現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

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20話 VSVSVSVSVS

 

 

 

 

── USJ内 セントラル広場 ──

 

 

「言ってくれるなー。これでも牙銀様の右腕…の指くらいのポジションにいたんだぞー?」

「黙ってろ。透ごめん、離れてて」

「そこは、ありがとうって言ってよね!強そうだし、2人で行くよ!」

 

 昔読んだ覚えのある、完全変化と呼ばれる状態に似ている。

 妖混じりの人間がその肉体を完全に妖化させる時の事。

 だが今回は、長く生きてきた妖や高度な妖は姿を変える事ができ、本来の姿に戻った時のようだ。

 その姿は単純な人型ではなく、馬の下半身に人の上半身がくっついているような、灰色の人馬。

 頭には2本の赤いツノまで生えてやがる。

 妖力は、相当だな。

 

「よっし!いくよっ「結」って、わわわっ!」

 

 2人で。

 それは嬉しい申し出だ。

 でも、今の俺は連携なんかできない。

 前へと出ようとした透を結界で囲い、突然できた壁に手をついてる様子もそのままに、無理矢理距離を取らせる。

 そして、呪力を込めに込めた三重の結界で囲った。

 

「ありがとう。──でも、ごめんな」

 

 女の子に、ましてや大事な人に怪我させるなんて。

 また、約束守れなかった。

 響香の時ほど俺はもう子供じゃない。

 拳藤の時とも違い、俺はそばにいたんだ。

 なのに、守れもしなかった。

 

「俺は結界師とやりあえればそれでいいぞー。弔い合戦だ」

 

 立ち昇る熱気。

 離れているというのに、当たれば消し炭にされるであろう程の熱量。

 炎を使う、妖か。

 

「そうか。俺のはただの、八つ当たりだよ」

 

 言い切ると同時に長方形の結界を斜めに成形。

 両腕から放たれた巨大な火球を空へと跳ね返す。

 

「どっかで見た光景だなー」

「………」

 

 とはいえ、二重三重の結界で相手を囲おうと切界され。

 いくつもの結界を設置し、道のように誘導しようとするも火球と蹄で破壊される。

 強い上に、速いな。

 

「おらよっ!!」

「接近戦が、苦手だとでも思ったか?」

 

 俺の足程もある腕の一撃を右手の五指から伸ばした念糸を左手で掴んで相手の腕を絡めとり、左手を離すと鞭のように操作して相手を地面へと叩きつける。

 伊達にガキの頃から武器術や格闘術まで仕込まれていない。

 

「やるねー。結界師。ちなみに名前聞いといていい?俺は爪灰(そうばい)

「……間流結界師としてお前を滅してやる」

「名乗れよー。ん、間流……まさかな」

 

 なにか気になる事を言っていたが、今は透から引き離す。

 とはいえ、見事に同じような光景ばかり。

 火球を、拳を、蹴りをいなし、こちらの結界は破壊されていく。 光景の焼き回し。

 攻めに回れない。

 

「チッ……」

「でも、お前はアイツより弱ーなー。牙銀様は三本ツノの炎鬼で四本腕。俺はほら。一本ツノに二本腕。戦闘に関してはオレんが十倍は弱いってのに」

 

 うるせー奴だ。

 ムカつくなぁ。

 弱いなんてな今俺が一番思ってんだよ……

 

『あんた、色々考えすぎなのよ』

『結界術とは心の力。何をするのか、何をすべきかを強く心に思えぃ!』

 

 姉ちゃんと、ジジイに言われたなぁ。

 それと──

 

『私? 私は何も考えてないわねぇ。 

 ? あぁ、嘘じゃないのだけど。

 そうねぇ…きっと、その時やろうとした事でも考えてるのかしらぁ』

 

 姉ちゃんは思考をクリアに。

 ジジイは心を強く。

 母さんは無心で。

 

 俺は、コイツを滅する。

 その思いで心を満たし、強く想う。

 やるべき事はわかってる。

 一発じゃ無理。

 俺の呪力に、技術が追いついてないから。

 なら──

 

「意味ねーっての」

 

