転生ウィッチーズ(小説化)   作:連邦士官

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ロマーニャウィッチ アイリス編
1話


 イタリアの空と言いたいところだが、ここはロマーニャ。

そして、私の生い立ちは“ドラマ”的だった。

 

 農家の息子であり次男だった父は、軍人に志願をした。やがて都市部に配属されたあとに元娼婦の母と出会い、一緒になった。ここまでは幸せな物語かもしれない。

 

 しかし、母は父に隠れて浮気をしていたのだ。浮気を発見した父を強盗だと思い射殺。その結果、母は逮捕された。私は晴れて孤児となったのだ。

 

 幸いとして、私には魔力と呼ばれるものがあった。その魔力は、なけなし程度だがそれでもないよりはマシだ。

 

 普通の子供ならこのような出来事があればふさぎ込むであろう。がしかし、私には前世で軍人をやっていた記憶があった。その記憶が私を踏みとどまらせてくれた。

 

 私はそうこうとしている内に、軍の孤児院にウィッチとして身柄を引き渡された。その施設でウィッチとしての教育を積むこととなったのだ。

 

 手に持った古びたクルミ材のカルカノを手に目標を狙い撃つ。結果は前世で軍人をやっていただけの事はあると言える。各分野の成績はトップであり、特に上級生との組み手や模擬ナイフを使った格闘戦が優秀と言われた。CQCもCQBも使える私には敵はなかった。

 

 その結果、私は再び孤独となった。同級生も上級生も私を恐れ排斥した。本来は止めるのが職務のはずの教官ですら私を恐れ加担した。

 

 人類の敵とされている怪異を模したものを標的とした模擬戦よりも対人戦に私は特化していた。いくらシールドがあるとはいえ、容赦なく模擬弾を正確に他のウィッチに叩き込むのも怖がられた理由なのかもしれない。

 

 カルカノの模擬弾を全弾受けた結果、シールドが切れて倒れてるウィッチに止めろと教官が判定を出さなかったので、ハンドガンを引き抜いて模擬弾を正中線に正確に叩き込み、模擬のナイフで首を切るといった行為。最後に模擬弾を一発入れたのがより、誤解されたのかもと後になってからだが思う。

 

 対人戦研究が怪異のせいか、おかげと言うべきかあまり進んでいないこの世界。ここでは、現代から“死の司祭”として教育された様なキリングマシーンの動きは異質と受け止められたのだ。

 

 兎も角として私を唯一評価してくれたバルボ将軍も、ヒスパニア戦線で戦死となり私の孤立は加速していった。

 

 後ろ盾を無くした私は、いつの間にか航空機メーカーであるマッキにテストパイロットとして貸し出された。まぁ、先輩のフェデリカ・N・ドッリオなどもいるから良しとしよう。

 

 ドッリオとは、世界記録を一日で3つ塗り替えたそんな天才的なウィッチだ。少し、おかしいところもあるが、ロマーニャ人はみんなどこかおかしいと言っているから、そうなんだろう。

元々、そんなことわざもあるくらいだからそうなのだ。

 

 冷えたスープとハムにパンサラダまで付く、ロマーニャの軍の朝飯を懐かしく思いながらもラザニアを突く。

 

 パイロットには、高カロリーな食事が付くのは、常であるが私は小さいままだ。身長は139cmしかない、何時になったら大きくなるのだろうか?

 

 まぁ、それは置いといても小さい体は不利になるかと言われれば、そうではないと言える。その小兵故に空気抵抗が少なく、体重も軽く済んでいるので、それはそれで良い事なのだろう。

ところで何故、普通のウィッチは背中に目をつけたり、迫りくる銃弾がレーザーポインターの様に体に当たる箇所を照らしてくれるのかがわからないのだろうか?

