転生ウィッチーズ(小説化)   作:連邦士官

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10話 ラインの護り作戦

 この2日間、ネウロイの攻勢が止まり、進軍速度が上がって、当初のデュセルドルフ予定から更にライン川を超えた先、ノイスに本陣を構築しているらしい。らしいと言うのは私は作戦会議に呼ばれないからだ。

 

 ノイスからデュセルドルフを見渡せて、半島状に突き出たオーバーカッセル、ニーダーカッセル、北はメーアーブッシュまで広がり、塹壕が掘られていた。地図を見ると納得である。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ライン川に突き出た半島を砲地点として、支援を行うための布陣であり、先の撤退の際に、ここら辺以外の橋を爆破したらしいので、こうなっているようだ。川の周りには湿地が広がり、ネウロイは近づけない。前世の記憶だとドイツ軍が苦しんだ、泥将軍を味方につけるような布陣だ。ルントシュテット元帥もやるではないか。ミステリー小説と怪事件の解説などを読むだけの翁では、無いようだ。

 

 私の現在の基地の上司は、ケッセルリンク少将と近くにいるのは、モーデル大佐である。私が居るのはもちろん、ライン川に半島状に突き出た地帯である。ガーランド准将(辞令により昇進したらしい。将官教育が終わってないため、准将扱いなのだとか。)によると死地になると言われたが、今更、カールスラントをひっくり返しても、死地にならない場所などあろうか?いやない。

 

 ルントシュテット翁の作戦は、単純だ。主力を半島、ノイス、メーアーブッシュの三方に分ける。半島からの砲撃で、デュセルドルフにネウロイを惹き付ける。

 

 そして、十分に惹き付けたら、ノイスから出陣。同時にメーアーブッシュから出陣し、ネウロイを半包囲、殲滅。その痛打を持って、撤退すると言っている。情報によるとカールスラント国内で、新たなネウロイの巣が出来たらしく、激戦が予測されると言っている。

 

 激戦じゃなかったことがないだろうに、まったくもって不可解である。不可解ついでに、ルントシュテット翁は、作戦会議で強い右翼をと騒いで、ノイス方面軍に私とルーデル隊を配備しようとしたらしい。意味がわからない爺さんだ。

 

 右翼を強くしようとする病気にでも、カールスラント軍は、かかってるのだろうか?そういえば、カールスラント式の編隊は四機の場合、左翼一機で、右翼二機だったな。

カールスラント軍の頭は深刻かもしれない。右翼を強くする事に意味などあるのだろうか?

 

 呼ばれたから来たが、部外者の私の前で、地図を広げるのはどうだろうか?危機管理がなっていないと言える。ところで、私が持っているマルクが暴落しつつあるが、早くポンドに変えねばならない。株価も暴落したなら、カールスラント系企業の株式を買おうか?

 

 「君は、友軍としてこの作戦はどう見る?」

微笑んでいるように見える。微笑みのアルベルトのあだ名は、正しい様だ。隣に居る眼光が鋭く細い男がモーデル大佐らしい。戦闘指揮は、ケッセルリンク少将が取るらしい。

 

 「あぁ、よくわかってないようだな。中央は我々だ。右翼は、ルントシュテット元帥、現場指揮はシェルナー中将だ。左翼は、ボック、クライスト、パウルス、マンシュタイン。東カールスラント人だ。」

何やら、東カールスラントなど軋轢があるらしい。ロマーニャの私は無視した。外国人が喧嘩をしてるのを知っても何ができるだろうか。私は内政干渉はしない質なのだ。それに、別段関わってなにか得するわけでもない。得がない行動は、エーリカやハンナにするならわかるが、初対面の呼び出してきたおっさんにするものではない。

 

 とりあえず、意見を求められているのだから素直にしておこう。左翼の活動次第で、左翼に合わせて中央の予備戦力を投下、これを突破。で、勝てると思いますと言っておいた。ニ方向による同時縦深攻撃。といったところで、縦深攻撃とはと言われてしまった。

 

 どういったものかを答え、最後に敵中突破を貫徹した部隊と温存しておいた右翼の戦力で三方向からの半包囲が完成し、敵を殲滅できる。鍵は制空権と橋の確保だと言っておいた。

 

 一瞬の空白。フーチェル将軍の戦術を発展させたのかと言われた。正直、ちがうので違いますと答えて、作戦会議はお開きとなった。

なぜか、3時間後にまた呼ばれた。やめてほしい。私は出撃したいのだ。今度は右翼の本陣に呼ばれた。

 

