貴族の方々が都会に出るのを許してくれない   作:うろ底のトースター

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ギリ半年過ぎてないのでセーフですか。セーフですよね。セーフだって言ってよ!

え?ダメ?すんません。受験と新生活に瞳が褪せてたんです。べべべべ別にエルデンリングのせいとかじゃないです。


My prince of fate

「まずは答え合わせをしましょうか」

 

ぱんっと手を合わせながら、カサンドラは話し始めた。

 

「あなたの隠れ場所と逃走経路、ずっと考えてました」

 

「そんなの、この城ならいくらでも」

 

「気付いているのでしょう?」

 

取って付けた俺の台詞は、半ば確信めいた口調で遮られた。やっぱり分かるか。

 

「私達は、この城に入った時点であなたを常に捕捉していました。勘づける要素はありましたし、あなたがそれを見逃すとは思えません」

 

「・・・」

 

「沈黙は肯定と捉えますよ?さて、先程不可解なことが起きました。ええ、ちょうどあなたがベイラお姉様の部屋を探索していたあたりでしょうか」

 

「・・・」

 

「あなた、唐突に捕捉から外れましたよね」

 

細められた目が、俺を射抜いた。

 

「最初は部屋の適当な場所に隠れていたのだと思っていました。ですが、彼女がこの城内であなたを見つけられないわけがない」

 

 

「とすると、必然あなたは城から一度出たことになります」

 

 

「ああ、そういえばケイン。あなた、ボルダリングを嗜んでいましたよね」

 

()()()()()()って言いたいのか?」

 

「これが常人ならバカバカしいと一蹴されるのでしょうが、あなた程の身体能力なら有り得る話です」

 

冷や汗が頬を伝った。元々天才だとは思ってたけど、まさかこんなに早く勘づくとは。

 

この『城壁登っちゃおう作戦』は、人が壁を登れるわけがないという常識の裏をかくもの。つまり、常識という前提条件があってようやっと機能する。

 

だから、俺を常識に当て嵌めていないこいつに通じなかった。この調子で3つ目を取りに行こうとしてたんだが、別の案を考えないとな。いや、それよりもこの窮地から逃げ出す方法を模索するほうが先か。

 

幸い()()()()()()もある。ここを抜ければ、脱出の可能性がぐんと高まる。

 

さぁ、どう対処してくる──!

 

「それで、合ってますか?」

 

「・・・え?」

 

「私の推理ですよ。いや、そんな素っ頓狂な声を上げるってことは図星ってことですよね。フフ、さすがは私、天才ね!私にかかればケインを出し抜くことなんて簡単なんだから!あれだけの少ない材料で完璧な推理をやってのける!ああ、我ながら自分の才能が恐ろしいわ!もう探偵にでもなってしまおうかしら!きっとシャーロック・ホームズ顔負けの超絶美人名探偵として世界に羽ばたけるわ!ねぇ聞いてるケイン!・・・あれ、いない」

 

なんかトリップしてたので逃げた。窓外に行こうものなら追われる可能性があったので普通に全力疾走。

 

どうやらカサンドラ、俺を超えることに執着しすぎてその後を全く考えていかったらしい。やっぱり変なところでバカだあいつ。

 

ともかく、これは好機だ。恐らく俺の位置情報も、話の中に出てきた『彼女』と共有していないはず。再度補足される前にさっさと3つ目の鍵を見つけないと。

 

 


 

 

私は、おとぎ話が大好きです。キラキラとしたお姫様が、かっこいい王子様と結ばれて幸せになる、そんな在り来りで夢のような物語が大好きです。

 

叶うなら私も物語みたいな恋がしたい、運命の王子様と結ばれたい、なんて甘くて淡い夢を持ってしまうほどに。そんな夢見がちな私の話は、誰もまともに取り合ってはくれませんでした。

 

だから、あの日のことは、本当にただの夢だと思ってしまうことが未だにあります。

 

その人は、王子様というにはボロボロで、かっこ悪く登場しました。

 

「悪い!ちょっと匿ってくれ!」

 

