またしてもあれこれ書き足したり消したりまた書き足しの繰り返しで長引いてしまった。本当に申し訳ない!!
それでは第5話!!どうぞ!!
俺は今、暗闇の世界に立っていた。
一体何処なのだろうか?何故ここにいるのか?どうして立っていると認識しているのか?何故明りがないのか?
様々な疑問が頭の中に入り込んでくるが、思考が定まらないのか明後日の方向へと通り過ぎていく。
____駄目だ、頭の中が滅茶苦茶だ。
どんなに考えようとも、どんなに動こうとも、無気力な何かが邪魔をしてくる。
見えない何かに拘束される最中、何時から其処に居たのだろう。今にも手が届きそうな距離に立っていたのは...........
____お前は............?
気怠い微睡みの最中、何気なく瞼を開けると次は光の反射が存在するのか目の前には色鮮やかな森の景色が入り込んでくる。
「ここは..........?」
そう、森だ。そこはまるでドキュメンタリー番組で映される命が溢れんばかりの美しくも広大な森の中だ。
ALOでもここまで再現度が高いものはないだろう。
それどころか土や草の香り、小鳥の鳴き声、すべてが現実のそれなのだ。
どこか現実から離れていて現実に近い世界。
そして隣には共に戦ってきた悪友キリトが横たわっていた。
「まさか.......冗談だろ?」
恐らくだが、ここは原作アリシゼーション編の物語の舞台であるアンダーワールド、キリトが最初に目覚めた場所に立っているのだ。
今度は別の意味で思考が停止してしまった。
何時、何処で、何が起きたというんだ?
頭の中にある記憶の断片を掘り起こそうにもどれもこれも曖昧なものばかり。
最後に覚えていることといえば、木綿季の我儘に根負けしてしまい、近くの祭りに足を運んだ。
そう、そこまでは覚えている。
そこからが問題なのだ。何も思い出せない。
もう少しすればキリト........和人がジョニーブラックの襲撃に遭い、かつてGGOの殺人事件で使用された薬物によって瀕死のダメージを負ってしまい、菊岡の仕業によってこのアンダーワールドに無理矢理入れられてしまう。
その襲撃をどう回避すべきか悩んでいたその矢先だ。
気が付けば自身も、そしてキリトもこの世界に迷い込んでいる。今現状で分かっている事はこのままだと原作通りの悲劇が起こってしまうだろう。
そうなればあまりゆっくりとしていられない。取り敢えず隣で呑気に眠っている友人を起こすべく少しだけ脇腹に向けて強めにつま先で蹴るととても十代半ばの少年とは思えない奇声染みた嗚咽で鳴いた。
「ゲホッゲホッ....な、え!?」
苦痛によって叩き起こされた少年はすぐさま上体を起こし、辺りを確認し始めた。
無理もない。いきなり目が覚めたら見知らぬ森の中で寝ていたとしるのだから。呆けた面を晒している少年キリトは漸くこちらの存在に気付くと共に先程の苦痛の元凶がこちらだと悟ったのだろう。しかめっ面で睨んできたのだ。
「お、お前かよダンテ!いきなり何すんだ!!」
憎たらしい表情を向ける少年に不敵な笑みで応じていたが一つの疑問が浮かんできた。
「悪いな、気持ちよさそうに寝てたからつい........おい、今何て言った?」
「え?」
「何て言ったんだって聞いてるんだ。」
「い、いきなり何す___」
「その前だ。」
「お、お前かよダンテ.......だが?」
キリトの言葉に疑問が浮かんだ。彼は間違いなく、はっきりとダンテと呼んだのだ。
現実世界の飛鳥と仮想世界で戦っているダンテの姿は似て異なるもの。
確かめるべく近くで流れている川があることを確認し、近付いて水面を覗き込むとそこには銀髪が生えた顔が映りこんだ。
どうやらダンテの姿をしているのは本当らしい。
なんといっても大いに目立つあの銀髪だ。かつてのアインクラッドにおいても初めの頃は周りは茶髪か黒髪の二色で染まっているのに対し、銀色という紅一点。
