現代に生きる結界師は頼られがち   作:固形炭酸

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50話 試験開始

 

 

 

「この前はすまんかった!」

 

 今、ウチとほぼ同時に教室についた爆豪に、珍しく早く登校していたらしい幼馴染は頭を下げた。

 

「あぁ…?」

 

 相変わらず喧嘩腰の爆豪だったけど、唯守は頭を下げたまま、言葉を続けている。

 

「お前相手じゃ謝罪なんか自己満かも知れんけど、お前に手ェ出すとこだった。それはやっちゃあダメなことだって、わかってたのに」

 

 そこまで言うと、頭を上げた。

 黒い猫っ毛がフワリと跳ねる。

 その顔は、いつもの顔。

 バツの悪そうな、考えは纏まってるのに、それをどう捉えられるのかなんて、考えてるのか。

 

「だから、悪かった。一発殴れ。それでおあいこで、どう…かな?」

「………」

 

 そう言った唯守を爆豪は無言で睨んでいる。

 今の顔は、自信をなくしたとこだってわかる。

 今そう思うなんて違うかも知れないけど、いつもの雰囲気に戻ってて良かったと思う。

 教室に来ていたクラスメイトたちもどうなるのかとザワつき、二人を見ていた。

 

「ドケや。クソカス」

 

 殴ることはせず、ドンと軽く唯守の肩を押しのけると乱暴に自分の席へと座った爆豪。

 

「邪魔して……いや、ともかくすまんかった」

「……」

 

「漢の友情、ならず」

「いーや、アレはアレで、二人とも漢だぜ。なぁ!爆豪!!」

 

 芦戸の呟きに、切島は返し、爆豪に肩を回す。

 

「許すも許さんもないだろ?間ももちろん悪いが、そもそもお前も悪いんだしな!」

「ウルセェ!ブッ飛ばすぞコラァ!!」

「いや、ほんとすまんくて」

「ウルセェっつってんだろボケ!!!」

 

 わちゃわちゃとしだした唯守の席。

 緑谷がなぜかソワソワしてるのも少しウケる。

 

 騎馬戦の時も思ったけど、爆豪は自尊心が強すぎる。

 どれだけ能力が高くても、協調性がなくてはチームは組めない。

 だけど、そんな爆豪の手綱を唯一握れるのは、あれだけまっすぐな切島だけなのかも。

 

「ねーねー響香ちゃん。何かあったの?」

 

 そして、クラスの雰囲気がいつもと違う理由が今日の試験にあるわけではないことを察した透は私の肩を叩いた。

 

「おはよ。今来たの?」

「おはよー!そーなんだけど、なんか空気が変じゃない?」

「葉隠おはよ!間が俺を殴れって爆豪に言ったら無視されたとこ!漢のなんかさー殴ったら友達みたいなの起きるかと思ったのに起きなかったんだよね!」

 

 芦戸はまた……

 透はふんふんと聞き入り、麗日は芦戸の時に盛り、時にはしょった説明に突っ込んでいたら、チャイムが鳴った。

 

 どうやらお墓参りで吹っ切れたのか、幼馴染の様子が戻っているようで安心した。

 なんたって、今日は試験の日なんだから。

 本調子じゃないなんて言い訳で負けられても困る。

 アンタが、ウチの壁なんだから。

 

 

 

 

 

 

 筆記試験を終えて、いよいよ演習試験が始まる。

 

 グラウンドにコスチューム姿で集められた1年A組の面々の表情は様々だった。

 

 事前の情報を信じ、ロボとの戦いだと笑顔で騒ぐ芦戸と上鳴を横目に息を呑み緊張した様子の八百万や飯田。

 そして、観察に徹している二人。

 

「先生多いね」

「あぁ。たぶん、話にあった例年と内容は変えてるな」

 

 耳郎は異様な教師の数になんとなく違和感を感じ、隣にいた唯守もその先へと思考を飛躍させていた。

 

「どんな無理難題なんだか」

 

