第7話!!どうぞ!!
和人君と飛鳥さんの行方が分からなくなる数日前の事だった。
始めは和人君の妹の直葉ちゃんと母親のおば様の三人で和人君のお見舞いと医師による診断を聞いていた。
心肺停止、意識不明、最悪の場合は一生覚醒することはないと真剣な眼差しで説明され、その絶望的な危機に陥っている事に対し、恐怖、不安、焦燥に駆られていた。
もっと医療器材が揃った場所にて適切な処置を施した方がいいと薦められ、両者の母親がこれに承諾し、手続きを済ませた。
そこから不可解な事が起きたのだ。移送された先でお見舞いしようにも面会謝絶、あまりにも不審に思って娘のユイに調べてもらった。
和人君に埋め込まれた心拍数受信アプリからのGPSを元に行先を調べると移送先の病院とは全く無関係の港へと辿り着く。
この事実を知った瞬間、二人を襲ったのはもうただの逆恨みでも無差別テロでもない。明確な意思によって襲い掛かったのだと察することが出来たのだ。
今は草薙家の前に立っていた。
インターホンを鳴らすと少しの静寂と共に扉が開くと其処には少しばかりウェーブが掛かったロングヘアーの女性が現れる。
薙飛鳥の母親、由美さんだ。
退院後に身寄りがなかった木綿季を引き取ると自ら志願してくれたと本人から聞いている。
それからというもの学校や私生活に関わる事の全てを面倒を見てくれているらしく、時折ALOでも仲良く二人でショッピングに行ったと自慢される時もあった。
偶に着せ替え人形代わりにされて弄ばれることあったらしくその時は少し複雑そうな表情を浮かべていた。
当時はちゃんと新しい環境に馴染めているのか心配だったのだがその様子もなく、それどころか何も知らない人から見れば実の親子のようにも見えてしまうだろう。
「こんにちは、明日奈ちゃん」
「こんにちは、由美さん」
「今日も来てくれたの?言ってくれれば迎えを寄こしたのに」
「いえ、お気になさらず.......その......木綿季は?」
貴婦人という言葉がよく似合いそうな風貌をした女性は普段は明るく妖艶な笑みを浮かべているのだが今回に関しては少しばかり険しい表情のまま視線を落としている。
「取り敢えずは上がって」
軽くお辞儀をしてから屋敷の中に入っていく。
木製で創られた内装、特にこれといって特徴はない。古風な趣が感じられるけれども古びた空気は一切感じられない。凛としたこの建物の佇まいについつい背筋に力が入ってしまう。
「おや、誰かと思ったら結城君か」
視覚外から声を掛けられふとそちらに向けると髪型はオールバックに纏められた男性が立っていた。
「信一郎さん、お邪魔してます」
軽く会釈するともこうも同じく返してくれた。
一見、厳格そうな風貌をしているが実際に話してみると物腰が柔らかく偶にジョークを挟んでくるというギャップがあり、夫婦揃って一癖も二癖もあるといった感じでその息子を見て来たものとしてはどこか納得してしまうというのがなんとも複雑な心境である。
「君が来たという事は.........」
「はい.......」
一呼吸おいてそうかと小声で呟きながらこちらにゆっくりと歩み寄ってきた。
「すまない、本来なら私達で解決すべき事なのだが.........あの子を頼む。」
そう言って眼鏡を外し、深々と頭を下げてきたのだ。これには正直どう対応していいのか分からなかった。
自分を客観的にみたらきっと目も当てられない程挙動不審になっていることだろう。
「い、いえいえ!そんな事ないですよ!頭を上げてください!!」
再びゆっくりとした動作で下げた頭を戻し、眼鏡を元の場所に掛け直す。その何気ない振る舞いはまるで映画にでも出てくるような英国紳士のそれに感じてしまう、以前は劇団にでも所属していたのだろうか?
