堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
ーーーー呪術総監部より通達ーーーー
早雲薙臣の殺害に関して。
1、殺害に関わった人間を特定。死刑
死刑執行役として花房在藤と草木咲人を任命する。
2、他の呪術師は今後この件に一切関与しないこととする。
ーーーー雪視点ーーーー
土曜日に美澄ちゃんと一緒に捜査して。
日曜日は美澄ちゃんが体調を崩したって言ったから、わたしは美澄ちゃんには黙って、とある調べ物をしていた。
そして、今日、月曜の朝にその通達が呪術高専を通して、所属するまた、高専と協力関係にある呪術師に知れ渡った。
さて、その日の朝、1年教室でのことだ。
「美澄ちゃん、体調は大丈夫?」
「うん、ダイジョブ! ありがと、心配してくれて!」
ウキウキとした様子で、美澄ちゃんはそう答えた。
「ねぇ、美澄ちゃん。朝、寮の掲示板に貼ってあった通達見た?」
呪術総監部から出る通達は、ほぼすべてが重要なものであり、それは高専の寮にも貼り出されることになっている。掲示板は寮の玄関付近にあるから、高専生は必ず目を通してるはず。
「ん、あぁ、見たよ」
やっぱり美澄ちゃんも見ていたようで、わたしの言葉に頷く。ただ、あまり興味はなさそうだけど。
「どうしようね……」
「……まぁ、仕方がないんじゃない? 総監部からの通達だから」
破ると処分対象になりそうだし。いくらユキが犯人を突き止めたいとはいってもさ。
そう言って、美澄ちゃんはひとつ欠伸をする。
……あれ、なんだろう?
今の美澄ちゃんの発言、少し違和感があるような……?
「それにしても、咲人とお義兄さんが執行人に指名されるとは思わなかったね」
「え、あ、うん。そうだね」
気のせい、かな?
隣で笑う美澄ちゃんはいつも通りに見えた。
ーーーー美澄視点ーーーー
月曜日の放課後は、真っ直ぐ寮に帰った。
ユキを自室に送り届けてから、私は寮を出た。
勿論、花房正藤の捜索のため。
恐らく私たちが授業を受けている間も、咲人や在藤は捜索を続けているだろうが、連絡がないってことはまだ見つけていないということか。まぁ、向こうが律儀に連絡をくれるとは限らないけれど。
「…………3人、かな」
とりあえず今、寮の側にいる何人かの呪術師は、きっと在藤が護衛として配置した人間だろう。
私の呪力感知能力は、ユキほどではない。それでも今いる呪術師はなんとなく感知できた。
それから、あともう1人。
「またいるよね?」
寮から少し離れたところでそう声をかけた。寮の監視ではなく、私を監視するように追ってきた呪術師に。
「参ったわね、またバレちゃった」
そう言って、チャイナ服の女は茂みの中から現れた。
呪力も気配も消してはいたようだけど、それでも女の気配の異様さは隠せない。眼鏡の奥に光るその空色の左目の不気味さも。
「こんなに簡単にバレてしまうなら、引退した方がいいかしら」
「…………」
肩を竦めてみせた女は冗談めかして笑う。
「たぶん、あんたの言ってたこと合ってた」
「正藤に会ったのね」
「……会った」
会って確信した。
あれはユキのことを人と思わず害を為そうとする
この女が味方である保証はないけれど、それでもこの女の情報で先手をとれたのは大きい。
そして、
「あんたがここにいるってことは、また情報をもってきたってことでいい?」
「察しがよくて助かるわ。その通りよ」
「…………」
この女は少なくともこちらを陥れようとはしていない。それが間違った情報ではないならば、こちらとしてはユキを守るために使わせてもらうだけだ。
「正藤の居場所が知りたい、ということでいいのよね?」
頷く。
女はすんなりとその情報を私に伝えた。前回もそうだったけど、その対価は求めてこない。
「今度は聞いてくれないのね。私が何者か」
不意に、女はそんなことを口にした。
……あぁ、そういえば前回は聞いたな。でも、今はそれはどうでもよかった。今の私にとって、優先順位一位は奴を殺し、ユキを守ることだから。
「……あんた」
「それ、イヤね。あんた呼びは流石に少し傷つくわ。これからも仲良くしてもらう予定なんだから」
「…………」
仲良く、する気はないけれど。
ユキに有利になるなら、名前くらいは聞いておこう。
「名前は?」
「色々と事情があって、本名は明かせないけれど」
「私は『五条』」
「ただの呪詛師よ」
空色の左目をもつ女はそう名乗った。
『五条』と。
ーーーーーーーー