DMC×SAO 俺の転生物語   作:ユーグクーロ

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「おばあちゃんが言っていた。人は自由自在に生きていい者だと、無理して自身を壊して倒れてしまうくらいなら、好きな時に好きな事をした方がよっぽど良いものだからだ。それが明日を生きる糧になり、再び立ち上がる力になる........」

「ソウデスカァ......」

「あの......ですからね?シリカさん、そろそろこの逆さ吊りから解放してくれるとありがたいのですが......そろそろ眩暈と手足の感覚が.......」

「ダメデス♪」

「あの、本当に投稿が遅れたことに関しては申し訳ないと思ってるんだって.....いや、本当にごめんなさい。許してください。」

「ダメデス♪」

「えぇ.....」

「ソレニ、ココサイキン、ナゼカヒョウテキがシトメラレナカッタノハ.....アナタガジョウホウをヨコナガシシテタカラデショウ?サクシャサン?」

「........えっと?何のことでしょう?」

「フフフ、ダイジョウブデスヨ。ジカンハタップリアリマスカラ。ジックリイキマショウ♪」

「.......因みにお手洗いは....」

「ダメデス♪」

(..........誰か........誰か助けて.........)




お待たせしました!!
ここ数日、ワクチン接種の副作用による仮死状態が続いた為、バトオペ2でフレンドとワチャワチャした為、一日中寝ていた為、なかなか筆が持てなかった作者です。ごめんなさい。(言い訳)

それでは前回の修羅......お話の続きです!!

第5話!!どうぞ!!


5 赤と黒の守護者

デビルメイクライの騒動の後、ボク達はアスナを筆頭にボス攻略の為の作戦会議を開いていた。

 

「.......以上がこのメンバーでのボス攻略になるね。」

 

ボク達は今までさ様々なVRMMOを行ってきたけどアスナ程の戦略的な経験は持ち合わせていない。だからこそ、この会議は色々と新鮮だった。

ボスの動きやそれぞれの立ち回りなど、知らない事ばかりで最初は混乱したけど事細かく解りやすいように説明してくれたおかげですぐに理解出来るようになった。

 

「ってことは、私は後衛に入ったほうがいいみたいね。」

 

そう言いながらアスナはメニューを開き、細剣から見た目が木の枝で作ったような短杖(ワンド)を取り出す。

 

「ごめんねアスナ、あれだけ剣が使えるのに後ろに回って貰って......」

 

本来であれば彼女には前線で戦って欲しかったけど何せこのパーティーに後方支援の魔法担当はシウネーしかおらず、ましてや回復手段なんてアイテムかそれこそシウネーのMPから僅かに残った回復魔法の二択しか無く、底を尽けば後はジリ貧の戦いにしかならない。

 

「ううん、私じゃ盾役は出来ないし。その代わり、ジュンとテッチにはバシバシ叩かれて貰うから覚悟しててねー」

 

そう言いながらアスナは悪戯っぽい笑顔を鎧や盾で普段よりも倍近く体格が大きくなっている二人に向ける。

 

「お、おう!任しとけ!!」

 

重装備の二人は互いを見つめ合い、どこかテッチは胸に拳を当ててジュンがそう答えるもどこかよそよそしく感じる。そんな二人の反応に皆で愉快に笑う。

 

「あ、そう言えば.......」

 

「???」

 

ふとアスナが何かを思い出すように口を開く。

 

「どうせなら私じゃなくてダンテさんにお願いすれば良かったんじゃない?回復手段ならまだしもあの人一応後方での火力支援なら結構頼りになると思うんだけど.....」

 

「あ、うん。それなんだけどね...........最初は考えていたんだ。ALOでのダンテの活躍を聞いて、一緒に戦ってくれればなぁって思っていたんだけど.......」

 

「だけど?」

 

「..........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店の騒動の後、日を改めてもう一度尋ねたものの、依然と同じく店は空き巣同然の状態だった。

 

「ダンテ?さぁ、ここ最近見てないからわかんねぇな。」

 

「ん~?ダンテねぇ.....いや、こちらは見てないね。」

 

デビルメイクライの周辺に拠点を置いているプレイヤー達に聞いても返ってくる返事は皆同じ内容ばかり。

ふと、この間見かけた武器屋の店主にも聞いてみると......

