また、来たデカブツだ。僚機のルーデルにあのデカブツの頭上から、急降下をすると背面から、小さいネウロイを弾幕のように、飛ばしてきて危ないと伝える。
「では、どうする?」
ルーデルに聞かれた。危ないのは確実。だがしかし、それらはタネさえわかれば問題はない。上には攻撃手段が豊富だが、アイツは水平方向への攻撃手段はない。
「なるほど、あれが噂の化け物か。」
迫るデカブツにルーデルから言われる。私が頷くと二機で急降下をする。夜の闇に吸い込まれそうだが、デカブツの放つ対空砲火の光源で明るい。
レーダーを確認すると他のウィッチは、街に近づく小型のネウロイを枝払いするので、忙しそうである。デカブツの前に、突出した私達が、ベルリンにコイツがつく前より先に叩かねばならない。ベルリンが崩壊するのは別に構わないが、あそこにはまだ人が居る。
私は地面に足がつくぐらいの距離で、スレスレに飛ぶ、ルーデルは、更に私よりも地面スレスレを飛ぶ。そして、私達のロッテ(二機編成の編隊の事。)は左右に別れ、私は“上昇”した。
全くもって、私以外のウイッチと言うのは、私よりも魔力があるから羨ましくて困る。私にあと少しだけ、魔力があればもっと自由に、この空も飛べるだろうに、今更の無い物ねだりか。自嘲気味にフッと笑ってしまった。
ルーデルは、「あれを前に、舌なめずりか?倒してからにしてくれ大尉殿。」などと窘められてしまった。
ベルリンの近隣の夜間の空をデカブツの容赦ない鉛の咆哮と火薬の匂いが彩る。辺りを見るとまるで昼間のようだ。とてつもない熱量を感じる。空が再び、夕暮れのように赤く輝く。まったく、よくも、こんなに飽きもせずに、攻撃をしてくるものだ。全弾が曳光弾か?アメリカ軍でも、こんなに豪勢に曳光弾は使うまい。
私は急降下体勢に入る。姿勢制御をしながらも、バレルロール(横回転の事)や一瞬、エンジンを切って自由降下で、降下のスピードを落としていく。
当然、ストライカーのエンジンを切れば、シールドも弱まるが相手の攻撃が私に当たらなければどういうことはない。当然、私の攻撃も相手に当たらなければ意味はない。使い魔に伝えて、魔力の温存のために防風術式も切って長期戦に備える。
「大尉殿!何をしている!死ぬぞ!」
ルーデルの声は、通信を通して、私に届くがだからといって、それを言われても、私は今できる私の最適解を導き出しているだけだ。緩やかに降下スピードが落ちて、自由降下でゆっくりと落ちる私は、ネウロイが出す対空砲の炸裂の爆風によって空中で反動をつけて行き、空を滑るように降っていく。途轍もなく楽しい。
傍から見たら、私の行為は死のダイブかもしれないが、これでも私は前世では空挺部隊で三佐をやっていたのだから、問題はない。
暗闇に対空砲の火で、私がはっきりと浮かび上がる。一方で、デカブツは僅かに浮かび上がるシルエット。前世の夜間降下では、見られなかった光景だ。夜間に海上に降下して、泳いで目的地まで行く訓練をやった事がある。
そして今の私は、頭にビーコンが浮かんでいる上に、対空攻撃の軌道もビーコンで表示される。
前述の通り、自分の視界で見えて、僚機も視界をカバーしてくれる。脳内のレーダーだってフル稼働されてる。もはや、それは、インストラクターと二人で、同じ落下傘でする昼間のスカイダイビングと変わらない。いや、それよりも、ストライカーがある分、かなり安全だろう。
似たようなことをルーデルに無線で伝える。
「大尉殿!正気か!ストライカーに火を入れろ!マジノ線やブリタニアのシンガポール要塞よりも、きっと対空砲火が厚いぞ!何を笑っている!」