 式神を大量にばら撒き、その全てを鳥へと変えて突貫させる。

 材料費もバカにならないなんて事は頭の中にない。

 強力な炎を身体全体から吹き出して全ての式神を燃やし尽くされるも、狙いは果たせた。

 動きを止めるという狙いを。

 

「結!」

 

 そう、止めりゃいい。

 運動エネルギーを起こさせはしない。

 妖力を練り上げるより、速く。

 まずは振りかぶる左腕を。

 

「お!さっきより硬ぇ」

 

 次は跳ぼうとする右後ろ足。

 

「なろ。うぜーんだよ!」

 

 慌てて振るおうとした右腕。

 

「あ、こりゃヤベーかも」

 

 何かしようとしている右前足。

 なんとか大地を蹴ろうとする左後ろ足とついでに左前足。

 

「マジか。やるなオメー」

 

 最後に頭。

 ニヤリと笑みを浮かべながら、その飄々とした態度は最後まで崩さない。

 

『三重七点結界』

 

 呪力を込めながら右手の人差し指と中指を、自分でもなぜかはわからないが僅かながらの敬意を込めて爪灰へと向ける。

 

「滅」

 

 完全に吹き飛ばしたと思ったが、結界と結界の隙間にあった身体のパーツは流石に残り、モゾモゾと蠢いている。

 まだ動けるのかと感心するも、それを再度結界で囲い、完全に滅却した。

 

 天穴で残骸を吸い込み振り向くと、

 

「むーーーっ!」

 

 抗議の目を向けて、頬を膨らませる彼女。

 俺が守れなかったから。

 という訳じゃないのくらいわかる。

 でも、俺は嫌なんだ。

 誰かが、"また"自分の近くの誰かがいなくなってしまいそうで、どうしようもなく怖いんだ……

 

 透に頭を下げつつも、懐からさっきばら撒いたモノとは別の式神を4枚取り出すと、呪力を込めて空へと放った。

 

 

 

 

── USJ出入口ゲート付近 ──

 

 

 13号の背中が黒霧の個性により自分自身へと向けられた事により抉られ倒れた。

 そんな中でもA組の生徒達が振るい上り、ヴィランへと立ち向かい始めた頃。

 

「いけええ!!飯田くーん!!」

 

 麗日は黒霧の本体を掴み、個性により無重力にすると空へと放る。

 

「いけええ!!」

 

 そこに瀬呂のテープが黒霧の動きを封じようと伸びるが、無情にもワープゲートへと吸い込まれていった。

 

「なっ!!?」

「子供と言えど、やはりやりますね」

 

 そして、そのテープは出入口のゲートへと駆ける飯田の前へと現れた。

 

「なに!?」

 

 今更止まれない。

 誰もが絶望の表情を浮かべたところで、瀬呂のテープも、ワープゲートも、全てを緑色の箱が包み込んだ。

 

「何!?新手が!?」

「滅」

 

 滅却によりゲートを破壊したかと思ったが、ゲート自体は滅却できず、瀬呂のテープだけが塵と化している。

 

「……クラスメイトへの危険は排除。ヴィランの排除には至らず」

「「「!!?」」」

 

 間くん、助かる……!

 俺が、救けを呼んでくる!!!

 

 飯田は振り向く事も無く、全速力でそのまま駆け抜けていった。

 

「は、間ぁ!!先生が…先生が…」

 

 芦戸に泣きつかれた唯守ではあるが、戦闘用式神のため命令は絶対。

 それに、もちろん修復術なんて使えない。

 本体の1割程度の力しかない式神ではあるが、命令を遵守する。

 

「むぎゅう……主人の命令はこの場の死守。ヴィランは、排除」

 

 首に回された芦戸の腕もそのままに、右腕を構えて黒霧の周囲を方囲し、定礎し、結界を成形する。

 

 最優先でクラスメイトへの危険を排除。

 次点でターゲットであるヴィランの排除。

 危険排除に至っては込められた呪力を全て使用して消滅しようとも構わない。

 それが、唯守の下した命令。

 危険は排除し呪力も残っている今の状態は、次点の命令が優先される。

 おしむらくはその守るべき対象に教師が含まれていない事。

 

「……ゲームオーバー、ですね」

 