 

「........いえ、見てませんよ?いやぁここ最近シノンさんやシリカ様がいなくて平和的な毎日を送ってますがねぇ.....っといけないいけない!そろそろ受取人との待ち合わせなんでここら辺で失礼させていただきますよ?」

 

「そっか.......わかったありがとう。」

 

どうやらこちらも知らないの一言で立ち去ろうとしたその時だった。振り返ろうと店の入り口に向きを変えた瞬間に壁か何かにぶつかってしまい、一瞬よろめいてしまった。

 

「おっと?ごめんよお嬢さん。」

 

ぶつかったのは壁などではなく一人のプレイヤーだった。見た目は初老のようで他のプレイヤーではあまり見たことも無い服装だ。きちんと整えられた黒を基調として灰色と白のラインが入ったのスーツとクラシックハットのようなもので肌は黒く顎全体には同じ長さで綺麗に切り揃えられている。

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「いや、こちらも前方不注意だった。申し訳ない。」

 

そう言いながら帽子を外して胸に当てながら頭を下げてきた。どうやら見た目だけでなく中身も紳士のそれと感じられるような雰囲気を漂わせている。初老の紳士は失礼と会釈しながら再び帽子を被りながら受付の所へと足を運んでいく。

 

「おや?これはこれは!!わざわざ店にお越しくださったのですか?メッセージでもくださればこちらからお伺いしたのですが。」

 

「ああ気にするな。ダンテの奴に半ば脅されてな......頼んでた品物は用意されてるか?」

 

「!?」

 

すれ違いながら店のドアノブに手を触れたその瞬間、またしてもその名前を耳にした途端急いで振り返った。

 

「あ、あの!!」

 

「ん?」

 

「えっと.......ダンテの事.....知ってるんですか?」

 

「あー......君は?」

 

「え?あーえっとボクはユウキって言いまして.......」

 

「ユウキ?」

 

「ほら旦那、あれですよ。最近噂になっている絶剣ってプレイヤーだよ。」

 

「ゼッ...ケン?......ああ!君が!!?」

 

ボクの二つ名を聞いて何かを思い出した初老の人は再びこちらに振り返る。だがこちらの容姿全体を見て少しばかり戸惑いの表情が窺える。それもそうだろう。街中での噂は自身でもよく耳にするが誰も勝てない剣士と呼ばれているプレイヤーがこんな子供と知ったら驚かないほうがおかしい。

 

「あ、いや失礼.....まさか噂の絶剣様がこんな可愛らしいお嬢さんだったとは.......世の中広いもんだ。」

 

再び帽子を取り、今度は握手を求め、右手を出してきた。

 

「おっと自己紹介がまだだったな?俺はモリソンって者だ。ダンテとは.......まぁ昔ながらの古い付き合いってもんでな。」

 

「ど、どうも。」

 

モリソンと名乗ったプレイヤーは少し待っててくれと言い、10分くらいで店の店主との買い物を済ませ、近くの広場にあるベンチにて腰を下ろしてた。

 

「いやぁ時間が掛かって申し訳ない。」

 

「う、ううん。大丈夫。」

 

「それで.....ダンテの奴が今何してるって話だったか?」

 

「うん........」

 

「あいつなら今仕事とかいろいろと急がしいみたいでな。少しの間店には来れないって言ってたぞ?」

 

「っ!?そう.....なんだ.......」

 

モリソンからのその事実を耳にしてとても後悔した。あの時、お願いすればよかったなと.........そう心の中で自分を責めた。

 

「あー......何か奴に依頼したいことでもあったのか?」

 

「......実は......」

 

ボクは彼にボク達スリーピングナイツや新アインクラッドでの目的を話した。立案した者としてもわかっていたけどとても無謀なことだと。それでもモリソンは真剣な表情でボクの話を最後まで聞いてくれた

 

「なるほどな.......だから自分たちの力だけでボス戦に挑んでその名を石碑に刻み込みたいと.......」

 

「.....モリソンさんはダンテのこと詳しいの?」

 

「ん?ああ、呼び捨てで構わないさ。あいつとは現実(リアル)でもまだガキンチョの頃からの付き合いがあってな。今は大分丸くなったが昔はそりゃ周りの大人を泣かせまくってたよ。」

 

それからダンテの昔話を沢山聞いた。父親のゴルフを勝手に持ち出して遊んでたら隣人の窓ガラスを割ってしまったり、キャンプの時はこっそり持ち込んだ花火セットで大人達をからかったり、冬には家族でスキーをする為に山に行ったもののスノーボード片手に一人で勝手に山に登って二時間近く帰ってこないものだから職員総出で探すも気が付いたら休憩所に戻っていたらしく職員の方に頭を何度も下げたとの事だ。

