えらい目にあったが、撤退戦が始まった。朝の新聞では、ゴロプ隊と言われる彼女らが、敵中を突破して、ベルリンの郊外にやって来たらしい。なぜだか、私と共に撤退することとなった。ゴロプはオストマルク軍人らしいが、私がオストマルク軍服に、カールスラントの略帽を着用しているのに、なにか思うことがあったのかもしれない。穴が空くほど見てくる。ついでに、ダキア人と扶桑人もいる。珍しい編成だ。
カルカノが無くなってから、調子が良い。偏差射撃がよく当たる。まったく、カルカノと言う、枷が私の邪魔をしていたのだ。遠距離だと20mmは、弾道が落ちる(ドロップと言われる。零戦の20mmは火薬の問題で、ションベン弾と言われるほど、ドロップをした。)のも、気にしなくてよい。マウザー砲と言われるだけはある。バリバリ撃って、遠距離狙撃も出来る。近くによってきたら、MP40で削り倒す。なんと効率が良いのだろうか!
「なぜ、貴官は、ロマーニャの義勇軍だろう?オストマルク軍服に、カールスラント略帽をつけている?軍規違反ではないか?」
ゴロプが鋭く、私に言ってくる。軍規軍規うるさいバルクホルンも、私に免じて聞かないのに、よく聞くものだ。オストマルク軍服だろうが、ロマーニャだから許されると伝えておいた。成果は全てを肯定する。それが欠点でも、良く取られる。などと言っておいた。なるほど、と言う彼女を横に、私は、ガンガン撃ち落とす。まったく、のろまなネウロイも居たものだ。撤退戦を始めるに当たって、用意してきたものがある。
今、私は、背中に爆装用の背負子のようなものに、弾倉を沢山持ってきたので、問題はない。それに、ストライカーには、増加槽をつけている。これで、良いはずだ。それに、カルカノより、効率的に地上型ネウロイを狩れる。マウザーさまさまだ。用意したものは、これだけではないが。
昼には、ベルリンからブランデンブルクに着いた。ハンブルクを目指すのではなく、ルール地方からの輸出品を扱うので、盛況だった街、エムデンに向かうらしい。ブレーメンやハンブルクでは、ネウロイを引き付けるキールからの艦隊に近すぎると言うことらしい。カールスラント海軍の最初で最後の軍事作戦と揶揄されていた。
ネウロイ達はと言うと、ベルリンを明け渡したというのに、脱出部隊、特に私に対して追いすがって来る。何だと言うんだ。こいつらは‥‥私がなにかネウロイに恨まれることをしたとでも言うのか。腹が立つので、即座にスコアに変換してやっていると、ゴロプ達が疲れているように見えた。それも仕方があるまい、先日から戦ってトランシルヴァニアからベルリンまでやってきたのだから。
そうやって、ネウロイを叩き落としたり、ハエ叩きのように地表にいるのをマウザーでひき潰したりしているともう、夜だ。機甲師団と騎馬隊に空陸のウィッチしかいないせいか、進軍は早く、通った後に線路を破壊し、たったの1日でベルリンから80km以上離れたマクデブルクに到着した。
ここから、ウイッチは別行動になる。ラベ川の守りを2日行った後に、ブラウンシュヴァイクからハノーファーに入り、ビレーフェルトを経由してドルトムント、エッセン、デュセルドルフの最後に、ライン川でルントシュテットが用意したラインの守り作戦が発動されるらしい。嫌な予感がする名前だ。
景気を付けるためか、娯楽なのか軍楽隊がボレロを流す。なんとなく、縁起でもない気がする。そんな中、私はオストマルクのラウラ・トートやカールスラント軍のハイデマリー、面識はないヘルミーナ・レントやハインリーケなんとかと空に飛んでいた。まったく、私の実働は16時間を超えたぞ。しつこい連中だなネウロイ。腹が立ったので、対地上用のクラスター爆弾を背負子に積み、敵航空ネウロイの編隊の上からばらまいて、撃墜してやった。夜間ウィッチ達が唖然としていたが、知らん。私は眠いのだ。腹が立つので、私の秘密兵器を使ってやった。
