現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

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39話 間 VS 爆豪

 

 

 

『さぁ、いよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!

 決勝戦!! 間唯守 対 爆豪勝己!!

 今!!』

 

 二人の視線が交錯し、爆豪は両腕を後ろに、唯守はいつもの二本指を立てた手印をキツく結ぶ。

 二人とも、好戦的な笑みをうかべていた。

 

『START!!』

 

 爆豪は開幕から両腕を爆破させての全力ダッシュを決める。

 両手の爆破により、空気を裂きながら一直線に唯守へと向かう。

 

「結!」

 

 が、それよりもはやく自身と対象の間にいくつもの緑色の箱が出現した。

 

「まとめて吹っ飛べやああッ!!」

 

 仕掛けられた結界を破壊しながらも、人間ミサイルのように一直線に唯守へと近づく。

 しかし、唯守の上に掲げられた指が下へと振り下ろされた。

 

「結!──滅!!」

 

 爆豪の目前に、緑色の壁が出現した。

 だが、それはただの目眩しだった。

 破壊すべく両腕を前に突き出した瞬間に爆豪の掌はちいさな結界で滅されたので、ダメージこそ対してないが、まだ上手く飛ぶことができないでいる。

 

「チッ!」

「止めちまえば、良い的だ!」

 

 追撃でもう一度結界を生成するも、完全に囲う事はできずにわずかに外れている。

 とはいえ、そのまま飛ぼうとした爆破の威力は結界内部で行われ、結界は破壊したものの爆豪の掌はダメージを負い、推進力を得られず上手く飛ぶことができないでいた。

 飛行をやめ、地面を強く蹴り反射的に跳び退くも、足元にから結界が生える。

 

「俺の結界は囲うだけじゃないの知ってんだろ?」

 

 飛び退いた先にある結界にバシッと音を立ててぶつかり、その瞬間に爆豪の右脚が地面に縛られたかのように結界で固定されている。

 直後、唯守の手印が爆豪を力強く射止めた。

 

「喰らえ!!」

 

 右足は固定されたまま、左右上下に生成された結界はそれぞれ勢いよく伸びていく。

 

(避けられねぇ…!!)

 

 爆豪の後頭部を、右肩を、左脇腹を鳩尾を打ち付ける。

 

「グゥ!クッソが!!!」

 

 爆豪は避けられないと判断するとすぐに歯を食いしばり、身体の四箇所を打ち付けられながらも、強引に左腕を振り上げ、爆破で前へと転がるような体制となり、足を捉えていた結界を破壊する。

 

「まだまだ!」

「じゃあ、もういっちょだ」

 

 脱出した瞬間に、無理やり身体を捻るもその半身が結界にかかっていた

 

「クソ……!」

 

 唯守はあの体勢でも半身逃げ切った爆豪の評価を更に上方修正しつつも、静かに手を動かす。

 

「さっきよりも、デケェし痛ぇぞ!?」

 

 拘束されていない側の真下に産まれた結界は、先程よりも大きく、それもまた伸びるように生えてきては爆豪打ち付ける。

 

「滅!!」

「グァァ!!」

 

 打ち付けられた半身は僅かに浮き上がり、拘束されていた半身は全体を殴られたかのような痛みが駆け抜けて、浮き上がった身体は沈み込み、爆豪は膝を地につけた。

 

「ハッ、テメェ……まだ俺が火力しか脳がねぇとでも思ってんなら――」

 

 爆豪の掌がわずかに光る。

 

「目ェ、覚ませや!!!」

 

──ドカァアアッ!!!

 

 爆豪は地面への強力な爆破で跳び上がり、結界の発生を安定させないよう高速移動を開始するも、その瞬間、唯守の目は鋭く次の場所を見据えていた。

 

「思っちゃいねぇが、やっぱやるな」

 

 爆豪が空中で旋回しながら叫ぶ。

 

「テメェの強さぁ俺を予定通りに動かすことだけかよ!?」

 

 旋回しながらも爆撃を行う爆豪の攻撃を避けることなく、結界で防ぐと、唯守の口元が動いた。

 

「ん?思ったことなかったが、確かにそうかもなー。でもさ、予定通りなんていかないもんだ」

 

 本来の結界師としての戦い方はまさにそうなのだろう。

 ただ、自分の力ではそうはいかない。

 だが今は、狙った位置に動いている爆豪をみるとそうかもしれないと言う考えは浮かんできた。

 自身は少しづつ位置取りを変えながら、結界をドンドンと出現させては旋回する爆豪を誘導していた。

 ニヤリと笑い、唯守は声を上げた。

 

「でも、今は確かにオマエを制御できてるかも──なぁ!!」

 

──ズァ!!

 

 あらかじめ方位も定礎も行っていた、巨大な二重の結界が出現し、爆豪は完全にその結界の中心にいた。

 

「チッ!逃げ場が、ねぇ…」

 

 爆豪は再度歯を食いしばる。

 それは耐える為ではない。

 次に繋げるための大技に向けての事だった。

 

「なら、テメェの思惑も結界も、全部まとめてブッ壊す!!」

 

 左手を右後方に、右手を左後方に、クロスさせるようにした腕を爆破させ、空中で回転しながら身体を丸めて爆破を収束。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

──ゴォォオアアア!!

