「面白い子供を拾った」
レミィが満足気に話す
「この子私を殺そうとしたのよ!」
「殺されそうになったのになんで嬉々として話すのよ」
レミリアと手を繋いだ子供が虚ろな目でこちらを見る。
これが彼女とのファーストコンタクト。後に十六夜咲夜と名付けられる子供との最初の出会いであった。
当時私とレミィはイギリスのロンドンに居を構えていた。今思えばなんであんなオイルと下水臭い街に住んでいたのか分からないが、
とにかく私たちはそこに住んで生活していた。
レミィはその日、ある路地裏を歩いていたと言う。
「その日はなんだか視線を感じたのだけれど、路地に入ったらいきなり頭に弾丸が飛んできてね!びっくりしちゃったわよ」
やはりレミィはどこか楽しそうだ。語気が弾んでふわふわとしている。
「そしたらこの子がナイフでで私の首をスパッと切ったかとと思ったら、今度はお腹を裂いてきたのよ!そのせいで洋服がダメになったのは少し残念だけれどね」
高いテンションのレミィとは相反するように、レミィが連れてきた銀髪の子供の目は虚ろで、生気を感じなかった。
「この子、切り裂きジャックみたいね」ぽんと、感じていた言葉を吐き出した。
「は?この小さいのが?」
鳩が豆鉄砲食らったような顔でレミィは聞き返す。
「いくら世紀末と言っても、いきなりナイフで人を切りつけてくる奴なんてそうそういないわよ。レミィだって噂ぐらいは聞いたことあるんじゃない?」
「ジャック・ザ・リッパーでしょ?娼婦ばっかり狙ってるっていう」
ジャック・ザ・リッパー
今やロンドンで、その名を知らない者はいないという犯罪者の名前だ。
娼婦ばかり狙った犯行。凄惨な遺体の姿。霧の中の犯人像。
完璧すぎるその手口は、ジャック・ザ・リッパーは時を操っているのではないか。と大真面目に専門家に言わせるほどであった。
「時を操るって云う噂だけど、どう?それらしき行動はあった?」
「あ〜…言われてみれば確かに。ナイフが当たるまで認識できなかったわ」
時を操るだなんて、何を非科学的な。と思う読者もいるであろう。
言い忘れていたが私は魔女だし、レミィは吸血鬼だ。
この世界には神秘が存在する。
魔法が存在する。
だったら時を操る殺人鬼が居たって可笑しくないであろう?詰まるところはそれだけの話である。
「それじゃあ少し調べてみる?ついでに健康状態も調べておいて。取り押さえてから元気がないの。」
「分かったわ。任せてちょうだい」
さっきああいった手前申し訳ないが、私もレミィもただの人間が時を止めれるとは思っていない。時を止めるとは、即ち世界に干渉すること。そんな大それた力を一介の少女風情が起こせるとは考えにくい。だからこそ詳しい検査をしてみるのだ。もちろん非科学的な方法で。
私は魔法陣を頭の中で描いた。命令は《解明》描かれた魔法陣は、命令によって仕事の内容を決めると魔法が作動する。
ぱちんと指を弾くと、頭の中でイメージされた魔法陣がその少女の周りを囲み、回転、紫色に発光した。大きな音を立てて魔法陣が部屋を揺らす。
光の輝きが落ち着くと同時に、少女の背中に張り付く数体の赤子の霊が見えた。
「なるほど水子ね」レミィが納得した声で話す。
「大方、流産した子供の霊が復讐するためにこの子に憑いたんでしょう。時を操るのはその魔力の副産物かしら。結果的に殺人の手口になったようだけれど」
子供の霊は普通の幽霊よりも怨みを持っていることが多い。本来であれば生を謳歌できたであろう子供たちは、尋常ではない怨みを持つ、その怨みは魔力へ、そしてその魔力が彼女に時を操る力を与えたのだろう。
「それで、どうするのよレミィ。水子は祓う?」
「祓うなんて勿体ない!時を操れるのよ!」
「でもこのまま返したらまた人を殺すわよ?」
「じゃあ私達で飼いましょ」
「はぁ?!」心の底から驚いた。いつも大声なんて出さないのに、この時ばかりは紅魔館が揺れる程の声量が出た。
「ちょっと正気?!子供の面倒なんて見られるわけないじゃない!!」
チッチッチッチ。レミィが分かってないなと言いたげな顔で指を振る。
「私たちがこの子の面倒を見るんじゃなくて、私たちの世話ををこの子がするのよ」
なんて事を言い出すんだこの吸血鬼は…
「要はまぁ…メイド?」
「そういうことになるわね」
「仕事は誰が教えるの?」
「それはパチェが」
「いいかげんにしなさい」
結局この銀髪の子供は私と私の使い魔たち、それとレミィが住む紅魔館にメイドとして雇われるようになった。
実を言うと彼女は栄養失調であったが、私達が彼女を引き取り、食事や寝床を与えると、真っ白に痩せこけた頬はある程度血色が良くなり、青アザが目立ったボロボロの足はそれなりに綺麗になった。
そういえば引き取る際には全く念頭になかったのだが、この子供に親が居たらそれは誘拐になるのではないか、という問題があった。
しかし、彼女の服装は見たまま孤児であり、仮に親がいてもそれは虐待か放任を受けていることくらい私にもレミィにも分かったので、特にいざこざもなく、彼女は紅魔館のメンバーになった。
はじめまして、ミツヅリです。
前回の初投稿から日が空き、少しづつこのサイトの使い方が分かってきました。
ということで初の連載型の小説です。
咲夜さんは初めて好きになった東方キャラクターなので、気合を入れて執筆していきたいです。
また、本題とはブレますが少しお願いを
私の小説における幻想郷は全てパラレルワールドだと思って欲しいです。
ですので、前に書いた「恋知らぬ魔法使い」もこの紅魔館メイド日誌には関係ない別の世界のお話です。そしてそれは今後執筆するどの作品にも同様に言えることです。(もしかしたら同じ世界の話もあるかもしれないですが)