注目の的であったことは今でも印象的に記憶している。もちろん悪い意味でだ。
その後は攻略が進につれて髪染めのアイテムなど容姿を変えることが可能になってからはそこまで悪目立ちすることはなくなった。
それからというものALO以降に関してはSAO時代のデータを使っていることもあってか姿はほとんど変わらなかった。運営側にはこちらがSAO生還者という事を理由にす為に菊岡を脅........ではなく一友人として頼んでもらったこともあった。
そう、すべてはナーヴギア、アミュスフィアにダンテの記録が残っていたから使えていたはずなのだ。
しかし此処はラースの........茅場から託されたザ・シードが管理するVRMMOではない。現実とも仮想ともかけ離れたもう一つの世界、アンダーワールド。
そこにダンテが存在しているのだ。本来ある筈のない姿がこの世界に存在している。菊岡の指示かあるいは比嘉の独断によるものなのか、今は知る由もない。
「なぁ、ダンテ。ここはひょっとしてSTLの.......アンダーワールドなんだよな?」
「さて、どうだろうな。」
流石にここは原作同様、頭脳の回転が人一倍速いのだろう。ここが仮想世界、アンダーワールドであることに結論が行き着いた。
「菊岡さん!比嘉さん!此処から出してくれ!問題が発生したんだ!!」
助けを呼ぶように空を仰ぎながらそう呼びかけるもその返事は虚しくも返ってこない。
「駄目か.............」
それもそうだろう。向こうから監視することは出来るが此方からの声が届くとこは不可能だろう。
アドミニストレータが鎮座する公理教会の最上階にあるコンソールでなくては現実世界にいる彼等と接触すること以外は。
半ば諦めがついたのか腰に手を当てながら軽く溜息を吐いていた。
これからどうするべきか俯きながら悩む相方だったがその表情は徐々に険しく、驚愕へと変貌していく。
「お、おい...........ダンテ。」
またしてもキリトから狼狽する声が聞こてくる。何かを見つけたのか震えた手で指を指しながら伝えてこようとしている。
その指先を辿っていくと先程自分が横たわっていた地面には一振りの剣が落ちていた。
長さは足元から肩まで届くほどの両手剣、鈍い銀色一色に染まり、持ち手には頭蓋骨の彫刻が施されている。
3年以上も握り締め、死と隣り合わせの戦いに愛用してきた魔剣リベリオン。
此ればかりは此方も驚きを隠せすことは出来なかった。
バグが何かと思い、確かめるためにゆっくりと手にするが、いとも簡単に持ち上げることが出来た。
軽く振り回し相棒の調子を確かめるもいつも通りの手応えである。
何故この剣が一緒に存在するのかは不明だが、憶測だけで考察してもさほど意味を成さないだろう。
ひとまずは使えるものは最大限に活かすとしよう。
ズシリと頼りになる重さを背中に乗せ、ひとまずは身の安全は保障出来たことに少しばかり安堵する。
ついでに腰回りを手探りで探したのだがどうやらエボニーとアイボニーは付いてこなかったらしい。流石にこの世界に銃があればまず人目に付くだろうし、いざ使おうにも状況が限られるだろう。この際ない方がかえって都合が良いのかもしれない。
すると隣に居るキリトは酷く落胆していた。
どうやら自分にも愛剣が付いてきているのではと期待していたのだろう。
周囲にはALOで使っていた片手剣の姿はない。
「俺のは............無いのか。」
羨ましそうにこちらをジト目で見てくる。
クレーム先を間違えてるぞと言いたいが今は世界を隔てた彼等の耳に届くことはない。
すると今度は何かが打ち付ける音が森全体に響き渡ってきた。
「何だ?」
相方のキリトはその音に集中し始めた。
(この音は.........)
