堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
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ユキとの出会いから2ヶ月。2人でいることが多くなった私とユキは毎日のように遊んでいた。私の家とユキのいる施設は少し離れていたから、あまり長い時間は遊べなかったけれど、それでも楽しい時間を過ごしていた。
そんなある日のことだった。
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「●●さん、ちょっといいかな」
「え……」
放課後、帰る直前でユキが呼び止められた。見ると呼び止めた相手はクラスの子。ユキの様子から、ユキもそこまで面識がないことを察した私は、ユキとその子の間に入る。
「なに?」
「っ」
私に少したじろいだみたいで、その子は言葉を詰まらせる。いつもだったら大体の場合、それで終わり。なんでもないと引いて終わるんだけど。
「あの……●●さんに用があるの」
今回はそんな風に引き下がってきた。珍しいこともあるんだね。
その勇気に免じて、とりあえず話くらいは聞いてあげてもいいかな。
……って、その前に。
「どうする、ユキ?」
私はユキにそう聞いた。ユキの事情を知っているのは、私だけだ。ユキが言うには、先生にも施設の人にも言っていないそうだから。
最初はなんとなく一緒にいただけだったけど、最近はユキを守らなきゃってそう思うようになっていた。
「……いってくるね。先に神社にいってて、美澄ちゃん」
「…………うん」
少しだけ不安ではあったけど、ユキが一歩を踏み出そうとしているんだから、私は応援しよう。
そんなことを考えて、私は教室を後にした。
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先に家に帰ってかばんを置いてから、神社へ向かって。
ここについてからどれくらいが経っただろう。ユキも施設に戻ってからここに来るはずだから、少し遅くなるのは分かるんだけど……。
「さすがに遅すぎるよね」
お母さんに買ってもらった時計を見ながら呟いた。時計の針はもう午後5時を指していた。学校が終わったのが3時。それからあの子と話をしたとしても30分くらいでしょ?
「…………何かあったのかな」
ふと頭をよぎるのは、いじめられているユキの姿。それを想像してしまう。そんなことはきっとないとは思う。でも、一度してしまった悪い想像は頭にこびりついて離れない。
「迎えに行ったほうがいいかな」
ポツリと独り言。
行くこと自体はいい。思い過ごしならそれでいいし。行く判断を鈍らせているもの、それは……。
「もう……日が暮れる」
学校に着いて帰る頃には、きっと周りは暗くなり始める。そうなったら……。
「っ、行こう」
悩んだ末に、私はそう決めて、駆け足で学校へ向かった。
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結論から言うと、ユキはまだ学校に残っていた。ユキを呼び出したあの子と一緒に。だけれど、状況が違っていた。
ーーゾゾゾッーー
「これ……まさか……」
夕暮れの小学校。本当なら先生もまだいるはずなのに、まだ夕方なのに、なぜか真夜中みたいに真っ暗で静まり返っていた。校舎の外からでも、異常だってことは一目で分かる。
私は直感していた。
きっと『あれ』がいる。
物心ついたときから『化け物』が見えた。
他の人には見えない『それ』は、時には背の異様に高い黒い影だったり、時にはうずくまった小さな女の子だったり、黙っている奴もいれば意味の分からない単語を口にする奴らもいた。ひとつひとつが違う形を取っている中で、共通しているのが人を呪うようなドス黒い気配だけ。
家にこもっていれば『それ』は現れなかったから、幼い頃はダイジョブだった。けど、小学校に入ってからはそうもいかない。ただ、登校の時はよかった。明るくて人も多いからか『それ』を見ること自体めったになかったから。
でも、下校の時ーー特に日が落ちきった後は『それ』が現れ始める。きっと夜があいつらの時間なんだろう。
私が外で遊ぶとき、神社へ行くのはそれが理由だ。なぜか分からないけど、あそこには『それ』が出ないみたい。だから、ユキと遊ぶときも少しでも長く遊べるように、あそこに集まるようにしてた。
「っ」
怖い。このことを家族以外には相談した。先生にも友達だった子にも。でも、『それ』は他の人には見えないみたいで、相談した相手は首をかしげたり、私のことを変なものを見る目で見たりするようになった。
私にしか見えない化け物。何かしてきたってことはない。けど、そこにいるだけで感じる恐怖は私にしか分からないんだ。そのことを考えるだけで、足が震えてくる。怖い。怖い。
でも、ユキのことが頭に浮かぶ。逃げ出せばいいのに、どうしても浮かんでしまう苛められてるユキの姿。
「ユキっ」
震える体を両腕で抱えながら、私は校舎内へ向かった。
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コツ、コツ。
足音が校舎に響く。響いた足音は暗闇に消えていく。
やっぱり、おかしい。まだ5時半だよ? それでこんなに暗くなるはずない。
となると、やっぱりここに『それ』がいるの? でも、あいつらはそこにいるだけのはず。
「こんなことなかったのに……」
学校ごと化け物になったとか?
化け物になって、残ってる先生を食べちゃったとか?
「そ、そんなことっ」
ーーぶるっーー
否定したい。けど、『それ』が何か分からないから、ありえないっても言えなかった。
早くユキを探さなきゃ。そうして、ここからすぐ出よう。
そう思って、廊下を走り出した時だった。
『ろうカをハシルノだぁァァぁレェぇぇ?』
音……ううん、何かの声がした。
体が止まる。声はたぶん廊下の奥、私の視線の先から聞こえてきた。
早く、逃げなきゃ。本能が告げてくる。でも、動けない。
いや、ダメだ。早くここから離れてーー
『ワルいこミっけぇぇェ』
「ひっ!?」
いきなり目の前に現れた『それ』に驚き、腰を抜かしてしまう私。
そんな私を品定めでもするみたいに、『それ』は私を見つめてくる。
ガリガリでところどころ皮膚も剥がれ落ちているグロテスクな体とそれに不釣り合いな逆さまの『能面』。私が今まで見てきたどんな化け物よりも化け物だった。
『ワルぃこキョうイくキョきキキょうィイいぃククク』
骨が軋むような音をあげてその『能面』は私に骨と皮しかない腕らしきものを伸ばしてきてーー
「美澄ちゃんっ!!」
突然のことだった。
私と『能面』の間に割り込むように、彼女は飛び出してきて、そのまま私を抱き締めてくれる。
さっきまで感じていた寒気を溶かしてくれるような暖かさを感じながら
「ゆ、き……?」
「み、みすみちゃんに手を出さないでっ!!」
私は意識を手放した。
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次に目が覚めたのは、私の家だった。
寝てる私の側にはお母さんが心配そうに私を見てた。なにがあったのって聞いたら、学校で倒れてるところを先生に発見されたって、お母さんの仕事場に連絡がいったみたい。
そこで私も学校であったことを思い出して、ユキのことを聞いた。私と一緒に転校生の子がいたはずだって。でも、先生からの連絡だと私しかいなかったって。
夢だったのか、なんて思わない。
あれは確かに起こったことだ。そう思った私は、次の日、ユキをあの神社に呼び出した。
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「単刀直入にきくよ、ユキ。昨日なにがあったの」
私の質問に、ユキは口を開いた。
「あのね、美澄ちゃん」
「わたしも『呪霊』が視えるの」
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