 

 入ると新聞でよく見たルントシュテット翁とその仲間たちがいた。本来、部下には意見を求めないのだろうが、名目上は私は友軍の義勇軍の総司令官、色々とものを聞くことによって、部下に分からせたいのだろう。

 

 「先程、君の案があがってきたから聞きたかった。」

ルントシュテット翁ではなく、よく知らないモノクルの爺さんが話しかけてきた。誰だよ。気を利かせたのか、ルントシュテット翁が、彼はと紹介してくれた。ベックと言うらしい。隣がハルダー、マンシュタイン、グーデリアンなどらしい。参謀だらけだな。

 

 「この縦深攻撃とは、重要点は機甲部隊の突破力と機動力とのことだが。」

ベック上級大将が言ってくる。私は、簡単に答える。まず、狙撃部隊による一斉射撃と、砲兵と自走砲、航空部隊の攻撃後に、制空権を得た機甲師団により、敵を杭のように貫き、続いてガスマスクをつけた瘴気に多少耐えられる歩兵などにより、射撃を行いながら移動する。

 

 通り抜けたあとに敵を休ませずに、包囲陣を作る。疲労が溜まっていない右翼を主力した、鉄床戦術との相乗包囲攻撃である。

 

 目を丸くする参謀たち、いや、目を丸くする様な驚きでもないだろうに。多段階攻撃は指揮官の技能がまるまる現れると言うとルントシュテット翁はこう答えた。

 

 「カールスラント軍人に無能は存在しえない。全員が必ず、この作戦を貫徹し、カールスラントの国土に栄華をもたらすであろう。君も、カールスラント軍でたたかっているからわかるだろう。」

いや、私はロマーニャ人だから。首から鉄十字はぶら下げてるが、カールスラント軍ではない。ロマーニャだからと答えた。ルントシュテット翁が苦い顔をしてから、笑いだした。ガーランドとグーデリアンが笑って、ほかのベックやなんやも笑っている。カールスラント軍は意外と愉快な奴らだ。

 

 中央部に戻った私は、出撃を用意していた。そろそろ作戦開始らしい。デュッセルドルフにネウロイが集まってきたらしく、そわそわするオストマルク人が主力のゴロプ隊。ゴロプは冷静なようだが、加藤武子を始めとし、犬房も含めて本国に帰還してしまった扶桑義勇軍の穴が、カールスラント軍が難色を示し、また、その伝播でオストマルク人達に行き渡っていた。

 

 というか、オストマルク人ですら、戦線にあんなに並ぶほど居るのに、なんでロマーニャは私以外に派遣しないんだろうか?バルボが生きていたら、確実に派遣しているぞ。これだから、ロマーニャ政府は弱腰なのだ。

 

 私は、素早くチーズを一切れとバターと砂糖を沢山入れたコーヒー(本物、ルントシュテット翁がくれた。あの爺さんはよくわかっている。流石は元帥だ。)を飲み干すと豆がまだあるので、周りのウィッチたちにも振る舞う。緊張している奴らは落ちやすいから仕方があるまい。

 

 ゴロプが私を鋭い目つきで見る。暇人かコイツ。

「豆の本物のコーヒー‥‥。どこでこんなものを?」

ルントシュテット翁がくれたというと目を見開いた。面白いやつだな。クルピンスキー来い!ゴロプが面白い顔をしてるぞ。などと騒いでいたら、ケッセルリンクの副官がやって来た。

 

 やれやれ、騒ぐ暇もないらしい。やはり、ネウロイは雰囲気がわからないらしい。ま、それでもいいか。私にスコアをくれるんだからな。クルピンスキー飛ぶぞ。嫌な顔をするな。早く来い。よし、いい子だ。ストライカーを履け。

 

 「いや、大尉殿、僕は犬じゃないんだから。そんな扱いをしなくても。」

そんなことを言うなら、犬扱いをしてやる。頭と体を撫でて居たところ、私の第六感に鋭さが来た。すぐに辞めるとロスマンだ。どうやら見られなかったらしい。今回はクルピンスキーと飛ぶ旨を伝えると無茶をさせるなと釘を刺された。

 

 無茶なんて、私ができるんだから、みんなできるだろうに。何を持って、無茶だって言うんだろうか?

