私は、ネウロイを包囲殲滅後にカールスラント軍とベルギカの港まで見送りに来た。意外ではあるが、その件の港には何故かカールスラント皇帝がおり、会場もありウィッチたちと共に略式ではあるが、大々的な受勲式が開始された。
ルントシュテット翁を筆頭に、将官達はプール・ル・メリット大十字章など、ルーデル達のようなカールスラントの古参のウィッチは、剣付黄金騎士十字章。若いウィッチ達ですら、カールスラント十字章、一級鉄十字章が配られ中には、プール・ル・メリット章を貰う者もいた。特に驚いたのは、ルントシュテット翁は豪奢な元帥杖を贈られていた。
私がもらった勲章はと言うと覚えているだけで、プール・ル・メリット大十字章、プール・ル・メリット大十字章星章、プール・ル・メリット章、大鉄十字星章、大鉄十字章、金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字章、剣付黄金騎士十字章、黄金騎士十字章、カールスラント十字ダイヤモンド章、一級カールスラント章、戦車突撃銀章、陸軍対空砲章など一度に41種類の勲章を授与された。
私は授与されるだけなのだが、私のみだけで40分以上時間が掛かってる上に、略章では無く本物ばかりなので、儀礼用のロマーニャ軍服の表面が破けるぐらい垂れ下がっている。かなり重い。動くだけでガシャガシャと音がなる。その上に、金の表面に銀細工を施されたグリップに象牙が使われた重いモーゼルC96に、ダイヤモンドと白銀があしらわれたサーベルまで付いてきた。嫌がらせか?
一通り、各国のマスコミによる写真撮りが終わって、ガーランドが私が渡したカルカノをカールスラント皇帝に渡している。そのカルカノになんの価値があるんだろうか?カールスラント人はカルカノ教徒なのか?疑問はそこまでにして、私はガシャガシャ音を鳴らしながら式場を後にした。その足で私は電話をかける。
ロマーニャに電話をかけた。マッキの受付係に大佐に繋いでくれと伝える。受付係は会社にいる技術大佐へと繋ぎ、私はカールスラントは大陸から撤退をしました。私は何処に行きますか?と聞けた。
件の酸素欠乏症の大佐からは、私に対して新しい辞令が下りた。今回はなかなかに柔軟だ。
「ロマーニャへの陸路はカールスラントが崩壊したことで、封鎖された。今、ベルギカにいるのなら、そのまま義勇軍としてガリアに入れ。向こうが歓迎しなければ、そのままガリアを通って帰国せよ。その際、ガリアに恩が売れそうなら売っておけ。だが期限は数ヶ月だ。そこまで経ったら帰ってこい。任務中に難しくなったのならば、ガリアへの義勇軍を途中で切り上げて帰国しても構わん。」
それもそうなるかと私はガリアへと向かう。
私の微妙なストライカーは、ロマーニャがDC601魔導エンジンをライセンス生産をして載せたMC202から、カールスラントの最新型エンジンである先行量産型のDB605魔導エンジンに換装され、出力がかなり上がっている。
このエンジンは、カールスラント皇帝にストライカーの調子が悪いと言った途端にすぐに換えようとくれた。カールスラントは流石は大国だ。気持ちがいい程に気前がいい。
皇帝に続けて、更に激戦で銃を無くしたといえば、直様MG151もくれる。その上にだ。私に対してどんな武器が強いのかと質問をされたので、もう少し簡易的にMG34の部品数を減らし、可動部分を減らして信用度を高くして、プレスを多用して銃身交換が素早くできて使いやすくする。
このMG34の改良型と一部パーツを合わせてセミオートの小銃を作る。この際、銃把(所謂、グリップ)を付けて作るように、オプションパーツをつけれるレールを作り、MP40なども同じレールを付けれる様にする事で、戦術的な価値は高まる。
使う際には、絶対に小銃はセミオートにしてもフォアグリップやマズルブレーキなどをつけて反動は抑えないと難しいと言っていたら、それも採用しようと言っていた。報告した内容をすぐに採用するとは、マッキとはえらい差だ。流石はカールスラント皇帝、いや、単純に国力差かもしれないが。
列車に乗る、カールスラントが持ち帰れなかった装甲列車を私の為に動かしてくれた。わざわざ、なんで私の為に、カールスラントはそんなにするんだろうか?