 そうして構える耳郎と唯守の二人とは裏腹に、事前に聞いた試験内容を信じてラクショーを信じてる芦戸と上鳴の二人はらそれがもはや声に出ている。

 その温度差はそれはもうすごい。

 

 そして、それはもちろんテンションの高い二人にとって悪い方向が正解だった。

 

「残念!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

 相澤の肩からヒョコっと生えた校長根津。

 

「「「えぇぇぇ!!??」」」

 

 ニヤリと笑う教師陣。

 

 そして、その伝えられた内容は────

 

 

 

 

 

 

 校長の語った内容は、教師 VS 生徒2名による実技演習。

 対人戦、活動を見据えてより実戦に近い形を見据えた変更との事。

 振り分けは、既に決定済みらしい。

 それが、次々と発表されていく。

 

 轟、八百万 VS 相澤先生

 緑谷、爆豪 VS オールマイト

 切島、障子 VS セメントス

 梅雨ちゃん、常闇 VS エクトプラズム

 飯田、尾白 VS パワーローダー

 麗日、青山 VS 13号

 芦戸、上鳴 VS 校長

 透、口田 VS プレゼントマイク

 峰田、瀬呂 VS ミッドナイト

 

 と、ただでさえ無理難題のような組み合わせがそれぞれ発表されていく中、最後の最後が。

 

 俺、響香 VS スナイプ──とブラドキング。

 

「「…え?」」

 

 俺と響香が惚けて、爆豪は更にイライラした様子。

 透は心配そうに。

 その他の連中も何事かといった様子。

 そこで、ブラドキング先生が続ける。

 

「爆豪。露骨に態度に出ているが、コレに関してはお前たちに優劣をつけたわけではない。耳郎と間は他の者と比べて特に優れていると言う気はないが、ウチの骨抜や塩崎のように能力が綺麗にまとまっているからな。純粋に、見極めさせてもらうためだ」

 

 ブラドキング先生の言葉に、爆豪は舌打ちで返す。

 

 そこで、相澤先生からこの試験はそれぞれ別のステージで一斉に開始とのことで、全員が素早く移動を開始した。

 

 

 

 

 バスに揺られ、到着したのは何本もの柱が所狭しと立ち並ぶステージへと到着したところで、ようやく詳細なルールの説明が始まった。

 

「あぁ。内容の説明をするが、今回の制限時間は30分とする」

 

 勝利条件は、ハンドカフスを両方の教師にかける。

 もしくは"2人揃って"バトルフィールドのゲートを出るか。

 

「ちなみに、我々は古典的だが体重の半分の重りを付けている。合図があり次第、実習のスタートだ」

 

 そう言い残して、2人はどこかへと歩いて行った。

 

 舐められてるとは思わない。

 逃げ一択ではなく、戦闘も視野に入れさせる為か。

 2人揃って逃げ出そうにも、スナイプ先生がいる以上は表立っては難しい。

 むしろ逃げを選んだところで、スナイプ先生だけでも確保していなければ的でしかない。

 結界で受け切れる威力なら別だが、それも検証もしたいところだけど簡単には無理だし博打にも出れない。

 隣を向けば、響香はコクリとうなづいた。

 

「じゃあ、戦闘だね」

「状況次第で逃げてもいいけど、まさしくスナイプされるだろうしな。俺が"個性"で一回受ける。その後は──」

 

 2人で大まかな動きの確認を終えたところで、コキコキと首を鳴らして、纏わせる結界を広げていく。

 いつもの結界と比べて常時呪力を使うが、制限時間も30分と決まってるなら、接敵後上手く立ち回れば持つ。

 

「何そのオーラみたいなの?」

「地味だけど、コレも新結界だ。『鎧界(がいかい)』って呼ぼうかと思ってるんだけど、どう?」

「鎧…っても、どうせ攻撃にも使えるんでしょ?どっちかと言うと『纏界(てんかい)』とかでいーんじゃない?」

 

 なるほどと、響香の案をすぐさま採用。

 

