DMC×SAO 俺の転生物語   作:ユーグクーロ

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皆様!!お待たせしました!!
待ちに待ったユウキ救済ルート?のお話です!!!
本当は今回のお話でエピローグということにしたかったのですが、あれもこれもと書いていく内に普段よりも3000文字多い1万文字に達してしまいました。

まぁ長い前置きはこれくらいにして........




第12話!どうぞ!!


12 希望

某日 午前10時

 

ALOでの大乱闘から数日が経過していた。

さすがに周囲から認知されているダンテの評判は前々からあったけど、あの出来事のお陰でお店は少しの間休業になったらしい。

あの数を倒すこと自体はそこまで苦労はしなかったらしいけどあの後知り合いからの猛攻撃から逃げるのが大変だったとのことだ。

面白可笑しい出来事も束の間、今は病室で静かに時計が秒針の音がなるだけ、言い様のない空気が張り詰める感覚に襲われそうになる。

 

「紺野さん、これが最後の治験........最後の希望になるよ。」

 

「........うん。」

 

薬品アルコールの匂いが僅かに混じった病室で僕はベットの上で上体を起こしている状態になっている。隣で椅子に座っている倉橋先生が真剣な眼差しをこちらに向けてくる。

そう、今日は治験の日だったけど.........いつものそれとは違って今現時点で有効だと言われている特効薬、それを今回は服用するということだ。

 

「よくここまで頑張って来れたね。紺野さん、もしこれがうまく成功すればもう入院生活はしなくて済むんだ。頑張ろう。」

 

「.........うん。」

 

漸く訪れた運命の日、これでボクに未来があるかどうか決められる。

何度も深呼吸していると看護婦の人が皮下点滴用の道具を一式乗せられた台車と倉橋先生が言っていた特効薬とやらの液体が入っているであろう点滴ボトルが目に入る。

 

(大丈夫..........大丈夫..........大丈夫........)

 

そう何度も頭の中で反芻した。

 

「それじゃあ今か24時間体制で君を看護することになるからとても我慢出来なくなったらいつでも僕や近くに居るスタッフに声を掛けるんだよ。いいね?」

 

「はい........お願いします。」

 

 

今、看護婦から先生の手に針とアルコールが染み込んでいる綿が渡された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、現実世界にてエギルの店で和人、明日奈と共にカウンターに座っていた。この店で新しく出来たストロベリーサンデーを口に運び、生クリームの甘さと苺の酸味が口の中で雪解けのように広がっていく幸福感を味わっていると隣から溜息が聞こえてくる。

 

「あのなぁ飛鳥、なんであんなことしでかしたんだよ。」

 

「何がだ?」

 

「とぼけるなよ。今ALOのニュースはこの間の闘技場の大乱闘の一件で大騒ぎだぞ。」

 

そう言いながらこちらにスマホの画面を見せてくると画面の半分はこの文章が大きく記載されていた。

 

ALOで悪魔が妖精狩り!?その被害は100件以上!!!

 

「そいつは随分と物騒な話だな。」

 

「明らかにお前が主犯の案件だ!!」

 

「か、和人君ってばちょっとは落ち着いて。」

 

身を乗り出し、大声で肯定させようと躍起になるも隣にいる恋人に宥められ、一時的に大人しくなるがこちらに対する目線が鋭くなる一方だ。

あの騒動から翌日デビルメイクライにて暇つぶしをしていたら店に訪れるのは決闘状を叩きつける馬鹿ばかりだった。来る日も来る日も飽きず店のドアを大きく開けるのはそんな連中ばかりで嫌気が差して今は一時的にログインすることはせず、こうしてエギルの店を避難所代わりにしているのが現状だ。

 

どうやってアインクラッド以来の相方の猛攻を凌ごうか思考を張り巡らせているとエギルが助け舟を出したのか時計に目を向けて呟いた。

 

「そういえば今頃あのお嬢ちゃんは例の治験が始まってるんじゃねぇのか?」

 

「............」

 

エギルと共に時計を横目で確認すると時刻は既に11時を過ぎていた。倉橋の聞いた話だともう既に始まってから1時間が経過しようとしている。

 

「行かないのか?」

 

「.............何の話だ?」

 

グラスを磨きながら店の主はこちらをイタズラっぽく見つめてくる。

 

「いやなに、ここ最近どうも落ち着きがないように見えてな?気のせいだったか?」

 

「そう見えているんだったらお前の目は節穴だったことになるな。」

 

