堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
第1話 1987年4月
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1971年。
後の特級呪術師・五条悟の誕生から19年前。
それは生まれた。
生まれ堕ちた。
特級仮想怨霊『
出自不明の特級呪霊。
何故生まれたのかも、何故存在するのかも分からない。
唯一分かっているのは『それ』がもたらす結果のみ。
その16年後、『堕雪』にまつわる物語は動き出す。
ーーーー1987年・4月ーーーー
私の名前は、
準一級呪術師だ。
呪術師とは負の感情の集合体である『呪霊』に対抗するために、呪術を使ってそれを祓う者のこと。
呪術師や呪霊には強さによって、一級から四級までの等級がつけられており、さらに、一級とは比べ物にならない位置に特級が存在する。
つまり、私の強さのランクは上から三番目。
まぁ、それなりには強いよね。
……だけどさぁ、
「この状況はキツイっしょ……」
目前に広がるは呪霊の群れ。
一体一体は強くはない。
強い奴でも二級程度の呪霊だから、サシで戦う分には問題ない。
ただ、
「こう……も! 数が、多いとっ!!」
流石の私でも厳しい。
多勢に無勢ってやつだ。
こんなことなら他の呪術師を連れてくればよかったなぁ。
まぁ、そうは言っても、他の呪術師も年々力を増す呪霊退治にいっぱいいっぱいだから、来てくれるか分からないけどさ。
『こッチにおいデェぇ』
『アソぼウよォォお』
『おいデオイデ』
『あソぼうアソボう』
「!」
そんな風に考えていると、その隙を突いて呪霊たちの攻撃が苛烈になる。
「やばッ!?」
攻撃をした後の一瞬の隙。
それをこの二級呪霊は見逃さなかった。
体勢は崩れたまま、私はーー
ーーーーキィィィィンーーーー
突如、金切音が鳴り響いたと思ったら、私に襲いかかってきた二級呪霊が爆発した。
それだけではない。周りの呪霊も次々と爆ぜていく。
私と同じ準一級でもこんなことができる奴はいない。
一級以上。
いや、一級呪術師とはいえ、あれだけの数の呪霊を同時に祓うのは不可能に近い。
こんな真似ができる奴は、私が知る限り1人しかいない。
「…………つまらん」
背後から聞き慣れた声がして、私は振り向いた。
そこにいたのは、私と同い年の女の子。
真っ黒な制服にうずまきのボタン。
ボブカットの黒髪で、本来目元が完全に隠れる長さの前髪を邪魔くさそうにかきあげている。
その仕草を、私は知っている。
私の親友『じゃない奴』の仕草だ。
「近年、呪霊のレベルが上がっているとはいってもこの程度か」
「……っ、お前、何しに来たッ!」
「ん? あぁ、お前か。なに、最近、どうも体が鈍っていてなぁ」
運動だよ、運動。
そう言って、『そいつ』は笑う。
真っ青な瞳を輝かせ、口角を不自然に上げて、邪悪に笑う。
直感で分かる。
人間の笑みでは決してない。
「あの子は……?」
「寝ている」
それが本当かも分からない。
もしかしたら、『こいつ』にあの子が……。
そんなことを考えていると、目の前の『そいつ』が口を開く。
「お前が話をしたから、起きてしまったではないか」
「!」
億劫そうに欠伸をすると、目を閉じた。
それから数秒後、ゆっくりと目を開けた。
赤い瞳が見えると同時に、前髪が彼女の綺麗な瞳を隠してしまう。
さっきまでの邪悪な雰囲気ではなく、いつもの、ほんわかとした彼女の雰囲気だ。
「あ、れ……?」
「ダイジョブ?」
「美澄ちゃん?」
「うん、私だよ。ユキの親友のミスミ」
彼女ーー
「…………そっか…………わたし、また」
ユキは状況を飲み込んだようで、ポツリと呟いた。
そのまま俯いてしまう。
私は見ていられなくなって、彼女の頭を撫でた。
「ダイジョブだよ、ユキ。今回は被害はなし。呪霊だけを狩ってたぽいから」
「……そっか」
「だから、安心して。ね?」
「……うん、ごめんね……美澄ちゃん」
俯いてるから彼女の表情は見えない。
けど、私にはユキが悲しんでいるように見えた。
「不安かもだけど、ユキには私がついてるからね」
「うん……」
思わず抱きしめる。
ユキがこれ以上不安に思わないように。
「…………」
ううん。
きっとそれは言い訳なんだ。
私もそうしている間だけは現実を忘れていられる。
こうやって、ユキを抱き締めている間だけは。
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私は、今から3年以内に彼女を殺さなくてはならない。
そうでなくては、彼女に宿る『堕雪』が彼を殺してしまうから。
3年後に生まれるという彼ーー『五条悟』を。
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