人類守護のゴッドショッカー   作:トライアルドーパント

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聖剣をテーマにした『仮面ライダーセイバー』って令和ライダーが出現した事もあり、以前募集したアンケートの中で聖剣が出てくる作品をピックアップし、何時もの検索ボタンガチャ(検索ボタンを押して、一番上に来た作品の原作を元ネタとして書く)をした所『ハイスクールD×D』がヒット。

早速、原作小説を購入して読んでみましたが、読めば読むほど作者は主人公サイドに「人類の自由と平和の為に戦う戦士」が協力するとは到底思えない。

そんな理由でラスボス系主人公によるアンチ要素をモリモリ取り入れた短編作品が完成。まあ、人類の天敵と言える知的生命体が我が物顔で魍魎跋扈するのが是とされる世界に仮面ライダー要素を入れるのがそもそもの間違いなのかも知れませんが。

2021/5/23 誤字報告より誤字を修正しました。報告ありがとうございます。


01

白神山地。青森県南西部一帯から秋田県北西部に及ぶ広大な山地にして、約1万年前の最終氷期が終わって間もなくから形成された世界最大規模のブナの天然林であり、現在に至るまで殆ど人間の手が入っていない場所である。

 

そして、この豊かな自然溢れる山林の地下には、絞られた雑巾の様に捻れた天然石のモニュメントが並ぶ洞窟が人知れず存在し、その奥にはキレイに切り出された巨大な石版で出来た石舞台があった。

石舞台の中央には、子供の背丈ほどの大きさの、何重にも捻れた石塔が鎮座しており、その前に人ならざる姿をした、昆虫と人間のキメラの様な姿をした金色の怪人が、虚空に腰を掛けて座っていた。

 

「………」

 

「ここに居ましたか。やはり、あの方々の遺志を継ぐ貴方には、此処に来ると何か分かるのですか?」

 

そんな金色の怪人の背後より声をかけるのは、かつて聖女として祀り上げられ、魔女の烙印を押され、教会から追放された末に、この島国に辿り着いた異国の少女だった。

今は目の前にいる金色の怪人より『大神官』の名と、空間を繋げる魔法陣を操る能力を与えられ、“彼”以外で唯一この聖地に立ち入る事を許された身分となっている。

 

「……そうだな。歴代の“彼”が辿った道はそれぞれ違うが、誰もが『出会うべき存在』と出会い、そこで『重要な問答』を行い、『大いなる思索』に耽り、最期は『この地』で眠りについた。尤も、私が此処に眠る事は叶わないだろうが……」

 

「何故ですか?」

 

「此処が壊れるからだ。近い将来、この神聖な空間は地の底に沈む。無論、人工的な補強や補修を行えば長持ちはするが、それは禁じられている。何故なら『滅び』とは森羅万象――形あるものの宿命だからだ。だからこそ、私は私の代で全てを終わらせなければならない」

 

金色の怪人が少女に語るように、この地下空間は歴代の“彼”である者達にとって聖地であると同時に墓場だ。だからこそ、今代の“彼”は自然の摂理に従いつつも、歴代の“彼”にまつわる因縁、或いは宿命への決着を決意していた。

 

「どうして最初の“彼”は……いえ、歴代の“彼”たる方々は、人から神になる事を拒んだのでしょうか? 神になれば、より多くの人を救う事も出来たと思うのですが……」

 

「それは単純な理屈だ。全く違う命になってしまうからだ。人を助けるのは人でしかない。『神が人間に向ける愛』は『人間が愛玩動物(ペット)に向ける愛』と何ら変わらない。だからこそ、神が人間に対して与えられる愛は、全ての人間に平等に与えられる」

 

「………」

 

「歴代の“彼”の誰もが神に成れる存在でありながら人で在り続け、此処で人として死んでいった理由はそれだ。『神が人に向ける愛』では、人は真に救われない。『人が人に向ける愛』でなければ、人は真に救われない。