ユージオがギガスシダーに斧を打ち当てている。
一定の感覚で、同じ力を何度も。
すると脳裏に何かが浮かんできた。
それは子供の姿をしたユージオ、アリス、キリト、そしてそれを傍からつまらなそうに見ている銀髪の少年。
(今の記憶は.............)
あれは間違いなく子供の頃のキリト達だ。それは確かだがもう一人は..........
(俺か?あの時........いや、あの頃にも俺が居たのか?)
記憶と呼ぶには不確かなものに酷く困惑してしまった。
ただただ懐かしい。
そんな感情が静かに滲み出てきてしまう。
「あの音がする方に行ってみよう。」
キリトがそう言いつつ歩み始め、その後に付いていくことにする。
生い茂る自然の中で響き渡る音は少しづつ大きくなっていく、どうやら目的地はすぐ其処のようだ。
すると途端に音は止み、再び静けさが戻ってくる。
「音が止んだ?」
だが音の発生地からそう遠くはない。そのまま方角を変えずに突き進むとそこには巨木が聳え立っていた。
「これは..........」
根元に近寄ってみるとそれに比例して圧倒的な存在感が伝わってくる。
恐らく大人が何十人もかけて輪を作っても収まりきらない大きさ、例えここら辺一帯の自然が消えてしまう程の災害が発生してもこの木だけは悠々と生き残るだろう。そう思わせてしまう程の何かがあるのだ。
成程、これがあの夜空の剣となる木、ギガスシダーだ。
もうこの世界に投げ出されて久しく忘れていたが、原作では味わえなかった臨場感が体の中で再び燃焼し始めるのが実感できた。
「誰?」
ふと聞こえてくる声にどこまでも続きそうな巨木を見上げていた首を元に戻した。
その声の主はギガスシダーの根元に立っており、訝しげにこちらの様子を伺っている。
「君たちは誰なんだい?」
不安げな声をしながらもこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。
ギガスシダーの枝葉から差し込む太陽の光により栗色の髪をした少年の姿が露わになった。
「どうしたの?」
「お、俺はキリト、こっちはダンテだ。」
「..............」
「キリトに.......ダンテ?」
二つの名を口にし、何故か項垂れる栗色の少年、基ユージオにキリトは益々困惑の色が濃くなっていく。
「どうかしたか?」
「え?い、いや何でもなんだ。おかしいな..........はじめて聞く名前なのにどこか懐かしく感じちゃって........あ、そうだ。僕はユージオ、よろしく。キリト君、ダンテ君。」
「キリトでいいよ。ついでにこっちも呼び捨てで構わないさ。」
「おい。」
面白可笑しいやり取りに緊張感が抜けてしまったのか、クスクスと笑みを堪えながら表情が見えてくる。
自身の戸惑いを振り払い、愛想よく握手を求めてきたユージオにキリトは応えた。
「それにしても二人はどうして此処に?ここの森は鬱蒼としているだけで他は特にないけど........」
「あ........えっと、俺達はその..........道に迷っちゃって........」
「道に迷った?そうなんだ。」
「そう、あっちから。」
「あっちって南?という事はザッカリアの街から来たのかい?」
「いやそうじゃないんだ。それが.........俺達、何処から来たのかよくわからないんだ。」
「ええっ?わからないって.....それじゃあ今まで住んでいた所も?」
「あ、ああ覚えていない。気付いていたら森の中で倒れていたんだ。」
「驚いたなぁ。話には聞いていたけどまさか『ベクタの迷子』に会うのは初めてだ。」
