現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

31 / 57
28話 呪い師

 

 

 

「はっはっは!!緑谷にはギリ届かなかったけど……唯くん!私の勝ち〜!!」

 

「「「は?」」」

 

 四、五、六位と団子状態でゴールした轟、爆豪、響香の三人は口を揃えてそう言った。

 

 そんな俺たちに、ピースピースと笑顔な透。

 全く予想していなかった伏兵に抜かされていた事に驚いていた。

 轟は「どーなってんだ」とつぶやきながらも緑谷へと視線を向けており、爆豪に至っては「デクが一位で、俺が…五位だと……」とワナワナと震えている。

 

「気づかなかったでしょー?作戦大・成・功!!!」

「いや…マジで全然気づかなかった……はぁ。どこにいたの?」

 

 そう聞く響香に、緑谷の鉄板に飛び乗って引っ付いていたのだと答えている。

 緑谷も一位を取るのだと熱がこもっていたから気づいていなかったのかと驚いていた。

 もしも透が引っ付いてなかったら、緑谷のブッチギリだったな。

 

「唯くんの前に出るのはギリギリって決めてたからね!最後のあの驚いた顔!!響香ちゃんにも見せたかったなぁー」

「うるせー」

 

『大番狂わせ!!伏兵は忍びの者か!? 第二位は、透明人間、A組の葉隠だぁーー!!!

 その後の順位は三位に間、四位に轟、五位に爆豪、六位が耳郎の順になってるぜ!!』

 

 三位。

 正直有利な条件だったと思う。

 なのにこの順位は完全に俺の立ち回りミスによるもの。

 初め止まってしまったのと、ロボで使った無駄な時間は要らなかった。

 ほんと、いらない事した。

 あと、ずっとニヤニヤと笑ってる透……

 ちょっとムカつく。

 

「ほら、言われてるぞ。もっと忍べよ」

「さんざん忍んでたの! 今は余韻に浸らせてー」

 

 けどまぁ、本当に嬉しそうだし、仕方ないか。

 負けは負け。

 ただし、それは予選の話。

 

「ん、今回は負けた。でも、最後に勝ちゃあいいんだよ」

「そ。まぁ今回は、してやられたって感じだけど」

 

 俺と響香の言葉にも、透はニヤニヤするのをやめて、ニコニコしていた。

 

「まぁまぁ。今回は私の勝ちなんだから、大人しく認めときなって!」

 

 コイツ、どんだけうれしーんだよ!

 

 

 

 

 勝った!勝てた!あの唯くんに!

 やばっ!うれしーーーー!!

 第一部、完!!!

 次回の葉隠にゴキタイあれ!!

 

 そう。

 自分でもわかる程浮かれている。

 浮かれすぎるのもそこそこにしないと、次があるのだ……

 言われた通り、残る試合も勝たなきゃいけない。

 というか勝ちたい。

 今回は緑谷の鉄板にお邪魔できたから、正直なところ運が良かったのもあるし。

 インビジブル本気モードなら唯くんの目も欺けるようになったのはデカい。

 驚かせたくて全く見せてなかったのだけど、気づかれた。どうやら少しは見えてるみたいだけど

 

 響香ちゃんとこの2週間特訓してたのは知ってる。

 私だって、呪いの特訓を毎日欠かさず行ってたんだ。

 一泡ふかせることができたのは特訓のおかげと、鑑さんのおかげだな。

 

 

──

 

 

 唯くんちの隣の部屋で出会った時の事だった。

 茂守さんのお友達だと言う鑑さんと出会ったあの謎空間。

 メイドさんが出してくれた紅茶を飲みながら、既に三人が入り込んできていると言われて待っている時の事。

 

「そんな事もわかるのは、個性じゃなくて、呪いですか?」

「葉隠さん?」

 

 でも、誰かが入ってきたかどうかなんてどうやって認識してるのかもわからないし、何よりも、この空間とメイドさん達から感じるのは式神や結界術と同じ感じがする。

 

「ほぉ。まぁ、どちらもと言っておこう。形ないものが呪力。形あるものが個性。結局はどちらも同じだ。名前があるか、まだ無いかの違いとも言える」

 

 形のあるなし、名前のあるなし。

 つまり、個性になる前の力が呪力って事?

