DMC×SAO 俺の転生物語   作:ユーグクーロ

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前回復帰したと歓喜したのも束の間、今までのストーリーを復習するのに苦労して結局こんなに投稿期間が空いてしまった………申し訳ない。


10 ソフィアの過去

ある日の事だった。ソフィアにストロベリーサンデーを御馳走してからはや数日、今日も今日とて純粋無垢な教え子は剣を振るっている…………筈だった。

 

「はぁ………はぁ…………」

 

基礎練でもある素振りを行い、こちらはそれを傍から眺めているのが日常だったのだが、どういう訳か普段の覇気を感じられない。

それどころか切っ先がブレているというよりもただただ上げ下げしているようにも見える。少なくとも木こりの真似をしている子供の方がマシに思えるくらいに弱弱しい。

ソフィアは決して怠けるような性格はしていない、それどころか次は次はと余りある意欲をこちらにぶつけてくるくらいには熱心な後輩だ。

ふと気になってしまったお陰で安心して睡魔に身を委ねることが出来なくなった俺は目の前で辛うじて剣を振り下ろす少女を注視する。

 

まだ修練が始まって小一時間も経過していないにも関わらず息切れをしており、目の焦点も朧気だ。加えて普段から色白な顔が輪を掛けて蒼白さを際立たせている。

 

「おい」

 

「はぁ………はぁ………………」

 

「おいっ」

 

「はぁ…………え?あ、はい………なんでしょうか?」

 

普段は即座に反応する筈なのだが、まるで鉛でも付けられているかのような動きでこちらに反応した。

まるでゾンビのような動き方をする後輩に何故体調不良を申告しないのか呆れてしまったのだがこいつの性格だと大丈夫ですと一点張りで拒否することは即座に想像出来た。

 

「………今日はもう辞めておけ」

 

「え?まだ………まだはじまったばかり………ですけど?」

 

現在進行形で死に体の状態の後輩は首を傾げる。

自身の体調には自覚が無いというのに何故そこには疑問を生み出せるというのか、こちらまで別の意味で頭痛が起きそうになりそうだ。

 

再度警告しようと後輩に視点を合わせた瞬間、顔面が生気を失ったかのように真っ白に染まり、体を支える力すら潰えたのだろう、全体が崩れるように倒れ込んだのだ。

幸いにも地面に激突する前に抱え込むことに成功したが当の本人は気怠そうな瞼を持ち上げようとすることだけで必死の様子だ。

 

「ぁぅ………」

 

情けない声を漏らしながらもどうにか立ち上がろうとするか細い四肢は震えるばかりで自力で抜け出せる力も無くなっている。

タイミングが悪いというべきか良いというべきか、ここにきて意地を張ったツケが回って来たのだろう。

自分で部屋に戻ることは叶わない状況にまで放置していた後輩に呆れるも仕方ないと切り捨て、そのまま抱き上げて練習場を後にする。

 

「せ……んぱい……くんれん……は?」

 

この期に及んでまだ自分の状況を把握できていないのか修練の事ばかり口にする後輩に溜息が出てしまいそうだ。このまま説教をしても抱きかかえている阿呆には馬の耳に念仏というもの、何も言い返すことなく寮へと運び込んでいくことにした。

行先の途中、これから修練を行うであろう女子集団とすれ違う形となった。

その視線は十人十色、ぐったりとしているソフィアの安否を気に掛けている者もいればこの状況に押し殺しているつもりであろう思春期真っ只中の喚き声を無視し、歩み続ける。

 

明日にはこの意地汚い後輩がどんな衆目に晒されるかは容易に想像出来る。ついでにこんな状況に付き合わされたこちらの分も踏まえて盛大に揶揄ってやろうか、きっと慌てふためくことに違い無い。

 

その後は何事もなく寮へと辿り着き、驚きを隠せずにいた寮母へ事情をしたのちソフィアが寝泊まりしている部屋に入って後はいつの間にか眠りについている後輩をベットに置いてあとは立ち去るだけになったのだが、どういう訳かソフィアから体が離れなくなった。

 

その理由はすぐに明らかになった。意識を失っているであろう後輩の手が俺の襟元を強く握り締めているからだ。

十代半ばの少女ではあるがその実、剣士としてそれなりに訓練を受けている分、一般的な成人男性よりかは筋力がある。花の世代に向かって称賛すべきことではないがよくもまぁこれほどになるまで鍛練してきたものだとつい感嘆してしまった。

ともかくこのままでは離れることも出来ないし、もし相部屋になっているであろう同期が戻ってきてしまったら絶叫案件になるのは確かだろう。

揺らされても起きる気配がない程衰弱しているのだ、多少強引ではあるが引き寄せられているであろうこの小さな手を振り解こうと手を触れる瞬間、目の前で横たわっているソフィアから唸り声が零れてきた。