屋敷に入ってからまだ数分も経っていないというのに色々と心臓が耐えられない。木綿季に関しては天然もとい純粋な心の持ち主なのだからきっと気付いてはいない。
そしてそこに飛鳥さんの悪戯も加えればと思うと...........もし自分が彼女の立場であればきっと耐えられない。
「そういえばあなた、これから出掛けるんじゃなかったかしら?」
由美の一声で意識を戻した信一郎は腕時計に目を向けた。
「おっと、もうこんな時間か........すまない結城君、私はこれから用事があって出掛けるがゆっくりしていってくれ。」
やや早歩きで玄関に向かう草薙家の主に一礼をし、今は木綿季がいる部屋へと向かうことにしよう。
由美さんに案内され、とある扉の前に立ち止まった。
扉の中央には掛札に何とも愛らしいフォントで木綿季と書かれている。
自身のイメージカラーと思われる明るい紫色で書かれているところを見るに恐らく本人の自作のものだろう。
「それじゃあ飲み物とお菓子を持ってくるから先に入っててね」
「ありがとうございます」
そう言ってリビングの方へとブロンドヘアーの貴婦人は姿を消し、再び目の前の扉へと視線を戻す。
親友に会う。ただそれだけなのに初めてお見合いをした時とは比べられない程の緊張感が全身を襲ってくる。
だがこのまま棒立ちしている訳にもいかない、深呼吸を済ませ、三度ノックをした。
「木綿季?明日奈だけど遊びに来たよ」
声を掛けるも返事が返ってくることはなかった。
そもそもこうやって部屋にノックするという時点で異常なのだ。
普通に考えれば何もおかしくはない流れなのだが、普段の彼女であれば遊びに来ると知った時点で玄関で待ち伏せ、影を捉えた瞬間に飛び掛かってくるのが恒例なのである。
「入るよ?」
これ以上待っても何も反応は起きないと判断し、恐る恐るドアを開けて入り込む。
目の前に広がってきた第一印象は綺麗な部屋だ。
本来人が住んでいて、生活していれば必ず何かしらの痕跡が残るというものだ。
しかし、この部屋は何だ?何も触れてない、何も動かしていない。まるで時間が止まったのかと誤認してしまいそうになるくらいに新品同然のそれだ。
あまりの異質な空間に気圧されてしまいそうになるが肝心の木綿季に会うという目的が脳裏に浮かび上がったお陰で意識を戻し、周囲を見渡すとベットに敷かれた布団が盛り上がっていた。
「木綿季?」
ベットの中に隠れているであろう人物の名前を口にするがまたしても返事が返ってこない。もしかして眠っているのだろうか?
ゆっくりと布団を掴みゆっくりと覗き込むと可愛らしい小顔が瞼を閉じ、小さな寝息を立てている。
どうやら少しばかりタイミングが悪かったらしい。由美さんからの話だと必要最低限の食事は取っているようだが、夜な夜な声を押し殺して泣いていると聞いていた。
その証というべきか目元は暗闇でも確認できるほどクマが浮かび上がっている。
こうして眠っているのも過度な睡眠不足によるものなのだろう。かつての健康的な面影は一切感じられない。
そっと優しく頭を撫でてみると僅かに表情が和らいだようにも見えた気がした。
「ん.........?」
気怠そうな声が零れるのが聞こえてくる。少しばかり触れすぎてしまっただろうか?
布の擦れる音と共にゆっくりと瞼が開かれる。
「あす.......な.......?」
たった今目が覚めたばかりというのもあるのだがか細い声から生気が感じられないのがより一層強く感じてしまう。
「ごめんね、起こしちゃったかな?」
「ううん」
こちらの謝罪に小さく首を振って応えてくれた。するとゆっくりと上体を起こし始めたのだ。
「だ、大丈夫?もう少しゆっくりしてても良いんだよ?」
一つ一つの動作がなんとも心許なく感じてしまい、両手で支えようとするも自分よりも小さな手によって遮られてしまった。
純粋に筋力としてなら女性である身としては人の平均値よりも非力な類に入るのだが、そんな自分でさえも簡単にへし折ってしまいそうな腕が袖の隙間から見える。
その事に思わず声が出てしまいそうになりそうだが、どうにか心の中で抑え込むことが出来た。
ついこの間、ほんの数日前までは学校の体育で誰よりも走り回っていた者とはとても想像できない程衰弱しきっている。
「大丈....夫......ちょっと夜更かししちゃっただけだから.......」
心配させまいと笑顔を作っているがその表情を見れば誰もが無理をしていると確信するだろう。
「やっぱり来ると思ってたけど、明日奈も心配性だなぁ........」
「私.....も?」
その言葉に疑問を浮かべるとそれに答えるようにどこかに人差し指を向けた。
その先を目で追うと窓際には花束やぬいぐるみ、果物や菓子の類、中には千羽鶴が飾られていた。
見舞いの品であろうそれらを目にし、今度は別の意味で驚愕してしまった。何しろ千羽鶴に関しては千で済むのか?と思わざる負えない程の膨大な数がタコ糸で吊るされているのだ。
「シノンとシリカ、リーファやリズが可愛いぬいぐるみとか綺麗な花を持ってきてくれて、エギルとクラインが美味しそうなフルーツとかお菓子を..........千羽鶴なんかスリーピング・ナイツの皆が作ってくれたらしいんだ。」
