君とのキセキ。   作:秋乃落葉

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もみじステークス

 十月上旬。フジキセキの第二戦目となるもみじステークスだ。距離は1600m。初のマイル戦となる。ここを勝ち上がれば万全の状態で朝日杯FSへ迎える。今回の相手はメイクデビューを勝ち上がってきたウマ娘たちとなり、相手の強さもワンランク上といったところだろう。そして今回最大の障壁となりそうなのが。

 

「お~い!フジキセキ!今日はよろしくっ!」

「ああ、お互いいいレースにしよう」

 

 同期の中でも実力上位とされるタヤスツヨシである。しかしフジキセキもメイクデビューからさらにトレーニングを積み、一段とパワーをつけた。苦手だったゲートもかなり上達し、不安要素は減ったといえる。このレースも十二分に戦えるだろう。

 

『──阪神第九レース、もみじステークス。バ場は良バ場です。一番人気は前走圧巻の走りを見せましたフジキセキ。二番人気にはタヤスツヨシが選ばれました。間もなくゲートインです。発走までしばらくお待ちください』

 

「僕が八番で~、フジキセキが七番かぁ!隣同士だねっ!負けないぞぉ!」

 

 タヤスツヨシがやる気満々にゲートに収まる。フジキセキは前走同様に少し息を整えてから、

 

「・・・よし。行こうか!」

 

 落ち着いた面持ちでゲートに入った。非常にいい雰囲気だ。そのまま順調にゲートインが進み、九人のウマ娘全員がゲートに収まった。

 

『──さあ、体制整いました。圧倒的人気を集めるフジキセキが今回もその走りを見せるのか、それとも待ったをかける子が現れるのか!もみじステークス、今スタートを切りました!』

 

 ゲートが開くと同時に、ウマ娘達が飛び出してくる。フジキセキはトレーニングの成果あってか、きれいにスタートを決めたようだ。対するタヤスツヨシは、

 

「あ、わわっとっ!」

 

『一、二人出遅れました!八番のタヤスツヨシ、それからその外の子も立ち遅れています!八枠の子、──です』

 

 出がよくない。少し引っかかったように出て、そのまま後ろからのレースになるようだ。フジキセキは無理には前に行かず、少し控えて前を行くバ群を見ながら中段でレースを進める腹積もりだろう。

 

『先頭争いは五番の──が出ました。内から──。三番手に──とその外から──が上がっていきます。先団は少し固まって進みます。ちょっと離れまして、それを見るように進むのがフジキセキです。その後ろに二番の──。最後方から出遅れた二人のタヤスツヨシと──が追う形になりました』

 

 前半をこんな体制で、向こう正面を駆けていく。今日は出がよかったフジキセキが中段に控えたことで、出遅れたタヤスツヨシはそれをマークするように第三コーナーに向かって追走している。

 

「さあここから、ついて来られるかい?いくよ!」

「っ!負けないよぉ!」

 

 第三コーナーに入り、少しずつフジキセキがペースを上げ、前を行くバ群を外から捕まえに行く。それについていくように、後ろについていたタヤスツヨシもじわじわと位置を押し上げていく。

 

『──さあフジキセキが外目をついて、ゆっくり、ゆっくりと上がってまいります。それに呼応するように、フジキセキの後方についていたタヤスツヨシがやってきました。さあ四コーナーの手前、600の標識でバ群が固まりました!』

 

 後方追走していた子たちがペースを上げ始めたことで、前と後ろに分かれていたバ群が一つに固まり、内にいる子たちは大分と抜け出しづらくなる。しかし外を回ってきたフジキセキはすでに先頭に立つ勢いで、加速を保ったままコーナーを駆け抜けてきた。その後ろからは追走するタヤスツヨシも突っ込んでくる。

 

『──四コーナー回って前を行く四人が一線に並びました!外枠のタヤスツヨシと──は外に持ち出しています!直線に入って激しい競り合いになるのか!フジキセキ、まだまだ余裕といった表情で再び加速していきます!フジキセキの外を通って、タヤスツヨシ、タヤスツヨシも来ています!』

 

 横一線に並んだ先頭集団を楽々と抜け出して加速するフジキセキに、外からタヤスツヨシが強襲してくる。その勢いは、タヤスツヨシのほうが強いか。

 

