現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

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29話 不穏

 

 

 

 

 緑谷チーム 10,000,305ポイント

  (麗日 /125・常闇 /170・発目 /10)

 

 爆豪チーム  700ポイント

 (切島 /155・耳郎 /190・瀬呂 /160)

 

 鉄哲チーム 650ポイント

 (泡瀬 /135・塩崎 /185・骨抜 /180)

 

 轟チーム 585ポイント

 (飯田 /175・上鳴 /90・八百万 120)

 

 葉隠チーム 415ポイント

 (間 /205)

 

 蛙吹チーム 360ポイント

 (青山 /5・芦戸 /110・口田 /105)

 

 拳藤チーム 315ポイント

 (小森 /45・取蔭 /25・柳 /80)

 

 物間チーム 295ポイント

 (円場 /95・黒色 /65・回腹 /100)

 

 心操チーム 285ポイント

 (尾白 /145・影宮 /15・庄田 /50)

 

 峰田チーム 245ポイント

 (障子 /130)

 

 小大チーム 165ポイント

 (凡戸 /85・吹出 /20)

 

 鱗チーム 125ポイント

 (宍田 /70)

 

 鎌切チーム 70ポイント

 (角取 /30)

 

 

 合計43人の13チームの大乱戦。

 奇数にしたのは4人組の騎馬で固まるのも面白くないからか、ヒーロー科40名に普通科2名、サポート科1名での騎馬戦がまもなく始まる。

 

 

「作戦、大丈夫だよな?」

「当たり前!」

「……突っ走んないよな? テンション高すぎて」

 

 210ポイントの透と205ポイントの俺。

 合計415ポイントは通常4人で組んでいる騎馬に比べてポイントはかなり低くなるはずだが、透と俺は二位と三位だったので現時点で5位のポイント。

 一回戦の終わりの余韻が冷めやらないのか、2人なのにトップ5に位置している事が嬉しいのか、さっきからいつにも増して落ち着きがない。

 

「突っ走んないって! まー、問題はアナウンスだよねー。プレマイ先生にバラされるまでが勝負かな?」

「ん。ルール的には違反してないが、警戒されると釣りづらいしな」

 

 まぁ、ミッドナイト先生の性格からするに騎手が地面に触れなければってとこだろうが、結界の上を透が透明となり自由に動き回り、俺は俺で攻撃を誘い騎馬崩しのレッドカード狙いで動く。

 それが俺たちが騎馬を組んだ上で最大の攻撃方法だが、俺の立ち回りがヒーローらしくないし、「そんな事しなくても勝てる勝てる!」という透の意見と、響香あたりが絶対に邪魔してくるのは目に見えているので二人離れるのはやめようという話になっていた。

 

「大丈夫大丈夫」

 

 ポンポンと左手で肩を叩きながら右手ではグーサインに良い笑顔を決めている透。

 テストの時とか入試の時とかで思うが、透はひたすら肝が据わってんだよな。

 

「その自信はどっからでてんくんのやら。まぁ、俺らならその都度仕切り直して攻め手を変えるだけだしな」

 

 序盤は様子見。

 上から掻き乱しながら適当に釣って狩る。

 我ながらなんとも言えない作戦だけど……

 

「開始直後は完全に透頼りだから、頼むな」

「お任せあれ! 消すものの大きさにもよるけど、私と唯くんと結界くらいだったら30秒は余裕」

 

 スーパーインビジブルとかなんとかブツブツと考えてたみたいだが、技名は決まっていないらしい。

 ヒーローらしく、技名を叫ぶってのはシンプルにカッコ良かったり、なんとも言えずダサかったり様々だけど、俺は「結」ってのが身に染み付いてるからなぁ。

 

「さ、集中集中!絶対勝とうね!」

「ん。そだな」

 

 とはいえ、最初は注目される場所は決まってるから、やりやすいんだけどな。

 

「ま、乗れよ」

「うん!さぁ、ひざまづいて!」

 

 まったく、コイツは……

 

「ちょーしに乗んな!」

 

 

 

 

 3、2、1のカウントダウンとともに、雄英体育祭の第二種目【騎馬戦】は始まった。

 