他愛もないことを窓の外を見ながら、考えたり思い出したりしていたら、もうガリアだ。窓からみた情報からでは、戦車、航空機、陸戦と空戦ウィッチを問わずに分散配備、対空砲や野砲まで疎らなようだった。広い国土を守るために兵器を薄く広く配備したのだろうか?
とりあえずは、あの大佐が心配していた事はなくガリアは私を歓迎しているようだ。なにより、装甲列車から降りた時には若い軍人が私をエスコートをして、黒塗りの車‥‥ロールス・ロイスのリムジンタイプに案内をしてくれた。ベルリンに着いたときよりは歓迎はされている。この車は見るからに高そうだ。乗るだけならリベリオンのTフォードのほうが安くて便利だろうに。ロールス・ロイスなどの高級車の意味がわからない。国の威信の為に自国の車会社を作るのなら私にもわかるが。
促されるままにロールス・ロイスに乗り込むと、ぴっしりとした黒髪のオールバックのブリタニア軍服を着た髭の将官と白髪の髭の将官がいた。マナーを守りポケットフラップ(ポケットの中身を雨などから守る蓋。)を車内なのでポケットの中に入れている。しっかりとしているが、私はこんな風に奇襲される謂れは無いはずだが。
「君がアイリス君かね。活躍は聞いてるよ。私はマロニー。トレヴァー・マロニー空軍中将だ。こちらはガリア軍の長官である‥‥」
黒髪のオールバックの髭のブリタニア人がマロニーというらしい。
「私はガリア陸軍所属モーリス・ギュスターヴ・ガムラン。陸軍参謀総長兼陸軍総司令官、国防副大臣、戦時ではガリア全軍総司令官である軍事評議会副議長だ。」
この白ひげの老人はガムランというらしい。情報量が多い。なんだろうか?肩書が服を着て歩いているのか?
よく見るとロールス・ロイス内部はベルベット張りに彫刻が施された象牙の引き出しなどがある。おそらくシガーケースなのだろう。映画によくあるものである。無線までついている。
利用してやろうという気配は、マロニーからは伝わってくるが、不気味にもガムランはこっちを興味深そうに見つめるだけだ。医療ウィッチがいるこの世界では、ガムランの脳は梅毒で死ぬような立場にはない。まともなのかはどうかは置いといて、病気では無さそうに見える。
話はカールスラント戦線のみで終わった。基地に着いた。随分と立派で、周りの道はレンガが敷き詰められており、ランスと言う名の素晴らしい町だ。キレイな町並み、街路樹は規則正しく並べられている。南西にパリがあるのでここが実質的な北部の最前線だ。マジノ線は南東にある。
私のストライカーなどの機材搬入を手伝う。あのタイプは悪意もなしに何をするかわからないからだ。それにしても、カールスラント人とは打って変わって、志願兵は集まって居ないようだ。
ある程度作業が終わったので、歩哨にタバコをやり会話をしているとベルティエ小銃、ルベル小銃、MAS36小銃など3つの小銃が混在し、一昨年に切り替え終わって在庫があったM1915軽機関銃ショーシャまでも引っ張り出し、狩猟協会から猟銃まで徴発し支えようとしているようだ。涙ぐましい努力である。
よく見たら歩哨が持ってるのはリー・エンフィールド。あっちの歩哨は、スプリングフィールドM1903小銃、あっちは三八式歩兵銃か?嫌な予感しかしない。ちらりと拳銃も見る。これもバラバラだ。
歩哨の年齢も高めだ。おそらく、予備役の軍人達が臨時招集で集まったのだろう。熱狂がない。士気が低く武器もまちまち、ブリタニア軍も見当たらない。何をしているんだろうか?