『──フジキセキとタヤスツヨシが抜け出して競り合いに入っています!後方からは──が差し込んでまいりましたがこれはすでに三番手争い!』

 

「残り100で加速は僕のほうが速い・・・!いける!」

「いいや、まださ!もう一段階上にいくよ!」

「なっ!?」

 

 一時は体を合わせた二人だが、フジキセキがさらに加速を強めると、再び二人の間に差が生まれていく。

その差はわずかな差から、決定的な差になり。

 

『──前の二人はグイグイグイグイと他を引き離して、先頭フジキセキで今ゴールイン!勝ちましたフジキセキ、タイムは1分35秒5!このタイムはレコードです!掲示板にはレコードの赤い文字!』

 

 そのままタヤスツヨシを引き連れ、一バ身ほど差をつけたところでゴールイン。なんとレコードタイムでレースを走破したというおまけ付きで、もみじステークスを制したのである。

 

「うぐぅっ!負けたぁ~っ!!」

 

 ターフの上で息を切らし、膝に手をつきながら悔しがるタヤスツヨシ。その肩にぽんと手を置き、声をかけるのはフジキセキだ。

 

「いい走りだったよ。本当はもっと引き離すつもりだったんだけど、あそこまでついてこられるなんてね」

「ぬぅぅ~!次は勝つ!次は勝つからなぁっ!くっそぉ~っ!!」

 

 わああ、とわめきながらタヤスツヨシは走っていく。ウイニングライブには戻ってよ、とフジキセキ。初のマイル戦という唯一の不安要素も押しのけて勝ち上がったフジキセキだが、今回はタヤスツヨシもまた、負けて強しの結果だったといえるだろう。最後はフジキセキに差をつけられたにせよ、三着とは三バ身以上の差をつけて走り切っているのだ。彼女もまた、自身の言葉通りにクラシック路線に進んでくるだろう。手強い相手がまた一人、である。

 

 

 

 

 

「トレーナー君、何とか勝ってきたよ。これで次走は朝日杯FSで確定かな?」

「フジキセキ、お疲れ様。タヤスツヨシに並ばれたときはヒヤッとしたけど、さすがだったね」

「ふ~ん?トレーナー君は私のこと信頼してなかったのかな?」

「ちょっ、そういうわけじゃなくて!勿論信頼はしてたけど、レースに絶対はないから・・・」

「あっはは!ちょっと意地悪しただけだよ!そんなにしどろもどろにならなくてもいいじゃないか!」

 

 フジキセキにからかわれながら、次走の確認をする。もちろん事前に彼女に伝えていた通り、次は初めてのグレード競争、それもGⅠとなる朝日杯FSだ。ここにはジュニア級で早いうちから頭角を現した子たちが集まるため、現段階で最強クラスの相手が揃ってくることだろう。当然フジキセキがそれらに後れを取るとは一切思わないが、来年のクラシック路線挑戦に向けての試金石となる。

 

「いよいよGⅠか。わくわくしてくるね!」

「ああ、今度は観客ももっとたくさん来るぞ!なんだか俺まで緊張してくるよ。それにフジキセキにも初めての専用勝負服だしな・・・」

「あ、勝負服用意してくれたんだ?」

「もちろん!トレセン学園汎用のやつじゃ味気ないだろ?」

 

 勝負服とは、ウマ娘がレースで身に着ける衣装だ。基本的に着用するしないは自由だが、グレードがつくレースからは観客も増えることもあって、それ未満のレースでよく見られる体操服にゼッケンという装いから一転して華やかな勝負服を身に着ける子が多数になる。トレセン学園が用意している汎用的な勝負服もあるのだが、GⅠに出走するような名のあるウマ娘にもなると、オーダーメイドの勝負服を用意している子が大半なのだ。

 

「へぇ、トレーナー君がどんな勝負服を用意してくれたのか楽しみだなぁ!本番まで楽しみにしておくよ!」

「よっしゃ!任せとけ!」

 

 次はいよいよ大舞台、GⅠだ。新人トレーナーの身でこんな舞台に挑戦できるのも、彼女のおかげである。そんな彼女にGⅠウマ娘という肩書をプレゼントするため、残り2か月弱でできることは全てしていくつもりだ。そして、もちろんその先も、だ。




フジキセキさんの勝負服凄いですよね。

どこがとは言いませんが。凄い。
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