 

 滅却される前に、強度マシマシの二重結界を簡単に破壊し、そのまま唯守へと着弾。

 着弾ギリギリで生成していた結界も簡単に破壊され爆風で唯守は吹き飛ばされていた。

 

『麗日戦で見せた特大火力に勢いと回転を加えたまさに人間榴弾!!これは決まったか…!?』

 

「……ッ!」

「解説どうも。まさかこんな簡単に壊してくれるとはなぁ」

 

 場外ラインギリギリで唯守は焼けこげたジャージから伸びる左手一本で結界の壁にぶら下がっていた。

 

『吹き飛ばされたように見えたが、足元の結界を蹴り自ら後ろへと飛んだか』

 

 唯守は飛び降りるとすぐに距離を取り、目を走らせる。

 

「……結結結結!」

「んな紙結界、全部ブチ壊したらァ!!」

 

 次々と破壊される結界群だが、ニヤリと唯守の口角は上がり、この試合で初めて自ら距離を詰めた。

 

「なっ!?」

 

 個性を発動させた結界がひとつ混ざっていた。

 たったそれだけで、なぜか唯一壊れなかった結界に爆豪は進路を阻まれ一度足を止めざるを得なくなった。

 爆豪が止まった瞬間に、小さな結界で両の手首と両足を固定し、サンドバッグ状態の爆豪に殴りかかる。

 

「実は!接近戦!苦手じゃ!ねぇんだよな!」

(……やべぇ、コイツ、初見殺しが多すぎる。でも――)

 

 爆破の個性の発生源である掌の前には立たないままの唯守相手に残された唯一の反撃方法。

 殴られた反動で仰け反った状態で、爆豪は吠える。

 

「舐めんなコラァ!!!」

 

──ゴズンッ!

 

 重い音をさせた爆豪の頭突きが炸裂した。

 攻撃の手が緩んだ瞬間に、溜めた火力を一気に放出し、爆発の反動で手足の結界を破壊して再度距離をとる。

 

 最大に近い火力を連発せざるを得ない状況に、ビリビリと痺れてきた掌。

 さらに固定された状態で殴られた為に傷んだ手首を撫でながら、爆豪は焦っていた。

 

(そろそろケリつけねぇとまずいかもな。まだアイツの個性の底がわからねぇ…)

 

 爆破の間近にいたために両足にダメージを受けた上に、頭突きを受けた頭から軽く流血してる上に、クラクラとしている唯守はそれでもダメージを見せまいと爆豪を強く見据えている。

 

(自爆覚悟でかましてくるとはな…まぁ、性格上考慮しきれなかった俺が悪いな。血は、目には入らないなら問題ないか)

 

 

 爆豪のリスクを知らない唯守と、唯守の結界が鈍ることはないと踏んでいる爆豪。

 2人ともが、同じことを思っていた。

 

((長引かせたら、不利になる))

 

 

 

 

「どっちも超ヤバイね〜!爆豪のガンガンいく感じも好きだけど、間のジリジリ来る感じはゾクゾクする~!」

 

 芦戸さんはこの試合に興奮してるみたい。

 でも、目が離せないスゴイ試合だ。

 みんな、今時点のだけど自分たちのトップが決まる試合から目が離せないでいる。

 それは、もちろん私も。

 

「ああ!やっぱ正面突破ってのが爆豪は漢だよな~!でも間もやっぱスゲーわ!あの爆豪を真正面から受けて肉弾戦で反撃とか、めっちゃ漢じゃねぇか!なぁ耳郎!」

 

 他のみんなも、切島くんも興奮気味。

 爆豪くんと闘った私からしたら、良くあの爆発に飛び込むものだとヒヤヒヤさせられちゃう。

 

「唯守、ウチとの時よりも戦い方すごくなかった?切り詰めてるわけじゃないのに…なんていうか、あれだけゴリゴリ来る爆豪を、冷静に見て要所は全部止めるとかさ…ウチとの試合以降妙に落ち着いてるし、あの立ち回りは参考になるよね…急に男の勝負か知んないけど、唯守のクセになんかカッコいいって言うか」

 

 試合に集中していたと言うのに、ステージを見つめながら思いもよらぬ事を言う響香ちゃんに、話を振った切島くんも少し驚いた顔で、芦戸さんは大好物を見るように笑顔を浮かべてる。

 

「え〜幼馴染みって言っても、やっぱり気になってる感じ〜?」

「え?あ!…いや、べ、別に違くて、ほら、参考になるって言ったじゃん!そんなんじゃないし!」

 

 顔を赤くして、指にクルクルとイヤホンジャックを巻きながらも試合から目を離さない響香ちゃん。

 

 うん、確かにカッコいいもんね。

 私も、落ち着いてて頼りになって、私を雄英に連れてきてくれた、唯一私を見ることのできる大切な存在だと思ってる。

 

 

 

 違うって、ホントかな……?

