堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完)   作:藍沢カナリヤ

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第4話 破邪ー弐ー

ーーーー廃工場内ーーーー

 

 

『ジテんしャのりタいヨぉ』

『タかいタカいしテ』

 

 

現れたのは子供型の呪霊が2体。

そして、後ろにはもう1体。

恐らく無理心中に巻き込まれた子供とその親だろうな。

 

 

ーーゾゾゾゾゾッーー

 

「!?」

 

 

子供の背後にいる親呪霊から出た霧が、私たちの前にいる要田を包み込んだ。

分断、されたって訳ね。

まぁ、向こうも準一級って話だし、死にはしないだろう。

こちらはーー

 

 

「ユキ!」

 

「美澄ちゃん、はやく祓ってあげよう……」

 

 

ユキの表情は明るくない。

優しいユキのことだ。目の前の子供の様子に心を痛めてるんだ。

そんなユキの言葉に頷く。

 

 

『あソぼ』

『アそボ』

 

 

子供の呪霊が駆け寄ってきた。

速度はそんなに速くはない。見てからでも回避は十分可能だ。

 

 

「ユキ! 左!」

 

「う、うんっ」

 

ーーバッーー

 

 

2人でそれぞれ左右に避け、私は足に、ユキは体全体に呪力を纏わせる。

すぐに構えて、距離を詰めていく。

2体なら私1人で十分だ!

 

 

「ふっ!」

 

ーーブンッーー

 

 

まずは1体目の側頭部を蹴り抜く。

呪力を流した足ならば、呪霊といえどその体を捉えられる。

1体目ーーとりあえず呪霊Aが転がった。

よし、次!

 

 

「らぁっ!!」

 

 

振り返ると同時に、さっきとは逆の足で背後に蹴りを放つ。

捉えて、ない。

踏み込みが甘かった。呪霊Bはちょうど1歩分間合いの外。

なら!

 

 

ーーグッーー

ーーバキッーー

 

『ぎィ!?』

 

 

呪力で強化した脚力で今度は完全に間合いに入り、確実に祓えた。

これで終わーー

 

 

『アそぼ』

『あソボ』

 

「…………確実に入ったはずなんだけどな」

 

 

呪力を通して完全に祓ったはず。

なのに、呪霊は立ち上がってくる。

攻撃が効かないってこと?

 

 

「美澄ちゃん!」

 

 

ユキの声。

たぶん何かを感知したんだと思う。

一旦下がり、ユキの側へ。

 

 

「普通に祓ったと思ったのに、なんで祓えてないんだろ」

 

「たぶんあれは……動かされてる、と思うよ」

 

 

動かされてる?

ユキは頷き、説明をしてくれる。

 

 

「うん。うっすらだけど、あの子たちの頭から細い糸みたいなものが見えるの」

 

「糸? 私には見えない……ってことは」

 

「たぶん呪力の糸。それが工場の奥に続いてるんだと思う」

 

 

廃工場の奥。

あの男と親呪霊がいる方向、つまり、親呪霊がこの2体を操ってる訳ね。

言わば親呪霊の傀儡のようなものか。

だから、攻撃をしても立ち上がってくる。自分の子供を都合のいいように操るとはずいぶんと性質の悪い術式だな。

 

 

「糸を切ればいいってことでいい?」

 

「たぶん、だけど」

 

「オッケー!!」

 

 

それなら話は早い。ややこしくなくていいね。

再度、私は呪力を足へ纏わせた。

そして、それを廻す。

 

 

「術式解放『(かい)』」

 

 

術式『廻』。

呪力を廻し、加速させる。

それによって、本来以上の呪力出力を発揮することができる術式。

単純だけど、足技を中心にした肉弾戦を得意とする私にぴったりの術式だ。

 

両足で呪力が廻る。

廻った呪力は推進力になり、私の体を異常ともいえる速度で押し出してくれる。

そのままーー

 

 

「『廻脚(かいきゃく)』」

 

ーーブツンッーー

 

 

一閃。

私の足は呪霊の頭から出ているという糸を同時に切った。

……らしい。

私にはそれが見えてはいないから、後からユキに聞いただけだけどね。

ともかく、

 

 

ーーシュゥゥーー

 

 

糸が切れた呪霊は煙と化して消えていった。

よし。

あとは向こうの親呪霊で終わりだ。

まだ黒い靄は消えてないけど……。

 

 

「あいつ、やられたかな?」

 

「美澄ちゃん、そんなこと言っちゃーー」

 

 

ーーゾワッーー

 

 

「「!!」」

 

 

突如として悪寒が走る。

ユキも同じようで、いや。

 

 

「っ、はぁ……っ、みすみ、ちゃん」

 

「ユキっ!!」

 

 