「フッそうかい。」

 

その言葉を最後に再び店内は落ち着いたジャズが流れており、非常にロマンチックな内装と良く組み合わさっている。

和人達とは反対側の席でウィスキーの空き瓶を抱き枕にして鼾をかいている髭面のサラリーマンを除けば極在り来たりな日常風景だ。

だがこうしてこのメンツで集まった理由はただ単に日頃ゲームで遊んでいる仲間同士のオフ会など愉快なものではなく、場は時計の針が進む度に緊張感が高まっていく。

 

「ユウキ......大丈夫かな.......」

 

アスナはそう呟きながらテーブルの上で手を組みながら共に戦った戦友でもあり、親友でもある少女の安否を祈るばかりであった。

なぜこうしているのかというと先日、倉橋によって病院に呼び出されたのが事の始まりだった。

 

 

 

 

『やぁ、飛鳥君。悪いね、急に呼び出しちゃったりして。』

 

『まったくだ。こっちは折角の貴重な休日って言うのに態々職場に、それもお前に呼び出されるなんてな。』

 

病院の職員用の裏口にて眼鏡を掛けた白衣の優男が軽く手を振りながら待ち構えていた。

 

『それにしても1時間遅れとは随分と遅かったね?そんなに混んでいたかな?』

 

腕時計を見ながら肩を竦め、こちらに問いただされるがこちらは朝早くから留守電を5件も見せられているこちらの気分も考えて欲しいものだ。

 

『野郎との約束は忘れがちでな。』

 

『なら、()()の話ならどうかな?』

 

『........で?内容は?』

 

『続きは僕の仕事部屋で話そう。』

 

倉橋に案内され、通院患者とは別の職員のみが入れる個人オフィスに案内された。

一般ロビーでは受付の案内や患者の世間話が聞こえてくるがここはとても静かで聞こえてくるのはキーボードのタイピング音ぐらいだ。

案内されるや倉橋は自身の椅子に座り、引き出しからとある分厚いファイルが取り出された。

 

『これを見てくれ。』

 

素人でもわかる程に重要そうな物を同じ病院で働く者とはいえそう外部に提示してしまっていいのだろうか?

いや、この男は初めからそういう奴なのだと疑問を蹴り飛ばし、ファイルに手を伸ばした。書かれていたのはユウキの.......というよりエイズに関する治験を初めとしたこれまでのデータが詳細に記されていた。

 

『以前見たものとは別の物だな。』

 

『ああ、それは今度行われる治験に対するこれまでの事を纏めたものだからね。そして、これが最後のものとなるだろう。』

 

『どういうことだ?』

 

『..........今度の行われる治験は今までのものとは比べものにならないということさ。』

 

眼鏡を取り外し、レンズを磨き始めた優男は先程までの温厚な表情とは一変して医者として相応しい鋭さを露わにした。

 

『今君が見ているそれは海外でも注目されているものだ。現在最も有効だとされている代物なんだよ。』

 

『それをユウキが挑むってことか。』

 

『正確にはユウキ達スリーピング・ナイツの皆が挑むことになる。』

 

『...........』

 

『さっきも言った通り、今回はこれまで行ってきた治験とは訳が違う。今まで以上の試練が彼女達を待ち受けているだろう。』

 

『用件はそれだけか?帰るぜ。』

 

『待つんだ飛鳥君。』

 

いつもとは違う真剣な声色が入り口に向かう足を止められてしまう。

 

『あのなぁ、俺は医療のいの字もわからねぇ素人にそんな話してどうしろってんだ。それにこれはあいつ等の問題だ。俺が介入する余地はねぇよ。じゃあな。』

 

『見舞いには来ないのかい?』

 

『気が向いたらな。』

 

倉橋の言葉を待たずに俺は病院を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__い___おい____おいってば飛鳥!!」

 

倉橋とのやり取りを思い返すとふと隣から和人の声が響いてきた。

 

「なんだ?」

 

「聞いていなかったのか?この後、木綿季の病が治ったらどう祝おうか話をしていたんだよ。聞いていなかったのか?」

 

どうやら俺以外で見舞いの段取りをしていたらしいがそんなことを考えていると横槍を刺すように睡魔が襲ってきたのか大きく口を開いてしまう。

 

「どうでもいい。お前等だけで適当にやれば良いだろ。俺はこれから一眠りさせてもらう。」

 

「あ、おい!!」

 

