転生ウィッチーズ(小説化)   作:連邦士官

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4話 ベルリンにて (中)

 

 朝、パンと目玉焼きとヴェルストとザワークラウトを食べ、オレンジを齧り食事を終え、新聞を手に取る。また、新聞の一面に、カールスラントからの報奨金で、戦時国債を買う私が、載っている。記者たちも良くやるものだ。自分たちが、仕込んだネタだとしても、こんなに同じネタを擦り上げるなんて商魂が逞しいのか、それだけ他の戦線は良いネタが無いのか、それとも実録だけでは、士気がもたないのか。

 

 そう、私は思いながら、ポッドからコーヒーを注ぎ、飲んだ。しまった。周りが飲んでいるからとはいえ、確認するべきだった。あの戦いの後だから、物資がないのかこのコーヒーは、代替品のコーヒーだ。

 

 おそらくは、これはチコリーとタンポポの根と麦茶を混ぜた様な物だろう。コーヒーだと思って、口に入ったあまりの味に、隣りにいたスカーフェイスの彼女が飲もうとしていた牛乳を貰い、これに入れて、ついでに砂糖と脱脂粉乳を入れ、流し込んだ。

 

 それを見ていた周りのウィッチ達が、ざわついているが、何かあったのだろうか?

「見かけより、大尉殿は勇気があるよね。」 

エーリカにそんな事を言われてしまった。勇気とはなんだ?もしかして、褒美として、一日、十回出撃を貰った事か?と聞いてみたら、ゲェッと言われてから、心配そうな顔をされてしまった。何かおかしな事を言っただろうか?目下のおかしな事は、替えの軍服が無いので、結局、ダキア軍服を着ていることだろうか?あのオストマルクの軍服は、ロマーニャより、頑丈である。

 

 「大尉殿。どうこう、言ったら、良いのか私は分からないですが。」

と前置きをしてから、バルクホルンが畏まって、話しかけてきた。どうかしたのだろうか?軍規に厳しい彼女からしたのなら、私が、ダキア軍服にカールスラント略帽を被っているからか?

 

 「大尉殿は、ロマーニャ人なのだから、そんなに、カールスラントに残らなくても良いのですよ。もう、ベルリンからは、民間人の全撤退は、成功しましたから。」

何が言いたいのだろうか?私は、別に、カールスラント人の為に、ここ、ベルリンにいる訳ではない。いる理由は、私は私の為に、そして、幾ばくかしかないが、軍への義理返しの為だけだ。取り敢えず、私は誰よりも一番、最後にベルリンに入ってきたから、誰よりも最後にベルリンを出て行こうかと思っているとだけ伝えた。

 

 「えっ、あっ、そうですか。」

急に、彼女の顔が、驚きに満ちたものに変わった。そのまま斜め下を見て、気まずそうにするので、私まで、気まずくなってしまった。そこで、近くにいたウィッチに話しかけるが、彼女も彼女で、困惑しているようで、こちらも困った。

 

 そうこうしている合間に、エーリカが、バルクホルンの近くにやってきて、何かを話したようだ。

「なっ!本当に、一日に十回出撃するつもりか!?」

明らかに、先程とは打って変わって、違う声をあげるバルクホルンに、周りのウィッチ達もざわついている。どうしたのだろうか?何故ざわつくのかは、わからない。自分の出撃回数や撃墜スコアが減ってしまうからだろうか?確かに、撃墜スコアが他国のウィッチに食われては、気に食わないだろう。でも仕方があるまい。

私は、そうだ。一日に十回出撃すると答えた。ここで、嘘を言ってもしょうがないので、素直に答えた。

 

 バルクホルンは、更に目を剥いた。そして、ついに取り乱し始めた。

「ミーナ!止めるのを手伝ってくれ!私じゃ止められない!一日に十回出撃すると言っているぞ!」

そんなに大きい声で、言われたらば、なんだか私が、戦果にガツガツしてるようで、恥ずかしいから、やめて欲しい。しかし、そんなに私が出撃するのが、嫌なんだろうか?周りのウィッチ達もこちらをじーっと見てくる。なんだか、やはり、困った。

 

 「やっぱり、そう、やるのね。私にはそれに命令する権限は無いけれども、大尉殿。なんとか、それを辞められないのかしら。」

心配した顔をしながら、私にそう告げてきたヴィルケ大尉。だが、一度、言った以上はもはや、撤回は出来ない。それにこんな風に騒ぎになってしまったら、私は‥‥。

 

 

 私の指揮系統は、独立義勇軍なので、カールスラントの統制下には無い、何を言われてもやりますとその決意を口にすると被せ気味に、バルクホルンが私に、「だからといって、ロマーニャ人の大尉が、そこまで、そこまで、カールスラントに尽くす義理はないだろ!」と言ってきた。如何せん、今の私は、頭にカールスラントの略帽に、体はダキア軍服を着ている。笑ってしまいそうになるが。