「べ、ベクタ..........?」
「あれ?ベクタの迷子だよ。君の故郷じゃこう言わない?ある日_____」
有難い説明から先は原作通りに事が進み、ルーリッドの街に案内するまでユージオの仕事を待つことにした。
「代わりにこれしかないんだけど.........よかったら食べてよ。少なくとも天命が減ることは避けなきゃね。」
今はユージオから渡された簡素なパンを頂戴し、腰を下ろしている。
千切らずにそのまま齧り付くが中々に頑丈な上、漸く噛み千切り、咀嚼するも味っ気がないどころか目隠しをされればこれがパンだと気付かない程美味しくない。
成程、原作でしか知り得なかったこのパンだがよもやこれほどの硬さだったとはと内心では味よりも食感そのものに好奇心に駆られている自分がいる。
目の前に渡された食料に悪戦苦闘している俺達を見てユージオはうっすらと苦笑いを浮かべた。
「ごめんね。天命が長持ちすることしか取り柄のないパンだから。それに僕の仕事の時間の所為で前の日の余りしか残っていないんだ。」
「弁当は用意したりしないのか?」
キリトの発言にユージオは表情を曇らせていった。
「前は作ってくれた友達が居たんだ。だけど.........もう居ないんだ。」
「居ない?」
少しだけ悩んだ後、ユージオは疑問を持ったキリトに答えるべく固くなってしまった唇を開いた。
「アリスって友達なんだけど............禁忌目録を犯してしまったんだ。食べ物を長道にするために洞窟から氷を少しだけ採りに行こうって話になってその先でアリスがダークテリトリーに入ってしまったんだ。」
「アリス.........?」
「たった........ほんの少しだけダークテリトリーの地に指が触れちゃっただけなんだ。なのに翌日に整合騎士がやってきて、飛竜に鎖で縛られて王都連れて行かれちゃったんだよ。」
言葉が吐き出されるたびにその手が握り拳になり、少しづつ力が込められていく。
「まだ幼い女の子をだよ?それも父親の手で縛られて.........僕は........僕は助けようしたけど手も足も動かなかった........何も出来なかった。」
「ユージオ.........」
「でも僕は今でも信じてるんだ。アリスはきっと生きてるって。」
理不尽な出来事なのか自分の無力に怒りを覚えているのかその顔はとても険しかったがこちらの身を案じたつもりか再び笑顔に戻った。
「ご、ごめんごめん。こんな話しちゃって...........なんだか二人には初めて会った気がしなくて。」
「あ、あぁいや構わないよ。でもそんなに気になるんだったら探してみたらいいんじゃないか?その王都に。」
「........村から王都まで早馬を使っても一週間は掛かるんだ。」
「だったら旅の準備をしていけば?」
「僕だってそうしたいけど......でも.....」
「禁忌目録ってやつか?」
「あ.......」
「うん。天職を放り出すなんて出来ないから行こうにも時間がないんだ。」
「そうか.............アリスさんが連れていかれたのはいつなんだ?」
「僕が11の時だから、6年前かな?」
苦笑いをするユージオは硬いパンを漸く食べ終え、重くなった腰を上げ、唸り声をこぼしながら背筋を伸ばした。
「さて、そろそろ再開しようかな。二人には申し訳ないけど午後の仕事が終わるまで待ってて。」
その言葉に甘えてこちらは優雅に昼寝でもして待つことにしようとしたが、キリトが手伝うと言い出して無理矢理起こされた。もしや足で小突いて起こしたのを根に持っているのだろうか?