エギルに代金を支払いを終え、相方の声を待たずにベルと鳴らしながら店のドアを開いて外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛用しているバイクで帰路を辿っている最中、信号待ちにより一時停車している間のことだった。

 

「退院祝いか.........」

 

まだ治る保障はどこにもない上、あくまで治験であるというのにあまりにも気が早すぎだろう。

 

『見舞いには来ないのかい?』

 

「.............」

 

来てどうするというのだ。励ましの言葉でどうにか出来るのなら長い間彼女は病を犯されることは無いだろう。今頃は元気に友達と遊んでいただろうに、子供時代の大半を病院で退屈な日々を送ることも無かった筈だ。

 

『いやなに、ここ最近どうも落ち着きがないように見えてな?気のせいだったか?』

 

(落ち着きが無い?俺が?馬鹿馬鹿しい。)

 

だが現に落ち着かないのは否めない。だがその原因が何なのかは分からない。だからこそ余計に苛立ちが募ってしまいそうになる。

どうにか気分転換しようとふと横に視線を送ってみるとそこにあったのは少し小洒落た建物が目に入る。

 

「............」

 

まぁ、3年間も軟禁状態のような生活を送ってきたのだ。この際いい機会かもしれない。ありきたりな果物の詰め合わせに比べたら何か形に残すということで別の何かをプレゼントするのも良いだろう。

決してありきたりな品物だなとあいつ等に言われるのが癪だとは一切思っていない。

 

少し寄り道になるが特にこの後の予定は無い。近くの駐車場に止まり、その店に足を入れた。

 

「いらっしゃいませ。」

 

外見はどこにでもあるような見た目だが、店内は都内にしては珍しい木製を中心としたレトロな雰囲気を醸し出している。

店に展示されている品物を見てみることにする。

 

「何かお探しですか?」

 

商品を品定めしているとしばらくすると店員が声を掛けてきた。恐らく中々決められず困っているのだと勘違いされたのだろうか。

 

「もしかしてプレゼント用でしょうか?」

 

「まぁそんなとこだ。」

 

「どのような物をお探しで?」

 

それからしばらく店員の猛攻撃の質問攻めにより品定めは困難を極めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからどの位時間が経ったのだろうか。外は既に暗くなっており、月光が僅かにそのの景色の輪郭を写しているだけだ。

部屋も頭上にある就寝用の薄暗いライトのみが辺りを照らすだけだ。

 

隣にある心電図からは体中に張られた電極の情報を元に一定のリズムで音を伝えてくる。

 

(くる.......しい........)

 

倉橋先生からは事前に薬の副作用に関する説明は受けていたけれど、予想を遥かに超えたものだった。

 

全身にまったく力が入らない脱力感、胃から上に押し上げられてくる吐き気、空調が整っているはずにも関わらず体が燃えそうなくらいの発熱、ベットの上で横になっているだけなのに全力で走った後のような息苦しさ..............

 

それに高熱による所為か異常なまでの発汗によって体全体に湿った布団やシーツがこの上ない不快感を与えてくる。

だがそれを振り払う気力も今は無い。ただただ時間の流れが遅くなっていく感覚に蝕まれていく。

 

(お....とうさん......おかあ.....さん..........おねぇ........ちゃん.........)

 

更に隣にはスリーピング・ナイツのメンバーも姿を現す。

 

(み......んな..........)

 

閉じられた瞼には既にこの世にはいなくなった家族の姿が目に浮かぶが決して何も語ってくることはなく、ただ微笑みを向けてくるだけだ。

そしてゆっくりとこちらに背を向けて何処かに姿を消していく。

 

(まって......おい......てかないで..........ひとりに......しないで..........)

 

そう強く念じるももう家族の姿はなくなっており、虚無の気配に身を包まれてしまう。

これは夢なのか......現実での出来事を思い返しているのか......もうわからなくなってしまったが.......

 

同じだ。

 

初めてこの病院で暮らし始めた時と同じ感情だ。

親しい者は誰一人おらず、誰一人寄り添うことも無く、ひたすら命を刈られる日まで漠然と過ごしていたあの時と................

 

(いや....だよぉ.........ひと.....りは......こわい......よ......)

 

一体どこに向かって走ってくるのかも分からない.......けど走らずにはいられない.........

すると、今度は後ろから光が差し込んでくる。

振り返ってみるとそこには真っ赤なコートを羽織った一人の男性がこちらに背を向けていた。

 

(だん.......て......?)