 

 バルクホルンの論理は、確かに一理あるが、私としては、ロマーニャと違って、給料が高いのと取材費で儲かるのが、理由だとかは言えない。孤児であった事がある、私からしたら、金というものの大切さが、身に沁みているのだ。しかし、それをこんなに、注目されている中で、言ってしまったら、如何せん人聞きが悪い。ロマーニャ人でも、心は今、カールスラントにあるので!と誤魔化すために言った。皆が黙ってしまった。

 

 なるほど、変な空気だ。こういう時は、出撃をしよう。その日は、何故かネウロイに会わずに、どうしようもなかった。目を皿のようにして、見て周る、地上も空も一回目から十回目まで、ちゃんと探したのに。会いたいときには、まったく会えなくて、会いたくないときには、会ってしまう。まるで金を借りに来る碌でもない、親戚のようなものだな。ネウロイと言うやつはと現実逃避をしていた。

 

 基地に着き、部屋に戻り、手入れをしていると、カルカノのボルトに付けた父の認識票(ドックタグ)とユースティティア(正義の天秤を持つ女神。世界的に裁判所でよく見られる。)の細工が揺れた。

 

 こんな正義の女神の細工を持っていたとしても、浮気をする妻に、自らが所持をして、保管をしていたカルカノで、撃たれてしまうのだから、世も末である。グリスを塗り終わり、皮肉だなと思いながら、今日の報告日誌を書く。私は義勇軍なので、これを忘れたら給料が貰えないのだ。本当に、煩わしい限りである。

 

 

 次の日、朝の光で、目が覚め、食堂に向かうと何やら、ウィッチ達が騒いでいる。何時もより、心なしか声が明るいのは、ここ2日は、ネウロイが攻め込んで来てないからであろう。私が、朝食(珍しくベーコンが多い、おそらく近日中に戦闘があるのだろう。)を食べていると、クルピンスキーが「大尉殿、一緒にぶどうジュースを」等と話しかけてきた。それを、別に嫌がらない私に、私の髪を触りながら言ってくる。全く、キザでしょうがない奴だ。ほらほら、後ろにロスマンが居るぞ。

 

 「大尉殿、朝から失礼しました。」

そんな言葉をかけ、ロスマンがクルピンスキーを何処かに引っ張って行った。私が、見たところでは、20cmは身長差が、有るというのに、ロスマンは、なかなか恐ろしい女だ。何故か普段ならば、カールスラント軍人らしくキッチリ整えられている身なりのロスマンだが、今日は朝から、ロスマンの襟が少し乱れて、眠そうだったのが関係あるのだろうか?

 

 昨日とは、雰囲気が変わって、ウィッチ達からの私の扱いが良くなったのは、良いことである。何かないかと私は見て周るが、昨日とは、同じ轍を踏まない。私は、コーヒーではなく、ややカールスラントでは、不人気の緑茶を選ぶことにした。扶桑からの供与品らしい。周りのウィッチが、紅茶ではなく、緑茶を選んだ私を珍しそうに見てくる。東洋からの珍しい飲み物扱いだな。

 

 備え付けの暖房機(鉄で出来たデカいストーブ、これで配給が間に合わない土地は、シチュー砲とあだ名される、馬が引っ張る炊飯車がやってくる。)のポットからのお湯を一旦、何も入っていない、やや大きめのマグカップ(カールスラント軍では、アルマイト製か銅製のモノが多い。)に移し、また別のマグカップに移す、それを5回は繰り返す。

 

 先程より、見てくる見物人のウィッチが多くなってきた。そんなに珍しいか?そして、おそらくは、緑茶と一緒に貰ったのだろう急須と湯呑を用意する。茶葉が入った急須に流し込む。まず、すぐにそのお湯を湯呑に捨て、湯呑を温めて湯を捨てる。また、同じ工程で作ったお湯を入れ、今度はゆっくりと急須を置き、蒸らす。やはり、奇妙に映ったのか、ウィッチ達が増えている。

 

 次に、回しながら打点を高くして、湯呑に茶を流し込む。私の固有魔法は入射角等も全てわかるので、茶は飛び散らない。椅子に立って、そうやってお茶を入れて、湯呑に見事に入れるのが凄いのか、周りのウィッチが拍手をしていた。見物がしたいのなら、見物料を寄越せと思わなくもないが。

 

 いつの間にか、戻ってきたクルピンスキーが、エーリカを連れて近くに居た。二人とも、お茶に興味津々だ。しょうがないので、注いであげよう。

「いやいや、僕はできるから大丈夫。」

案の定、私の真似をしたクルピンスキーは、お湯が足にかかって熱がっている。平和な奴だ。エーリカは、それを見てか、私に注いで貰うのを了承した。正直、こっちもお湯遊びをしだしたら、面白かったのになとは、口が裂けても言えないな。

 