暫くして、竜骨の斧をギガスシダーに食い込ませているとユージオは地面に突き刺しているリベリオンに好奇心の目を向けている。
「そいつがどうかしたか?」
「あ、うん。なんだか珍しい形をした剣だなぁって思って。」
ほのぼのとした森の中に髑髏の剣、確かに今この平穏な状況からしたら誰がどう見ても異質であると思うだろう。
そのデザインも相まってどうフォローすべきかキリトは唸り声と共に肯定も否定も出来ないままでいる。
「そうだな。少なくともそこら辺のなまくらよりかは良いモノなんじゃないか?」
「へぇ、確かにルーリッドの村を守っている衛士が使うやつとは比べ物にならなそうだね。その剣の名前は?」
「..........リベリオンだ。」
「りべ.......りおん?うーん、神聖語かぁ。何だか珍しい名前だね。ひょっとして神器みたいにすごいものだったりするのかな?」
「神器?なんだそれ?」
「神様の力を借りて形にしたのか、あるいは神様自らの手で創られた物......そういうのを神器って言うんだよ。」
「なるほどな。」
「実は僕にも神器.......かどうかは良く分からないけど剣なら心当たりがあるんだ。」
「ほ、本当か!?」
剣という単語にいち早く反応し、目を輝かせたキリトは目を輝かせながらユージオに迫った。
やはりあいも変わらずそういう類には馬鹿がつくほど熱心であることに最早感嘆してしまいそうである。
「う、うん。今度見せるね。」
そんなやり取りをしていると既に夕方になってしまったのか太陽はオレンジ色に染まり山の中に隠れようとしている。
村に向かう途中、手伝うと言った張本人は両手を赤く腫らしてながら涙目でとぼとぼと歩き、ユージオはそれを宥めるように微笑みかけている。
「最初はそんなもんだよ。むしろ筋が良いくらいさ。」
「ぐぬぬ......まさかここまでとは........悪いなユージオ、本当ならもっと早く終わっていた筈なのに。」
「気にしてないよそれに今日は二人のお陰で大分楽に終わったんだ。ありがとう。」
「おいユージオ、そいつら誰だ?」
そんな仲睦まじいやり取りをしていると村の入り口からユージオと同じくらいの青年が姿を見せてきた。
「あ、ジンク........彼はキリト、そしてこっちにいるのがダンテ。どうやらベクタの迷子みたいで...........」
先程まで朗らかな表情を浮かべていたユージオの顔に影が濃くなっていく。
するとジンクと呼ばれた少年はゆっくりとこちらに歩み寄り、こちらを観察するようにこちらを覗いてきた。
「お前等、本当に記憶がないのか?」
「あ、あぁ..........」
「天職もか?」
「そう、みたいだな。」
「ふーん、そっちは.........ってなんだその背中にある剣は!?」
今度はこちらを品定めするかのように視線を向けると両目を見開いてたじろぐ。
確実に目立つであろうとは思っていた。ユージオはさほど驚くことはなかったがこれが本来の反応と言えるだろう。このまま村の住人達も同じ目で見られてしまうのが容易に想像出来る。
後で何か袋の類で隠すことにしておこう。
「ひょっとして剣士か?」
「さて、どうだったかな。」
「ま、まぁどうせ大した天職じゃ無かったんだろ。そこのユージオと同じで。」
簡素な質問を終えると半ば興味をなくしたように今度はユージオに矛先を変え、嘲笑い始めた。
「何の意味もない無駄な仕事をしてたんだろうぜぇ?それに比べて俺は____」
「剣士。」
「え?」
「あ?」
ジンクの言葉を遮るようにキリトは口を開いた。
「俺の......いや、俺達の天職は........剣士かな?」
「剣士だぁ?そんな細い体で剣が扱えるのかよ。そっちのだって背中にあるのは随分とご立派だけど腕の方はどうだか..........」
面白そうに笑いながらジンクは手に持っていた剣をキリトに差し出した。
「なら見せてみろよ。」
場所は近くの建物に移り、目の前には地中に埋められた丸太が垂直に立っている。あれを使って証明しろとジンクに指示され、キリトは丸太に剣が届く距離まで歩み始めた。
「や、やっぱりキリトを止めた方がいいんじゃないかな。いくら何でも無茶だよ」
小声でそう話しかけてくるユージオだが恐らくキリトが見栄を張ってしまったのだと勘違いしているのだろう。