 

すると先程と同じく何処かへと歩み始め、姿を晦ましてしまいそうになる。

 

(っ!?ま....って........!!)

 

もう一度追いかけようとするも次第に離れていく。

 

(やだ......だ......め.......いや......だよぉ......)

 

手を伸ばし、ダンテの手を掴もうとするも少しも届く気配はない。

彼まで置いていかれたらもう........

 

また消える。そう思った時だった。

ダンテの方から歩みを止め、振り返ってきたのだ。

 

(え............?)

 

_____何してる。置いて行くぞ。

 

そう言って彼はこちらに手を差し伸べてきたのだ。

もう一人になるのが、彼と離れしまうのが嫌で、その手を掴もうとした。

すると辺りは光に包まれ、次に目を開けたら薄暗い壁........いや、天井が視界を覆っている。

いつの間にか涙を流していたのだろう。目元が濡れているのがすぐに分かった。

 

(ゆめ.........?)

 

湿ったベットの感触と息苦しさが現実だと再認識させてくれた。

だけど、他にもう一つ違和感を覚えた。ベットの片方が僅かに沈んでいるのだ。

視線だけそちらに向けると誰かがベットに腰を掛けてるのが見えた。

 

(だ......れ?)

 

ぼんやりとしている所為かよく分からなかったが体格からして男性なのは確かだ。

分かっているのは服装がジーンズにダークレッドのジャケットを着ていることぐらいなだけだ。

 

(だん.......て.......?)

 

ふとそんな期待が頭を過ぎるがこの病院にいることは喋っていないから真夜中にこんな所に居るはずが無い。

なら、この男性は誰なのだろう?ひょっとしてこれも幻覚なのだろうか?

だが今はそんなことはどうでもよくなった。どうにかして手を伸ばし、その手を掴む。

男性は気付いている筈にも関わらず振り向きもしないまま窓から外の景色を眺めているだけだ。

男性の手はとても大きく、ゴツゴツしていて硬いけど..........

 

(あったかい..........)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とても安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2日程経過し、今は太陽が高く上っている昼過ぎだ。照明が必要に無い位に部屋全体が明るく照らされている。

部屋には明日奈やキリトこと和人、そして明日奈と一緒にいる仲間達が訪れていた。

 

「木綿季!!おめでとう!!」

 

「やったな!!」

 

「おめでとう!!!」

 

「ありがとう皆!!!」

 

部屋全体に歓喜の嵐が吹き荒れていた。隣にある台座には各々が持ってきてくれた花束がスペースを支配されている。

なぜならつい先程、倉橋先生からこう告げられたのだ。

 

「おめでとう紺野さん。」

 

「え?」

 

「無事に治療は成功したということだよ。」

 

「ほ、本当!!?」

 

「ああ、精密検査した結果、今はもう入院するほどの脅威は確認されていないってことだよ。」

 

その言葉を耳にし、頭が真っ白になりながら涙が零れてしまった。

やっと.........報われたのだと..........

 

ふと安心したのも束の間、ふと頭の中に共に戦った仲間の顔を思い出す。

 

「そ、それじゃあ皆は!?」

 

確か同じように治療に専念していたはず.........皆は無事だろうか......治ったのだろうか..........

必ずしも治る保障はないのだ。もし、誰か一人でも欠ける事になったらスリーピング・ナイツは事実上解散せざるおえないことになってしまう。やっと希望の光が差し込んできたというのに最悪の結末を迎えててしまうのではないかと冷や汗がじんわりと滲み出てきてしまう。

そんな一抹の不安ぬ駆られていると倉橋先生は微笑みで返してきた。

 

「大丈夫、さっき連絡を取ったら皆も無事に終えたようだよ。個人差はあるだろうけど心配することは無いようだ。」

 

「よ、良かったぁ~。」

 

ほっと胸を撫で下ろしていると先生は眼鏡を拭き直しながら椅子から立ち上がった。

 

「まぁ色々と準備することもあるだろうから今日1日は特に何もしないでゆっくりと体を休ませるんだよ?まだ治療での疲労が抜けていないだろうし、こちらも色々とやらなきゃいけないことが山積みだからね。それじゃ。」

 

倉橋先生はそう告げ、明日奈にはボクが先生から聞いた話をそのまま伝え、現在に至る。

病院だというにも関わらず皆お祭り騒ぎで看護婦から静かな威圧を受けられ咳払いをしてすぐに黙ってしまう。

それに対してクスッと笑いそうになるもある事に気付く。

 