 まず動いたのは2チーム。

 1000万点に挑みかかったのは鉄哲チームと、牽制し逃げ出す緑谷チーム。

 残りは警戒か、様子見か、他のチームの動きを観察しているようだったが、開始と同時に動いたのはもう1チームあった。

 

「ごきげんよう!サヨーナラー!」

「声で位置バレるだろ。バカタレ」

 

 13の騎馬が縦横無尽に駆け回れるほどの広いステージ上に突如乱立した大中小の結界たち。

 四、五人は入るサイズの結界から手のひらサイズの結界と至る所へと出現した箱に多くの騎馬の動きが止まる。

 

「なにこれ?」

「おい…あいつら消えたぞ!?」

「どこいった!?」

「間の結界と葉隠の透明化……葉隠は自分以外も消せるのか!?」

「こんなのいつどこから来るかわからねーぞ!?」

 

 場は完全に二人の狙い通りとなった。

 この結界群のどこにいるかわからない二人が透明のまま襲いかかってくる事を警戒して動けないでいるチーム。

 ひとまず結界から距離をとるチーム。

 ほぼ全ての騎馬に一瞬の混乱が生じたが、そんな中、全く動きを止めなかったチームがひとつ。

 

「耳!! 役に立て!!」

「いい加減耳ってさ……まぁ今は透と唯守は気にしなくていい。あの辺で何かを蹴る音がするし、空から降ってくるか、たぶんだけど馬ごと結界で釣り上げるつもりかも」

 

 耳郎に叫ぶ爆豪と、左耳のイヤホンジャックで上空を指した耳郎。

 

「どっちにしろヤバいじゃねーか!!」

「大丈夫。行動起こせばウチが教えるし」

「頼もし!」

 

 切島の言葉に耳郎はなんて事のないように答えた。

 2週間、バケモノ相手の模擬戦を幾度となく行ったので昔以上にどう動きたがるかの予想はたてやすくなっている。

 そんな耳郎に隣の瀬呂が声をかけたところで、ハッ! っと笑った爆豪はまずは緑谷チームへと襲いかかった。

 

 

 

 

「待機だ」

 

 試合開始から1分間、端っこの方をノソノソと移動するだけで目立とうとしない。

 いちいち指示出さなきゃ動かないなら狙うとしても後半からだろうな。

 透明女と一緒にやたらと上空を陣取ってる頭領の弟は居場所がバレてないとでも思ってるのか、警戒心も薄い。

 正当継承者だかなんだか知らないが、アイツが頭領より優れてるところなんてあんのか?

 一回戦でもわけわからん事してたし、正直言って──!?

 

「なんだ……?」

「は?お前なんで──」

「今は従っといてやるから黙ってろ」

 

 心操だったかを一度黙らせて集中し直す。

 危険というか、妖気でもなく妙でしかないこの気配……

 合図を送りはしたが、流石に副長も気付いたか。

 それに、アイツ……呪力が跳ね上がった。

 アレなら確かに、頭領の弟かもしれないな。

 

 

 

 

「ぜっけーぜっけー!! どこから狙う?」

「そりゃあ白熱してきて警戒の薄れたところだろ」

 

 お、爆豪が爆破で騎馬から完全に離れて飛んで緑谷に挑んだが、アレはセーフらしい。

 瀬呂のテープと俺の結界の扱いが同じかはわからんが、アレならいけるかも──!?

 ゾワリと背筋に疾る嫌な感じ。

 危険なわけじゃない。

 ただ、コイツには覚えがある。

 あの死にかけた時、俺を見ていた奴。

 

「透、降りろ」

「へ? なんで? わっ!」

 

 肩車状態の透の細い腰を手を上げて掴むと無理やり結界の上へと降ろす。

 

「………なんかようか? 今体育祭中なんだけど」

「思ったより、気づくのが早かったぞ、ぼうや。別に用などない。ただ眺めに来ただけだが……ふむ。やはりおもしろい娘を連れているな」

 

 黒いハットに黒い服。

 黒い菱形格子柄が入った、やたらと長い紫色のマフラーをした男。

 少し年上くらいにしか見えない容姿をしているが、得体が知れない。

 なんだコイツ……透のこと言ってんのか?