いやいや、こんなに安全なのにおかしな事を言うものだから、つい笑ってしまった。
確かに相手は硬い事は硬いが、もう相手の行動は見切っている。その前の再上昇して、降下しているのには訳があった。それは簡単な話だ。弾幕が無いだけでなく、相手が背面から小型ネウロイを出す瞬間に、デカブツの弱点が水平に出てくる。
だからこそ、私が囮になっている。ルーデルが勝手にストライカーの仕様上持てないはずの機関銃を持っているからだ。その装備している対地用の30mmで、相手の腹を食い破る作戦。単純な方が強力なのだ。
私が持つのカルカノ、ルーデルは30mm。全く不公平だなと思うが、ルーデルは私よりもかなり魔力が多く、カールスラント人。一方の私はというと魔力が少なくてロマーニャ、悲しい事実である。元々の話で考えると私は陸上用ストライカー研究で企業にテストの為のウィッチとして出向させられたが、飛べるからと様々な企業を経て、たらい回しでマッキに入ったから仕方がない。
私はカウントダウンを始め、ルーデルに伝える、3、2、1と言い切るとデカブツはその山のような背面が震える。
その背面からヤマアラシの棘のごとく小型ネウロイを射出した。前回から変わらない芸がないやつだ。デカブツよりもロマーニャのトレビで、投げ銭をもらうために、大道芸をしている道化師の方がよっぽど芸がある。
すぐ様、カルカノを六発全て撃ち尽くし、ベレッタも7発吐き出すといよいよ、火かき棒の出番だ。自由降下をする為に切っていたストライカーのエンジンに火を入れ、上体を起こす。その反動により体勢を反転させ、バク転のような動きで、降下体勢を整えて急降下を始める。私の降下は怖いものはない。近づくネウロイに私は、火かき棒を横になぐと小型ネウロイが三機散る。
手に持つカルカノのバヨネットを縦に降ると、また二機のネウロイが爆発する。目の前もそれ以外もどこを向いても撃墜スコアが羽をつけて、飛んでいる。おっと、背中に回り込もうとしたネウロイを火かき棒を投げて撃墜する。たったの1分もしないうちに、六機撃破だ。
また、鉄十字勲章を貰うのかと思いながら、更に降下を続ける。私はバールを背中から引き抜くと、腰のベルトに差し、カルカノに装填をする。その間、小型ネウロイが来るが、シールドに叩きつけた他にも殴りつけて撃墜した。近づき過ぎるのはバカのやり口だぞ、ネウロイ。自分の得意な距離で戦うのが賢い奴のやり方だ。
「大尉殿!ブレーキをかけろ!その角度だとデカいのに突き刺さるぞ!」
ルーデルの通信が来る。早く、エンジンをつけろやダイブブレーキをかけろなどとうるさく言う。しかし、大丈夫だとわたしの勘が告げている。何より、私の第六感は人より発達しているから平気さ。おっと、次でチャンスは最後だから、ルーデルに狙えと伝える。
それにしてもだ。デカいやつは、手間がかかるのに小さいネウロイと同じで、スコアが1しかつかないから手間ばかりかかって困る。デカブツが背面からネウロイを吐き出そうとした瞬間に、ルーデルの30mmが火を吹いた。ルーデルの放った弾が吸い込まれるように、相手の小型ネウロイを撃とうとしていた砲身の中に炸裂して動きがとまる。
「やったか?」
ルーデルのつぶやきも、束の間で相手は地面の中に消えようとして土埃が蔓延する。しつこい奴だ。結果、私達はデカブツの追撃もできずにいた。煙が晴れる頃には穴の中に奴は消えていった。こうして、ベルリンは第三次攻勢を守りきったのであった。
