現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

39 / 57
36話 出揃う四強!

 

 

 

 雄英体育祭も佳境を迎え、最終種目、一回戦の勝者が出揃った。

 

 第5試合 上鳴電気 VS 葉隠透

 葉隠の映し出した投写体に対して、最大放電を行う前に失神させられた上鳴の敗北により、葉隠の勝利。

 

 第6試合 常闇踏影 VS 八百万百

 常闇の先手必勝により、準備していたものを使わせてもらえなかった八百万の敗北。常闇が勝利。

 

 第7試合 鉄哲徹鐵 VS 切島鋭児郎

 【スティール】の個性を持つ鉄哲と【硬化】の個性を持つ切島の個性ダダ被りの2人の真っ向からの殴り合い。その結果は引き分けとなり、第8試合の後に行われた延長戦、腕相撲勝負により、勝利した切島が二回戦へと駒を進めた。

 

 第8試合 麗日お茶子 VS 爆豪勝己

 麗日の捨て身で作った作戦、【爆破】により砕かれたステージの瓦礫を浮かせて貯めた物を一斉解除し降り注がせる、流星群も爆豪の大規模爆破により攻略をされ、体力の限界を迎えてダウン。爆豪の勝利となった。

 

 

 そして、今は第二回戦へと向けた小休憩の最中。

 

 

 

 

 

「葉隠さん、すごかったね。拳を打ち込む正拳突きの姿勢もすごいしっかりしてたし、なによりもなんだったの?あの瞬間移動は?」

 

 尾白が透へと質問しているが、そうだよね。

 ウチも思った。

 まさか服を脱いだのかと一瞬思ったけど、完璧な残像を映し出し、開始直後に綺麗に顎を撃ち抜く一撃必殺の拳。

 無防備だからこそアレは効く。

 もしもウチが相手だったら、はたして音で気づけただろうか。

 

「えっへん!格闘術は入試の時もなんとかなるくらいに習ったからね!

 それに、あれは騎馬戦の時のまさに本気バージョン!その名も──」

「分身、という事であれば試合開始時に開始位置にいなかったということ。それならば、反則なのではないか?」

 

 自慢げに、その腰に手を当てて、見えないけど鼻も伸ばしてるであろう透は飯田の一言に、今はきっとムッとした顔をしてるのだろう。

 

「でもでも、個性を使用しての技だからセーフってことじゃないかな!?それに勝者のアナウンスがあったし……アレ?私の勝ちだよね?──ね?」

 

 今はそう言って、さっきからなんか変な感じのする唯守の肩に後ろから縋るようにそう言った。

 

「なー耳郎。最後に間に喰らわせたのはなんだったんだ?」

「アタシも気になった!ねーねーあれなに!?」

 

 そんな透と軽くあしらう唯守を見ていたウチに、上鳴と芦戸が声をかけてきたみたい。

 

「あー、アレはウチのイヤホンジャックの音波振動で腕ごと震わせて、殴ったんだけど…」

 

 自身の腕にも負担のかかる決め技だったのに、唯守の個性に防がれたんだよねぇ…

 そう少し落ち込んでいたのだが、

 

「なんだったんだよアレ。俺も知らねーなんて、一体いつコソ練してたんだよ?」

 

 ブスっとした顔でそういった唯守。

 さっきとは違って、変な感じがしない、いつもの唯守だ。

 

「そーだけどさ、とっておき防がれたウチだって悔しーんだから」

「つっても、アレ滅茶苦茶痛かったっての」

 

 唯守は笑ってそう言って、私もそれを見て思わず笑う。

 修行とは違う、落ち着いて話せるのは久しぶりな気がするのは、あの修行がどれだけ濃密だったのかを物語っていた。

 

「あっ!ねーねー唯くん!」

「こんどはなんだー?」

 

 最前列に座るウチらに、先ほど視線を逸らした一つ上の段に座る透がいつものように手をパタパタと振っている。

 

「タマーーにある唯くんの無敵時間ってなんなの?」

「無敵時間て」

「あのスター状態のやつな!」

 

 上鳴と切島の2人はその透の言いようにツッコんでいる。

 たぶん、唯守の個性の事を言ってるのだろう。

 ウチとの時は露骨だったし、騎馬戦の時も、氷漬けまでのタイムラグをかなりの人間が疑ったことだろう。

 よく内緒にしてくれと言っていた茂守さんを思い出すが、唯守は果たしてなんと答えるのだろうか。

 

「ん?最後のやつか?」

「そーそー!もしかして、結界を薄く纏うとか、そんなこともできるの?」

 

 結界を、纏う…?

