貴族の方々が都会に出るのを許してくれない 作:うろ底のトースター
これは、素行が悪過ぎだケインが、ドミトレスク城で働かされたときのこと。
「慣れるわけないだろ、こんな服」
問い掛けられたケインは、丁度着替えの最中だった。
「あら、もう執事の役目は終わり?」
「定時なんで」
長女ベイラにそう言ってそさくさと帰る準備をするケイン。
「それじゃ、ベイラ、また明日」
「っ!・・・え、ええ、また明日」
表面を取り繕ってどうにか見送るベイラ。ケインが退出すると、急に膝から崩れ落ちてしまった。
それをジト目で見る次女カサンドラ。
「はぁ・・・、ベイラお姉様。
いい加減ケインに名前を呼ばれるの慣れてください」
「慣れるわけないでしょう・・・無理ぃ」
運ばれて、もみくちゃにされて、わけのわからないまま連れてこまれたのは、恐らく地下。
恐らく、と付けたのは、ライカンの乱暴な──といっても怪我をしないように丁寧な──誘拐のせいで、道筋が一切分からなくなっているから。
ただ、なんとなく下っていたのは分かった。
んで、問題はそこじゃない。
ライカン群れるこの巣穴に、
ライカンといい、この場所といい、顔を揃えた貴族たちといい、奥に見えるミランダ様といい、この村に、何があったってんだよ・・・!
「──サプライズは喜んでもらえたかな?」
「アトラクションって言った方が正しくねぇか?村の名物にすりゃあ観光客も少しは増えるぜ」
怒気を滲ませながらミランダ様を睨みつける。
「そう怒るな、落ち着け、アダムス」
「落ち着いてられるかよ!村の人達はどこいった!?このライカンどもはなんだ!?答えろ!」
籠った空間に、俺の怒号だけが響いた。
これを聞いたミランダは、
「・・・くくっ」
笑った。
「ふふふっ」「ブッパ!ハハハハッ!」
「く、ふふっ」「ギャハハハハッ!」
釣られて貴族が笑い出す。
「オイオイお母義様?コイツ
「だからやめておきましょうと言ったではありませんの、きっと、暗い想像をしてしまうと。ふふっ」
「しっかし相変わらず優しいなァ!自分のことより村の住人のかァ?」
「あ、そ、その、ごめん、な?別にバカにしてわ、笑ったわけじゃないんだ」
四者四様の反応。
いや待て、勘違いだ?
すると、突然肩をガッと掴まれる。
「痛っ」
相手は、1匹のライカンだった。
「お、悪ぃな坊主。どうも力加減が慣れなくてな」
「──は?」
獣みたいな牙の覗くその口から漏れたのは、余りに流暢な人の言葉。
それが、
「にしてもこれどうゆう理屈なんだ?人に戻ったり
猟師の爺さん。
「まぁ良いではないですか、ミランダ様から授かった力が、悪いものの筈がないのですから」
村の顔役のルイザさん。
言う人喋る人話す人。全員、聞いた事のある声だ。
「驚いたか、坊主?村のヤツらは全員、ミランダ様の協力者だ」
「・・・は、はは、コメディ番組のプロデューサーになったらどうだ?ドッキリの才能あるぜ?」
こいつは、傑作だ。ずっと、勘違いをしていたのか、俺は。
「言ったろう、サプライズ、だとな」
「あの状況で信じられるヤツは、馬鹿か聖人様だけだろうさ」
めちゃくちゃ恥ずかしい。どっかに穴はねぇかな。
「さて、本題に入ろうか」
そうして、ミランダ様は場を仕切り直した。
「今日、お前は晴れて18歳となり、村から出て夢を追いかけられるようになるわけだ」
「あぁ、その通りだ」
「我々も嬉しいよ、本当に目出度い日だ。だがな」
大袈裟に両手を広げ、そして、綺麗なその目をこちらに向けた。
「
「はぁ?」
ふざけてんのかと思ったが、瞳は真っ直ぐで、大真面目だった。
「できるなら、ずっとここに住み続けてほしい、というのがこの村の総意だ」
「でももう決めたことだ」
「それは重々承知している」
「だったら!」
「故に、ゲームを用意した」
「・・・あ?」
ゲーム、ゲームだ?俺の進路がゲームで決められるのか?
「ざっけんなっ!」
「大真面目だっ!」
「ッ!?」
怒鳴られた、ミランダ様に。普段温厚で何があっても声を荒らげないあの人が、怒鳴ったんだ。
それほど、本気なのか。
「・・・すまない。だが、分かってくれ。これは、このゲームは妥協案だ」
「妥協・・・?」
「
・・・あぁ、そういうことか。サプライズと称して俺を攫ったのも、こうして地下に俺を運んだのも、力を示して俺から拒否権を奪うためだったのか。
「分かったか?」
「ゲーム内容を教えろ」
こうなりゃやるだけやってやる。
「ドミトレスク城、ベネヴェント邸、人工湖、工場。この4箇所それぞれに、村の門を開く鍵を隠した」
「そいつを探せってか」
「ただし、我々から追われながら、な」
「要は、鬼ごっこかよ」
「そうなる。だが、これはお前も得意とすることだろう?」
走るのは、昔から得意だし、これを長所としてずっと伸ばし続けてた。最近は、人工湖周りをよく走り回ってた。だから、そこらの陸上選手に負ける気はない。
が、ライカン相手は厳しすぎる。一体はまだしも群れとなると、逃げ切れないだろうな。
「1分だけ、逃げる時間をやる。お前なら十分であろう?」
半分聞き流しながら、村の地図を思い浮かべて最短距離で4箇所を回るルートを模索する。
ここに来る直前に城が見えた。後ろの坂を登りきれば、恐らく城近くに出れる。
「準備はいいか?」
「今できたとこだよ」
「では、始めるか」
ミランダ様が腕を掲げる。
そして、
─────────Game start─────────
指を、鳴らした。
なんで1話しか投稿してないのに赤いんですかねぇ。
so-takさん
誤字報告ありがとうございました。