「カイト、またですか?」
小さめのスーパーぐらいの大きさの事務所で、俺は銀髪の女性の前で怒られていた。
お相手はもちろん上司であるエミリア。
通称「委員長」
俺が呼んでるだけだけど。
「あれほど勝手に仕事を請け負ってくるなといったはずです!」
「いや、そうは言っても、俺から仕事受けたわけじゃないし。。」
「問答無用です。罰としてあのリザードに壊された水道管の修理を命じます!」
ぴしゃりと言いつけるエミリア。
トレードマークの三つ編みが揺れている。
周りからはきちんとした女性として見られているが、
その実、メガネの奥の眼が笑っているのを見逃さなかった。
良い言い方をすればこの女、おちゃめなのである。
悪く言えば、、、いくらでもあるので止めておこう。
「はいはい、分かりましたよ」
「頼みましたよ、カイト。また昼食ぐらいは持って行ってあげますから」
「くそ、あの蜥蜴め。わざわざ水道管を破壊しなくても。。」
目の前には地面が掘り返され、その衝撃でひびが入って水漏れした水道管があった。
「アイツらあの爪で穴掘るから、たまにこうやって配管とかが近くにあってあたると破損するんだよな」
逆に水道管以外はそこまでひどい損傷はないようだ。
「少しは知恵を使って、少しずつ掘るとかできないかね」
愚痴ってもしょうがないが、愚痴らずにはいられない。
それぐらい晴天の日だった。
街はずれには何本か水道管があり、こちらの水を止めてそちらに回しているのだろう。
目の前からは残った水があふれる程度で、噴き出していなかったのが幸いだった。
まぁ吹き出すぐらい派手に壊れてたら朝に気づいていただろうか。
朝は気付かないぐらいだったが、じわじわ漏れてその圧力に負けて配管の裂け目が大きくなったのだろう。
「出口が小さいと圧力があがるからな」
それでも大きな水たまりが周りにある程度で済んでいるのは、
いち早く状況に気づいた委員長が管理局に報告したのだろう。
相変わらず機転の利くことで。
「とりあえず直しますか」
『土壁』
水道管が通っているであろう部分の土を、壁にして盛り上げて水道管を露出させていく。
そしてそれを他の水道管とつながっている部分まで行う。
地味だけど、だからこそ疲れる作業だ。
元の世界だとこれをアスファルトで、人力でやってたのか。
機械があるとは言え大変だ。。合掌。。。
一応魔法を使えば半日あれば一人で分岐分の約5㎞ぐらいは終わらせられる。
まぁその5kmを徒歩で移動するのはこの世界の嫌なところだが。。。
「車が欲しい~」
元の世界では普通のサラリーマンだったが、都会暮らしではなかったので普通に車は所持していた。
というより車で遊ぶのが趣味だった。
オイルの香りやタイヤの焦げる香り、ドリフトした時の横Gや、暴力的な加速によるアドレナリンの分泌。
あぁ思い出すと戻りたくなる。
別にあの世界で流行っていた小説のように、あの世界が嫌いでもないし、戻りたい理由もいくつかある。
もし希望が叶うなら、モン●ターファームのアニメの最終回のようにディスク一枚で行き来したい。。
「とりあえず頑張るか。。。」
「やっぱり頑張れない!」
晴天の中一人怒鳴ってみた。
「やっぱり車が欲しい!」
「またその車とかいう乗り物の話ですか?」
7割がた終わらせた段階で不満を口にしていると後ろから声がかかった。
「委員長」
「いい加減その呼び方何とかならないのですか?」
空を飛んでやってきたのはエミリアだった。
手にバスケットを持っているあたり本当に昼飯を持ってきてくれたのであろう。
「相変わらず仕事は真面目ですが、もう少しその無駄口を減らせば効率が上がるんじゃないですか?」
この炎天下の中、効率など上がるはずもなく、明らかに理解したうえで言っている。。。
「うるせぇ、そうでもしなくちゃ、やってられないんだよ」
「そうですかそうですか、じゃあお昼休みにしましょう」
さらっと流しやがった。
「はい、いつもと変わり映えしないですが、」
「お、ありがとう」
「カイトには充分すぎますね」
「うるせぇ!」
ニヤニヤしながら渡してくる銀髪眼鏡女。
とりあえず無視することに決めて、バスケットを受け取る。
中には肉や野菜で彩られたサンドイッチ。
では、と言って歩き出すエミリア。
その手にはまだ水筒がある。
「水筒」
「ん?」
ニヤニヤ
「飲み物!」
「あぁ、これは私の分ですよ」
はっ、
「あれ、もしかしてカイトは持ってきてないんですか?」
え、今気づきました。という演技
「あれですね、水道管直してるわけですし、そこに少し穴をあけて飲めばいいんですよ、後から直せば今回は目を瞑ります♪」
「うるせぇ!!」
やっぱり無視できなかった。。。
木の木陰に座って、二人で昼食を食べる。
ちゃんとコップも二つ用意しているあたりが憎めない。。。
街道の周りには田んぼや畑など農作物を植える場所が広がっており、
その道の途中途中に木が数本植えられていて、日の光や雨から避難できるようになっている。
街の近くではそこで農家の方がよく休憩しているのを見かける。
いまいるあたりは、大分外れているので誰もいないが。
「今なら襲い放題なのに、襲ってこないとはカイトは不能ですか?」
「そんな訳あるか!」
「あぁ、そっかカイトはあっちの人でしたもんね」
「違うわ!!」
この女、全開で全壊である。
真面目な働きぶりとは裏腹に、普通に下ネタも言うし、悪戯?もする。
そして被害は大抵俺。
それでも恩があるので、無下にも出来ずこういう関係になっている。
「貴方が発見されてから大分時が経ちましたね」
「そうだな」
「貴方のあれは全く立たないのかもしれませんが」
「立つわ!いい加減襲うぞ、淫乱銀髪委員長!」
「キャ~、こんなか弱い女子に一体何を~」
棒読みも甚だしい。
「全く、まぁ感謝はしているが」
「立ちはしない。と」
「いい加減しつこい!」
ニヤニヤ
「せっかくですし、今の仕事が終わったら。行きませんか?」
「どこへ?」
「貴方が見つかった場所ですよ」
「うげっ」
あまりいい思い出はないんだが
「まぁ、貴方に拒否権はないですが」
「ないのかよ!」
「。。。手伝ってくれると早く済むんだけど?」
「良いですよ。その代わり今日の昼食代と一緒につけておきます」
「昼飯も有料なのかよ!!!」