この先の答えを知っている身としては不安や焦燥は微塵もない。
「まぁおとなしくしてろよ。案外面白いもんが見れるかもしれないぞ?」
「そんな..........」
思いもしない返答が返って来たのかますます困惑するユージオ、何故そんなに冷静でいられるのか不思議で仕方がないジンク。
そんなギャラリーに見られながらも黒の剣士は非常に落ち着いていた。
渡された剣を握り締め、ゆっくりと構えを取った。
長年培われたそれに剣が応じるように青白く光を帯び始め、やや斜め右上から薙ぎ払うと丸太はゆっくりと綺麗な断面を見せたのだ。
「す、凄いよキリト!!あんな技が使えるなんて!!もしかして記憶を失う前は街の衛兵だったんじゃないかな!?」
「そ、そうかもな。」
「ま、まだだ!!今度はお前の番だ!!」
思わぬ結果となったジンクはこちらを睨むように指示してきた。
「俺もか?」
「あ、当たり前だ!そっちの奴が出来たからってお前も出来るなんて証明にならないだろ!!」
道理としては合っているが、どこか子供染みたジンクの言い分に視線が合ったキリトは肩を竦め、失笑していた。向こうも同じように呆れているのだろう。
もう答えなんて分かっていると言わんばかりにキリトから剣が投げ渡される。
そして隣にあるもう一つの隣にある丸太の前まで移動し、片手で剣の素振りをしながら少しばかり力を込めた。
するとキリトの時とは違い、今度は赤白いエフェクトが僅かに見えた。やはりこちらも同じくダンテのスキルが使えるようだ。これなら問題ないだろう。
丸太を破壊する前に一つだけジンクに聞きたいことがあった。
「なぁ、もしこれが壊れても禁忌目録ってやつには触れたりしないだろうな?」
「は?壊すって.........何をだ?」
どうにもこちらの意図が伝わっていないのかジンクは首を傾げた。
「こいつの話だ。」
手にした剣を軽くノックしてもう一度伝えた。この剣を壊しても問題は無いのかと。
その発言にユージオは再び驚愕してしまったらしい。開いた口が塞がっていない。
しかし、その滑稽な問いかけに思わず吹き出してしまったのだ。
ありえないことだと腹を抑えながら抑えきれていない笑いを耐えている。
「いいぜ!壊れても文句はねぇよ!出来たらの話だがな!」
しっかりと言質を取れたことに安堵し、目の前にある丸太から離れるように歩み始める。
「おいおい、何処に目をつけてんだよ。丸太ならそこに_____」
次の瞬間に振り向き、地面に力を込めて蹴った。
そのまま蹴りだした勢いのまま丸太に向けて突き技を一撃放つ。
ダンテのスキルにおいて基礎であり、代表格ともいえる技、スティンガー。
犠牲となった丸太は貫通されるどころかえぐれる形で上半分は吹き飛ばされていた。
「こんなもんか。」
「ダンテも凄いね!!あんな離れた所から剣を突き立てることが出来るなんて!!ダンテも名のある剣士だったりしたのかな!」
「さぁな?」
一喜一憂する友人を他所に先程のスティンガーを放った際の感触思い返していた。
システムのアシストが無いのか今までとは少しばかり違った感覚だ。だが戦っていけばその内慣れていくだろう。
そして肝心のジンクの剣だが、予想通りの結果となってしまった。
「悪いな。壊れちまった。」
剣は半分に折れ、残っている部分も損傷が激しい。
持ち主は剣技の結果か、或いは惨たらしい姿となった剣によるものかはわからないが出会った頃の余裕は微塵も感じられない。
取り敢えずは持ち主に返しておこうと投げ渡した。
無気力に受け取った彼からは文句どころか言葉が出てこない様子、どうやら放心状態になってしまったようだ。
これ以上は時間の無駄になりそうだと感じ、さっさとその場から離れるようにユージオに教会に案内してもらうことにした。
無事に教会まで辿り着き、シスターアザリアとその見習いセルカに出会い、ユージオから事情を話してもらった後、部屋に案内されると同時に何度も口酸っぱく教会のルールを説明をされて寝具を渡される。
漸くベットに横になれた。これで心置きなく安眠することが出来る。
トロフィーを獲得しました!
《このパン硬すぎるだろ》
詳細 ギガスシダーの下でユージオに会う。
次回【ゴブリンパーティー】