 

「いや………やだ………」

 

消え入りそうな声量で意識がないにも関わらず病に伏す後輩は震え始めたのだ。一瞬悪寒によるものだと思ったのだが、尋常じゃない程の震え方を見るにどうやら原因はそれだけではないらしい

 

「……いて……ないで…………たし………ばりますから…………」

 

途切れ途切れで内容は把握しきれないが何かに怯えている様子だ。この光景には見覚えがある。木綿季の治験による病との闘いに酷似していた。

あの時は原作とは隔離してしまった出来事に何かしらの予測できない事故が起こるやもしれないと終始近くで待機していたのだが当時の苦しそうな表情は今でも思い出せる。

そんな木綿季の姿と今のソフィアが重なった。

 

こでこの弱弱しく掴んでくるこの手を強引に振り払うこと自体は容易に出来るだろう。だが、出来なかった。

取り敢えずは襟が大変な事になる前に剥ぎ取り、その手を掴んだままベットへと腰を下ろす。

 

「…………何やってんだか」

 

かつての時と同じ光景を再現することとなってしまい、完全に身動きが取れなくなった俺はそう呟いてしまった。それが度が付くほど真面目過ぎる後輩に向けてか完全に場に流されてしまった自分に対してか分からなくなったが、先程まで苦しそうな表情を浮かべていた病人は少しばかり和らいだようにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は皆とは違っていた。

 

アスティーユ家から生を受けて十数年、特にこれといって不自由な生活は無かった。

両親は今でも互いに愛し合い、娘である私にも底なしに愛情を注いでくれた。

人見知りが激しい私は友達にも恵まれた。人数こそ少ないけれど互いに喜怒哀楽を分かち合った者ばかりだ。ロニエとティーゼが最たるその例だ。

 

金銭に関しては地位もあってそこまで裕福ではないにしろ人並み程度には生活することが出来た。祝い事なんて普段の食事がほんの少しだけ豪勢になる程度でそれ以外にはない。

 

極々当たり前の、極々平凡な日々だった。かといってこれ以上の贅沢を望む気にもなかった。流石にそれは欲張りすぎるだろうという気持ちもあったがそれ以前にこの生活が好きだった。何も着飾ることなく、虚言を並べて見栄を張るようなこともせず、正しい事に褒めて褒められ、過ちには咎め咎められ、そんな何もかも人として真っ当に成長する事が出来たのだ。私を生んでくれた父と母にはこの上なく感謝している。

そんな環境に身を置く者なら普通であれば何もかも順風満帆な人生を送ることが出来ると思うだろう。

 

私だってそう思う…………ただ一つを覗いては……………

 

私は才能が無かった。

 

幼い頃からその疑問は浮かび上がった。

 

どんな些細なことでも私が一つ覚えれば皆は既に二つも三つも覚えていた。

初めはまだ要領を得られていないと誤魔化していた。だがそれも時間が経つと共に目を背くことが出来ない事実が私を逃がしてはくれない。

 

周りにいる大人達は大丈夫、まだ慣れていないから等と諭すように言葉を掛けてくれる。しかし、それもまた時間が経つ毎に連れて苦い表情を見せるようになった。

同年代が徐々に成長する光景を横目にただひたすら同じ事の繰り返しては失敗の結果のみだった。両親を始め、根気強く励ましてくれる者達も居ればそうでもない者達も存在する。

 

_______まだそれしかできないの?

 

呆れるように投げ掛けられる言葉が酷く心に刺さった。もし大人であれば自分の力量を弁えて分別することが出来ただろう。だが未だ世の中を知らない無知な少女にとって耐え忍ぶ術も考えもなく、潰れていくのにそう時間は掛からなかった。

次第に様々な物事に無関心になっていき、両親は根気強く何かを勧めても微塵も関心が湧くことが無かった。

そんな中、半ば強制的に習わせられたのが剣術だ。

結局また同じ繰り返しだと悲壮感に苛まれながらも握らされた木剣を我武者羅に振り回してみると不思議と体が呼応した。それ以降は不思議と体が馴染むようになっていき、自分から握りしめるようになる。吸いつくような感覚が自分でも驚くくらいに感じたのだ。

だが得られる結果は他の物事とそう大差はなかった。でも続けられたのだ。どれだけ惨めでも、どれだけ鈍間でも、これ()だけは続けられると何故か自信があったからだ。

そして曲りなりにも貫いた結果、修剣学院にてこの道を極めることになった。その時は正直嬉しかった。少なくとも私にも特技と呼べるものがあるのだと。だが現実は更に私へ試練を与えてきたのだ。

 

座学も実技も秀でた要素は無かったが、それでもない分は努力して補って初等練士として、晴れて上級修剣士の傍付きになった。期待を裏切らないように頑張ろうとしたその矢先、巡り会ったのが奇妙な剣術を使う方だった。