鉄筋を叩いてナイフのようにしたクナイに、後ろはワイヤーを取り付け、迫撃砲弾を括り付けたものを、無数に投げる。面白いようにクナイを避けようとしてワイヤーに触れ、ネウロイは沈んでいく。思わず、高らかに笑ってしまう。ハイデマリー以外に、変なやつと思われたらどうしようか?ま、良いか。流石に、飛ぶのに疲れたので、交代しに来たウィッチに任せ、私は地上に降り立った。
なぜ、あれぐらい落とせないのだ?私のレーダーが、バンバン味方と敵の動きを捉える。ルーデルとアーデルハイドぐらいではないか!地上のネウロイに有効打を与えているのは、そのまま、私は対空陣地に行き、勝手にアハトアハトを水平射撃をして、地上のネウロイを蹴散らす。オストマルク軍の軍服を着て、カールスラント軍の略帽をつけて、高射砲を放つ私の姿を見て、陸戦ウィッチだと思ったのだろう。余っていたIV号陸上戦闘脚の方に、私を案内して戦えと指示してくる。よく見たら、階級章は少将だ。やれやれ、従うしかないか。
私は、MG34と代わりの弾薬を背負子に乗せると火を入れる。まったく、ロマーニャとはカールスラントは全く違う、陸上も航空もどれをとっても一級品のストライカーばかりだ。さてと、再び、ストライカーに乗ったことにより、私の精神は高揚する。ストライカーは、一種の中毒性があるのだ。空は空ので、陸は陸ので、また違った高揚の仕方をする。慣らし動作をする。申し分ない。私は地上をかけた。
MG34のフラッシュバックに、小型の地上ネウロイは残骸を晒す。避けようとするネウロイには、クナイか手榴弾をくれてやる。土煙がおびただしく立つ。ベルリンの市街戦を思い出し、より頭に血が集まるのを感じる。私の使い魔と陸上ストライカーは、相性がいいのだろうか?ひとしきり、露払いを済ませると少将殿がいる前線の基地に戻った。
空が白み、太陽が登る。結局私は実働が20時間を超えた。まったく、カールスラントは人遣いが荒い。その分、賃金はしっかりと色を付けてくださるので、問題はないが。
日に晒された私の顔を見て、まるで悪魔か何かの様に少将は腰を抜かした。失礼だなコイツ。知らなかったとか言われたので、私はお前の顔を覚えたと言って、寝に行った。これで、カールスラント陸軍も私にお金をくださるだろう。
寝たのは5時だが、起きたのは8時である。3時間も寝れた。ビタミン等の錠剤を飲み、シチュー砲(フィールドキッチン)に行くとウイッチと整備兵と砲兵に、また将官までごった煮だ。まぁ、仕方あるまい。炊事係に飯盆(アルマイト製、野外は基本はこれ、ちなみにこれで食べると海外の刑務所の受刑者気分になれる。)を貰い、並んで料理を入れていく。
まずは、缶詰の粉と脱脂粉乳とお湯で練ったマッシュポテトに、お次はベイクドポテト、付け合せはフライドポテトとザワークラウトに、きゅうりのピクルス。
肉が消えて、芋が増えている。たしかに、夜通し戦った部隊が多いのかもしれないが、消費カロリーを芋で補おうとする合理的な姿勢は辞めてほしい。
私は、ウィッチなので、そこにポーチドエッグとチーズが一切れ付いた。侘びしいな。しかし、周りのカールスラント人も、オストマルクのウィッチ達も何も言わずに食べている。芋がそんなに好きなのだろうか?扶桑人たちはと言うと、ゴロプのところにいた犬房が囲まれて、歓迎されていた。何やら、戦死したと思われていたらしい。
微笑ましい限りだ。疲れているのを察してか、クルピンスキーやエーリカは来ない。まったく、緩いように見えてしっかりしている。彼女らは気遣いが出来るのだ。陸上ネウロイの申告がない残骸が多いらしく、ルーデルが聞き取り調査をされていた。ふーん、原因はルーデルか。17回以上も一日に出撃していたからな。空戦ウィッチや陸戦ウィッチと違い、爆撃ウィッチは直掩をしないので、ある程度距離が近ければ、直進して、帰れば出撃回数を増やす事は、理論上は可能だ。
ルーデルは、理論上可能なことをやっている。敵の放火や追撃を無視して、直進直帰を繰り返す。だから、回数が稼げる。ルーデル以外では、シャルノヴスキー、ベッカー、ニールマン、フィッケル、アーデルハイドなど、ごくわずかしかできない。殆どが、ルーデル隊である。