 知らないとそんな発想になるんだ。

 でも、時織姉が本気の時、あの空気が重くなる感覚って、もしかして…

 

「……そーだよ。ただ、長く持たないし、結局ダメージくるし、あんまし意味ないんだけどな」

「ケロ。でも、そのおかげで私は救われたわ」

 

 明後日の方を向きながらそう答えた唯守に、蛙吹は本当にありがとうと頭を下げていた。

 その後ろで、透とジャレ合う唯守を睨み殺すように見ていた峰田の顔も少し綻んでいる。

 

「いや、俺がもっと強かったら、緑谷もケガすることなんてなかったんだ…。俺がもっと強ければ…」

 

 嘘つく時、目を合わせない癖は変わってないな。

 それに、こうなっちゃうところも変わってない。

 唯盛さんが亡くなった時から少し変わっていったように見えたけど、それからすぐに守実子さんもいなくなり、時織姉も後を追うように、書き置きひとつ残して家を出て行った時なんて、ひどかったな。

 

──ビシッ!!

 

「いってぇ〜…なにすんだよ?」

「それ禁止って言ったよ!唯くん、私たち守られるだけじゃないんだからね」

 

 何か空気が重くなるのを感じた瞬間に、透のチョップでそれも霧散したみたい。

 蛙吹も少し怒っているのか、諭すように唯守へと苦言を呈し、もーよくわかんないけど峰田は唯守のスネを蹴っているようだ。

 

「オイラは、危ない時は守ってくれよな!頼りにしてんだから!けど、葉隠との距離が近すぎんだよチクショー!」

「イテェってば。俺だってそう思ってるよ!透のせいだろが!」

「そーゆー名前呼びだってそーなんだよっ!」

「私、あのタイミングで胸を揉まれた事、忘れてないわ」

 

 蛙吹の一言で女子はみんな寒い目で峰田を見ており、負けじと峰田は奇声を上げながら唯守と肩を組んでいる。

 

「……おっぱい、最高だよな?」

「……今それに答える勇気ない。ゴメン」

 

 チラッとヤオモモ見た後に、ウチを見るのなんなの?

 なかば無意識で放ったイヤホンジャックでのたうち回る2人だった。

 

 

 

 

 

 

 第二回戦の第一試合。

 超パワー緑谷ともはやチートの派手個性、轟の試合。

 なんか確執でもあるのか、やたらと言葉を交えながら戦う2人だったが、変化が起きたのは、轟が戦闘で使うことのなかった炎の個性を使い始めたこと。

 それを使うようになった轟の炎は散々氷散らかした冷めた空気を熱膨張させる結果となり大爆発。

 最終的に緑谷の場外負けとなった。

 その戦いの余波でステージ場はボロボロ。

 今はその補修作業の時間との事で、控え室にて呪力を練り上げる。

 

 俺に、アレほどのパワーを受け切ることはできるのだろうか。

 いや、受ける必要もない、か。

 

 それに今までもそうだったけど、これからは、本気で()る。

 もう、弱いままではいられない。

 

 心を静かに…深く、深く、深く──

 

 

 

 勝つ。

 何もさせずに。

 

 

 

 

『待たせたな!!次の試合!A組間唯守 VS 同じくA組!飯田天哉!!』

 

 聞き慣れてきたアナウンス。

 対戦者の2人は向かい合い、試合開始の合図を待っている。

 

「間くん!いい試合にしよう!」

「………」

 