まるで他人事のように喋る木綿季は苦笑いを浮かべながら説明するも大袈裟過ぎるよと小言が零れた。
だが皆がここまで大袈裟と言っても過言ではない答えが分かっていた。
この日対面してからずっと気になっていたがやり取りしていくうちに更に分かったことがある。
今、彼女の瞳には何も映っていない。まるでガラス玉のような透明度を保っている。
まるでガラス球のように美しくなった瞳をこちらに向けながらも笑顔を向け続けてくる。
不気味な雰囲気を醸し出しながらもどこか神秘的に感じてしまう
彼女を抱きしめてしまう。
「明日奈?」
ここに来るまで話すべきかどうか悩んでいたが、やはり彼女にもこの事を伝えなければならない。
そう決心し、何度目か分からない深呼吸を行って固く閉ざされた口を開いた。
「あのね木綿季、ユイちゃんに調べてもらって分かったことがあるの。実はね_______」
アンダーワールド 央都セントリア修剣学院内
「.........どうしよう、まだ来ない」
私、ソフィア・アスティーユは今、とある一室にて立ち往生していた。
六等爵家として生まれ、幼き頃に祖父母に読み聞かせてもらった騎士物語に影響された私は剣の道を憧れ、この学園の門をくぐっている。
初めは両親の反対に半ば心折れそうになったものの、最後は根負けしてくれたのか入学の許しが貰えたのだ。
元々体力が多いというわけでも学力が良いという訳でもなく、まさしく平凡、何処にでもいるような少女なのだという事をこの王都に住み始めてから身をもって教えられた。
入学して間もないある日のこと、両手に自作の弁当と町で購入した苺のタルトを抱え、とある場所に向かって小走りで移動していた。
「あ!来た来た、ソフィア!こっちこっち!!」
向かった先は学園内にある学生の憩いの場でもある緑生い茂る中庭の中央で赤髪の少女がこちらを呼びかける声が聞こえてきた。
「ごめんごめん、待たせちゃった?」
「ううん、私達も今来たところ。」
隣に座っている黒髪の少女がそう答えてくれて少しばかり焦りが和らいだ。
入学当初に知り合った友達、ロニエとティーゼだ。
最初はままならなかった事がたくさんあったのだが人付き合いが苦手な私にとって貴重な友人の手助けもあって今では楽しい時間を過ごすことが増えてきた。
「ねぇねぇ、この前教員が話してた傍付きの件覚えてる?」
昼の公園、快晴でありながら心地良いそよ風が肌を撫でている。そんな陽気になりそうな場所にて三人集まり、互いに貴重なお小遣いで買った甘味を分け合って楽しんでいたのだが、ティーゼの口から思いもしなかった話題の切り口が生まれた。
「傍付きって........上級修剣士の方々の身の回りをお世話するって事だったよね?」
「そう!でね他の皆は誰の傍付きが良いのか話し合っていたんだけど......どうなのかな?」
「う、うーん.......どうなんだろ」
「ねぇ、ソフィアはどう思う?」
「へ?」
思いもよらぬ不意打ちで危うくお気に入りでもある苺のタルトを地面に落としそうになった。
「ど、どうって言われても相手がどういう人か分からないと何とも.......」
「まぁ、確かにそうよね」
当たり障りのない返答で誤魔化すことが出来、漸く楽しみに取っていたタルトを失わずに安堵しつつ噛り付いているとロニエが何かを思い出したのだろうか甘味を口に運ぶ手が止まった。
「そういえば他の同期に聞いたんだけど珍しい三人組がいるって話を聞いたことがある」
「え!なになに!?」
「えっとね、まず私達が知る剣術があるでしょ?主にノルキア流、ハイノルキア流が一般的だけどそのどれにも当てはまらない流派らしいの」
「という事は........遠方から来た人達って事?」
「うーん、一人はそうらしいんだけどね?残りの二人は何でもベクタの迷子って話みたいなの」
ベクタの迷子、古くから伝えられている神々の一人であるベクタが悪戯に違う所から人を攫い、記憶を奪ったまま何処かも分からない場所へと置いていかれた者達、よく話では聞いていたがまさか学園の生徒として過ごしているのは初耳だ。
なんとも胡散臭い話だが、隣で聞いているティーゼは謎めいた事にすっかりご執心なのか宝石のように目を輝かせている。
「うん、でね?その内の片方の人がとてつもないくらいにすごいらしいの」
「というと?」
「実際に見た友達が言うには........その......」
先程までの饒舌はどこにいったのか途端に歯切れが悪くなったのだ。
何事かとティーゼと顔を合わせるも皆目見当もつかない、余程強いのであれば強いとそう伝えればいいものを当の本人は腕組をしながら唸り声を捻り出したまま沈黙を貫き通していた。
「な、なによ!焦らさないで教えてよ!」
いよいよ我慢の限界が達したのかティーゼが静寂を破るように声を荒げてしまう。確かにここまで勿体ぶっているのはくすぐったい。
すると、固く閉ざされた口が漸く開かれた。
「...........た」
「た?」
「た..........楽しそうだったって.........」
「..........は?」
今、私の友人、ロニエ殿はなんと発言した?