軍用のトラックはリベリオン製、連絡機は‥‥扶桑か?高級将校の車はブリタニアのロールス・ロイス、倉庫に並ぶのはルノーなど国籍はまちまち。
前大戦の戦車も引っ張り出してきているそうだ。陸戦ウィッチも空戦ウィッチも少ない。時折、工作車が通りあれは何かと聞くと
「アイリス大尉。あれは塹壕を掘るためです。あのトラックは木材を載せています。あっちは、水路を引くためです。」
塹壕戦の準備をしているらしい。小型ネウロイなら小銃弾でも撃破できる。確かに“ガリアが制空権を握っている”のならば、塹壕戦は有効策かもしれない。そうで無ければ頭上にミミズのように地面にのさばる兵士に、鉄の熱量が降り注ぎ、蒸し焼きの完成だろう。
なので、カールスラント人は塹壕戦をあまりしなかった。それに、歩哨と話している間に大量の車がやってきた。勇ましく、エンジン音を鳴らしているが正体は‥‥タクシーやバスだ。兵士を満載しているらしい。少数の若者が見られるが、何も知らないような顔をしている。
泥の中で、味方の血を啜り、落ちてくる弾薬に国歌で出迎えるぐらいの精神でなければ塹壕戦は精神がおかしくなるのに良くやる。前線は暇なので、彼らの一人が新聞を持っており、その内容に愕然とした。タイトルは‥‥。
『この戦争は今年のクリスマスまでには終わる。ネウロイはカールスラントを攻めており、消耗している。』
甘すぎる。ネウロイはカールスラントで消耗したのではなく、カールスラント“が”ネウロイ“で”消耗したのだ。いよいよ、暗雲が立ち込めてきていると思った。リベリオンの介入を恐れて、彼らはリベリオンの本格参戦を抑えているようだが、状況をわかっているのだろうか?ガリア人にはガリア人の考えがあるんだろう。
私の一存で撤退する許可は降りている。危なくなったら、ロマーニャに帰ろうか。とは言うものの、何故カールスラント軍があんなに時間を稼いだのに国民脱出が済んでないんだ?どうなっているんだ?ガリア政府に問うてみたい。
歩哨の話だと、一部の政党がその議決で政府に解散を要求、首相が辞任をして内閣が吹き飛び、議会は混乱をして、脱出が進まなかったとか。どういうことなんだろうか?
歩哨に別れを告げて、私は踵を返して基地の屋舎に向かう。構造上仕方がないが、なかなか遠い。バイクでもないかと探すがそんなものはない。カールスラントにいた時はそこら中でバイクとワーゲンが行き来していたものだが。馬でも乗ろうか?と思ってると車が来た。しめたとばかりに私は飛び乗り、屋舎に車を動かさせるのだった。
レンガ造りの小洒落た壁に周りはぶどう畑で、石垣のように組まれた古い塀。カールスラントよりも、ロマーニャよりも牧歌的で素晴らしい景観だ。戦うことを考えなければだが。まず、古い塀の裏手に土嚢がない。
爆発で古い石造りの塀が壊れて破片でも飛んできたら、一大事だ。破片が散弾銃の様に裏手に隠れる兵士に突き刺さるだろう。それに、遮蔽物だと喜んで兵士が隠れるかもしれない。兵士が隠れたら、ぶどう弾の如く破片が突き刺さるのが目に見えている。相乗効果だ。
そんな私の感想は置いておいて、世の中は難しい。ベルベットの高そうなソファに体を沈めている。マロニーとガムランの二人を見るとそう思う。ガムランは無口で黙って座っている。まるで瞑想をする高僧だ。独特な雰囲気がある。窓から差す光によって神々しささえ感じる。
一種の有能で冷静沈着なエリートの様に見える。それに対して、マロニーも鋭い雰囲気と葉巻を吸う姿が、さまになっている。有能に見えるだけで中身はわからないが。
「君は私の指揮するブリタニアのガリア派遣軍と行動を共にしてもらう。先に言っておくが、ブリタニアは全くと言っていいほど戦争の準備が出来ていない。従ってウィッチも航空機も歩兵も足らん。つまりは、陸上のガリアについてのブリタニアの力は空白だ。頑張りたまえロイヤルネイビーはガリア人やカールスラント人保護のために出払っていておらん。」
君が主力だとマロニーに言われた。今までと似たように一人義勇軍ですねと伝え、マロニーに疑問をぶつけた。マロニーはブリタニア空軍である。何故、ソードフィッシュを今更作ったのかを聞いた。布あまりでもしてたんですか?と付け加えると彼は怒ってしまった。別段、悪口でもないだろうに。
ガムランはこちらを見てから、パリの本部へとマロニーと共に帰ると言って準備を整え出した。
彼らが、帰る準備ができる頃、私は出撃の準備を完了させた。カールスラントとガリアは隣国なのに、空の色も匂いも違う。しかし、ガリアの空がカールスラントの空のように、硝煙と血と埃臭さと焼ける臭いに包まれるのは時間の問題だった。