 

「へぇ.......ダンテって昔そんなやんちゃな子だったんだ........ってそうじゃなくて!!」

 

本題を聞こうと思っていたがついついその話に呑み込まれそうになるも頭を大きく振って思考を戻し、モリソンに視線を戻す。

 

「ダンテは今____」

 

「あ、そうそう。」

 

こちらが開きかけた口を遮るようにモリソンが再び言葉を繋げてきた。

 

「ダンテの奴から伝言を扱ってるんだよ。」

 

「な、何て?」

 

「『店しばらく休む。』っだとさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時その言葉ですごく落胆していた自分が今でも鮮明に思い出せる。きっと周りから見てもすぐにわかるぐらいだろう。

随分と項垂れていたのかアスナが心配そうな顔で下から覗き込んできた。

 

「ユウキ?大丈夫?」

 

「うん........大丈夫!ほら、早くボスの所に行こ!」

 

「え、ええ.......」

 

両手で頬を2、3回叩いて気持ちを切り替える。これでいいのだと、一目合えることができた事でも運が良かったのだ。

ボク達の本来の目的を達成しなきゃいけない。今はもう目の前に集中しなければスリーピングナイツの皆や今回自分の時間を削ってきてくれたアスナに申し訳ない。早速ボス部屋まで急ぐとしよう。

 

ボクを先頭に皆が羽を広げ、常夜の空を様々の色彩な羽が風を切っていく。

 

飛び立ってからしばらくすると前方に大きな円柱状の柱が地上から天井まで到達しており、根元の部分を凝らして見ると水晶のような六角柱がいくつも突き出ている。その青い燐光が入り口と思われる部分をぼんやり照らしてる。

 

「見えたよ、迷宮区!!」

 

そこからホバリングで周辺にモンスターや他のパーティーがいないか安全を確認し、入り口前に着地する。

 

「じゃあ、打ち合わせ通り、通常モンスターとの戦闘は極力回避で行きましょう。」

 

アスナがそう声を発すると今まで朗らかな雰囲気だった皆も気を引き締め、真剣な表情になる。水妖精族(ウンディーネ)のシウネーが長杖(ロッド)を掲げ、バフ魔法を全員に掛け、影妖精族(スプリガン)のノリが暗視魔法を発動する。

詠唱が終わると同時に全員の体がライトエフェクトに包まれていき、視界の左上に様々なアイコンが浮かび上がって入り口の暗闇がドンドンクリアになっていく。

迷宮区のマッピング情報はアスナを通してアルゴという情報屋さんからもらった。

本来なら地道に記録していくの時間と労力が費やされるマッピング情報なんてそれなりに値が付いて売られるはずなのだけれど.......

 

 

()()()()()()()()()()()()♪」

 

 

情報屋はそう言いながら商売スマイルで渡してきたが、あの時はその言葉を理解できなかったがあの後アスナから聞いた話によると昔からのゲーム仲間らしい。するときっとアスナが無理難題に挑戦しようとしているボク達にこっそり計らってくれたのだろう。本当にアスナには感謝の言葉しか浮かんでこない。

そのおかげで本来3時間近く掛る筈だったボス部屋までの道程も僅か1時間弱程度で到達することが出来た。

 

「なんだか......私、本当に必要だったのかなぁ?あなた達に手助けする余地なんてほとんど無いような気がするんだけど......」

 

「いえ、とんでもない。アスナさんの指示があったからトラップも一度も踏みませんでしたし、戦闘もすごく少なく済みましたし。遭遇する度に真正面から戦っていたので、前の2回はその所為ですごく消耗してボス部屋前に辿り着く頃には満身創痍で......」

 

シウネーの言う通り、前回と前々回は迷宮区に入り、ボス部屋までは辿り着ける事は出来ても決まって必ずモンスターとの戦いは避けられず、最悪の場合はトラップを引いてデバフやモンスターの大量発生で足止めや消耗品が消えていき、ボスを倒すに必要な要素が辿り着いた頃にはなくなっているという目も当てられないような状況が続いた。こちらとしては無視したい部分なのだが下手すれば戦う時よりもダメージを大きく喰らってしまう危険性があった為、とても歯痒い思いをした。

それを今回はアスナが直前に気付いてトラップを回避、モンスターに関してはスニーキングで戦闘にならずに進めたり出来たおかげでほぼ無傷で進めることが出来た。

 

