな顔しないで。唯くんがいったんだよ?私達の連携、見せてやろ!」

「……下がれっつったら絶対に下がれよ。あと、左の奴には警戒を。なるべく速く、俺が滅してやる」

「りょーかい!」

 

 呪力が充満していき、俺の目にも薄っすら半透明でしか見えなくなった透。

 俺以外に、今は姿は見えていないだろうとは思うがそれも絶対じゃない。

 透にはケガの一つも付けさせない。

 後ろにも、絶対にいかせない。

 

 言われた通り、速攻で潰してやる。

 

 

 

 

 会話から察するに、この敵達の狙いはオールマイト、だった。

 相澤先生と唯守、葉隠がヴィランとぶつかり合う中、13号先生の後ろで固まっているクラスメイトへと声をかける。

 

「13号先生に続いて、急ご!」

 

 が、動かない緑頭が目に入った。

 

「ゴーグルで誰の個性を消しているかわからなくしてるのか……すごい。多対一こそ先生の得意分野だったんだ。それにあの首に巻いている捕縛布で中距離の戦闘までも可能……間くんと葉隠さんは何が見えているんだろう?間くんを吹き飛ばしたのは透明なヴィランの仕業?でもそれじゃあ、葉隠さんはまだなんとなくわかるけど、間くんにはなぜ見えているのか……」

 

 未だに戦いを始めた3人に関してぶつぶつと分析でもしているのか知らないが独り言を呟いている緑谷にも声をかけた。

 

「何してんの緑谷!分析してる場合じゃないでしょ、早くいくよ!ウチらじゃ邪魔になる!」

 

 そうして、USJの、ついさっき入ってきたばかりの入口に向かって走り出したのだが、前方に突如黒い霧が発生してウチらの行手を阻む。

 

「先日頂いたカリキュラムではここにオールマイトがいらっしゃるハズ……何か変更があったのでしょうか?」

 

 そう呟いたモヤのようなヴィランから黒い靄が広がり、全員が身構えた。

 ウチはサッと、プラグをスピーカー仕込みのブーツへと連結させておく。

 

「まぁ…それとは関係なく……今の私の役目はこれ」

 

 これが、今ウチに出来ること!!

 

「やらせない!」

「その前に俺たちにやられることは、考えてなかったか!?」

 

 ウチの音波とほぼ同時に、切島と爆豪が黒い霧状のヴィランに拳と爆破を叩き込む。

 ウチの爆音による衝撃波。

 切島の【硬化】による強烈な打撃。

 爆豪の【爆破】による衝撃と熱波。

 そのどれもが確実に命中しているにも関わらず、爆煙が晴れた先には、恐らくは無傷であろうヴィランが立っていた。

 

「危ない危ない……生徒といえども優秀な金の卵」

「ダメだ!どきなさい三人とも!」

 

 13号先生がウチらに向かって叫ぶが、それはどうやら遅かったよう。

 

「散らして 嬲り 殺す」

 

 先の見えない真っ暗な霧に視界を覆われる直前。

 唯守と目があった。

 その瞳をこの霧と同じく、どんどんと真っ黒に染め上げていく様をみながら、視界ごと黒へと覆われた。

 

 

 

 

「響香……上鳴、峰田、梅雨ちゃん。 みんな、消えた……」

 

 沸々と湧き上がる事はなく、どんどんと深く沈んでいく怒り。

 なんだコイツら。

 コレがヴィランか。

 だったらコイツらも妖と変わらない。

 滅却して、消してやる…

 

「大丈夫!!私達のクラスに何もできない人なんていないから、大丈夫だよ。唯くん」

 

 透の言葉で我には帰った。

 深みにはまっていくところ、その手前でその手を握られたような感じ。

 とはいえ、別に怒りがおさまったわけじゃねぇ。

 あのお粗末な結界は切界されたが、コレならどうだ?

 

「結」

 

 三重結界。

 成功したことなどなかったのに、一発でできた。

 

「お、おい!コイツァやばくな──」

「滅」

 

 まずは一匹。

 威力は3倍なんかじゃない。

 通常結界の軽く3乗はある威力。

 それがさっきのデカい結界とは違い丁度一匹囲うサイズで成形したんだから、さっきまでとは段違いの破壊力。

 初めて成功したが、今の俺が使えるであろう威力最強の結界。

 これで滅せないならどうしようかとも思ったが、どうやら問題ないようだ。

 

「テメェ…千年以上連れ添ってきた仲間を……こうなったら、オレたちも同化し──」

 

 それに、妖には見えているかもしれないと思っていたが、どうやらそれも杞憂だったようだ。

 アイツら、後ろに全く警戒していない。

 何をする気かは知らないが、きっと隙を作ってくれるんだろうな。

 

「──ワッ!!!」

「なんだ!?」

 

 突然背後から大声を上げられれば誰だって驚くだろう。

 しかも、今の透は暗殺者さながらに気配を消す。

 さらには姿も見えないのだから、あんな奴らに気づかれることはないだろう。

 

「今だよゆい「結、滅」──さっすが!」

 

 これで2体目。

 完全透明化とはいえ、俺の目にもぼやけて映るので巻き込むこともない。

 同化、ということはパワーアップでもするつもりだったのか。

 透のおかげで動きの止まったやつなどただの良い的だ。

 

「天穴」

 

 いつも通り異界の扉を開き、妖の残骸を吸い込むと天穴を閉じた。

 

「んだよー。最強の俺らとやりあって見たくなかったのか?牙銀様みたいに楽しむこともなく、結界師ってのは瞬殺してくれるよーなやべーやつばっかりだな」

 

 スッと結界をはり、呪力を持たない、人の皮をかぶった様な妖を結界で囲う。

 

「ゆゆゆいくん!?人までやっちゃうの?」

「透。コイツも妖だ」

 

 流石に透にはまだわかんないか。

 相澤先生の言いつけもある。

 最速で倒す。

 そして、響香を、みんなを追う。

 

「結局俺らも牙銀様と同じ、結界師に殺られたなー。だったらせめてあの『絶界』とかいう術で殺ってほしかったけど」

「………滅!!」

 

 随分と潔い。

 人語を易々と解す妖にしては、邪念なども感じないし。

 誰かは知らんが様と呼ぶということは、上下関係、口ぶりからすると主従関係が存在している。

 そんな組織的な妖が、存在するのか?