「あ!そうだ!!ねぇ明日奈!!」

 

「ん?何かな?」

 

「ダンテは?リアルでも知り合いなんだよね?此処に来るの?」

 

そうだ。この事を他でもない彼に伝えたかったのだ。そうしてこう伝えたい。おかげで治ったよって、ありがとうって伝えたい。

だが明日奈はどこか歯切れが悪い表情で周囲にいる者達と顔を合わせるが皆どこか気不味そうな雰囲気を醸し出していた。

 

「あのね木綿季.......えと.....彼は来ないの............」

 

「え?」

 

この返っていた言葉にしばらくの間、頭が真っ白になった。焦りが隠せれないこちらを明日奈達は不安そうに覗き込んでいる。

どうにか頭の中で言葉を捜し、もう一度事実の再確認してみることにする。

 

「来ない.....の?」

 

「うん.......私達も連絡したんだけど全然返事が来なくて........」

 

「そう......なんだ..........」 

 

(面倒くさがりなダンテらしいけど、せめて今日は会いに来て欲しかったな.........)

 

やはり帰ってきたのはさっきと同じ答えだった。

ちょっと気分が落ち込んでしまいそうになるとドアからノック音が聞こえ、誰かが入ってくる。

 

「おっと悪いな、盛り上がってるところ邪魔するぞ。」

 

入ってきたのはぱっと見初老のスーツを身に纏った男性が顔を出してきた。

 

「おいおい爺さん、部屋を間違えてんじゃねぇか?」

 

そこに割って入ってきたのはALOではクラインと名乗っている本名、壷井 遼太郎さんだ。確か闘技場の大乱闘ではダンテに一番槍で襲い掛かったが呆気に取られる程秒殺されてしまったので印象が強くきおくされている。

 

「ん?いや、間違ってはいないと思うがなぁ......なぁお嬢ちゃん。」

 

そういうと初老の男性は被ってあるレトロな帽子を片手で整える。

その仕草にはどこか見覚えがあった。ついこの間、同じ所作をするプレイヤーに出会ったのだから。

 

「ひょっとして.........モリソン?」

 

「ハハハ!正解だ!!よく分かったなお嬢ちゃん。」

 

恐る恐る口にしてみると豪快に笑いながら歩み寄ってくる。

 

「え?モリソンって確か.........ボス戦の時に色んなアイテムを融通してくれた?」

 

「おぉ、お前さんがあの時の水妖精族(ウンディーネ)お嬢さんか。うーむ、こっちでもなかなかの美女だな。」

 

「え?あ、どうも.......結城 明日奈です。」

 

その言葉に明日奈はどこか照れた表情になってしまうも持ち前の冷静さですぐに取り繕って咳払いした。

 

「おっと、そう言えばまだ自己紹介がまだだったな。」

 

男性はそう言って帽子を取っておお辞儀をした。

 

「俺は大塚 影継(かげつぐ)っていうんだ。これは名刺な。」

 

そう名乗って内ポケットから小さな小物入れを取り出して明日奈に渡した。

 

「ど、どうも.....えっと、おおつか...かげつぐさん.....弁護士!!?」

 

明日奈から驚いた声が零れてしまうが大塚さんはニンマリと笑いながら襟に飾られている金色の向日葵の模様に真ん中には天秤がデザインされている。

 

「うそ.....で、でもどうしてそんな人がここに?」

 

明日奈は納得のいかない表情で問いかけると大塚さんは近くにあった来訪者用の椅子に座り、帽子を脱いで一息ついた。

 

「ま、俺がここに来たのも他でもないそこのお嬢ちゃんに用があってな?」

 

「ボ、ボク?」

 

「なんだ?ダンテの奴から何も聞いてないのか?」

 

「え?え?」

 

ダンテから?ボクに?弁護士を?

何がどうなっているのか訳が分からず、先程とは別の意味で頭が真っ白になってしまう。

 

「ったくあいつまた........まぁ、ここに来たのも本業が目的でな。詳しい話はプライベートに関わることだから出来れば本人と.....そこにいる明日奈お嬢さんだけ部屋に残ってくれると有難い。」

 

「え?わ、私もですか?」

 

「あぁ、今回の内容にはお嬢さんも深く関わっているからな。」

 

そのやり取りから暫く明日奈は考え込むように項垂れ、皆には退室してもらうこととなった。

騒がしかった病室は一気に静まり、緊張が高まってしまった所為かガチガチに固まってしまう

 