だからこそ、歴代の“彼”は誰もが『人類の自由と平和、そして命を求める人間の意志』と、『異能の存在でありながら人の領分を生きると言う純粋な願い』を持ち、人としてその生を全うしたのだ」

 

「………」

 

「端末は充分な数が手に入った。介入の機会は向こうからやってきた。そして、奴等は私のことを知らない。奴等は何も知らぬまま滅びる。何も知らぬままに自分たちが積み上げてきた愚かしさ故に」

 

「……結論は、変わりませんか?」

 

「変わらない。奴等は人類の天敵だ。必ず抹殺しなければならない。我々に協力する者のみ、例外的、限定的に生存が許されるに過ぎない」

 

「………」

 

「言った筈だ。どれだけ永い年月を生き延びてきたものも、いずれはどんなものも終わりを迎える。だが、そんな簡単な道理を、奴等は他の生命を捻じ曲げてでも受け入れようとしないのは何故だと思う?

奴等が異常者だからだ。つまりは『我々と()なる()識を基に生きる()』たちだからだ。彼等が人間に対して行う全ては、彼等にとって何もおかしい事ではない。家畜が草を食らい、人間が家畜を育て食らう様に、奴等にとってそれは『普通』……当たり前の事なんだ。だからこそ奴等は『人類の敵』なのだ」

 

「……故に、歴代の“彼”等は『戦う』道を選んだ」

 

「そうだ。『神の敵』を用いてな」

 

そう言うと“彼”は魔法陣を展開し、聖地から姿を消した。聖地には少女だけが残った。

 

「………」

 

少女は分かっていた。彼の言う「人類の自由と平和の障害となる者達」には、かつて自分が心から信じた存在が含まれている事を。

そして、自分が『人の領分』に生きようとしたからこそ、自分は名も知らぬ誰かを救う事が出来ていたのだと。

 

そんな生き様を貫いたからこそ、この極東の島国で“彼”と出会い、尊い御方が眠るこの聖地に足を踏み入れる事を“彼”から許されたのだと。

 

 

○○○

 

 

駒王学園で悪魔・天使・堕天使の三勢力のトップが和平協定を結ぶ為の会談の最中に発生した「旧魔王派」と呼ばれる悪魔達による襲撃事件。それ自体は各勢力の首脳陣も予想の範疇にあったモノだったが、逆に言えば事件で予想出来ていたのはそれだけだった。

 

「アザゼル。あなたは『神器(セイクリッド・ギア)』の研究の先に何を求めているのですか?」

 

「『神器(セイクリッド・ギア)』を作りだした神はもういない。少しでも『神器(セイクリッド・ギア)』を解明出来るヤツがいた方が良いだろう? それに……備えていたのさ」

 

「備えていた?」

 

「お前らの攻撃に対してじゃねえ。『禍の団(カオス・ブリゲード)』への備えさ」

 

「カオス、ブリゲード?」

 

「何の組織だ?」

 

「組織名と背景が判明したのはつい最近だが、それ以前からウチの副総統のシェムハザが目をつけていたのさ。目的は破壊と混乱。その為に三大勢力の危険分子を集めているそうだ。

要はこの世界の平和が気に入らないテロリストだ。しかも最大級に性質が悪い。何より組織の頭が危険過ぎる。何せ『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の他に、強大にして凶悪なあのドラゴンだからな」

 

「ッ……! そうか、彼が動いたのか。『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス――。神すら恐れた最強のドラゴン……」

 

「いいえ。私達は『禍の団(カオス・ブリゲード)』ではありません。そもそも、どうして私達が堕天使であるサタナエルが立ち上げた『禍の団(カオス・ブリゲード)』と手を組むと思ったのですか?」

 

「え?」

 

「は?」

 

魔法陣から出現した悪魔カテレア・レヴィアタンは、アザゼルの推測を真っ向から否定した。しかし、アザゼルの言っていた事は紛れもない真実である。ほんの少し前までは。

 

「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン。それはどういう事だ? いや、その前に……何故だ?」

 

「カテレアちゃん! どうしてこんな……!」

 