 響香の索敵と、俺の『纏界』。

 弾速の速さもわからないが、感知した瞬間に纏界に個性を発動させればそうそうやられるもんじゃない。

 

 生徒の力、先生たちにしっかり見せてやる。

 俺たちだけ2対2なんて、光栄な事じゃないか。

 

「じゃ、目にもの見せてやろうか」

「足引っ張んないでよね?」

 

 そう笑った響香。

 守らなくちゃと思っていた存在が、今は凄く頼りに思えた。

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り、職員会議での話に戻る。

 

 

 組の采配についてですがと、担任である相澤が説明を始める。

 

 上鳴と芦戸ペア

 単純な行動傾向を校長が抉り出す。

 轟と八百万ペア

 轟はまとまっているようで力押しのきらいがある点と、八百万の咄嗟の判断力の弱さ、そして体育祭以降明らかに落ちた自信を相澤が突く。

 切島と障子ペア

 近接戦闘しかできない切島と障子を、セメントスが特に切島が苦手であろう持久戦と遠距離戦闘で攻め、障子の立ち回りも含めての確認を行う。

 葉隠と口田ペア

 自信のない口田と、妙な自信はアレど奇策に頼りがちな葉隠をプレゼントマイクが遠距離且つ広範囲攻撃で真正面から攻め立てる。

 

 次々とそれぞれの組み合わせの理由と、見るべきポイントを伝えていく。

 

「緑谷と、爆豪は、オールマイトさんにお願いします。この2人は能力や成績で組んではいません」

 

 一拍置き、相澤は言葉を続ける。

 

 「ひとえに、仲の悪さ!! 爆豪は轟と、特に間にも感情的になるんですが、緑谷へは別格です。

 緑谷のことがお気に入りなんでしょう?今後も見据えて、うまく誘導してくださいね」

 

 そう言った相澤に、よく見ていると苦笑いを浮かべながらも、オールマイトはしっかりと了承していた。

 

「そして、最後に間と耳郎ですが、この2人は特例としてブラドと、スナイプの2人にお願いしたい」

 

 B組の担任、ブラドキングとスナイプは話の続きを促した。

 

「この2人に関しては、特に弱点という弱点はない。蛙吹と同じく上手くまとまっているのですが、間は遊び感覚になると目的を脱線する傾向があります。そのため、2人で近距離、遠距離から攻め立ててもらえれば。ただ、今回は体育祭とは違うので最初から本気でくる可能性も高い。そうだった場合はその対応力を見て欲しいです。最近は使っていないようですが、分身を混ぜた上で結界を駆使されたら脱出を防ぐのはプロでも手を焼くでしょう。それに、USJの時に思い知りましたが、間は自分を顧みない。そのため、脱出条件もこのペアだけは2人ともとします」

「それは、難易度が高すぎないのか?」

 

 スナイプの問いに、ブラドキングも続く。

 

「我々に装着するハンデがあっても、他の者とそこまで差をつけるべきか?」

 

 2人の問いに、相澤は資料を見るように伝えつつ話を続ける。

 

「間は、おそらく何か隠している。体育祭での騎馬戦の終わりと、耳郎戦でも見せたダメージを遅延させる現象の謎が。それと、職場体験でミルコのお墨付きという事も含めて、ヴィランとの戦闘経験も既にあります。それに、耳郎もまた間と幼馴染という事もあるのか、ブルーロック事務所員からも、機会があるなら実戦戦闘で貸して欲しいとのお墨付き。耳郎自身の能力も間同様にまとまっており、誰と合わせても上手く機能するでしょう」

 

 間の個性の謎。

 そして、自己犠牲をなんとも思ってない節があるところ。

 能力の割に、USJの時は、咄嗟の判断で生徒を救った様を見せたと思えば、尻上がりで調子を上げていく様子を体育祭で見せた。

 ハッキリ言ってよくわからない事の多い生徒。

 