 「よくわからないから、飲んでなかったけど、緑茶は結構イケるね。」 

まぁ、それは良かったなお嬢さん(フラウ)と呼んでやる。みんな、エーリカの事をフラウ、フラウと呼ぶが、何か意味があるのだろうか?まぁ、あだ名なんて、意味があるもののほうが少ないか。

 

 私は、テーブルの上に、誰かが置いていたであろう、朝刊をスッと失敬すると広げて読み出した。そして、むせた。エーリカに「大丈夫?」と聞かれ、一人で熱いとやっていたクルピンスキーが、いつの間にか、さり気なく背中を触っている。擦るふりをして、その手付きは止めろ、クルピンスキー。案の定、すぐに、ロスマンに見つかり、引っ張られていった。お約束というやつか?

 

 新聞の見出しには、【友邦ロマーニャから来た義勇軍のエース アイリス大尉、カールスラントと共に】等と書いている。昨日の会話が、どこからか漏れたのか、かなり勇ましく脚色されている。何がカールスラント亡命説だ。給金が良くなければ、ふかし芋とソーセージかハムかベーコンに、酢漬けキャベツとキャベツかビーツのスープしか出ない様な国に、長居はしたくはない。

 

 グルメではないが、それでも食事ぐらいは、良いものを食べたいのだ。残しておいたオレンジをエーリカに渡す。エーリカは、撃墜スピードが早いから、きっと彼女と仲良くしていると、何か、助けてくれることもあるだろう。

それに、エーリカは割とこっちを心配してくれるのだから、こちらもそれなりに好意を返さないと不躾である。餌付けの様な行為が無作法かどうかは、議論の余地があるが。

 

 更に、記事を読み続けていくと、アイリス大尉は、カールスラント人の全員が、カールスラントから出るまで、カールスラントに魂を埋めて、戦い続けるとか書いてあった。妄想も甚だしい。逞しい妄想力は、どうやったらネウロイに勝てるかの議論に、回してほしいものだ。ガリアとブリタニアとリベリオンが、もっと戦えとしかならないかもしれないが。

 

 

 警報が鳴る。さて、ネウロイのお出ましだ。食事が豪華だったのは、理由があった。私は、倉庫に着くと懐かしいイェーガーと整備兵を見つけた。生きているようで、良かった。しかし、私に、そのカルカノを渡そうとするな、緊急出撃だから、どさくさに紛れて、そこにあるMG34を失敬するつもりだったのに。バールと火かき棒もしっかりと渡された。いや、そこは、あそこのウィッチみたく大きめのナイフとか色々とあるだろう。それをくれ。

 

 

 結局、火かき棒とカルカノを手に空を飛ぶ、この私のカルカノは、1891年に採用された奴だぞ。ロートルもいいところだ。なんて思っても、仕方がない。リー・エンフィールドかM1ガーランドか、M1カービンが欲しい。いや、贅沢を言わないからBARやブレンガンでも構わない。などと考えている内に、私の固有魔法に敵が引っかかった。バカ正直に進んでくるネウロイだ。カルカノで、素早く六連射をすると十機のネウロイが、粉になって、私は帰投する。

 

 一緒に出た、カールスラントのウィッチが、今のは、どうやってやったのかを聞いてくる。私のは勘でしかないから、真似をすると死ぬぞとだけ、伝えておく。ようやく、カルカノに弾を装填しながら、倉庫に着いたが、また警報。どうやらネウロイは、私に撃墜手当と帰還手当と緊急出撃手当を差し出してくれるらしく、今日は随分と大盤振る舞いだ。

 

 結局、その後に、計六回出撃をして計91機を叩き落としたところで、整備兵達が音をあげてしまった。何故、飛ばないほうが、疲れているのかが、私には、よくわからないが、大尉はもう休んでいて下さいと午後には言われてしまった。解せぬ。

 

 それと同時にでは、あるが、僚機のウィッチ達が撃墜申請をしてくれたようで、一日に91機も撃墜したのは、世界初らしく受勲という運びになった。今すぐは、現金はくれないが、退役後には年金が出る勲章らしい。

最も、退役後にカールスラントがあったらばの話だが。その勲章も鉄十字勲章も落ち着くまでは、要らないと伝えておいた。受勲式があるから、出撃出来ないなんて、馬鹿な話はないからである。

 

 夕方に、また警報がなる。全く、うるさい奴らだ。今度の僚機は、何時も会うスカーフェイスの彼女らしい。改めて名前を聞いてみたら、驚いた。

「あぁ、私の名前を言っていなかったか。私はハンナ・ウルリーケ・ルーデル。中尉だ。」

最近、気付いたが、ウィッチたちは皆、私の前世でエースだったパイロットらしい。驚きもひとしおに、牛乳をありがとうだけを伝えて、飛び立つ。

 

 そして、戦場を見る、そこにあったのは、先日のデカブツの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

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