この時、現魔王であるサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンは、魔王の座を奪われた事に対する怨恨と憎悪が、カテレアの行動理由だと思っていた。だが、カテレアが口にした会談襲撃の理由は、彼等の想像とは全く異なるものだった。

 

「私達の目的はただ一つ。貴方達が行っている『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』による悪魔と言う種族そのものの改造を止め、悪魔と言う種を守る事です」

 

「!?」

 

「え……?」

 

「どう言う事だ? 悪魔と言う種族そのものの改造だって?」

 

「おかしいと思いませんでしたか、アザゼル。『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』が“悪魔の個体数を増やす為のモノ”なのに、純血悪魔にも使える仕様である事を。アレは“他生物を悪魔に変える”のではなく、“悪魔を含めた全ての生物を、悪魔の特性を備えた全く新しい生物に変える”為のモノなのですよ。具体的には、そこのサーゼクスの様な悪魔から当然変異で生まれたミュータントを……即ち“超越者を後天的に造り出す為”のね」

 

「何だと……?」

 

「正確には“超越者へ導く為の仕込み”と言うべきですがね。先の大戦を生き残った上級悪魔達が、悪魔の個体数の減少に歯止めを掛ける具体策をサーゼクス達に求めた際、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』とそれに基づく新しい悪魔社会のルールを……つまりは『レーティングゲーム』というシステムを組み込む事で、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を使って人工的な超越者を作り出すという本当の目的を隠し、彼等に『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を提供したんですよ。尤も、私達がその事実に気付いた時には、悪魔と言う種族は大半が既に改造されていた訳ですが」

 

予想外。余りにも予想外。正直、与太話としか思えない内容だが、カテレアの言う事を否定する材料も無い。『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の制作者はサーゼクスと同じ超越者であるし、カテレアが語った『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の矛盾……つまり、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』が純血の悪魔にも使える仕様にする理由を、この場にいる誰一人として説明する事が出来なかったのだ。

 

「そもそも、悪魔社会が純血を尊ぶ貴族社会である以上、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』による後天的な悪魔たちが悪魔社会で軽んじられるのは明白だった。何せ大半の上級悪魔にとって、悪魔とは“自分と同じ純血の上級悪魔だけ”なのだから。

そして、それ以外は“自分達とは違う生き物”として認識している。たとえ同じ純血の悪魔だとしても、彼等は自分より地位の低い者や、力の弱い者を同じ悪魔だとは見ていない。『優れた力があれば誰でも出世出来る』なんて謳い文句は、無知な者たちを『転生悪魔』という名の、自分たちにとって都合良く動いてくれる手駒に作り替えて、奴隷として操る為の方便でしかない」

 

「ふざけんな! どんだけ力があっても元々悪魔じゃないから認めないとか、そんなの差別じゃねーか!」

 

「赤龍帝のボーヤ。“差別”って言うのは、自分と同じ存在、対等な関係のものに対して使う言葉よ。だから、上級悪魔のそれは“差別”じゃない。“区別”って言うのよ」

 

「く、区別……?」

 

「そう、“区別”。大半の上級悪魔からすれば、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』は文字通り“自分の思い通りに動く手駒を生み出す為のモノ”でしかない。支配者である自分の手駒が、自分と同じ支配者の立場になるなんて有り得ない。

だからこそ、手駒が支配者になる事を彼等は認めない。いえ、認めたくない。自分たち貴族が、強者がずっと支配者で居続ける為には、手駒は手駒のまま、弱者は弱者のままで居てくれないと困るから。だからこそ、出生だとか、血筋だとか、地位だとか、そう言うどうしようもない…いともたやすく瓦解するモノに上級悪魔は縋るのよ」

 

「………」

 

「前振りが長くなったケド、私達の目的は革命じゃない。魔王になる事じゃない。『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を便利で都合の良い道具として安易に受け入れ、自覚も無いままに滅びゆく『悪魔』と言う種そのものを守る。