「そ、それはそれですごいけどね.......っと皆ちょっと待って。」

 

アスナがそう苦笑いした次の瞬間、鋭い眼光が進行方向の先を見つめた。おどろおどろしい装飾が施された大きな扉が佇んでおり、その手前には一定感覚で洞窟にある鍾乳石の柱のようなものが一定間隔に設置されているがモンスターの姿も気配も感じられない。

 

すると短杖(ワンド)を取り出し、ボク達に少し後退するように手振りで指示してくる。それに無言で頷き、全員ゆっくりと後ろに数歩下がりそれをアスナが確認すると長めの詠唱を早口で言い終えると胸辺りに胸鰭(むなびれ)が翼のように長い小さな魚が5匹出現し、手の平にフヨフヨと浮かぶそれを顔に寄せ、方向を定めて息を吹きかけると魚達はまるで水の中を泳ぐように一直線に進んでいく。

その内の3匹が壁にぶつかり半透明な波紋が発生するが別の2匹がアスナの視線の向こうに進んでいく。するとパッと青い光が散り、緑色の膜が浮かび上がり、歪みながら解けていく。その向こうには3人のプレイヤーが隠れていたのだ。

 

闇妖精族(インプ)が2人、風妖精族(シルフ)が1人、3人共短剣装備だ。そしてカーソルの下に盾に馬が描かれているエンブレムが浮かんでいる。どこかのギルドなのだろうか?

基本的にこのやり方はPKの常套手段だとアスナが教えてくれた。その予備知識があったお陰でボクを始め皆がシウネーとアスナ以外は前に出てじゃりんと金属がこすれる音を鳴らしながら武器を取り出した。

 

「ス、ストップストップ!?戦う気は無い!」

 

そう言いながら相手は演技とは思えない狼狽える様子で両手を挙げて意思表示をしてきた。それでもアスナは鋭い眼光のまま杖を下ろさずにいた。

 

「なら、武器をしまって!」

 

アスナの要求に向こうは互いの顔を見合わせ、ゆっくりと武器を仕舞う。

 

「もう一度あいつ等が抜剣する素振りをみせたら、すぐに《流水縛鎖(アクアバインド)》を掛けて........」

 

「わかりました。うわぁ、ALOの対人戦は始めてですよ。どきどきしますね。」

 

そう言いながら目を輝かせるシウネーに苦笑いをするアスナはすぐに真剣な表情にすぐ変わり、再び相手を視界の中央に捉えた。

 

「PKが目的じゃないなら何でハイドしてたの?」

 

「な、仲間を待ってんたんだよ。敵Mobにタゲられると面倒だからその間隠れてたんだよ。」

 

その返答にアスナは訝しむ表情のまま軽く頷いた。

 

「......わかったわ。私たち、ボスに挑戦に来たんだけど、そっちの準備がまだなら先にやらせてもらってもいいわね?」

 

「ああ、もちろん。」

 

一瞬、不意を装って襲ってくるのかと思ったがリーダーと思われる痩身のインプが仲間に手振りで下がらせ、扉の脇に逸れる。

 

「俺達はここで仲間を待つから、まぁ、がんばれってくれや。じゃあな。」

 

そう言い終えると仲間のシルフに顎をしゃくるとなれた口調で詠唱を始め、すぐにまた緑色の膜が発生し、景色に溶け込む。

その後数秒間、アスナは凝視し続けたがやがて諦めがついたかのように肩を竦め、こちらに振り向いた。

 

「......とりあえず、予定通り一度中の様子を見てみましょう。」

 

「ん、いよいよだね!がんばろ!アスナ!」

 

「様子見といわず、ぶっつけで倒しちゃうくらいの気合でいこうぜ!」

 

威勢の良いジュンがそう言い放つとアスナは苦笑いで答えた。

 

「まぁ、それが理想的なんだけどね。無理に高い回復アイテム使ってまで回復しなくていいからね。あくまで私とシウネーがヒールできる範囲内で頑張るってことで、いいわね。」

 

「はい!!先生!」

 

アスナは茶目っ気のジュンのヘルメットのバイザーを指で突き、他の5人に順に見やり続けた。

 

「死んでも、すぐには街に戻らないで、ボスの攻撃をしっかりと見ておいてね。全滅したら、一緒にロンバールのセーブポイントに戻るってことで。フォーメーションは、ジュンとテッチが最前面でひたすら耐えつつ時々挑発スキルで憎悪値(ヘイト)を稼ぐ。タルケンとノリはその両翼からタゲを剥がさないように攻撃。ユウキは自由に攻撃、可能ならボスの背面に回ってみて。で、私とシウネーが後方で支援回復。」