周りの同期達からは奇抜だと揶揄っていたが、私は魅入られるように目を奪われた。まるで踊りをしているかのようでありながら純然たる強さを見せつけられ、子供の頃に置き忘れた学びたいという好奇心に駆られた。

 

勇気を振り絞り懇願するとあっさりを承諾された時は驚きの一色で記憶に新しい。

 

それからというもの、習い始めてから妙に体に当てはまるかのように技を習得出来た。どう表現したらいいのか分からないが空いた穴にすっぽりと収まるかのような、そんな充実感とも呼べるものが感じられたのだ。

嬉しかったのだ。こんな私でも得意な事があるのだと、空っぽではないのだと。

 

 

 

 

 

 

私は暗闇の中に立っていた。

 

木剣をただひたすらに振り下ろしている。灯りと呼べるものがないのに自分の姿がはっきりと見えている。どうして自分が今ここに立って居るのか分からない。それ以前の記憶が思い出せない、思い出そうとも思えない。

ただただひたすらに、馬鹿みたいに剣を振り下ろしては上げ、振り下ろしては上げるの繰り返し。

 

そんな事を続けていると後ろから光らしきものが差し込んできたのか自分の体から影と呼べるものが輪郭を成して浮かび上がる。素振りをしていた腕を止め、その影を生み出した光の方向に視線を向けるとそこには共に同じ土地で暮らしてきた者達が立っていた。

目元は暗闇の所為で良く見えないが皆が漂わせる雰囲気だけは直ぐに感じ取れた。落胆、失望、そんな黒い何かがこちらに向けられている。もう興味を失くしたのか次第に背を向けて立ち去ろうとしていく、私は再び孤独に苛まれる恐怖に負けて後を追いかけようとする。

 

だがどれだけ近付こうとしても追いつく気配はない、それどころか徐々に姿が小さく遠のいていく。

 

『待って!』

 

渇望するように手を伸ばすがそれも虚しく彼らの姿は薄れていく。

 

『お願い!!待ってよ!』

 

何度も呼びかけるもとうとう彼らは何処かへと姿を消してしまった。

拒絶できない絶望感が内側からも外側からも押し寄せ、蹲ってしまう。耐え切れなくなった。唯一残された道()まで否定されたら私には何も無い。生きる術が無い。

悲観に暮れているといつの間にか目の前にダンテ先輩が立っていた。唯々、無機質な表情でこちらをじっと見つめている。

 

『先………輩…………?』

 

目の前に居る銀髪の青年は一言も言葉を掛けることなくその場から立ち去ろうと背を向けた。先程の者達と同様に。

 

『ま、待ってください!!』

 

同じように呼びかけるもその足は止まることは無かった。

怖かった。また見放されると、またあの時のように見捨てられると、何の確証もない予感が押し寄せてくる。そして同じようにその背中が遠のいていく。

どれだけ追いすがっても辿り着けない事だろう。その場に伏して現実から目を逸らすかのように蹲ってしまう。

 

『置いて行かないで…………私、頑張り………ますから………!』

 

泣き崩れそうになり、伸ばしたその手が地面に落ちかけたその瞬間だった。何かがこちらの手を持ち上げたのだ。

何だろうとふと俯いた顔を上げるとそこには先程この場から立ち去ろうとしていたダンテ先輩が手を掴み取ってくれていた。

 

顔を確認してみようと思った瞬間、眩い光が視界を覆いつくし、次に見えてきたのは自分の部屋だった。どうやら自分の寝具に横たわっている状態らしい。

既に日は落ちているのか窓の向こう側は夜空に覆われ、枕元に置かれている明りがうっすらと部屋全体を照らしている程度だ。

 

体が怠い、ぼーっとして何ひとつ考えが纏まらない。そもそもどうして自室で寝ているのだろう。確かダンテ先輩の下で今日も剣の修練に励んでいた筈。

天上を見つめながら寝ぼけた頭で思考を巡らせていると次第に手に違和感を覚えた。何かに握られて…………いや、握っている。

確かめようと視線を落とすとそこには大きな背中をこちらに向けながら私の寝具に腰を下ろしているようだ。次にごつごつとしたその手を握っている。これが違和感の正体だろう。

 

どうにかして声を掛けようにもいきなりこんな状況に出くわしたこちらとしてはなんと言えばいいのか分からなかった。

 

なんて言葉を掛ければいいんだろうと悩んでいると更にその向こう側から人影が見えてきた。

僅かな明りを頼りにその正体を探ると其処には同部屋の同期が立っていた。その表情は面白いものを見ているのか両手をで口元を抑えながらニヤニヤとしている。

 

後日、悶絶する程の地獄を味わう事を寝ぼけている今の私には想像がつかなかった。

 

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