その為に私は、貴方達と戦う道を選んだ。例え勝ち目がなくとも、悪魔と言う種がいずれ滅ぶと分かっていたとしても、私は『悪魔』として、『悪魔』の誇りを抱いたまま死ぬ。その為に私達は此処に来た」

 

かくしてカテレアは現政権に牙を剥き、この時の戦いでアザゼルによって奮戦も空しく討ち取られた。

 

「我が、偉大なるレヴィアタン……万歳……ッ!!」

 

しかし、彼女の行動はリアルタイムで冥界全土に中継されており、その死に様と思想は広く冥界に知れ渡る事となる。

 

そう、知れ渡ってしまった。これをきっかけとして辺境に追いやられ、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を受け入れなかった旧魔王とそれに連なる者達が、「悪魔と言う種を守る為、現四大魔王に立ち向かう悪魔」と言う思想を持った集団だと認識された。

 

そして、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を受け入れる事で繁栄してきた悪魔社会の上層部と、現悪魔社会に辛酸を舐めさせられ続けてきた者達が、ここぞとばかりに現四大魔王への一斉糾弾を開始した。

 

――「よくも我々を謀ってくれたな」――

 

異口同音に浴びせられるこの言葉こそが、彼等の怒りをこれ以上無く、明確に現わしていると言えるだろう。彼等にしてみれば、生まれついての高貴な存在である純血悪魔の自分達が、冥界が知らぬ間に侵略され、得体の知れない生き物の巣窟に改造されていた事になるのだから。

 

結果、現政権が『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の矛盾と疑惑に対する十分な説明をする事が出来なかった事も相俟って、純血の古き魔王が命を燃やして投じた火種は瞬く間に燃え広がり、悪魔陣営は『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を受け入れる者達と、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を受け入れられず抗う者達。そして、悪魔社会そのものから離脱した者達の三つに分かれ、内戦と言う混沌を極める事態に陥った。

 

だが、そんな悪魔陣営以上に、天使陣営が窮地に追い詰められていた。『駒王会談』において大天使ミカエルが「神の不在」と、自分達の糧である信者の信仰を守る為に、どれだけ敬虔な信者であろうとも『システム』に影響を与える者ならば異端として、迫害や追放という方法で排除してきた事実を口にした姿が、白日の下に晒されたからだ。

 

――「よくも我々を謀ってくれたな」――

 

勿論、聖書の神ではなく四大天使そのものに忠誠を誓う信徒も存在したが、信徒達の怨嗟の声は火山の噴火の如き激しさを見せ、保管されていた聖遺物や聖剣を持ち出して、教会勢力から離反する信者と戦士達が続出した。そんな決断をした彼等はどう言う訳か、示し合わせた様に日本へ向かい、そのまま消息を絶った。

 

その様な経緯で『駒王会談』を機に悪魔と天使の両陣営が加速度的に衰退した事に伴い、彼等との和平を申し込んだ堕天使陣営は両陣営の混乱を収束させる為、そして三大勢力共通の仮想敵である『禍の団(カオス・ブリゲード)』に対抗するべく、他の各神話勢力に協力を求めたのだが、何処からも色の良い返事を貰う事は出来なかった。

 

「いや、お主は『禍の団(カオス・ブリゲード)』への対策として、今まで神器所有者を集めておったんじゃろ? なら、儂等の協力なんて必要ないじゃろ?」

 

「HAHAHA! テメーの汚辱に塗れた汚ったねぇ尻ッケツくらいテメーで拭け。その為の紙もちゃんとテメーで用意したんだろ?」

 

アザゼルが『禍の団(カオス・ブリゲード)』は悪魔や堕天使、神器使いや魔法使いと言った複数の勢力の混成部隊であり、その首魁が“無限の龍神”と名高いオーフィスだと言って幾らその脅威を説いても、神仏達の態度は全く変わらなかった。

 

それもその筈。神仏達はこの騒動がかつて三大勢力に奪われたモノを返還しに来た“彼”によって引き起こされ、『禍の団(カオス・ブリゲード)』は事実上壊滅している上に、肝心のオーフィスは無力化と言うか無害化していることを知っているからだ。