 

「了解。」

 

一同を代表してテッチが重々しい声で応じ、扉の前にて左手にタワーシールドを掲げ、右手にはヘビーメイスを肩に担ぐ。

テッチと並び右手に大剣を右手で握るジュンが空いた左手で大きな扉に手を当て、肩に力を込めてゆっくりと押していく。

 

黒光りの大きな扉はゴゴゴと地響きのような擦れる音を出しながらゆっくりと開いていく。

 

その先は何も見えない暗闇が広がっている。

次の瞬間、青白い炎が左右にあるかがり火が灯し始め、徐々に円を描くように灯火が部屋全体を照らし始めていった。そしてこちらの入り口の反対にある向こう側には同じような見た目の扉が見える。

 

「行くわよ!!」

 

アスナの号令で全員が隊列を乱さないように進んでいくと部屋の中央に黒いキューブが無数に発生し始めた。やがてそれらが集まり始め、大きな塊となっていく。

やがてエッジが面取れていき、徐々に人型に形を整えていく。

最後に無数の破片が勢いよく飛び散っていき、ボスの姿が露になる。

 

その姿は4メートル近くもあるだろう巨人(ジャイアント)だ。逞しい胴体に頭は2つ、腕が4本が生えている。その内の2本は破城槌(はじょうつい)の形をしたハンマーを持っており、残りの2本は鎖を両手で携えている。

 

そして頭部の赤い目4つで侵入者であるボク達を視界に捕らえ、野太い雄叫びを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁぁぁぁぁ!!負けた負けた!!」

 

ノリが愉快そうにそう喚きながら盾越しにタルケンの背中をバンバンと叩いた。

 

ボスの猛攻に耐え切れず、呆気なく敗れ去っ為にロンバール中央広場にてドーム状の建物にあるセーブクリスタルの周囲に集まった。

 

「うぅー、頑張ったのになぁ.......」

 

「...........」

 

「アスナ?どうしたの?」

 

どこか晴れない表情で俯くアスナに声を掛けたが返事は返って来る事無く、こちらの襟首をガシッと掴んで部屋の端っこに引っ張られた。

 

「ふぇ?」

 

「皆!早くこっち来て!」

 

宿で休憩兼反省会を考えてたジュン達も驚いた表情のままだが急いでアスナの所に全員集まった。

 

「さっきの3人組、覚えてる?」

 

「え?ボス前に隠れてた奴?」

 

その問い掛けにアスナはコクリと頷いた。

 

「あれはおそらく斥候よ。それもボス攻略専門のギルドのね。」

 

アスナの話はこうだった。

自分達のギルド以外のプレイヤーを利用して闇魔法の《盗み見(ピーピング)》を掛けた使い魔を部屋に紛れ込ませ、ボスの行動パターンを見極めていたということらしい。

それが本当であれば前回と前々回もボク達が攻略に失敗した後にすぐ他のギルドに攻略されたのは偶然ではないという事だ。

それを戦闘中に気付いたアスナもすごいがそんなことを考えてる相手も考えてるなぁとつい呑気な事を考えてる自分に怒り、思考を切り替えた。

 

「と、言うことはつまり........」

 

「今回も、まんまと噛ませ犬役を演じてしまったということですか........?」

 

「なんてこった。」

 

その場で全員が意気消沈してしまうその瞬間、アスナが両手でパンと叩き意識を再び自身に向けさせた。

 

「ううん、まだそうと決まった訳じゃないわ。」

 

「ど、どういう事なの、アスナ?」

 

「今現実世界で昼の2時半、こんな時間に何十人も集めるにはいくら大規模ギルドでもかなり時間が掛かる筈、少なく見積もっても小1時間はあると思うの、その隙を突くのよ。いい?5分でミーティングを終えて30分でボス部屋に戻る。」

 

「「「「「ええーーー!!?」」」」」

 

「私達なら出来るわ。それに、この人数でもボスも倒せる。」

 

「ほ、ほんと!?」

 

つい身を乗り出して迫ってしまったがアスナは確信を感じるような微笑で頷きを返した。

 

「貴方達.......いえ、私達ならあのボスに勝てる。ずーっと前からこの世界で戦っている私が保証するわ。」

 