 ならばと、警戒を最大に、呪力を全力で練り上げ、"纏う"。

 

「思っていたよりは、力もあるじゃないか。ただ、"絶界"には程遠い」

「なになになに!? この人あの時いた人じゃん!! でも、こんなに若かったっけ?」

 

 ヒョコリと俺の腰から頭だけ出してそう言った透の頭をグイッと背中に押しやっておく。

 

「透、後ろ警戒。なにしてくるかわからん」

「う、うん」

 

 緊張感がないようにも思えたが、気を失ってた俺と違って透は見覚えがあるようで、緊張した様子ですぐに言った通りにしてくれた。

 すると、下から猛スピードで迫ってきたのは、緑色の髪をした綺麗な女の人だった。

 その人は左手から黒い翼を生やして空を飛んでいる。

 常闇と似たような個性。

 というか、妖気が凄いんだが妖混じりか?

 それに下の方でも弱っちいが妖気を感じるし、どうなってんだ?

 

「唯守くん、葉隠さんも下がってなさい。私は刃鳥。時織さんの部下。

──だから、この結界、解いてくれない?」

 

 姉ちゃんの……

 涼しい顔して言ってくれるな。

 

「良く言うよ。簡単に壊した癖に」

「……臨時とはいえ、私は雄英の関係者。だから、今後私への攻撃はやめてね。今葉隠さんを降ろしてる事も黙っててあげるから」

 

 下からの飛来物を認識してすぐに結界を成形したが、容易く貫かれたから、この人はここに居る。

 さっきのよりは強度は上げていたものの、苦も無く破壊してくるだろう事は見え見えだった。

 が、雄英の臨時…関係者って事は、教師ではない?

 

「わかった。ただ、コッチに手ェ出してくんなら容赦なく、滅してやる」

 

 涼しい顔したまま、コクリとうなずいた刃鳥さんはキリッとした顔を怪しさしかない霊体へと向けた。

 

「さて。私があなたを排除します」

「舐められたものだな。お前じゃ俺は止められんよ。千年前ならいざ知らず、現代の術者はまともなのがおらんからな」

 

 ポコポコと霊体は黒い球を生み出していく。

 

「……それは、あの人も含むのかしら?」

 

 刃鳥さんも覚悟を決めた目をしてる。

 どうやらあいつの言う通り勝てそうにはないのか、俺に逃げるよう式神を飛ばしてきた。

 あの球、俺の結界と同じ…なんかじゃない。

 触れたらヤバい。

 纏う結界を維持しながらじゃないと簡単に消えてしまいそうな気が──

 

「ちょっと! 会話できるんなら流石に今はやめてよね!この体育祭にこっちは人生かかってんだから!!」

 

 俺の焦りも、この場の空気の何もかもを無視して、俺の脇の下から顔を出して言い放った透。

 そうだよな。

 俺に巻き込むわけにもいかないし、コイツの相手は俺が……

 

「その娘………

 ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!

 これは面白い!まさか継承者と言うのが、本当の話だったとはな!!」

 

 突如笑い出した霊体に警戒を強め、透を完全に結界で囲う。

 継承者がなんだと言うのかは知らんが、ここでやられる気もないし、刃鳥さんも殺る気は十分らしくその黒い翼は羽の一本一本まで研ぎ澄まされていた。

 

「いきなり大笑いって、イカレテル人?」

「だろうな。俺が消してや──」

 

 だが、そこでとんでもない威圧感が空を覆い尽くす。

 この場は一瞬で全員の首筋に鎌でも押し付けているのではないかと言う濃厚で密な空間と化した。

 

「手、出さないんでしょ?」

「……まだ口しか出してはおらんぞ」

 

 見慣れた姉が、巨大な黒い蜻蛉に乗ってそこにいた。

 姉は既に念糸で霊体を簀巻きに縛り上げていた。

 登場といい、その動きが俺にも僅かに捉えることしか出来なかったことからも、完全に本気のようだ。

 

「うわっ!ヤバいよ唯くん! でっかいトンボ!!! 裏側とか、気持ち悪そー」

 

 こんな時でも平常運転な透が、アイツにとってのなんだと言うんだ?

 

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