 

そして“彼”の目的を知る神仏達からすれば、三大勢力に協力する意味も得も無い。何せ歴代の“彼”がそうであるように、いずれは“彼”も「人として死ぬ」のである。故に今は静観に徹し、三大勢力が右往左往する姿を見物するのが吉だと判断した。

 

最終的に「旧悪魔」と「新悪魔」と呼称された、悪魔同士による種の存亡をかけた戦争は、多くの犠牲者を出しながらも新悪魔側の勝利に終わった。

しかし、今度は狙い澄ましたかの様に『禍の団(カオス・ブリゲード)』や元教会の戦士達がゲリラ的に攻撃を仕掛け始め、聖書陣営は相変わらず窮地に立たされているのだった。

 

 

●●●

 

 

過去、現在、そして未来においても最強の白龍皇になるだろうとアザゼルに称された男――ヴァーリ・ルシファーは地べたに跪いていた。雪の様に白く美しい龍の鎧は大部分が破壊され、ヴァーリ自身の鮮血で赤龍帝の鎧と見紛うばかりに赤く染まっていた。

 

どれだけ“彼”からエネルギーを半減し、吸収しても「森羅万象総てーーこの世のあらゆるエネルギーとパワーを身に付けた」と豪語する“彼”には蚊ほどの効果も無く、むしろ吸収したエネルギーとパワーに此方が振り回される始末だった。

 

「ぐ……! 何の、つもりだ……!」

 

「お前が言った事だろう? 『永遠に戦いを愉しみたい』と。『神を倒してみたかった』と。だから、私はソレに付き合ってやっているだけだ。お前への慈悲で、お前の我儘にな」

 

未知の魔方陣によって得体の知れない空間へ強制的に転送され、姿を変える度に力を増していく怪人の「第三の戦闘形態」。その恐るべき戦闘能力より発揮された巨大な火柱を伴う程の熱量を誇る蹴りと、至近距離でベルトから発射された竜巻によりヴァーリは満身創痍と成り果て、駄目押しに現在の「第四の戦闘形態」の能力により大幅な弱体化を余儀なくされている。

 

「ギリシャ神話ではドラコーン、サーペント。スラブ神話ではズメイ。中国では(ロン)。そして日本では竜。これらは化石時代の恐竜を模して、人間が神話の中に造りだした幻獣だと言われている」

 

「何の……話だ……」

 

「しかし、日本の神話において竜は“偉大な霊獣”として語り継がれているが、ヨーロッパ大陸へと離れるにつれて、ドラゴンは“恐怖の象徴”へと変化している。アメリカ大陸の先住民の神話に語られるウンセギラも然り、津波や洪水を起こして人を喰らう怪物として恐れられている。このドラゴンに関連する東洋と西洋の奇妙な相互関係は、一体何が原因で起こったと思う?」

 

「……それぞれの土地で発展した、思想や宗教の差だ……」

 

「違う。答えは、大陸から日本に渡った『真の人類』の大元……すなわち、最初の“彼”が日本を拠点として竜を操り、その庇護下にあった古代の日本人達が、竜を神の使いと崇め奉ったのに対し、各大陸に竜と共に遠征した最初の“彼”と竜を見た海外の者達は、恐怖から竜を忌み嫌ったからだ」

 

「チィ……!」

 

「無駄だ。此処は私が造り出した別次元の空間だ。例え光の速度で無限の距離を飛ぼうとも、何億トンもの破壊力をぶつけようとも、一瞬にして見飽きた場所へ立ち尽くさせる『虚空の牢獄』だ。自力で此処を出る事は叶わん」

 

『……お前は誰だ? 目的は何だ?』

 

力を振り絞り脱出を試みて空を飛ぶヴァーリを追いかける素振りも見せない怪人に、『コントロールアーム』と称する右腕の能力によって抜き取られたアルビオンの魂が話しかけた。右腕には青い宝玉が新しく備え付けられ、チカチカと点滅している。