 耳郎の異常ともいえる成長速度。

 個性把握テストは雄英にくるような生徒の中では至って普通の存在だった。

 それが、今後の授業で教えていくような個性の応用、その伸ばし方をどこで教わったのか、既に取り入れている節がある。

 それは葉隠も同様だが、耳郎は地力を含めれば更にその上をいく。

 

 入学から数ヶ月、実際に教師直々に見ることのできる戦闘訓練は彼らの力を見るには申し分ない絶好の機会。

 

「そのため、今回はアイツらがどこまでできるのか、その確認が目的と言ってもいい。よろしく頼みます」

 

 そうして、頭を下げた相澤に、その場にいた他の教師陣はうなづいた。

 

 

 

 

 

 

「終盤まで翻弄して、疲弊したとこをブッ潰す!」

 

 逃げるよりも、倒したほうがいいに決まっている。

 ましてや、相手は憧れたヒーロー、オールマイト。

 逃げる選択肢なんかねェ。

 オレはもう、負けるわけにはいかねェんだ。

 デクにも!轟にも…そして、間にも。

 

「オールマイトをな…なんだと思ってんのさ。いくらハンデがあってもかっちゃんがオールマイトに勝つなんて──」

 

 自分の中で、プツリとキレた。

 イラつく。

 小学生の頃も、中学生の頃も、オレは無敵だった。

 周りの奴らはモブにしか見えなかった。

 それが、ココにきてからオレは特別じゃなくなった。

 ヒーローは勝つ。

 戦って勝つ。

 どんな時でも、最後に勝つのはヒーローなんだ。

 それが正しい姿だろう。

 間のヤロウは、負けて負けて強くなってきただの言っていたが、負けることなんか考えていられるか!

 俺が目指したもんは、そんなもんじゃねェ!

 

「ウッ…!」

 

 気がつけば手が出ていたらしい。

 自分の後ろで、デクが。

 かつて自分の周りをうろついていたモブが倒れている。

 そう、かつてだ。

 コイツすらも、オレに追いつく勢いでドンドンと近づいてきやがる。

 

「これ以上喋んな…ちょっと調子いいからって喋んな……ムカつくから」

 

 オレ一人の力でも勝つ。

 

 そう、怒鳴った。

 デクがなにやら言い返してきたところで、爆発音が響く。

 

 勝ってやる…!

 猫毛、半分、アイツらもこんくらいはきっと超えてくる。

 ならオレは例え一人でも……!!

 

 

 

 

 

 

 

「どどど、どうする?葉隠さん」

「うーーーん。ああもあからさまにゲート前にいられると…だよね」

 

 プレゼントマイク。

 【ヴォイス】の個性は索敵なんかを除けば、響香ちゃんの完全に上位互換だ。

 苦もなさそうに、喋るだけで響香ちゃんの倍とも思える衝撃波を辺り一体に撒き散らしている。

 

『オラオラ〜!!!隠れているだけじゃあ点はやれないゼェ〜!!!』

 

 またも、脱出ゲート側から衝撃波が押し寄せる。

 

「まっずいなぁ〜。透明化してもアレだけ広範囲に攻撃されると近づくのは難しいし」

(ど、どうしよう…?)

 

 こんな時、どうすれば…。

 

 自ずと友達の顔が浮かぶ。

 唯くんだったらどうするか。

 

 とはいえ、私と口田くんと唯くんじゃあできることが違いすぎる。

 でも、劣ってるわけじゃないんだ。

 そもそも口田くんのできること、唯くんにもできないし。

 

 口田くんはオロオロしてる。

 というのも、【生き物ボイス】で生き物を操る個性なんだけど、その動物たちがマイク先生のドデカイ声に怯えて逃げちゃってるから。

 でも、それで全部が封じられたわけじゃないよね。

 まずは、

 

「お互いの、出来ること!もう一度考えよ!そこからだよ!」

 

 口田くんの個性は強力だ。

 自分ではないものの力を借りれるなんて凄いことだ。

 だから、まずは作戦をもっと練らないと…!

 

 

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