 

「どちらも結局は、同じもの?」

「そうとも言えるし、そうでないとも言えるな。君は……随分と呪いの才能があるようだね。ただ、もったいないな」

「ちょっと…なんのお話をされているのか……」

「君には、少し難しい話かもしれないね。お嬢さん」

 

 ヤオモモが置いてけぼりなのはわかってる…けど!

 ここでの話は絶対に次の段階に私を押し上げてくれる気がする。

 だから!

 

「もったいないって、どういう意味ですか?」

「なに。せっかくの十徳ナイフをナイフとしてしか使っていなような話さ。呪いも、個性と同じく無限の可能性を秘めた力。ただ一つの事の為に使うのは、もったいないだろう? 君のお友達はいろんな事をしてないか?」

 

 いろんな事を……

 たしかに。

 結界と式神は絶対に別物。

 式神でできる事だって、いっぱいある。

 でも私は自分を透明にさせる事だけに注力していた。

 じゃあ、視覚からだけじゃなくて、存在ごと希薄にする事ができたら……?

 

「……そっか! 込める時のイメージを変えれば、いや、もはや纏えば良いのかな? でも、それ用の呪具がないし……」

「呪具はただのきっかけだ。呪具師がいなくとも呪いは起きる。考え方ひとつだよ」

 

 もしかして、私にもできる……?

 いや、確実に、私にもできるんだ。

 呪いはイメージ。

 すなわち想いの力。

 そう。

 私はやればできる子、葉隠透だ!

 

「まじない…? 鑑さんも葉隠さんも、さっきから、いったいなんの話をしているんですの?」

 

 ヤオモモはちんぷんかんぷんだったから申し訳ないけど、私にとっては大収穫!!!

 

 唯くんを驚かせる事ができるかも!

 これから試す事がいっぱいだーーー!!

 

 

──

 

 

 続々とゴールして来たなー。

 第一種目とはいえ、まさか私が雄英体育祭で二位になるなんて、雄英を目指し始めた頃は思いもしなかったな。

 諦めていたつもりなんて無いけど、雄英に入ったところでどこか満足してた自分がいた。

 でも、私はやっぱりヒーローになりたいし、ここでの成績は今後の自分に作用するんだ!

 よしっ!

 次の試合も負けない!

 上位をキープ!!

 気を抜かないようにしなきゃ!!

 

 

 そして発表される第二種目、それは騎馬戦。

 二人から四人まででチームを組み、この障害物競争での順位で加算されたポイント合計の鉢巻を騎手が装着しての鉢巻の奪い合いとの事。

 

 チーム戦と言う事がネックなのと、もうひとつは……

 

『…………』

 

 うっわぁ〜〜。

 あれはきついだろうなー。

 怨念のように込められた視線が、緑谷一人へと注がれているのを見て思う。

 

 そう、一位である緑谷のポイントは、1000万。

 二位の私の210ポイントに対してとんでもない差だ。

 プレッシャーもきっとハンパないはず。

 だって、二位の私なんてほっといて、一位である緑谷のチームを倒せば、余裕で勝てるんだから。

 

 でも、緑谷と同じチームになって逃げ切ればどうだろう?

 う〜〜ん。

 でもそれだと私のインビジブルの効果を下げちゃうな。

 緑谷に注目が集まるなら、私は透明、私は無敵。

 そして、この騎馬戦を制するには、絶対に仲間にしておかなきゃいけない人がいる。

 

 その後、15分のチーム決めのための交渉時間が設けられ、私は真っ先にその存在の元へと向かった。

 たぶん、というか確信してるけど、人気だから先に取っちゃわないと!

 案の定、だいたいのA組から声をかけられてる唯くんの元へと辿り着いた。

 響香ちゃんは、いない。

 私もちょっと考えたけど、打倒唯くんみたいな感じしたもんな。

 そして、なぜだか全員断ったみたいだ。

 

「あれ? 断ってよかったの?」

「ん。考えてることは同じだろ? 二人の方が、楽に動ける」

 

 確かに、考えてることは同じだね。

 個性ありのなんでも騎馬戦において、透明な騎手と、空をも駆け抜ける事ができる最強の騎馬。

 うん! まさに無敵!