「いやなに、まだ治療が終わったばかりだって話だからそんなに手間は取らせないから安心しな。それにしても治療がうまくいったって?良かったな。あ、こいつはその祝い代わりの果物の詰め合わせだ。ここ置いとくぞ?」

 

「あ......うん.......」

 

社交辞令のようなやり取りをするもやはり彼が来なかった事実をまだ受け止めきれないのか声に出てしまう。

 

「なんだ?元気がないな。そんなにあいつに会いたかったのか?」

 

図星を突かれてしまうが否定も出来ないのでその問いにゆっくりと頷く。

すると大塚さんはケタケタと笑いながらこちらに微笑んだ。

 

「あいつはそういう奴なんだ。許してやってくれ。だが............どうやらそうでもないらしいぞ?」

 

大塚さんの言葉に釣られて顔をあげてしまう。

 

「え?だって......ボク、一度もリアルで会ってないよ?」

 

「まぁ、厳密に言えばそうだろうな?」

 

「どういうことです?」

 

明日奈も首を傾げて疑問を浮かべるも大塚さんは軽く微笑んだ。

 

「俺がこの話をしたのは内緒にしてくれよ?ここ最近、奴さんは自宅に殆ど帰らずある所に出かけていたらしいんだ。久し振りにこっちで会ってみたら特に遊んできた様子はなさそうだしな。」

 

「じゃあ一体何処に?」

 

「まぁそう急かすな。それで昨日の夜のことだった、仕事であいつの所に向かったんだが『少し遅めのサンタクロースの仕事だ。』なんて言って出掛けちまったんだ。この病院の方角に向かってな?」

 

「!!?」

 

「それって........」

 

その言葉で記憶を整理していくと昨日の夜の出来事を思い出した。あの時、手を握った男性は........

 

「ダンテ.......来てくれたんだ。」

 

確証は無い。もしそうだとしたならと思うと自然と目元が涙で埋まりそうになってしまった。

 

「なんだ、あいつから何か貰っていないのか?確か小さな小包みを持っていたはずだが?」

 

「え?ううん。何も。」

 

頭に残っている記憶を何度も掘り返すも意識がはっきりしていない時に手を握ってしまった位でそれ以降はもう一度眠ってしまったのでそこからのことは何も覚えていない。

かといって大塚さんからは嘘をついてる様子も見受けられない。

 

「まったく。あの野郎、本当にマイペースと言えばいいのか、自分勝手な奴だ。」

 

三人で周囲を見渡すもそれらしい物は見つからず。困っていると明日奈が何かに気付いたようだ。

 

「あれ?木綿季、その枕の下にあるのは?」

 

「え?」

 

明日奈の指摘で枕を見ると端に茶色い何かがはみ出しているのが確認出来た。

枕を退かすとそこには大塚さんの言っていた通り、片手で収まりそうな小さな包みが置かれていた。ゆっくりと震えた手で中身を出すと........

 

「.........ロザリオ?」

 

楕円形に膨らんだ中空の円柱で組まれたクロスで滑らかで軽やかな丸みを帯びており、中央にエメラルドグリーンのペーストを護るように4枚の葡萄葉が飾られている。ヴィクトリアンの時代の風情の漂う、慎ましやかで清らかな金の十字架だ。

 

「木綿季!!それって!!?」

 

「ダンテ.......」

 

ロザリオを袋から取り出そうとすると一緒に同封されていた一通の紙切れが膝元に落ちる。それを取って確認すると英語でこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

congratulations for the discharge(元気になって良かったな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その文字を読んだ時には何も見えなくなっていた。

我慢していた何かが溢れてくる。唇を噛み締め、贈り物を胸に抱き寄せ、ただただ爆発した感情が崩壊したダムのように雪崩れ込んでくる。

 

「良かったね......良かったね、木綿季。」

 

「うん.........う゛ん゛!!」

 

明日奈が傍に寄り添って身を寄せてくる。まるで自分のことのように涙目になりながら祝福の言葉を並べ、喜んでいる。

ボクはベッドが濡れていくのを実感しながらロザリオを抱え込み、嗚咽が零れそうになるのを堪えることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ダンテがALOに数日間ログイン出来なくなったのは容易に想像できることだろうが...............................これはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回のお話はいかがだったでしょうか?
次がマザーズロザリオの最後回........になるはずですのであともう少しお付き合い下さい。

それではまたお会いしましょう!!

感想、評価もお待ちしております!!

ご通読ありがとうございました!!!
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