 距離さえなければ握手でもする勢いでそう言った飯田に対し、唯守は答えない。

 右手の人差し指と中指を立て、他の指は強く握り込まれている。

 何も答えてはいないが、ブツブツと呟いているようで、その言葉は飯田には聞き取れないようだった。

 

「君も本気のようだな。こちらも、全力を尽くす!!」

 

 【エンジン】の個性の源である、ふくらはぎについているエンジンのトルクはいまだにゆったりとしている。

 騎馬戦でも使った必殺、トルクオーバー・レシプロバーストへの準備は整っているよう。

 

『攻めの飯田と、守りの間!どっちが勝つか!試合!スターーート!!!』

 

 アナウンスと同時に、飯田はトルクの回転数を急激に上げ、目にも止まらぬ速さで唯守の背後を取ろうとするも、おかしな事にまったく動かないでいる。

 

──プスン…

 

「なに…!──これは!?」

「起点はエンジン、そんな事は考えなくてもわかる」

 

 小さな緑色の結界が、飯田のふくらはぎについている6筒2対、計12個の排気筒全てを塞いでいる。

 唯守はそういうと、振り上げられていた右手を、その2本の指を伸ばしたまま、飯田に向けて振りおろす。

 

「滅」

「ぐぁ!?」

 

 その小さな呟きとともに、エンジンは煙をあげ、飯田は膝をついたところで、地面へと向けられた視界は薄い緑一色だということに気づいた。

 

「しまっ──」

「結」

 

 膝をつく飯田の眼前から、上半身全てを押し出すように結界は生成され、個性も使えない飯田はなす術もなく、場外へと吹き飛ばされた。

 

『しょ、勝者!間〜!!!』

『打撃系のダメージのある結界の収縮で起点を叩いた、上手い攻撃だ』

 

 相澤の言うとおり、飯田の行動の要である部位を破壊され、空中へと押し出されればなす術もない。

 飯田は悔しそうに地面を叩いている。

 

「少し遅い…威力を気にしたからか…」

 

 そんな飯田とは対照的に、唯守はブツブツと呟きながらゆっくりとステージを後にした。

 

 

 

 

 

 今のはかなり良かったと思う。

 自分でも驚くほど心が落ち着いていたし、方位のターゲット指定もうまく排気筒であるマフラーだけにでき、定礎も狙った位置で素早く成形まで持って行けた。

 精度、強度があがれば結界術の基礎はできたと言ってもいい。

 もちろん強度なんて上を見ればキリがないが、みんなにあって、俺にないもの。

 それは、必殺技…か。

 

『そんなもん知るかよ。頭領みてりゃわかんじゃねぇの?』

 

 俺の質問にこう返した影宮。

 

『完全変化…?あれは、体内の妖力が暴走して、自分でもわけわかんねぇ感覚になるんだよ』

 

 自分でもわけわからない。

 それは、あの響香と襲われた【増殖】のヴィランの時と同じ感覚か?

 

『俺に聞かれても知らねぇよ。内にあるものが外に溢れただけじゃねーのか?呪力に関してなんか、それこそあの透明女にでも聞けよ』

 

 バカバカしいと言いながらもその場を後にした影宮。

 そして、試合開始前に透の言った纏う結界という話。

 最後に、USJで妖が言っていた、【絶界】とかいう別の結界師の技。

 

 わからん。

 必殺技だと言って偉そうな透が浮かび、必殺技だったのにと悔しがる響香が浮かぶ。

 

 俺も、そういうかっこいいの欲しい…!

 結界の形を変える。

 練習してたけど、できた事はない。

 ただ、できたところで意味は果たしてあるのか。

 とはいえ、【心】が大事な事は手記からも散々わかるし、俺のテンションに左右されるなら、アリなのか。

 

 よし。家帰ったら早速練習だ。

 だが今はその前に、対轟戦に向けてまた心を落ち着かせないと。

 

 

 

 

 

 スタジアムの外に出て、またゆっくりと意識を研ぎ澄ましていく自分を見るものに、今の唯守は気づかない。

 

「……やっぱり、戦いの中で段飛ばしで成長していくタイプかしら?」

「さぁ…。前衛での戦闘に参加できないような俺じゃあ、もうわかりませんよ」

 

