∀ガンダム 月の繭   作:あかはか

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影の創世記  筆:フラン=ドール  (ノックスクロニクル社)

 〈前略〉

 

 

 ここで、アメリカ大陸ヴィシニティ地方に伝わる神話を紹介しようと思う。口伝の部分が少なくないため、後世に改変されたと思われる部分も多いが、この神話を聖典とする民間信仰の起源は約5000年前と思われ、この神話が現在伝わる形にまとまったのも同じ頃だと考えられている。聖書や世界最古の神話と言われるシュメール神話との共通点も見られるが、現在残っている資料の少なさや、その資料の信頼性への疑問から、現在に至るまで学術的に注視する学者は少ない。略述ではあるが、以下はそのヴィシニティの神話の一部だ。

 

 

 訳:ラリー・ブリグマン 

 

 

 神は、空の最も明るくそして暗い火の星からこの大地にやってきました。

 そして神は、乾いた大地の荒涼とした姿に心を痛め、一粒の涙を流しました。そしてその涙が大地に落ちると、たちまち乾いた大地に海ができました。

 次に神は、吹く風が空虚で、虚無で満ちていることを嘆きました。神は自らの心臓を取り出し、海に沈めました。こうして、神は生命の象徴である心臓を失った代わりに、死を克服しました。そして、神の心臓は、海の底に付いたとき、世界で最も美しい光を伴って、弾けました。その破片は、魚になり海の中を泳ぎ、馬となり陸を走りました。そしてその馬は、神と同じ、首、胴、四肢、20本の指を持つ人になりました。

 

 

 〈中略〉

 

 

 神はこの世界の全ての生き物の共通の父であり、創造主なのです。

 人は喜びで風を満たし、神はその美しさに感嘆しました。しかし、時が経つと、人は自らが限りある時を生きる物であると知りました。人は初めて死を経験したのです。とたんに風は冷たくなり、悲しみで溢れました。人は神に教えを乞いました。

「ああ、神よ。人はどうすれば死を克服できるのか。」

神の心臓から生まれた人は、生命を捨てない限り、いずれ死すことになると、神は知っていました。しかし、また神は、生命のみが美しさを持つことを知っていました。

「民よ。死こそ生なのだ。」

神はこう言って、人に不死では無く、知恵を授けました。そして神はその知恵を使い、死を迎えるまで助け合って良く生きるよう、人に促しました。

 

 

 〈中略〉

 

 

 しかし、欲深い人は神の教えに背き、授けられた知恵を使い、どうにかして死を克服できないかと試みました。

 

 

 〈中略〉

 

 

そして長い年月を経て、人は知恵が死の克服をもたらすことを知りました。人は死について何も示さなかった神より、必然的に啓示を与える知恵を神として祭り上げ、ついには、自らの創造主である旧来の神を忘れてしましました。その日、神は死にました。

 それから、以前にもまして風は悲しみや苦しみで満たされていきました。風は白く濁り、人々の視界を淀んだ靄で塞いだのです。その靄や火から立ち上る煙でした。知恵を求めて争うようになった人は、火を燃やして殺し合いを始めました。愚かな人は、神が自らに知恵を与えたことを恨みました。しかし、また同時に人は、自らに絶えず手を差し伸べてくれた神を殺してしまったことを悔やみました。

 人は知恵に訪ねました。

「大いなる知恵よ。人々は煙で今にも息が詰まりそうだ。神はもう私達の前に姿を表すことは無いのか。」

知恵は答えました。

「民よ。神は、銀の髪の、緑の目の、そして大地の色をした肌を持つ救世主を依り代として再び現れるだろう。」

人々の心に一点の光が差し込みました。この光をただ一つの希望として、人はこの世界で長く先の見えない贖罪を続けているのです。

 

 

 〈後略〉

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