堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完)   作:藍沢カナリヤ

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第23話 偶然必然

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4月15日。

呪詛師『楽』の襲撃まであと半月となったその日。

わたしは美澄ちゃんに会うことになっている。

 

今日はその前日14日。

だというのに、わたしはまだ覚悟ができていなかった。美澄ちゃんに会って、強がれる覚悟。

わたしが狙われているという事実を知らされて時間が経ったこともあり、少しは落ち着いたけど、未だに不安は残っている。

だから、たぶん美澄ちゃんに会ったら甘えてしまう……気がする。

 

こんな気持ちのまま、彼女には会えない。

そう思って、わたしは気晴らしも兼ねて町中に出掛けた。在藤兄さんの計らいで、今日は久しぶりに呪術師としての仕事もお休みにしてもらった。きっと町中を歩いていたら、心の整理もできるだろう。そんな風に思ってたのに……。

 

 

ーーーー都内・喫茶店ーーーー

 

 

「ユキ!!!」

 

「み、みすみちゃん!?」

 

 

出掛けた先、なんとなく入った喫茶店でばったり出会ってしまった。美澄ちゃんがテーブル席から頭をひょこっと出して、わたしの名前を呼んだ。

 

 

「ユキ、こっちこっち!!」

 

 

店内にも関わらず、わたしの名前を大きな声で呼ぶものだから、気づかないフリはできなかった。大人しく誘われるがまま、美澄ちゃんの座るテーブル、彼女の対面の席に座る。

 

 

「偶然だね、ユキ」

 

「う、うん」

 

 

美澄ちゃん、にっこにこである。

高専に出入りしている在藤兄さんから聞いた話によると、高専で見かける美澄ちゃんの表情はそれはそれは暗いものだったって聞いていたから、少し拍子抜け。それよりも、安心かな。

 

 

「ユキはなんでここに?」

 

「えっと、今日は久しぶりにお休みとれたから、少し町中に出ようかなって。それで歩き疲れたからここに入ったら美澄ちゃんがいたんだ」

 

 

気持ちの整理云々はもちろん伏せて答える。

 

 

「そういう美澄ちゃんは?」

 

「私もユキと同じだよ。ふふっ、そんなところまで同じなんて、運命だね」

 

「あはは……」

 

 

なんだか異様に高いテンションで美澄ちゃんは笑いかけてくる。まぁ、わたしもなんだかんだ美澄ちゃんに会えて嬉しいけどさ。

 

 

「っ」

 

 

わたしを見て笑ってくれる美澄ちゃんを見てたら、急にすべてを吐き出したくなってしまう。わたしの今の境遇とか、気持ちとか、迷いとか全部。

それをどうにか飲み込んで無理矢理笑顔をーー

 

 

「ユキ、どうかした?」

 

「っ、なんでもないよ」

 

「ううん。ユキ、なんだか無理してる」

 

「っ」

 

 

無理矢理作った笑顔。それは美澄ちゃんには通用しないらしい。わたしが笑顔をつくるのが下手なのか、それとも美澄ちゃんがわたしを見てるからか。

…………どっちも、なのかな。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

黙って、わたしを見つめてくる美澄ちゃん。わたしが話し出すまで待ってくれてるみたいだ。

……このまま何も話さなかったら美澄ちゃんはわたしの側にいてくれる、のかな。そんなよくない考えも頭に浮かんできて。

どのくらい経ったのかな。長い時間そうしてた気もするし、ほんの1分くらいだった気もする。

まっすぐにわたしを想うその目を見たら、むしろ隠していることの方が悪いように思えてきて、わたしは口を開いた。

 

 

「あのね、美澄ちゃん……」

 

 

わたしは、話し始める。

当主になってからのこと。当主として振る舞うことやその任務の重さ。総監部からは『堕雪』の器としか見られていないこと。そして、今、狙われている事実とそのせいで呪術師が4人も亡くなったこと。

話し始めたら止まらなかった。

ただただ話し続ける。吐き出し続ける。

 

……………………。

 

 

「けほっ」

 

 

ずっと話していたからか、喉が少し痛むことに気づいた。話しすぎたみたい……って、

 

 

「ご、ごめんね、美澄ちゃん。こんな愚痴みたいなこと、ずっと聞かせちゃって……」

 

 

わたしが話している間、美澄ちゃんは黙って聞いてくれていた。だから、謝ったんだけれど。

 

 

「高専にいた頃とは逆だね、ユキ」

 

「え?」

 

 

美澄ちゃんはそう言って笑う。

 

 

「1年前まではさ、ユキはいつも私の話とかわがままを聞いてくれてたじゃん」

 

「う、うん。美澄ちゃんの話を聞いてるの嫌いじゃなかったから」

 

「ユキ、私も同じだよ」

 

 

同じ、と美澄ちゃんは言った。

けど、美澄ちゃんの話はいつも楽しいもので。それに比べて、わたしのは全部愚痴だ。こんなの聞いてても、楽しい訳じゃない。

 

 

「ううん、好きな人の話だよ。ユキのことなんでも聞きたいし、なんでも知りたい」

 

「美澄ちゃん……」

 

「ね、ユキ」

 

 

 

「私はどんなことがあってもユキの味方だから」

 

 

 

状況は何も変わらない。わたしは当主のままだし、『堕雪』の器として狙われたまま。死んでしまった人だって返ってはこない。

それでも、美澄ちゃんのその言葉に、わたしは少し救われたんだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

次の日。

わたしの護衛として、総監部から派遣された呪術師と在藤兄さんの選定した呪術師が花房家にやってきた。

佐木先生と咲人さん。どちらも見知った人物だ。

他に2人、私のわがままで呼んでもらった人がいる。

1人は彼女と一緒にいるという呪術師。

そして、最後の1人はもちろん、

 

 

 

「ユキ、私が守るからね」

 

「ありがとう、美澄ちゃん」

 

 

守られるだけのわたしじゃない。そのために当主になった。

でも、美澄ちゃんがそう言ってくれるなら、少しだけ甘えるね。

その代わり、わたしが美澄ちゃんを守るから。

 

 

ーーーーーーーー




アンケートありがとうございました。
ゆっくりお絵描きします。
もちろん本編も進めていきます。
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