 そう言い残し、黒霧は結界の中から消えた。

 

 

 

 

── USJ内 倒壊ゾーン ──

 

 

「俺らに当てられたのがこんな三下なら、大概大丈夫だろ」

 

 ここにいるのは雑魚ばかりだ。

 こんな奴らがオールマイトの相手になるなんて思えねぇ。

 あのワープゲートは俺がブッ殺す。

 逃げる手段があるならまずはそれを潰すのが得策だろう。

 

「ダチを信じる……男らしいぜ爆豪!」

 

 あの時、プロヒーローとほぼ同時に反応し、いちはやく戦場に飛び込んだのは、あの猫毛野郎……

 俺はまだ負けてねぇ。

 あんのクソ野郎が……!

 

「ヴィランの全排除を確認」

「「は?」」

 

 キョロキョロとあたりを見回しているのは、今の今まで俺の頭に浮かんでいた野郎と同じ顔。

 だが、どこか空気が違う。

 

「おぉ!間!お前広場で戦ってたんじゃなかったのか!?」

「出入口ゾーンの安全は確認済みなので移動を」

 

 ボフンと音を立てて、鳥になりやがった。

 

「うぉ!なんだコリャ!?間の個性、なのか?飛んでいっちまったぞ?」

「チッ…!知るか!俺は行くぞクソ髪やろう!」

 

 そう言ってビルの外を見れば、転がっている三下が数人。

 あの広場から移動してきて、潰して回ってやがんのか?

 なんなんだコイツは……!!

 いったい、どのくらいの差がありやがるんだ……!!

 クソが……!

 待ってやがれよクソ野郎。

 俺が、ナンバーワンになるんだ!!

 

 

 

 

── USJ内 土砂ゾーン ──

 

 

「……間か?」

「主人の命令はヴィランの排除。排除対象は確認できず」

「? 何言ってんだ?」

 

 頭にハテナの浮かぶ轟ではあったが、突如として現れたクラスメイトの謎発言よりも、優先すべき事があった。

 

「俺は広場に戻るが、お前はどうするんだ?」

「呪力使用、助力の必要なしと判断。次の場所へと移動開始」

 

 ボフンと音を立てると白い鳥の姿となり、空へと飛んでいった。

 

「!?」

 

 目の前で鳥へと変わった間唯守に驚くも、先へと急ぐ。

 

 なんだこれは。

 これもアイツの個性なのか?

 アイツの底が全く見えない。

 俺との戦闘訓練もどこか手を抜かれていた気がする。

 俺をサッサと結界で拘束してしまえば、決着はもっと速かった筈だ。

 

 敵わない。

 そう思ってしまった。

 こんなところで……

 俺はクソ親父に見せつけなくちゃならねぇのに。

 間唯守。

 俺はまず、アイツを超える…!

 

 

 

 

── USJ内 山岳ゾーン ──

 

 

「男のくせにウダウダと……」

 

 転送された。

 きっと、ワープの個性。

 ヤオモモとウチは昨日の経験もあり、ヤオモモから柄付きの鉄パイプを受け取り応戦している中、叫びまわりながら自分は頼りにならないと吐き捨てる男、上鳴に少しイラついてしまった。

 とはいえ、その個性は強力なのは確かなんだ。

 

「じゃあさ、人間スタンガン!」

 

 背中に軽く蹴りを入れてやり、ウチらじゃ受けきれなさそうな身体の大きいヴィランにぶつけてやると個性を発動し、上手く敵を倒してくれた。

 

 その前に上鳴の言ったセリフ。

 俺は電気を纏うだけ、"放電"できるが。

 

 チラリとヤオモモを見ると軽くうなずいてくれる。

 良かった。

 考えている事は同じ。

 じゃあウチは、ヤオモモを守らないと。

 

「ビートウェイブ!」

 

 ブーツから爆音を放ちヤオモモにヴィランを近寄らせない。

 

「できた!!」

 

 考えている事は同じだと思うけど、どんな形状のものかわからないのでヤオモモへとピッタリとくっつくと、その背中がムクムクと盛り上がり、コスチュームは背中から裂け、中からはゴク厚の絶縁体のシートが飛び出してくる。

