堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
第30話 通話記録
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1988年6月某日。
草木家廊下の固定電話より。
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「もしもし、ユキ」
『こんばんは、美澄ちゃん』
「体はダイジョブ? 酷いことされてない?」
『あはは、大丈夫だよ。それ、昨日も聞かれたし』
「そりゃあ聞くよ! ユキを捕まえてる奴ら、呪詛師なわけだし」
『うん……でも、酷い扱いはされてないし。部屋には呪力を遮断する結界が張られてはいるけど、その中で生活できる広さは確保してもらってるから』
「……なら、いいけど」
『納得してとは言わないけど、危害を加えられるってことはないかな』
「ほんと?」
『本当だよ。美澄ちゃんには嘘つきません』
「……私に黙って当主になったくせに?」
『あ、あはは……』
……………………
『……そっちはどう?』
「変わらないよ。イチさんや東坊城の力も借りてるけど、ユキの居場所は分からないまま…………ごめん」
『そっか……』
「訓練も続けてるよ」
『呪力練れるようになったんだもんね……『廻』も強くなった?』
「あぁ……うん」
『……それは、よかった』
……………………
『…………圭さんと優くんは……どう?』
「え、あぁ、元気にやってる。イチさんも子供のお世話手伝ってるみたいだし……とはいえ、圭さんの方はまだ元気がないけど」
『そう、だよね……うん』
「……まぁ、咲人も私も様子は見てるつもりだから」
『ありがとう、美澄ちゃん』
「いやいや、ユキの家族だからねぇ。私にとっても家族みたいなものだよ」
『ふふっ、なにそれ』
……………………
『そろそろ時間、かな』
「えぇぇっ!! ヤダ!!」
『……そうは言っても、わたしも囚われの身だし』
「…………早く助け出すからね」
『……うん、待ってる』
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「ご機嫌なようだね」
通話を切ると同時に、彼がわたしの部屋に入ってきた。
さっきまでの美澄ちゃんとの通話の余韻を壊すような、嫌な気配を纏った人がそこにはいた。
草木福濁。
彼はわたしにそう名乗っていた。草木家の源流……つまり、咲人さんの先祖だとも言っていた。そのときに、彼の目的も聞いていて。
「…………美澄ちゃんに手を出さないでください」
だから、わたしはそれを彼に告げていた。
「またそれかぁ。毎日毎日、健気だねぇ。そんなに美澄ちゃんが大事なのかい?」
「……はい」
「ふふっ、『堕雪』の器風情が一人前に人間ごっこか。いや、『器』同士仲良くて睦まじいとも言えるかな」
「っ」
それを言われることに嫌悪感がなかったと言えば嘘になる。けれど、それ以上に彼が美澄ちゃんの体を乗っ取ろうとしていることを看破できるはずもない。
「……なんと言われようと、わたしの意思は変わりません。美澄ちゃんに手を出さないで」
「ボクと君の意見は平行線……これ以上は時間の無駄だよ。それとも暴力で以て解決するかい?」
「っ」
目覚めた初日。
呪力が封じられていることに気付き、在藤兄さんから教わった体術で抵抗を図った。ただ彼の御付きの女性『陰絵』によって、取り押さえられてしまった。彼が1人で部屋に来た時に襲撃しても結果は同じで、彼女はきっと今も彼の側に潜んでいるはずだ。
「…………」
「うん、それが賢いよ。君が抵抗しなければ、ボクも手荒なことはしない。美澄ちゃんと約束もしたしね」
「…………」
約束。
この人の言うことをどれだけ信じられるか分からない。けど、抵抗した時以外は本当に手厚いもてなしをされている。害されるような素振りは一切ない。
なら、わたしは待つ。
美澄ちゃんや咲人さんが助けに来てくれるそのときまで。
「あ、そうだ」
ふと、彼は手を叩く。
それでわたしの思考は現実へと引き戻されて。
「美澄ちゃんで思い出した。近々、彼女を迎えに行くことにしたよ」
「え……?」
思わず聞き返してしまう。
彼女……それは美澄ちゃんのこと。美澄ちゃんを迎えに行く? それって……!?
「そろそろ『生き返ろう』かなって思ってさ」
「最後に、君も美澄ちゃんに会いたいだろう?」
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