ドンッ、とドアを開け放ち、より少し年上くらいの男の子が入ってきました。型の崩れた執事服にひどく乱れた髪、そして何より大量の汗。何かから逃げてきたであろうことは、幼い私にもよく分かりました。もっとも、この城で働いている人たちが怖がるような人物はメイド長一人だけですが。

 

「うん、いいよ」

 

少し同情した私は、彼が部屋に滞在することを許可しました。毎日絵本を読むだけだった私は、話し相手を欲していたのです。

 

男の子は、名を【ケイン】と言いました。当時のケイン君は相当に悪い子で、やりたくないことはやらない、やりたいことはとことんやるという、今では考えられないほど利己的でした。実際その日は、執事の仕事を蔑ろにしてメイド長に追われていたそうです。

 

だからきっと、私の話し相手になることは、『彼のやりたいこと』だったのでしょう。ときに頷いて、ときに笑って、質問なんかもしてくれて、夢中になって私の話を聞いてくれました。

 

あまりにも彼の態度が好ましかったせいで、気付けば『夢』の話をしてしまいました。

 

私は怖くなりました。この人も同じではないかと、私の夢をただの幻想と断ずるのではないかと、思ってしまいました。

 

「きっと迎えに来てくれるよ、お前の王子様」

 

嗚呼、私はあの笑顔を一生忘れないでしょう。

 

ケイン・アダムス、私の王子様。けれど彼は、お迎えには来てくれないようです。ええ、だから私は、我儘を通すことにしました。

 

私は、必ずあなたと───。

 

 


 

 

ない。ない、ない、ない、ない、ない!

 

()()()()()()()()

 

ダニエラもいないし、まさか知らない間に部屋を変えていたか?にしてはこの部屋は生活感が───。

 

そこまで考えて、ふと気付いた。この部屋、昔に戻ってる。

 

ダニエラの部屋は、あいつが幼い頃は壁一面が本棚になっていて絵本がぎっしりと詰まっている、まさに子供用図書館みたいな様子だった。12歳の年に改修され、昔を知っている身としては物寂しく感じる大人しい部屋に変わった。

 

けど、俺の視界に写っているのは絵本で埋め尽くされたあの部屋。懐かしささえ感じる、俺の避難場所だった。

 

この部屋にどんな意図があるかは知らないけれど、ここに鍵がない以上長居する理由はない。

 

・・・のだけど。

 

「出てきなさいケイン。この部屋にいるのでしょう?」

 

聞こえてきたのは、ベイラのものでもカサンドラのものでもない大人びた低い声。間違いねぇ、あのメイド長(デビル)の声だ。

 

恐らくは、カサンドラの言っていた『彼女』がこいつだ。

 

「随分とお早い出勤だな。監視するだけってのはそんなに暇なのか?」

 

「まさか。あなたを追うのはそれなりに骨が折れましたよ。実際、閃光グレネードのせいで一度見失ったわけですし。再発見には苦労しました」

 

もう隠すつもりもないらしい。

 

「少しはサボってくれてもいいんだぜ」

 

「あいにく私は生真面目悪魔ですので」

 

「まだ掘り返すかてめぇ」

 

生真面目悪魔というのは、昔俺が影で呼んでいたあだ名だ。それが他のメイドたちにも普及した結果本人の耳に届き、俺に『おしおき』が決行された。あのラリアットは痛かった。

 

どうやらそのあだ名のことを、未だに根に持っているらしい。

 

「無駄話はこれくらいにしておきましょうか。ケイン、私はあなたを捕まえるつもりはありません」

 

「・・・どういうことだ?」

 

()()()()()()()()

 

道案内、別になんの隠語でもないだろうが、城内を既に知っている俺に案内は必要ない。それでも案内をするということは、俺の知らない地下に行くのか、メイドに案内させるという形式にこだわっているのか。

 

前者であれば理にかなっている。理由がなんであれ、恐らくこの城の持つ脱出用鍵のある最上階からできるだけ遠ざけるのは、普通の判断だ。

 

だが、もし後者の場合は───

 

「ダニエラか」

 

「ええ。最後の鍵のある場所まで、ご案内致します」

 




新生活で自由時間が増えたから週に一回なんかは投稿しようと思ってたんだ。

気付いたら既に1週間経ってた。
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