 

 ドッリオに聞いたら渋い顔をされた。私がおかしいのか?いや、マッキの研究員よりはおかしくないだろう。

 

 マッキの研究員と言えば、こないだは直列24気筒液冷エンジンでストライカーの残りの全ての容積をラジエーターにし、かつ装甲板も全て放熱板に改造した物を開発していた。

その上、背負い込み式のラジエーターまで背負う、最速のストライカーを作った。

 

 結局は無茶な配置のせいか、熱暴走で常に最高速度を出し急降下姿勢になって、そのストライカーは空中分解していたからな。

 

 ともあれ、テストパイロットは助かったのだが強度を上げれば大丈夫などと研究員は意味不明な発言を繰り返していた。

 

 大丈夫なのかは、He100とかを参照すれば良いのにそういえば、アレはまだ生まれてなかったか。

 

 上の命令は、今度はネウロイとやらが、黒海に出たから討伐しに行けという。私設義勇軍などというのは、どの国が受け入れるのだろうか気がしれない。

 

 「アイリス大尉、なんだかダキアが大変らしい。しかし、我が国の優秀な新作ストライカーならなんとかなるだろ!だから派遣することとした。」

航空機に乗りすぎて、酸素欠乏症にかかってると噂のロマーニャ空軍技術大佐が言ってくる。大佐はそうは言うが、私よりもドッリオのほうが良いのではなかろうか?

 

 それに、武器はカルカノしかないのにそのネウロイをどうやって、命令どおりに倒せというのだ?ボルトアクションライフルだぞ?だから、素直に新しい武器をくれといった。帰ってきた言葉は

 

 「単発式よりマシだろう。それに、大尉は360度視界があってスコープがなくても大丈夫だ。距離を正確に把握できる特殊な空間把握能力があるからな。きっと大丈夫だ。」

イカれている。実戦に出たことがないからこう言うのだ。戦場で勝つ側は、負ける側よりも、数倍の鉄量を相手に投射するものだ。現代のゲームをやっている人間ですら、DPSと言って、攻撃投射量を気にするものなのに。

 

 仕方なしに、孤児になった私を引き取ってくれた恩に免じて戦場に向かうか。この上司は話を聞かないからな。

そして、ロマーニャからヴェネツィア共和国という隣国に入り、バルカン半島のヴェネツィア領土(ユーゴスラビアからセルビアとマケドニアが無くなった程度の領土を持つ)に入ったその時だった。

 

 「号外!号外!」

何事かと振りまかれた新聞を拾うと、そこにはダキアとモエシアが陥落したと書いてあった。ため息をつくと仕方なしに私は帰路に就き、報告する羽目となり大佐に怒られた。

 

 「仕方がない!じゃあオストマルクに行け!」

それを聞いた私はやはり、列車に乗るとヴェネツィアからオストマルクを目指した。

オストマルク国境には、モエシアやダキア、それにギリシアなどから、オストマルクの鉄道を経由して、ブリタニアないし、リベリオンに逃げようとする人々でごった返していた。

 

 船より陸路のほうが断然安いため、仕方ないのだろう。がだ、ギリシアならば船でキュレナイカにあるスエズを通り、扶桑を頼ったほうが良さそうな気もしなくはない。

しかし、扶桑海事変など扶桑は扶桑で不安であり、怪異が出ないリベリオンが人気なのかもしれない。

 

 そんな人々を尻目に、軍部から発給された外交使節パスポートを提示する。それを見た職員が困惑した顔でこちらを見てきた。

 

 「お客様、確認のためにお待ちいただいても‥‥。よろしいでしょうか?」

慌ただしく職員は中に入っていって、どこかに電話をかけた。そして、すぐに戻ってくると。

 

 「すみません。オストマルクの基地に、今、電話をかけたところですが、貴女を受け入れる余裕はないとの事だそうです。なので、入国は出来ません。ですが、カールスラント側からなら入国ができるかもしれません。」

その駅員に質問をしてみると余裕があるのは、カールスラント側だと言っていたそうだ。どうしょうもないので、私はまた引き返した。列車を乗り継ぎガリアに入国し、カールスラントを目指した。

 

 

 「あのお嬢さん。パスポートはありますか?」

嫌味ったらしくガリア人が、ガリア語で、ゆっくりと聞いてくる。軍服を着てるとはいえ、身長がないのも手伝って、みすぼらしい少女だとでも決めつけてるのであろう。私はゆっくりとゆっくりと、そのガリア人にブリタニア語訛で、パスポートならここにありますと言ってやった。苦虫を噛み締めたような顔をした彼に、軍部から渡された義勇軍である証明のパスポート(国際ネウロイ監視航空団と書かれ、金箔で押してある大層な紙束)を見せた。