やればできるし、出来るのだから出来るのだ。まったくもって、クルピンスキーの可能性を理解してない。ならば、クルピンスキー。見せてやろうか。嫌な顔をするな。

 

 空に上がるとクルピンスキーにBf109Eでも出来るような急旋回や急旋回をしながら、急降下からの引き起こしを教えていく。空中分解しそうというので、空中分解をしたのなら新品のストライカーが来るから良かったなと伝えると頭を掻いている。

 

 そんなこんなをやっているとネウロイがやって来た。鋭く早く、軽快に、そして宙に私は円を描き囮となる。クルピンスキーは一撃離脱により、囮の私の後ろにつくネウロイを叩く。やはり、やればできるじゃないか。

 

 「やればできるとしても、あんまり、僕はやりたくないんだけどな。」

クルピンスキーの意見は貴重だな。わかった。では、威力偵察をする。私がフォローをするから先行しろと伝えた。クルピンスキーが、顔色を変えた。コロコロ顔が変わって面白いやつだな。良かろう。では行こうか。

 

 「これは、まずいよね。どうするの大尉殿。」

周りは八十機あまりのネウロイに囲まれてる。だから、どうしたというのだ。落とせば落ちるのだ。何が怖いというのか?私は怖くない。だから大丈夫だ。気にするな。当たらなければ、いくら撃たれようが、撃たれてないのと一緒だクルピンスキーと言ったら、クルピンスキーは固まってしまった。だらしがないな。

 

 ほら、行くぞ。敵が鶴翼の様なU字の陣形になってるんだから、どうすれば良いか答えてみろ。

 

 「えっと、右翼は厚いから左翼を叩く?」

まったく、クルピンスキーも、もっと強い右翼病らしい。と言うか、教本自体がそうなんだろう。教本に右翼を強くするよう書くとは一体?カールスラント人は真面目だからなのか?クルピンスキーを見ると違う気もする。

 

 正解を教える。一斉射撃のあと一番手薄な中央部を突破すれば、良いだけだ。クルピンスキーが間の抜けた顔になった。包囲されるというが立体的な空では、円上に包囲されても問題はない。相手は正面しか攻撃できない小型ネウロイならば、尚更だ。ネウロイは立体攻撃よりも平面な攻撃しかできない

ウィッチは縦に200度、横に300度近く攻撃できる。これが戦術柔軟性の差になるのだ。これに、ストライカーの機動性が加わる。

 

 現代で言うなら、ジェット機の速度で飛ぶヘリコプターであろうか?ウィッチは無茶苦茶な存在である。スピットファイアなんかでもそうだが、航空機とウィッチが戦えばウィッチ有利と言われるのはそこがあるのだ。と言っても大型爆撃機もあるし、制空権が取れれば一般航空機も活躍できるのだ。だからこそ、ウィッチは制空権を握られねばならない。

 

 十字にMG151を放ち、MP40に持ち替えるとクルピンスキーと共に敵の中央部に入る。案の定同士討ちがあるから躊躇しているのか、攻撃してこない。だから、完全包囲より半包囲が好かれるのだ。ほら、クルピンスキー簡単だろう?と言葉を飛ばす。

 

 「こんな事、続けれないよ!」

クルピンスキーめ、バカを言うな現に続けている私が生きている。だから、大丈夫だ。ロスマンもハンナもハインリーケもエーリカもやった事だ。問題はない。皆できた。なら、クルピンスキーだけが撃墜されると言うことはない。

 

 あらかた叩き落とした時に、クルピンスキーがこちらを見た。私は何か言おうとするクルピンスキーを止めた。通信が入るのが、分かっていたからだ。レーダーが援護砲撃と機関銃に小銃から吐き出される鉛の山が映る。次には私に左翼の機甲部隊の到来を知らせていた。後ろの中央からも兵士やウイッチの声が、響き渡るように吶喊が木霊する。地上ネウロイの群れに斜めと上から突入するカールスラント軍。突破を許すネウロイ。

 

 ルントシュテット翁の趣味か、作戦開始を知らせる音楽が流れた。ボレロだ。三部隊に別れてるのにボレロとは嫌な予感がする組み合わせだ。

ルーデル部隊が次々に急降下をするからだ。

制空権はこちらが握っている。航空機や爆撃機が地上攻撃を始める。完全に左翼が下まで突破をする。中央部の部隊も斜め下へ走り、ネウロイ側面にまで穿つ。

 

 次は、右翼による突撃だがまだ来ない。

「アイリス大尉来てくれ。」

本陣からお呼び出しがかかるなんだと言うんだ。私は右翼(もはや、位置的には左翼であり翼包囲を成功させた形である。)にある本陣へと急いで向かった。

 

 

 

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