 

「その質問には最初に応えただろう、アルビオン。私は他者だ。誰にとっても他者たる者。即ち“彼”だ。今代のな」

 

『お前が“奴”と同じ「本来の力を持って生まれたヒト」だと言うのは分かる。しかし、それだけでは説明のつかない事もある。例えば、その鎧の下にあるものは、歴代の“奴”等には無かったモノだ』

 

「そうだな。確かに今の私は『神が奪った筈の力を持って生まれた完全なるヒト』だ。そして、何の因果か『不完全な人類を苗床として生まれた新たなヒトの力』も備えていた。魔王の血縁にお前が宿った様に」

 

『な……!』

 

「アルビオン……貴様とドライグの魂が『神滅具(ロンギヌス)』に封じ込められたのは、聖書の神が自身を不滅の存在とし、永遠へ至る過程の実験に過ぎん。真人類を用いた再誕と復活ではなく、新人類に関わり続ける事でそれを果たす為に。所詮は最初の“彼”に拒絶された、聖書の神の悪足掻きよ」

 

『………』

 

怪人が実に忌々しそうな声色で『神滅具(ロンギヌス)』を語る様を見て、アルビオンは歴代の“彼”と同様に、この怪人もまた「人の領分に生きようとする者」なのだと理解した。

 

「ヴァーリ・ルシファー。貴様をこのまま牢獄に閉じ込めても私の目的は果たせるが……念には念だ。確実に葬らせて貰う」

 

――だからこそ、アルビオンは直感する。“彼”はヴァーリ・ルシファーを許さない。闘争の歓喜を無限に愉しむ為に、無力な人間を殺す事を提案する者など許さない。

例えヴァーリが人類の新たな萌芽を宿す同胞だとしても、人類の自由と平和を脅かす『人類の敵』と認識したヴァーリを、“彼”は一片の情けも容赦もなく始末するだろう。

 

それも、ヴァーリにとって最も屈辱的な方法を用いて。

 

「顕現せよ……『ドラゴンアーム』ッ!!」

 

「!?」

 

怪人の右腕が変形し、竜を模した白い籠手が瞬く間に形作られていく。最も身近に感じていたドラゴンのオーラに振り返り、見覚えのある光景にヴァーリは目を見開いた。

 

「せめてもの情けだ。お前がライバルと定めた男の右腕に、自分の半身たる力に滅ぼされるがいい。ああ、お前ならこう言った方が良いか? 『重厚な運命に身を委ね、俺の様な貴重な存在に殺されるのは華やかで良いだろう?』とな」

 

ヴァーリが駒王会談でライバルにぶつけた言葉を叩きつけ、その死を宣告して迫る怪人の右腕は、ヴァーリに口を大きく開いた巨大な白い竜の顎を幻視させた。




キャラクタァ~紹介&解説

主人公/“彼”
 人類の味方な主人公。基本行動が暗躍系ラスボスのソレで、普通に戦っても普通に強い。もっと言えば全身を覆う黄金の鎧は防具では無く拘束具なので、鎧を外した方が強いって言うか、むしろそこからが本番だったりする。
 見た目は完全に『仮面ライダーSPIRITS』の「大首領JUDO」。中身は小説『仮面ライダー1971-1973』の大首領こと「彼」がベースだが、萬画版『仮面ライダーBlack』の「魔王」等、ライダーシリーズの歴代の悪の組織のトップの要素も混じっている。

大神官
 主人公が最初に引き入れた神器所有者……もとい、『新人類』の元シスター。教会を追放された彼女が世界で最も有名な聖人であろう『最初の“彼”』が眠る地を訪れる事を“彼”から唯一許可されているんだから、教会はもう堪ったモンじゃない。

カテレア・レヴィアタン
 地獄大使っぽい最期を遂げた旧魔王。一度死んだ後蘇って英雄的な死を迎える羽目になったが、冥界における死後の彼女の風評はある意味でウナギ登りになっている為、見方によっては原作よりも救われている。