 いじけていたと影宮から報告を受けた刃鳥と翡葉は、そんな唯守を末恐ろしい目で見ていた。

 

 

 

 

 

 うん。どーしよう。

 

『続いての試合、透明分身瞬間移動、現代に生きる忍者 葉隠 VS もはや無敵なんじゃねーか、ダークシャドウ常闇!!」

 

 私の攻撃は接近戦主体。

 対して常闇くんは近中距離に対応可能なダークシャドウを持ってるし、攻撃力も防御力も高い。

 今までの戦いを見るに、本当に無敵なんじゃない!?という個性。

 なら私がやるべき事は騙して、驚かして、まずは四つの目から逃れる必要がある。

 でも、ダークシャドウって匂いもわかったり?

 

「忍者とはよく言ったものだ。強者として、俺も全力で挑ませて貰う」

「えへへ!ありがとっ!」

 

 あ。

 思わず返事をしてしまい、私がサイクアウトじゃない事はもうバレた。

 開始前から旋回してるダークシャドウもいるし、うーーーーん。

 

 初手からアレでいくしかないね!

 

『試合〜開始(スタート)!!!』

「行け、ダークシャドウ!」

 

 思ったとおり、速攻で決めてくるのはヤオモモとの戦闘からも予測はついた。

 今はジャージも透明化させていない。

 そんな私が消える前に、決め切りたいんだよね?

 でも、今回は違うよ!

 

「集光閃光!アイブレイク!!」

 

──カッ!!!

 

「何…!?」

 

 

 

──

 

 私の個性は【透明化】。

 モノを視覚的に見ると言う事と、透明と言う事は、どちらも光に関係する。

 人間の目は物体に当たった光の反射したものを見て色を判断しているから、光のない暗闇ではモノを見ることはできない。

 だから、私の【透明化】という個性は自分に当たる光をそもそも反射して見えなくしているか、反射した光を周囲と同じにしているのではないかと考えた。

 

 それからは、実践あるのみ。

 光をどうにかできないか考えて、自分に懐中電灯を当てて、反射させるか、光を集めたりできないなど、色んなことを試した。

 鑑さんに言われた、個性もまじないも一緒だと言う事。

 その言葉を聞いてから、私は今までよりも色々なことを深く考えることとなった。

 

 今はまだ、この透明の身体に当たる光を集めて放つくらいしかできないけど、小さな事でもできた事実があるってことは、もっともっとすごいことができるってこと!

 

 

──

 

 一瞬の閃光により、常闇くんもダークシャドウも、眼を開けることもできていない。

 透明であろうとなかろうと、私の事は見えていない。

 だから、簡単に近づいて…!

 

「くっ!ダークシャドウ…!」

「やぁぁぁぁぁあっ!!」

 

 私の背負い投げの方が一瞬早かったみたい。

 ダークシャドウから伸びる黒い腕は私を掴んでいるけど、常闇くん本体はステージの下へと身体を投げ出していた。

 

『常闇場外〜!!ごめん!俺勝つと思ってなかった伏兵葉隠の勝利ダァー!!!』

 

「んん〜〜っ!!やったぁーーー!!!」

 

 遅れて聞こえた勝利のアナウンスに、私は思わずその場で飛び跳ねていた。

 

 

 

 

 第二回戦最終試合

 爆豪 VS 切島

 爆発に耐えるべく硬化状態のまま速攻を仕掛ける切島だったが、爆豪の絨毯爆撃に硬化が緩んだところを攻め込まれて敗北。

 これにより、ベスト4が出揃うこととなった。

 

 

 父親との確執を緑谷に溶かされ、未だ迷いのある轟焦凍。

 家族の中では飛び抜けて弱く、唯強くなりたいと願う間唯守。

 まじないに新たな可能性を見出し、身近な大きな壁である間唯守の隣に立ちたいと願う葉隠透。

 自らがトップであり、No.1ヒーローになるという信念のもと突き進む、爆豪勝己。

 

 一年生全員でのサバイバルも、残すはこの四人となった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。