貴族の方々が都会に出るのを許してくれない 作:うろ底のトースター
でも書く。
ある村に──いや、城はあるし工場はあるし人造の湖はあるし、なんなら教会やら祭壇やらもあるけど──ともかく、その村に1人の男の子が産まれた。
如何せん小さな、うん、多分小さい部類に入る村なので、みな、我が子我が子と言わんばかりにどんちゃん騒ぎをしたものだ。
男の子の名は、ケイン・アダムス。
一方その頃、村からまぁまぁ離れたとある研究機関では、人の精神を侵し、操る、なんとも恐ろしいカビの開発が進められていた。
同時に、このカビを統率する力を持った上位種も。
別の世界線ではこのカビが恐ろしい惨劇を引き起こす撃鉄となるのだが、この世界では
さて、ゴリラの殲滅を受けた研究機関。最後っ屁とばかりに、なんと完成したたった1つの上位種を、下水道に流してしまった!
下水道を流れ、浄化槽を抜け、なんやかんやカビが辿り着いたのは、
「だぅあ!」
「はいはい、ほら、ミルクよ〜」
ケインが口を付ける、哺乳瓶だった。
──────────Prolog──────────
ケイン・アダムス、17歳。
明日、18歳になる若輩の1人。
趣味は機械いじり。特技は競走。
素行の悪さは目立つものの、皆に優しく、筋の通っていないことが嫌いな正義感の強い青年である。
村の外に出て働こうと考えており、ドナの元で裁縫を学び、ハイゼンベルクの元で工業を学び、ドミトレスクの元で配膳を学び、よくモローの人造湖周辺を走り回っている。。
「さて、彼の情報はこんなところかしら」
大柄な女性が、愛おしさを滲ませながら情報を読み上げる。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、所謂ダイナマイトボディ。そして何より目を引く、顔。どこか儚さを醸し出し、まるで未亡人のようだ。
彼女の名は、ドミトレスク。村の城に住む、4人の貴族、その1人である。
「おおよそ変わっちゃいねぇな」
小柄な女性が、テーブルに足を掛けながら、呆れたように文句を垂らした。小柄な体に似合わない大きめのコートを着ていても、なお分かるほどに起伏が豊か。勝気なつり目が、整っている顔に力強い印象を与えている。
彼女の名は、ハイゼンベルク。離れの工場に住む2人目の貴族だ。
「し、仕方ないだろ?あの子、ずっとか、変わんないんだからさ・・・」
おずおずと反論した、気弱そうな女性。体を小さく丸めているため、体型はよく分からないもののおおよそ美形。困り眉をしたこれまた美しい顔が、余計ににか弱そうな雰囲気を醸し出している。
彼女の名は、モロー。人造湖に住む、3人目の貴族だ。
「ま、んなことよりさっさと始めろよォ!うかうかしてたら明日になっちまうぞォ?」
しゃがれた奇妙な声が聞こえた。発生源は、ウェディングドレスを来た手入れの行き渡った人形だ。不思議なことに、操り手もいないのに1人でに動き、話している。
この人形の名は、アンジー。操り手である4大貴族最後の1人、ドナは、人間恐怖症のためお家にいる。
この場に、村の支柱たる4大貴族が、顔を揃えていた。
「明日になっちまうぞって言うけどよ、計画自体は完璧なんだろ?」
「ええ、村の人たちには理解を得てもらってるし、協力もしてもらえるそうよ」
「ならいいじゃねぇか」
ケインの情報、村人の協力、そして、計画。なんだかろくなことにならなそうだ。
「しかし、お母様も随分と思い切ったことをするなぁ。ケインを村に引き止めるために、まさか嫁を取らせるなんてよ」
そんなことはなかった。
「こ、ここにいる全員が、あ、あの子との交流は長いし、それなりにす、好いてもらってる自信があるんだろ?ならい、いいじゃないか」
自分で言っておきながら、少し恥ずかしかったのか、顔を赤くするモロー。
「けどよォ、このままじゃああいつの大嫌いな『筋の通らないこと』になっちまうだろォ?そこのところはどうする気だァ?」
「そのためのゲームだ」
神々しい声が響く。6枚3対の、カラスのような翼を持った麗しい女性。黒いベールによって顔の大半は見えないものの、口元に浮かべる聖母のような優しい微笑みは、見る者全てを魅了するほど美しかった。
彼女は、マザー・ミランダ。
この街の、長である。
「ゲームのルールであれば、変なところで真面目なあの坊やは言うことを聞いてくれる、お母様も悪い方ですわね」
「それだけ、彼に離れて欲しくないのだ」
そう言うと、ミランダはイタズラな表情を見せた。
「それでは、ゲーム内容を煮詰めていくとしよう」
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誕生日の朝、俺は狼の遠吠えで目が覚めた。今日が終わればいよいよ村を出て都会に行ける。
家族や村のみんなに会えないのは少し寂しいけど、みんなに楽をさせるためにも立派な工兵を目指すんだ。そのために工学を学び、力をつけた。
大丈夫、いけるさ。
しかし妙なことだ。この近辺じゃあ羊飼いなんていないし、狼も人里まで降りてくることはない。
さっきの遠吠えは、一体・・・。
と、玄関がノックされる音がする。いつもなら父さんか母さんが出るはずだけど、返事もしていないということは、いない、のか?
再度、ノックされる。今の時間は午前7時過ぎ。来客には早すぎる時間帯だ。
怪しいが、出ないわけにいかないな。
軽く寝癖を直して玄関に向かい、扉を開けた。
「少し、朝が早すぎるんじゃ───」
「ヴァァァァァァ!!!」
「は?」
開けた扉の先に
俺は、唖然とした。
それがまずかった。
「ヴァォヴ!!」
「ガッ!っチィ、離せ!」
人外の腕力によって抱えられ、連れていかれる。足の速さも凄まじい。本物の狼と比べて遜色ない。
更に恐ろしいのは、進めば進むほど
まさしく手詰まり。
俺は、大人しく連れていかれるしかなかった。
イーサンは生きてるしなんなら健康そのもので、ミア、ローズと共に円満な家庭を築いているし、ベイカー家はエヴリンを養子にして幸せに暮らしています。また、この世界ではルーカスは家族思いのいい子です。
それだけ。