 

「上鳴さん」

「やっちゃって」

 

 ニヤリと笑ったアイツはバチバチとスパークを撒き散らしながら、その両腕を振り下ろした。

 

「これなら俺は……クソ強え!!」

 

 上鳴の無差別放電により、シートを捲ると倒れ伏したヴィランと、

 

「うェ〜〜い」

 

 あほヅラでサムズアップを両手で繰り返し繰り出す上鳴と、

 

「他の方々が心配…合流を急ぎましょう」

 

 まさに発育の暴力。

 あらわとなったウチとは比べ物にならない双丘を揺らしているヤオモモが目に入る。

 

「服が…超パンクに……」

 

 でも、たしかに合流しないと。

 とはいえ、ここの安全を確認しておこう。

 

 イヤホンジャックを地面へと刺し、音を探るが……

 

「ヤオモモ!まだいる!上鳴を──」

 

──ボゴッ!

 

 しまった!

 ウチの耳には大きく聞こえた今の音。

 放電を地面に潜りやり過ごしていたであろうヴィランが出てきた音。

 

 ヤオモモも咄嗟にネットを上鳴に投げこちらへ引き寄せようとするも、相手の方が速い。

 でも、まだ身体の半分は地面に埋まってる。

 なら!!

 

「ビートショック!!」

「耳が…!?」

 

 爆音を地面へと流し、振動で敵の動きを止める。

 だが、初めに出てきたやつに続き5人のヴィランが這いずり出てきている。

 その隙にヤオモモは上鳴の回収には成功したみたいだけど、地面を伝わせるとどうしても威力は落ちる。

 

「ガキが…やってくれんじゃねェか…!」

 

 さっきまでの奴らより強い。

 余裕があるし、油断はしていない。

 それでいて、先頭であのバチバチとしてるスパークは上鳴と同じく、電気系の個性か。

 近寄らずに立ち回るのが上策だけど、ウチのイヤホンジャックは既に警戒されてるし……

 

「結」

 

──ピキィン!

 

 最近再び聞き慣れはじめた声と、昔聞き慣れた音。

 それだけで安心してるウチがいる。

 こんな時、このタイミングで現れるなんて、マジでヒーローじゃん。

 

「最優先の対象を確認。主人から呪力を搾取。ヴィランを排除する」

 

 ん?

 唯守じゃない?

 唯守であって唯守じゃない何か。

 最優先の対象ってのが何かはわからない、けど。

 

「唯守、結界そのまま!他にも繋げて!見せてやろ!」

「命令を主人から最優先対象に変更……了解」

 

 これ、この間の『しきがみ』ってやつかな?

 にしても、唯守ソックリにできるし、結界まで使えるとか。

 ウチが最優先対象……?

 っと、そんな場合じゃないね。

 

「結」

 

 這いずり出てきたヴィランたちと、先頭にいる電気個性のヴィランたちの頭を細長い結界で繋いでいく。

 

「キラービートボックス!!」

 

 唯守の結界へとイヤホンジャックを突き刺し、爆音を流す。

 音と言う名の振動は結界内を駆け回り、結界から結界へと移動して反響していく。

 その中で、ヴィランは呻き声を上げ、両耳から血を流して倒れた。

 

「耳郎さん!間さん!凄いですわ!」

「いや、コレたぶん唯守じゃない」

 

 そう言って唯守の形をしたモノを指差すと、ウチを見ていたヤオモモは唯守へと視線を向ける。

 

「出入口ゾーンの安全は確保済みです。移動しましょう」

 

 そう言った、普段と口調の全く違う唯守に怪訝な顔を向けているヤオモモは少し笑った。

 

「もう驚きもしませんわ。さぁ、急ぎましょう」

 

 最後に見た唯守のあの目、キレてたな。

 あのままじゃ、除籍にされかねないし不安だけど、きっと大丈夫だよね。

 

「うぇい?」

 

 アホになってる上鳴を見て、ヤオモモと二人で顔を見合わせて再度笑いあうと先を急いだ。

 

 この時のウチはまだ、あんな事になるなんて思ってもみなかったんだ。

 

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