呪力感知能力が高い故の弊害だ。

ユキは高濃度の呪力に当てられてしまっていた。

私は彼女を抱える。

 

 

「みすみちゃん……うっ……」

 

「ダイジョブ、すぐにここから離脱するから」

 

「で、でも……」

 

 

ユキが言いたいことは分かる。

恐らくさっきの子供の呪霊も、要田が戦っているであろう親呪霊も傀儡に過ぎない。

あの濃い呪力の主こそが今回の任務の標的なんだろう。

佐木が言っていた一級呪霊。

もし要田がまだあの親呪霊を祓えておらず、一級呪霊に遭遇したとしたら、助からない可能性が高い。

彼の生存率を上げるためには、私がすぐに駆けつけることが必要だ。

ユキはそう言いたいんだろう。

けど、

 

 

「ユキが最優先だから」

 

 

それがすべてだ。

彼女を連れてここを離脱し、落ち着くまで側にいることが私にとって最も大切なこと。

 

 

「で、も……」

 

 

異論は認めない。

ユキにお願いをされる前に、私は廃工場の外に向けて駆け出した。

 

 

 

ーーーー要田視点ーーーー

 

 

目の前に『それ』が現れたのは、呪霊を三回ほど倒した後だった。

倒れても倒れても立ち上がってくる呪霊のカラクリがなんとなく読めた頃に、『それ』は現れた。

 

 

『なンでジャましタ』

 

 

さほど大きい訳でもない。俺よりも少し小さい程度。

だが、その呪力量はさっきまでの奴の比ではない。

 

 

『かぞクとシのウ』

 

「これが本体ってことでいいな」

 

 

読み通り。

本体は別にいて、俺が倒していた呪霊やあの女学生の方の呪霊はその本体が操っていたってことだな。

無理心中を行った父親といったところだろう。

どちらにせよこの『父親』を祓えば終わる。

 

 

「『構築術式』」

 

 

術式『構築術式』

己の呪力を元に物質を0から構築する術式だ。

この術式で一度生成された物質は術式終了後も消えることはない。

それ故に呪力消費が激しく体への負荷が大きい。

だから、これを使うのは1日に一度と決めていた。

だが、その分ーー

 

 

「構築・鎖鋸」

 

 

呪力を帯びたチェーンソー。

それでまずは一太刀。

 

 

ーーギュィィィィィィンーー

 

『ぎィィぃッ』

 

 

『父親』の首を落とす、はずがその間にさっきまでの呪霊が割り入ったきた。

そのままチェーンソーは呪霊の体を捉え、切り裂いた。

 

 

『きヒャひャヒャひゃ』

 

 

それを見て、『父親』は愉快そうに不愉快な声を上げる。

胸糞悪ィ呪霊だ。

だが、これで奴を守るものはない。

次の一撃で終わらせてやる。

 

 

ーーギュィィィィィィンーー

 

 

もう一度構え、振りかざした。

 

 

ーーガシッーー

 

「あ?」

 

 

足元に違和感があった。

視線をそちらへ向けると、そこには切り裂いたはずの呪霊が俺の足を掴んでいた。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

そのせいで一歩踏み出せず、チェーンソーは空を切る。

その隙をついて、

 

 

『きゃきャキきゃキキきゃきゃッ』

 

 

奴が俺目掛けて飛びかかってくる。

しくじったか!?

 

 

 

 

「死ねぇぇ!!」

 

ーーバキッーー

 

 

 

奴の攻撃が俺に当たる前に、その乱入者によって、奴は吹き飛んだ。

乱入者は女学生の1人。

準一級だという女の方だった。

 

 

「……お前」

 

「はぁぁぁ、それで本当に準一級ですかぁぁ?」

 

「…………」

 

 

当てつけのように皮肉を言う女。

ふっ、面白い。

 

 

「…………お前、名前は」

 

「草木美澄」

 

「草木、さっきは悪かった」

 

「あ?」

 

「今のは助かった」

 

「あっそ」

 

 

愛想悪くそれだけを言い、草木は『父親』へと向かい直る。

その姿は確かに呪術師のそれだった。

姿形だけで判断するのは、俺の悪癖だな。

 

 

「ふっ」

 

「なに笑ってんのよ」

 

「なんでもない。おい、草木。こいつの術式は恐らくーー」

 

「糸で他の呪霊を操ってるんでしょ!」

 

「ご明察だ」

 

 

奴が吹き飛ばされた瞬間に、俺の足を掴んでいた呪霊の動きが止まった。

その後、呪霊からなにかが切れる音がしていた。

呪力の糸。

それが答えというわけだ。

さて、ネタもあがった。

 

 

「終わらせるぞ」

 

「うっさい! 命令すんな!」

 

 

ーーーーーーーー

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