やらないだけで、ルーデル、彼女は戦闘機で空戦だって出来るのだ。クルピンスキーも実は憧れているらしい。
なんとも、才能がない私と大違いである。しかし、最近の私は教官としての能力に開花したのだ。素晴らしい。現に、ハンナ(マルセイユ)は活躍している。急降下が出来るようになって、対空砲火にも動じず滑り込めるようになったのだ。もう少し、頑張れば、彼女は更に飛躍するだろう。
食べ終わったら、私の元に件の少将がやって来た。まて、今ここで、深夜の出来事を言うな。ロスマンとヴィルケ大尉がやって来る。私は彼女らが苦手なのだ。ラル中尉も苦手だが、それ以上にあの二人は正論で殴ってくるのだ。陸戦ストライカーに乗れたり、対空砲を使えて凄いとは言うが、元々私は陸戦ウィッチだ。対空砲と野砲は前世の記憶のおかげだが、それを言うわけにも行かないし、私は回避したい。
飯盆をすぐに片付け、残ったチーズを乗せたベイクドポテトをエーリカにやる。私は、逃げ切った。
具体的には、哨戒任務に出ていくアーデルハイドの僚機に名乗り出たのだ。ルーデルは居ないので、すぐさま飛び立つ。空に逃げれば、誰も追ってこない。空を飛ぶのは嬉しいことだ。
アーデルハイドは、寡黙だ。それでも、そんな彼女だから色んなウィッチが相談するらしい。私は、話しかけない。彼女からは私に話しかけない。楽である。Ju87は遅いが頑丈で、遅さ故に来るBf109の2倍程度の航続距離と発見力の高さに、失速速度の低さが、その哨戒能力の高さに繋がっていた。貴重は貴重なストライカーだが、生産ラインは昔からあって在庫は沢山あるものだから、不時着した時に持ち帰れなさそうだったら、ストライカーを破壊して逃げてもお咎めが無い。
全く便利なストライカーだJu87。
「ネウロイが、来る感覚がします。大尉殿は?」
アーデルハイドの問いに、私は頷いた。少し気を抜くとすぐこれだ。ネウロイは、エーリカやクルピンスキーを少しは見習って、空気を読んだらどうなんだ?ホラー映画でイチャつくカップルを殺すお約束でもあるまいし、まったく。ネウロイが雰囲気を読んで、現れてほしいとアーデルハイドに伝えると彼女は、いつもの調子で答えた。
「ネウロイが、雰囲気を読めたら人類側に攻め込んできて、ないのではありませんか?」
それはどうだろうか?MG151で、タタターンと引き金を引くときには、粉々にネウロイをした。アーデルハイドに、逆に、ネウロイが現れてなかったらと私は語りだした。
考えても見ろ、各国はネウロイが現れる前から大恐慌の傷を癒やすために、民間に大量の武器を発注していた。船や航空機等は、一夜でできる訳がないと経済的にインフラ整備と軍事は、最も効率的に失業者を雇えるのだ。
あのまま、行っていたら、各国の軍拡レースは戦争に発展していただろう。ビスマルク体制が続くという事はだ。世界中の国にメンツをかけて、列強は独立保証をしたり、軍事同盟だらけだ。何処かの小国同士が戦争を初めて、2ヵ国目がナショナリズムだか、何かは知らないが宣戦布告をしてしまったら、なし崩しに軍事同盟の規約により、皆が戦争に入る。そうなったら分かるか?とアーデルハイドに問うた。
「世界大戦ですか?」
あぁ、そうだとアーデルハイドに答えた。ヨーロッパ大戦から、やがて扶桑とリベリオンの代理戦争になりかねん。ブリタニアがどう舵をとろうが、濁流に煽られたガレー船さ。横波で転覆するだろうと返したところで、お目当ての地上型ネウロイだ。
脳内のレーダーに多数の反応あり、おそらく飛び方を見るにルーデル隊だ。流石と言わざる得ない彼女の勘に、アーデルハイドにいい上司を持ったなと伝えた。アーデルハイドは若干ではあるが顔をしかめた。
「待たせたな!アーデルハイド、アイリス!行くぞ。」
ルーデルから通信が入る。爆装をこっちはしていない旨を伝えると機銃掃射をしろという。全く。アーデルハイドをちらりと見ると急降下体勢に入っていた。
上司の影響は、知らないが仲が良いことだ。私も急降下体勢に入り、ルーデルの持論の一機でも、ネウロイを撃滅するのを早くするのに手伝うこととした。