 

 ハッとして、そんな考えを頭を振って追い出していく。

 今はこんな気持ちでいるべきじゃないよね。

 目指すもののために、私も少しでも立ち回りの参考にしなくちゃ!

 

 

 

 

 

 

 睨み合う二人だったが、先に仕掛けたのは、爆豪だった。

 両手を開き、空中に舞い踊る爆風を巻き起こす。

 結界の個性が標的指定は流石にわかっていないが、位置指定をした上で使っている事はわかっており、三次元的な軌道の方がまだ捉えづらいだろうと認識しているようだった。

 そのまま両の掌からでるニトロ成分の汗が爆薬のように反応しはじめる。

 

「テメェのクソ箱、ブッ壊してやるよ!!」

 

 爆豪が宙を蹴った瞬間、唯守も叫ぶ。

 

「結!!」

 

 その瞬間、爆豪の身体が結界の中へと閉じ込められる。

 睨み合っているうちに行っていた標的指定だが、爆豪が空へと飛んだために無駄に大きく作ることとなった、三重の結界。

 通常結界よりも強度は増しているとは言え、サイズが大きければ使う呪力は増える割に、脆くなる。

 

「だから、全部ブッ壊すって言ってんだろォォがぁァァ!!」

 

 空中に浮かんだ緑色の立方体の中、爆豪の爆破が炸裂する。

 二度目の榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)

 

──BOOOOOOOM!!!

 

 爆風は内部で跳ねかえるも、結界の壁がギシギシと音を立て、綺麗な立方体を描いていた線はブレていき、ドンドンとその形を保てないでいる。

 唯守の手印を結んだ右手はもちろん、踏ん張るように身体も震えている。

 

「…耐えてくれよ……!」

 

 内部の爆豪は、まるで巨大な爆風の竜巻のようにエネルギーを放出し続けている。

 それは、突然訪れる。

 

──バチュンッ

 

 結界は解け、唯守の瞳が見開かれる。

 そして素早く、小さく呟いた。

 

「──結」

 

──BAGOOOOOOOON!!!

 

 炸裂音とともに、ステージのタイルが砕け、爆豪が焦げた息を吐きながらもゆっくりと立っていた。

 

「ちったぁ、カテェ箱だったぜ」

 

 爆豪自身も結界内の爆発と高温にさらされてボロボロ。

 肩で荒く呼吸し、ボロボロのジャージは確かに焼け焦げているようだったが、その足はまだ折れていない。

 爆発の煙で、未だ見えない先を睨みつけいる。

 

「それでも、抑え込んでた分、テメェもダメージあったろ?」

 

 爆風が晴れると、そこには結界の壁が伸びており、爆豪が想像していた相手はそこにはいなかった。

 だが、どこに移動していたのかはわかる。

 なぜなら、その声は後ろから聞こえていたから。

 葉隠と同じ、だが残っている体力が全然違う。

 

「……チッ……クッソが…!!」

「おらっ!──そんでダメ押しの、結!」

 

 満身創痍な爆豪を掴み、投げ飛ばすと同時に結界を生成。

 爆破で上に逃げられないように、更に結界で場外の地面へと押し潰した。

 

「爆豪くん、場外!!!よって──

 間くんの勝ち!!」

 

 勝者を告げる、ミッドナイトの艶やかな声で試合は終了した。

 

「クソッタレ……ッ!!」

 

 拳を思いっきり地面に叩きつける爆豪。

 ドンッと音を立ててただでさえボロボロのステージに更に亀裂が走る。

 悔しさに満ちた爆豪の咆哮が空に響いた。

 

「あと2秒早けりゃ、てめぇごとブチ抜いてた!!ふざけんなクソッタレェェ!!」

 

 爆豪が怒鳴ると、観客席もが一瞬静寂となるも、唯守は平然と受け止める。

 

「それが今の結果だろ?次は、俺ももっと強くなっててやるよ」

 

 ニコリと笑う唯守に対し、爆豪は奥歯を噛みしめ、背を向ける。

 だが数歩歩いたところで振り返り、烈火のような眼光を唯守に叩きつけた。

 

「覚えとけ。次は、秒じゃねぇ。瞬間でブッ飛ばしてやる」

「おぉ、次はもっと頑丈な結界で閉じ込めてやんよ」

 

 爆豪は舌打ちしながらも、最後の一言を、誰にも聞こえないであろう声量で呟いた。

 

「……チクショウ。強ぇな、テメェ」

 

 そしてそのまま、ミッドナイトの呼び声を背に、ふらつく足取りで退場していった。

 

「……テメェもじゃねぇか」

 

 唯守自身も額からは血が流れ、右手はプルプルと震えており、ジャージの上半身は焦げて千切れて、ボロボロの状態であった。

 そんな唯守の呟きに、ミッドナイトは満面の笑みで、唯守の震える右手を握り、高く掲げたのであった。

 

『以上で全ての競技が終了!!今年度、雄英体育祭1年優勝は!!

 A組、間唯守!!!」

 

 

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