「ボク、やっぱりアスナに頼んで良かったよ。もし、攻略がうまくいかなくてもボク達の気持ちは変わらないからね。______ありがとう、アスナ。」

 

「アスナさん、本当にありがとうございます。ユウキが連れて来たあなただからこそ、私達が待ち望んでいた人だと今改めて確信してます。」

 

アスナはボクとシウネーの言葉に対して口の前で人差し指を立て、ウィンクをしてこちらの言葉を遮った。

 

「その言葉の続きは攻略した後に聞くね?じゃ、もう一度がんばろう!!」

 

その言葉にスリーピング・ナイツのメンバーは力強く頷いた。

 

「それじゃあまずはボスの話だけど______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分程度でミーティングを終え、いざ向かおうとしたがシウネーが不安そうにアスナに疑問を掛けた。

 

「あの、アスナさん。」

 

「どうかした?なにかわからない事があった?」

 

「いえ、そうではなく。今の私達の物資でちゃんとボスと戦えるのでしょうか?」

 

「う、うーんそれを言われると........」

 

アスナはどこか歯切れが悪く口篭った。それもボス戦が善戦した為、もしかしたらとアイテムをそれなりに使ってしまったのだ。

今更だと思うがもう少し節約して戦っていけば良かったと後悔している。

 

そんな時、入り口の扉がゆっくりと開かれた。その光景にボクやアスナを含め、全員が驚いた。それもそうだ、普通は蘇ったプレイヤーが外へと出るための扉から誰かが入り込んでくるというのだ。

ボク立ち以外誰も蘇生してくるプレイヤーは今の所確認されない。ふと身構えながらその扉を凝視してると1人の男性が入ってきた。

 

「確かここに来るって話を聞いてたんだが.........お!!」

 

こちらを見ると歩み寄ってきた。

 

「だ、誰でしょう.........?」

 

「ま、まさか.......ボス前に隠れてた奴らの仲間か?俺達の邪魔をしに来たのか?」

 

「いえ、さすがにそんな露骨な妨害をする筈が.......」

 

アスナ達が戸惑う中、ボクは歩み寄ってくる男性の姿をどこかで見たことがあるような、そんな疑問が頭の中で駆け巡ってた。そして男性がクラシックハットをクイッと上げ、その整えられた髭を生やした黒い肌の顔が露になると霧が掛かっていた頭の中が一気に晴れた。

 

「ああーーーー!?モリソンだ!!」

 

「よぉお嬢さん、また会ったな。」

 

「え?ユ、ユウキ......知り合いなの?」

 

「うん、この間、ダンテの店の後に会ったんだ!」

 

「他のメンバーは始めましてだな。俺はモリソンって者だ。まぁ、仲介人見たいな事してる情報屋みたいなもんさ。えーと?この中でアスナって奴は誰かな?」

 

「え、あ、はい.....私ですけど......?」

 

「ああそちらの美人さんか、実はお前さんに渡してくれって依頼があってな?」

 

「そ、その前に......あなたは一体......?」

 

「ん?あぁ、それもそうだな。まぁあれだダンテとは腐れ縁って所だって言えばわかるかな?」

 

「ダンテさんの.......?」

 

「で、これがその渡したいものだ。ほらよ。」

 

アイテムウィンドーからアスナ宛に送信され、それをメンバー全員が覗き込むように確認するとそこにはなんと回復アイテムが大量に表示されていた。

 

「うわ!すげぇ......」

 

「これ、大規模のパーティーの使う量の半分ぐらいあるんじゃねぇの?」

 

「す、すごい........」

 

皆が驚く中、アスナからは戸惑いしか感じられなかった。

 

「あの、これって......」

 

「おっと、俺達の世界の事を知ってると思うが、依頼人の事は守秘義務があってな?俺はあんた達にこれを渡す。それだけで他に関しては一切ノータッチで頼むぞ?それじゃあな、頑張れよ。」

 

モリソンは振り返って帽子を上げながら別れの言葉を言い残し、扉の外へと姿を消した。

 

「えっと......これで.....アイテムの問題はなくなったかな?ハハハ........じゃ、じゃあ早くボス部屋に行こう!」

 

アスナはそう言って、今度は別の歯切れの悪さを感じるような苦笑いをこちらに向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは急いでボス部屋前まで辿り着いたが、そこには.......