楽しそうだった?
気が触れたのだろうか?
私の頭脳では到底理解出来ない言葉を耳にしてどう返答すればいいのか分からなくなってしまった。隣に居るティーゼも口を広げたまま呆然としている。
良かった、この状況をおかしいと思える自分はまとものようだ。
「え?た、たの.......しそう........だった?」
再度事実を確認するために恐る恐る聞き直すティーゼに対し、ロニエは何とも言い表せない気まずさがその表情から窺える。
「そんな顔しないでよ!詳しく聞いた私だって訳が分からなくなったんだから!」
「だって楽しかったって.........ますます分からないわよそんなの」
「そうだけど........でもね?凄いってのは確からしいの、何でも試合では誰一人攻撃を当てることが出来なかったんだって」
「え、えぇ...........?」
「それどころか相手になった剣士達は剣を叩き折られたり、衣服がズダボロになるまで地面に転がされたり、最後はあまりの悲惨な結末に泣いてしまう人だっていたらしいの」
次に入ってきた情報は剣士としてはそれらしい内容だったが、先程の話と重なってしまってますます困惑してしまいそうになる。だが冷静に考えれば楽しめる程の余裕がありながら相手に勝つことが出来る.........それが出来るのあればそれは純粋に実力が伴った結果なのだろう。
なんというか最初に抱いた印象が少し変わった気がする。
「あ、ついでに言えば相手にしてきた皆を笑ってその背中を見送っていたらしいよ?旗から見ていた人達は揃って呟いていたらしいの、まるで悪魔みたいだって............」
前言撤回、やっぱりヤバい人らしい。
「なんだか色々凄そうだけど、その人の名前は?」
「えーと、確か.........ダンテって人らしいよ」
ダンテ.........うん、覚えた。今後その人がこの学園にいる間は極力会わないようにしよう。でなきゃ碌な目に遭わないことは明白。
絶対に会わないようにしよう。そうしよう。
そう思っていた時が、私にもありました。
「噓でしょ.............?」
量の自室にて何度も見直した辞令書を両手に握りしめながら腰を沈めた。
これがソフィア・アスティーユの災難の始まりでした。
そして時が進み、今は清掃任務を終え、部屋の主であるダンテ先輩の許可を貰い、帰るだけなのだが...........
「.........まだ帰ってこない」
作業を終えてから大分時間が経過したにも関わらず部屋の主は一向に姿を現す気配がない。
ロニエが傍付きとして一緒にいるキリト先輩もよく部屋を抜け出して遅く帰ってくる事が度々あるらしい。
そうこうしていると部屋の扉が金具の音と共にゆっくりと開いた。
「ダンテ上級修剣士殿!報告します!本日の清掃、滞りなく完了しました!」
振り向くとそこには制服の上着をだらしく広げながら立っていた。
「ご苦労さん」
簡素な返事を済ませ、ベットへと足を進める。傍付きが始まってからこのやり取りだ。
「今日も何処に行かれてたのですか?」
「別に........ちょっと
そう言いながらゆったりと瞼を閉じ、それ以上は何も答えることはなかった。
半ばタイトル詐欺に近い内容になった気がしますがアリシゼーション編を構成していた際に一番悩んでいた部分ですけども..........
あの.........なんというかその.......何となく予想している方もいると思いますが.......ダンテの........4人目です........はい。
あぁ.......またSコンビが荒れてしまいそうだ........
因みにキリト達はアインクラッド流剣術と名乗っていましたがダンテの場合なんて名前の流派しよう未だに悩んでる最中です........良かったらアンケートのご協力お願いします!!
ご通読ありがとうございました!!
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