 

「そーだね。流石は私の天敵で、相棒!」

 

 それに、なんかすごい嬉しい。

 

「そんじゃ、残った時間で作戦考えるか」

 

 ふっふっふ。

 これで二回戦も、もらったぁ!!

 

 

 

 

 唯守と組む?

 いや、あのルールと様子だと……

 やっぱ透と組むよね。

 

「耳郎、俺と組もうぜ!」

「ちなみに、なんで?」

 

 そう言って、ウチに声をかけてきたのは瀬呂。

 

「お前と俺がいたら遠距離はお手の物だろ。そんで、暴れ馬を騎馬まで戻してやればさ」

 

 暴れ馬……なるほどね。

 

「いーね。じゃあ、行くのはあそこだね」

「おぉ!」

 

 案の定、こっちも囲まれてる。

 

「爆豪、俺たちと組もうぜ!」

「あぁ?テメェは……耳」

「ジロウだってば。ウチも、このままじゃ終われない」

 

 そう。

 負けっぱなしはいやだ。

 透にも緑谷にも轟にも爆豪にも。

 でも何より、唯守には一泡吹かせてやりたい。

 

「勝ちに行く。全員に。でしょ?」

「ハッ!! いーじゃねぇか!全員ぶっ倒して、一位を取る!!」

 

 性格はまぁこんなんだけど、冷静で力もあるし、A組の中でも唯守と轟に並び対人最強の一角。

 そこで絶対に折れない騎馬として買って出た切島が加わり、ウチらの騎馬は決まった。

 

 轟の騎馬はすでに決まってる。

 唯守は、まさか透と二人で騎馬?

 あれは厄介だなぁ……

 

「耳郎、何見てんだ?」

「ヤバそうなとこ」

「ゲ。葉隠と間……最悪だな」

 

 瀬呂も気づいたらしい。

 透明人間が唯守の結界を足場に空から襲ってきたら躱すのは至難の業だ。

 反則ギリギリかもしれないが、一回戦を見るに、有効と言われることは十分にあり得る。

 

「あそこはウチが音で警戒する。それに、爆豪も飛べる。瀬呂がヘルプもかけられるし、ウチらも強いよ」

「当たり前だ!」

「おぉ!暴れろ爆豪!!」

 

 うん。この騎馬隊は強い。

 次は、負けないから。

 

 

 

 

 二位に入ったのはあの葉隠透。

 アイツの呪い、俺の感知エリアでも違和感程度にしか感じなかった。

 もしかして、本当にまじない師かと思うが、まぁ、アイツは気にしなくて良いとのお達しだし、放っておこう。

 

 あと、ここらで負けときたいんだが丁度いいメンバーはいないか。

 まさかチーム戦だとは思わなかったが、丁度いい具合に気持ち悪いのがいるな……

 

 一回戦の時にも感じた、妙な感覚。

 精神支配系の個性か。

 頭領から聞いた、最もやばいタイプの能力者。

 信じられないくらい昔の話らしいが、数百人規模の精神を乗っ取り操った奴とか、子供に乗り移り何百年も生き続けてきたやつとか。

 その話を聞いた時、真っ先にアンタだろと言いたくなったのは内緒だが。

 まぁ、そんな力なら、一度味わっておくのも手か。

 発動の条件やら、精神干渉された後とか気になるし。

 少し、アプローチかけてみるか。

 

「ねぇ。チームは決まってる?」

「いや、決まってない。お前は?」

 

 声をかけ、目があってもなんの変化もない。

 さぁ、発動の条件はなんだ?

 

「俺もまだなんだ────」

 

 !?

 俺の中に何かが入り込んでくるイメージ……

 爬虫類みたいな……いや違う。

 不定形な声のイメージが、俺の中に入り込んでくる。

 発動条件はおそらく返事。

 奴の問い掛けになんであれ答えればこのイメージが入り込んでくる仕掛けか。

 

「これで三人。よし、ついてこい」

 

 これが精神系の力か。

 後ろの二人も操られているな。

 ついてこいだのといちいち言ってくるところからしても、命令は口頭。

 あいつの言葉に、このイメージも反応してるのか。

 でも、このくらいなら頭領の話ほどヤバい奴じゃない。

 俺ならこのイメージは防げる。

 

 まぁ、従ったふりして適当にやるか。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。