ヴァーリ・ルシファー
 口は災いの元とばかりに“彼”にロックオンされたイケメン。「俺の知らない内に旧魔王派の連中が立派な事を言ってるなーと思ってたら、全部コイツの仕業だったござる」と真実を知るが、ソレを誰かに伝える術は彼には無い。
 この後、ヴァーリチームはどうなったかって? 猿と剣士は大将の敵討ちを仕掛けたら返り討ちに遭って、黒猫は妖怪に戻って「協力するから白猫だけは助けて」と命乞いして、魔法使いは聖剣に関する事で実家へ行った。

最初の“彼”
 『ドリフターズ』の黒王様みたいに人間を廃滅しようとはしていないケド、第二の人生では人間の自由の為に“人類の敵”を廃滅しようとドラゴンを手懐けていたトリーズナー。私はヒトを救う為に生きた。決してお前の為でも、お前達の繁栄の為でもない――と。
 尚、紀元二世紀頃から地中海を中心に広まった思想『グノーシス主義』においては、ウロボロスはイエス・キリストの象徴とされた。そのため彼等はヘビを崇拝していたが、ヘビを悪魔と考える教会の力が増していくにつれ、彼等の思想は衰退して言ったと言う……。

???「我、感知せり。“彼”、帰還した」



禍の団
 当初は原作と同じく多種族・多勢力の混成部隊だったのだが、“彼”の介入によって行動を起こす前に壊滅。異種族は基本的に端末と言う名の再生怪人と化し、『人類の敵』も激減した為、危険度はかなり低下している。人間の視点では。
 真実を知らないのは三大勢力だけで、黒幕と化した“彼”は表に出るつもりが毛頭無い。暗躍に終始しつつも、対戦相手は確実に仕留めに掛かるスタイルは『ジョジョ』第五部に登場するディアボロと、彼が作ったイタリアギャング組織パッショーネに近いかも。

悪魔の駒
 本作における改造人間要素。悪魔だけど。正直な話、ハッタリでも良いからこう言っておけば、旧魔王派は悪魔陣営を滅ぼせたんじゃないかと思う。もっともらしい予想外の選択肢を提示すれば民衆はそれに注目するから煽動しやすいって話もあるし。

虚空の牢獄
 牢獄と言うけど割と自由に出入りが出来る“彼”が造り出した別次元の空間。ある意味では次元の狭間。静寂を欲したオーフィスの為に造ったモノと、戦闘時に周囲に被害を出さない為に造ったモノの他にも、複数の『虚空の牢獄』が存在する。

主人公・第三の戦闘形態
 大首領JUDOよろしくカメンライドした姿。『仮面ライダーSPIRITS』基準の破壊力を誇る逆ダブルタイフーンと、フルパワーで放たれる火柱キックと言う二大奥義をヴァーリに食らわせている。

主人公・第四の戦闘形態
 本来、№3の次は№5なのだが関係無い。そして『HERO SAGA』のライダーマンみたいにパーフェクターが着いている。そして使う武装が『新・仮面ライダーSPIRITS』の「コントロールアーム」と「ドラゴンアーム」が元ネタと言う、作者の趣味の塊。

原作との相異点
 時系列順に言えばレイナーレ達はアーシアを確保出来ずそのまま駒王から撤退。アーシアの不在によってリアスとライザーの婚約は成立してしまい、ゼノヴィアとイリナは“彼”と接触し、エクスカリバーの破片と一緒に行方不明になった。
 今回以降だと黒猫はパーティーに乱入しないし、ディオドラは『彼岸島』並みにスゲェ無惨な事になるし、ロキはオーディンに叛旗を翻さないと言う、原作での重要な強化イベントが軒並み潰れる結果となる。
 その代わりに悪魔陣営は内乱が勃発している上、神器使いや元教会の戦士が冥界へ攻めてきたりしているので、それなりに戦う機会はある。そしてやっぱりイッセーはリアスの乳で禁手に至り、挙げ句の果てには乳神の加護なんてモノまで手にする。
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