基地に帰るとルーデルに、しっかりと怒られてしまった。死ぬ気かと言われてしまったので、それは無い。死んだら折角の年金を私は貰えないじゃないかと返したら、ルーデルは呆気に取られたようだ。そして、このベルリンにおける第三次攻勢を守りきった事により、各種戦線が落ち着き、カールスラント全土から、一般国民の大多数がノイエ・カールスラントに離脱を出来たらしい。
話しかけてきたバルクホルンによかったねと伝えるとバルクホルンが、妹も無事に離脱が出来たと言っていた。
言われてみれば、周りのウィッチたちの顔色もよく感じる。
喜ばしいことだ。私はジャガイモのオムレツを食べて、騒がしい方を見るとクルピンスキーが、ガリア産の“ぶどうジュース”で祝杯をあげていた。だが、たまたま、前線基地に視察で来た、ゲーリング元帥が食堂に来たことにより、見つかり、晴れてクルピンスキーへと営倉に送られた。これは勘が鈍いからだ。それか背中に目をつけていれば、あんなにロスマンにも補足されないだろうに。
次の朝の各社の新聞には、受勲はカールスラントが助かるまではいらない!大尉殿が語る!?、ロマーニャ人の私に受勲するくらいなら、一人でも多くのカールスラント人に安息を!?、受勲を断り、カールスラントウィッチの休暇をカールスラント皇帝に求めた!?などと書かれてしまった。
全く持って、最近のマスコミは書くことが無さすぎて、頭がおかしくなったのであろうか?これの影響か、若いカールスラントのウィッチからは、尊敬の眼差しを送られた。
現実的には金が溜まってきたので、マルクとリラが紙切れにならないうちに、リベリオンか扶桑に行きたいのだが。
私とロスマンが、営倉のクルピンスキーに営倉用の食事を届ける。ベイクドポテトとふかし芋だ。いや、普段の食事と変わらないだろう。どうなってるんだカールスラント軍。
一日の間隔を置いて、また、ネウロイが攻勢を仕掛けてきた。大体の民間人の脱出が済んだカールスラント軍の士気は高く、空軍も陸上軍も次々にネウロイを叩き落としていく。私はというと、偵察をしていだけなのに突出して相手の裏側まで来てしまった。
ので、しょうがない敵中を強行突破して帰投をした。それにより、76機ほど捻り潰した。史上初の200機以上、ネウロイを叩き落としたウィッチとなった。
ロマーニャ軍からは帰還命令が出たが、私はマッキの社員の義勇軍として、今カールスラントにいる。
思ったよりも戦えないと思ったら、すぐに里子に出す軍に対しては、もはや、ある程度はあった恩義は返した。昇進と相殺にして、私はまだカールスラントに残ることに決めた。実際には、名目上かもしれないが、確かに義勇軍司令官の私には、それを判断する権限がある。
収入面でも、要因はある。カールスラントにいる私は、珍しさのせいか、定期的に各国の記者が来て取材をしていたのだが、この取材は取材費+戦時国債購入費用を支払ってくれるので、私としては前線にいた方が、金子の心配もしなくて良くてかなり有難いのだ。
実際、私はロマーニャにいた時より、10倍以上の収入の開きがある。後方で安い賃金を貰いながら、事務仕事を教官として行いただ椅子を温める様な、ベンチウォーマーより私は今のほうがよっぽど良いと思う。
翌日、新聞にはカールスラントから全国民が離脱するまで、帰国と昇進を拒否。後方よりもカールスラントと共にある!?等と書かれてしまった。
しかし、本当に彼らは私以外に話題がないのか?まさか、私への取材費で、他を取材出来ないのではなかろうか?