 

「嘘でしょ......」

 

「な、なんだい、これ......!?」

 

扉前の回廊30メートルは20人近くのプレイヤーで埋められていた。種族は色々と混ざっており、統一されてはいないが体力ゲージの下にはどれも同じエンブレムが浮かんでいた。

間に合わなかったのかと落胆仕掛けたその時、アスナが耳元で囁き始めた。

 

「大丈夫、1回は挑戦する余裕はありそうだわ。」

 

「......ほんと?」

 

その言葉に安堵してるとアスナは目の前にいる集団に歩み寄り、近くにいるプレイヤーに声を掛けた。

 

「ごめんなさい、私達ボスに挑戦したいの。そこを通してくれる?」

 

「悪いな、ここは閉鎖中だ。」

 

返ってきた返事の内容は予想外のものだった。

 

「閉鎖......って、どういうこと.......?」

 

「これからうちのギルドがボスに挑戦するんでね。今、その準備中なんだ。しばらくそこで待っててくれ。」

 

「しばらくって........どのくらい?」

 

「ま、1時間ってところだな。」

 

そのそっけない返答と内容にアスナは困惑と憤りを感じたが口調はそのまま問い詰めるように再び口を開いた。

 

「そんなに待ってる暇はないわ。そっちがすぐに挑戦するっていうなら別だけど、それが出来ないなら先にやらせてよ。」

 

「そう言われてもね。こっちも先に来て並んでるんだ。順番は守って貰わないと。」

 

「それなら、準備が終わってから来てよ。私達はいつでも行けるのに、1時間も待たされるなんて理不尽よ。」

 

「だから、そう言われても、俺にはどうにも出来ないんだよ。上からの命令でね。文句があるならイグシティにあるギルド本部まで交渉しくれよ。」

 

「そんなとこまで行ったならそれこそ1時間経っちゃうわよ!!」

 

流石に痺れを切らしたのかアスナのが徐々に大声になっていくも相手は知らぬ存ぜぬの一点張りで一向に発展していく気配は感じられない。

このままじゃボス攻略どころの話ではなくなってしまう。

 

八方塞がりのまま相手プレイヤーはこれで話は終わりだと代弁するかのように振り向き、仲間の所に戻ろうとしてる。なら、今ボクがやるべきことはただひとつ.......

 

「ねぇ君。」

 

「ん?今度はなんだ?」

 

「これ以上、ボク達がどれだけお願いしてもそこを退いてくれないってことだよね?」

 

「まぁ、ぶっちゃけそうなるな。」

 

「そっか、じゃあ戦おう。」

 

「は?」

 

「え?」

 

相手も、そして近くにいたアスナも思いもよらなかったのか一瞬思考が停止したように開いた口が閉まることが無かった。

 

「ユ、ユウキ、流石にそれは.........」

 

アスナは言葉が詰まりながらも言葉を繋げ、どうすれば良いのか考えながら歩み寄るがこちらはもうこれしかないと考えてるので引き下がるつもりは全く無い。

 

「アスナ。ぶつからなきゃ伝わらないことだってあるよ。例えば自分がどれだけ真剣なのか、とかね。」

 

「ま、そういうことだな。」

 

ガシャンと金属音を鳴らしながら大剣を担ぎながら相槌を打ってくれた。他のみんなも覚悟を決めていたのか既に武器を構えていた。

 

「皆........」

 

「それにね、向こうだって覚悟はできてる筈だよ。最後の1人になってもここを守るって......そうだよね?」

 

「お、俺達は......」

 

未だにボク達の反応が余りにも予想外だったのかしどろもどろの口調のままだ。

 

「さぁ、武器を取って。」

 

すると相手は腰辺りから大振りの戦斧(バトルアックス)を手にし、ふらりと構えた。

それを確認してボクは足に力を思いっきり込め、一気に踏みしめて蹴った。

一気に加速された体は相手の目前まで詰め寄った。向こうはそれに対応出来なったのか慌てて後方に下がりながら上空から斧を大きく振りかざしてくるもこちらよりもはるかに体格が大きい所為なのか動きがまるでスローモーションに感じられた。

斧がこちらを当てる前に黒曜石の剣は相手の胸の中央を捉えた。

 

「グッ!?」

 

その一撃だけで相手はバランスを大きく崩し、その隙に上段からの斬り込みでドスッと鈍い音を立てながら肩口に刃が食い込み、HPゲージが一気に削られた。

 

「ぬおおお!!」

 

流石に有名ギルドに所属してるだけあって、直ぐに意識を切り替えたのか向こうは雄叫びを上げながら先程よりも早く右斜めからこちらを襲い掛かってくるが.......