 

 ふてぶてしく彼は、入国スタンプを押した。ブリタニア語訛のガリア語ではなければ、ロマーニャ人かい?と気さくにでも話しかけてきたかもしれない。

 

 そして、ガリアからベルギカなどの低地国家(いわゆる道路国家である。兵器はなかなかどうして優秀なのが多いが、戦車や航空機を自前で満足な数を調達できない悲しい国家)を経由して、カールスラントのハンブルグから、ベルリンに着いた頃である。

 

 「号外!号外!」

またも同じパターンだ。私は嫌な予感がしつつも、落ちていた新聞を拾って読んだ。そこには、やはりオストマルク軍が壊滅した。しかし、決死の部隊により、カールスラント側に難民押し寄せると書いてあった。

 

 はぁ、一息ため息を吐くと、号外のせいか、長蛇の列になっていたベルリンの公衆電話に並び、マダムやミスター達から金を持っているのかと好奇の目を向けられながらも、電話をかけた。

 

 大佐はひっくり返った声で、また負けただと!などと騒ぎながらも、こう伝えてきたのである。

「わかった。オラーシャに行け、かの国ならば、大国だから大丈夫だろう。」

 

 こうして新たな転属命令に従い、ベルリンから列車で、ロストク(ベルリンの上のやや左側の方にある旧ハンザ同盟中心都市、現実なら東ドイツ最大の交易港があった。キール軍港に代わり、現在ではドイツ海軍局本部がある。)に向かった。

 

 そこから船に乗り、バルトランドの都市、トレレボリという場所に入り、陸路でストックホルムを目指した。

 

 ガリアなどとは違い、すぐに国内には入れたが、結局はストックホルムで身体検査を受ける羽目になってしまった。

 

 それは仕方がない。短期間の間に、パスポートにはかなりの数の出入国スタンプ(カールスラント人とヴェネツィア人が、いちいち内部の国を越境するたびに、押すため)が、押されていた為だろう。

 

 昔には、国際ネウロイ監視航空団の身分を使い、棺桶や武器の箱に、麻薬を詰めて南リベリオンやアジアから、ヨーロッパまで密輸していた輩も、いたらしいので仕方ない。

いかんせん、バルカン半島のスタンプの数々と中欧の玄関口であるベルギカ、ここに加えて港湾都市への入国の数々が、怪しさを引き立てるのであろう。

 

 麻薬はないと確認しても、ストライカーの部品を純金にして、金の密輸をしたバカもいたらしいのだから、厳重に調べられた。

 

 なにもないということが認められるとすぐさまに船に乗り、スオムスの首都ヘルシンキ行きの船に飛び乗った。

 

 北海の海風は冷たく、まるで、私の体を引き締めるような感覚に襲われた。船室に入るとそこには、酒を飲む客やポーカーをする客ばかりだ。

 

 すかさず、私はある人物を見つけると話しかけることにした。

 

 「お嬢ちゃん、どうしたんだ?何か用かい?」

格好はハンチング帽に皮のブーツ、そしてトレンチコートの下には、ベストとネクタイ。

 

 どう見ても記者である。さらに、手にはカメラを磨いている。

 

 面白いネタがあるかどうかを聞くと、彼はこう、私に言ってきた。「金もないのに、情報を取ろうとするのは強盗のやり口だぞ。」とチッチッと舌を鳴らしながら、指を振る。

 

 ちらりと横を見るとポーカーに勤しむ客達がいる。そこから、トランプを借りて、この記者に私はポーカーを挑んだのだった。

 

 「あ、ありえねー。なんでそんなに強いんだ!」

そう聞かれても、私は直感でわかるだけだから、それ以上でもそれ以下でもない、そして、早速ではあるが記者を締め上げると彼は言った。

 

 「わかったよ。とっておきの特ダネだ。オラーシャの戦線が崩壊したらしいぜ。」

その取材に俺は行くんだよと、タバコを咥えて火を付ける記者を尻目に、私はまた、暗い感覚に取り憑かれた。

 

 また、すぐに報告しないといけないのかと。

私の憂鬱さは、船室に居ようがどうしようもないので、海風に当たりに、デッキへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

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