 いや、したのか。

 コイツが『がぎん様』と呼ぶ者は、もう別の結界師に滅却されたみたいだし。

 『絶界』とかいう術が気になるが、いつの時代の話かは知らないが俺の前に出会った結界師の術か。

 間流じゃないのかもしれないし、今は、先を急ぐ必要がある。

 

「おーい。俺を殺るには、ちと足りねーぞ?」

「危ないッ!!──イツ!?」

 

 文字通り皮一枚脱いだだけであろうコイツは、たったそれだけだというのに隠されていた呪力は相当強力なものだった。

 俺の三重結界をたやすく切界し、俺を切り裂くはずだった鋭利な衝撃の刃はあらぬ地面を切り裂いている。

 だけど、そんな考えなどコンマ1秒にも満たない速度で掻き消され、赤く塗り潰されていく。

 俺の目の前で、アイツの振るった腕を拳で無理やりに軌道を変えてくれた透が、血を流す腕を押さえて膝をつく姿へと。

 

「透……透!!オイ!!」

「大丈夫だよ!ちょっと痛かったけどかすっただけ……唯くんこそ無事だよね?」

 

 笑顔を浮かべてそう言った彼女。

 血流が速さを増し、俺の呪力を乗せているかのように力が全身を駆け巡る。

 

「俺は無事だけど、透が無事じゃない……」

「全然へっちゃらだよ!これくらいって、アレ?傷が……コレも、結界なの?」

 

 姉ちゃんの見よう見まね。

 確かに傷は浅かったのだろう。

 透の皮膚を呪力で無理やりに塞いでいく、と言うよりはあるべき姿へと還す。

 これが修復術、いや治癒術か……

 修復術は本来無生物に対しての力。

 確かに、あの子よりも随分と小さな傷を修復しただけだと言うのに、気力の消費と呪力効率の悪さから扱いが難しいと言うことがわかる。

 俺の呪力を透の性質に合わせ、活性化させながらも循環させていき馴染ませていく事で元の状態へと戻していく。

 未熟だからであろうが、術が俺から呪力を大量に奪っていっているようだ。

 未だ繊細な術が苦手な俺にとって、上手く扱える術ではないな。

 

「あーあ。長年連れ添ったツレもいなくなったし、現世にゃ飽きてきた頃だから消えるのは別に構いやしないけど…

 最後の相手が結界師とはコレまた……オレたち三人。死んでもついていくっスよ、牙銀様」

 

 だが、呪力が底をつく事はない。

 いつか見た俺の中の奥底にある扉は、知らぬうちに開いていた。

 

「うるせぇ……死んだぞコラ」

 

 

 

 

 なんなんだコイツら。

 敵連合なんてチープな名だが、目的があの暑苦しいオールマイトさんなのはわかった。

 ただ、こんな数だけの寄せ集めでどうにか出来るとは思わないが……

 生徒はあの厄介そうな奴の個性、おそらくワープ系の個性で飛ばされたようだが、俺が相手にしている奴ら程度なら、大丈夫だろう。

 アイツらの可能性も、アイツら自身も、そんなヤワじゃないはずだ。

 黒い霧のヴィランとこの手首をつけたリーダー格のヴィランは警戒が必要だがそのうちの一人は未だここにいる。

 もしかして隠し球なのか、葉隠と同じく透明な"ヴィラン"は間と葉隠が相手にしている。

 が、本当にヴィランなのか?

 あの世とこの世の間とはなんなんだ?

 間と葉隠は、なぜかそれを知っている様子。

 あの結界の個性、圧縮して中のものを消滅させられるのか。

 潰したとはいえ血液一つ見受けられず、殺してるのか、単純に無効化しているのかどうかもわからない以上、これが片付いたら話を聞く必要がある。

 入試実技試験で見せた時よりも数段威力が上がっているように見える。

 更には『てんけつ』とか言う技で何かを吸い込んでいる様子。

 箱、糸、吸引。

 なんでもありかアイツは。

 

「オラァァァ!!!」

「チッ……」

 

 瞬きの瞬間を狙われたか。

 だが、今のは偶然。

 俺がここで引き付けておくから、こんな奴らにやられるんじゃないぞ、お前ら……

 

「透!!オイ!!」

──ッ!?

 

 まさか、やられたのか!?

 普段の間からは考えられないような焦った声に思わず視線を向けるも大丈夫なようだ。

 葉隠が負傷したようだが、かすり傷程度のようで本当によかった。

 

 なんだと…!?

 なんでもありかとは言ったが、ここにきて治癒の個性まで…?

 俺が消せないのは発動系ではなく、特殊な異形系かはたまた別の何かなのかと思っていたのだが……

 

「──死んだぞコラ」

 

 俺の背筋が凍りついた。

 そう錯覚する程の殺気。

 人だったものをまるで服でも脱ぐかのように脱ぎ捨てた中身はまたも透明。

 離れていると言うのに熱を感じると言う事は、敵は透明且つ炎熱系の個性、なのか?

 

 ナニを相手にしているのかもわからないが、

 間……

 お前は一体、何者なんだ?

 

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