こんなの、ダンテの時の戦いに比べれば大したことは無い。十分目で追える。

タイミング良く弾き、右手にある真っ黒の剣の刀身をライトブルーに光らせ、面打ち、斬り下ろし、斬り上げ、最後に全力で上段斬りの4発、《バーチカル・スクエア》を叩き込んだ。

こちらの倍近くある体格のプレイヤーが数メートル吹き飛ばされた。

 

「きっ......たねぇ、不意打ちしやがって!!」

 

先程までの驚愕の表情ではなく憤慨のそれに変わって睨んだ瞳がこちらを捉えてくる。

 

「そっか......そうだよね......」

 

アスナはそ呟きながらブーツの踵を鳴らしながら進み始めた。その顔は今までの中で晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。

 

三倍近くある集団に対して、こちらはアスナ、シウネー、ジュンが右隣に来て、反対側にこちらの隣にノリ、テッチ、タルケンが並んだ。

 

数では向こうが有利であるにも関わらずこちらの士気の高さに気圧されたのか1歩引き下がった。

お互い下手に手が出せない以上、膠着状態のままだったが次の瞬間、後ろから無数の足音が聞こえて来たのだ。それに連れられて振り向くと後方から30人近くの集団がこちらに走ってくるのが目視できた。

再び向き直ると先程吹き飛ばした相手が勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。

 

隣にいるアスナを見るとどこか懺悔しているような、後悔しているような顔で唇を噛んでいた。彼女の所為ではないこれはボク自信の問題だ。むしろこちらが彼女を巻き込んでしまったのだ。あとでちゃんと誤ろう。

 

「ごめんね、アスナ。ボクの短気に、アスナも巻き込んじゃって。でもボク、後悔はしてないよ。だってさっきのアスナ、出会ってから一番いい顔で笑ってたもん。」

 

「私こそ、役に立てなくてごめん。この層は無理かもしれないけど、次のボスは絶対皆で倒そう。」

 

その言葉に全員、無言のまま笑顔で答えた。

 

そうしてる間にも後方からくる30人の集団は既にこちらの状況を知っているのか既に戦闘態勢に入っている。

 

「往生際が悪ぃんだ____」

 

勝ち誇っていた戦斧(バトルアックス)のプレイヤーが何かを言いかけていたが、またもや驚いた表情に変わった。

 

「あっ.....あれは......」

 

「なんで.....なんで奴がここに居るんだよ!?」

 

扉前にいるプレイヤー達も続いて困惑した雰囲気になるが視線はこちらではなくその先、先程振り返った方の集団に向けた言葉だった。

 

何度目かわからないがもう一度振り返ると集団のほかに二つの影が浮き上がった。

1人は側面にある壁を走り、もう1人は自身の目の前に居る団体の上空に飛び、その足元にある頭を次々と踏み台替わりにして飛んでくる。

 

ボク達と団体の間に入り込んできた1人目は以前、デュエルをしたアスナの知り合いのキリトという全身真っ黒のロングコートで包まれた剣士だ。そしてもう1人は.......

 

「壁走り以外にもあんなやり方もあるんだな。」

 

「慣れると結構楽しいもんさ、今度トライしてみな。」

 

全身真っ赤のロングコートに包めれた剣士、ダンテが隣に立っていた。

キリトは黒い剣をダンテは髑髏の剣を地面に突き立てながら笑みを浮かべた。

 

 

「悪いな......」

 

「ここから先は通行止めだ。」

 

 

 

 

 

 

その後

 

デビルメイクライ本店

 

「あぁ疲れた......ダンテの奴、人を宅配か何かと勘違いしてんのか?.......ったく」

 

誰も居ない店に入り、タバコのようなアイテムを取り出しては馴れた手つきで火を付け、大きく深呼吸をするように煙を吹かした。

するとガチャリと扉が開き、紺色のロングコートが視界に入ってきた。

 

「よぉネロ。お前さんがこんなオンボロ店に来るなんてな?」

 

「オンボロなのはあの2人の所為だろ?ダンテは?」

 

「あぁあいつなら........『久しぶりにパーティー行ってくる。』だとさ。」

 

「........ハァ?」

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
重ね重ね、投稿が遅れて誠に申し訳ありません!!
これからも極力頑張っていきますので感想、評価の方をお願いします!!

それではまた次回お会いしましょう。


ご通読ありがとうございました!!
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