それにカールスラントのマスコミなら、カールスラントのウィッチを取材しろ。酒を飲んでいて謹慎させられているクルピンスキーがいるぞ。話題に事欠かない面白いやつだぞ。
その後は三日間の平和が訪れた。この間に、脱出が後回しにされた男性などが、ノイエ・カールスラント(南米にある領地)に、撤退が進んだ。今日の攻勢を守りきれば、カールスラントには最早、カールスラント軍しか残らないらしい。
そんなこんなで、私はベルリンのまた東側を任される。東部戦線の申し子かなにかだと思われているのだろうか?取り敢えず、私は敵中を突破し、威力偵察を行っていたのだが‥‥。
あの威圧感を感じる。それに3つだ。いつか会った剣持ちネウロイに似たネウロイ、そして悪魔のような形のネウロイ、それにデカブツのトリオだ。ちょっとした怪獣対戦である。スーパーロボット大戦でもないのだから、はっきり言ってやめて欲しい。
そんな余裕があるならば、スオムスかオラーシャにいけと思いつつも私は降下した。何故なら、その行動に自信があったからだ。
私と共に降下する二体。デカブツは急いで、私に対空砲火を浴びせようとする。だが、大きさの関係で、私を追ってきた二体の大型ネウロイに対空砲火が炸裂する。離脱しようと二体のネウロイは体勢を変えようとするが、時はもう遅い。対空砲火により、バランスを崩した二機は、そのまま地面に衝突し、ベルリンの脆弱な地盤は、先日のデカブツの穴とこのネウロイ達の衝撃に耐えれなかったようで、この二機は地面に埋まった。
形勢を不利と見たのか、デカブツは埋まっているのを見捨てて逃げていく。ネウロイに、感情があるのかは知らないが随分と薄情である。私は土に埋まったネウロイをしっかりとバールで外装を剥がして、コアを見つけてベレッタで葬った。カルカノは、使う上では駄目だがベレッタは及第点だ。ダブルカラムで14発から21発あたりの装弾数があれば、なお良いのだが、我らがロマーニャにそれを求めるのは、酷である。
作業を終えて、私が再び、空に舞い上がるとネウロイ達が撤退をしていた。それを陸空のウィッチたちに追いかけられていた。私がネウロイの退路に立ちふさがり、挟み撃ちを開始する。当然、数がいない私にネウロイは殺到するのだが、いつもの様に火かき棒で殴り倒す。その間にも、カールスラント軍は、追撃を辞めずにそのまま押しつぶす形となり、大多数のネウロイをここで討ち取った。
この追撃を指揮していたウィッチ、グンドュラ・ラル中尉と言うらしいが、彼女に会う。丁度良かったので、かのネウロイの調査を任せ、私は帰路に着いた。
翌日、ラル中尉が寝ている私を起こし、ヴィルケ大尉や果てはガーランド大佐まで呼んで、根掘り葉掘りあのネウロイについて聞かれた。こっちは夜間の偵察明けだ。わかってるのかは、知らないが私だって、出撃回数を稼ぐので忙しい。それとなく伝えたが、三者ともため息をついて、出撃回数を減らせと言ってきた。こんな事は許されない。私はまだまだ出撃手当を集めるのだ。
翌日はというと、いつも尊敬の眼差しを向けてきた飛ぶのがよちよちの小さいウィッチ(ロスマンではない)達が居ない。年齢制限により、若いウィッチ達は、カールスラントから離脱し始めてるらしい。その割には、エーリカがそこでバターを乗せたじゃがいもを齧ってるが。いや、それが欲しくてみてるわけじゃないからいらん。
今日も今日とて、私の話題しか新聞に載ってない。小さく、毎日、なお戦線は後退しました。などと書くのは、如何なものであろうか?カールスラント国土から、ネウロイが増えると思われる金属製品の回収と鉱山爆破が続いている。
何やら、高めの工作機械も脱出したらしい。
また、ロマーニャから帰国と昇進要請が来る。
相殺を要求して、返事を書く。そして、私は出撃を開始する。
今日の戦場に着くと、航空機型ネウロイではなく、陸上ネウロイが黒く、地を埋め尽くす。相手が防衛限界を迎えるまで、陸上ネウロイによる突撃で攻めるようだ。手を変え、品を変え良くもやって来るのに、なぜデカブツは対空砲の一つ覚えなのだ。
カルカノで、次々にネウロイの頭上に弾を撃ち込む。きりがない。近くに居たウィッチにカルカノとMG34を交換してもらう。何故か私のカルカノを恭しく触る。骨董品を愛でる趣味でもあるのか?私にはないからMG34がいい。
朝だったはずの空が、午後に変わる。交代のウィッチが来たので私は帰路に着いた。その道中で一緒にいたウィッチにカルカノを返される。いや、要らないんだが。