堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
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ユキから返ってきた答えは、私の質問から少しずれていた。けど、なんとなく分かる。ユキが言う『呪霊』っていうのは……。
「あの、『能面』みたいな奴らのことだよね」
「うん」
頷いたユキを見て、理解した。やっぱり昨日のことは本当にあったことで、しかもユキもあいつらを見ることができる。
『呪霊』。
人の負の感情から生まれる化け物。ユキはそう説明してくれた。
そう言われて納得する。私が見てきたあの化け物たちも、そういうものの集まりだったんだ。しかも、それは限られた人しか見ることができない。
「先生も、クラスの子も見えてないの」
「じゃあ、なんでユキは見えるの……?」
「分からないよ。美澄ちゃんもじゃないの?」
「……うん。昔から見えたから」
ユキはなんでそんなことを知ってるの?
それも聞くと、施設に出入りする人が教えてくれた、らしい。ちょっと怪しい話ではあるけど、今はその人物の言うことを信じるしかない。実際に私はその『呪霊』とやらを昔から見てきたのだから。
「あのね、昨日わたし呼び出されたときに、あの子からそのことを聞いたの」
「そのことって」
「うん、美澄ちゃんは変なものが見えるって言ってる嘘つきなんだ。だから、美澄ちゃんから離れた方がいいよ……そんな風に言われたんだ」
きっとあの子にとっては親切心だったんだろう。私みたいな嘘つきの奴と仲良くしている転校生への思いやり。
…………ホントに最悪だ。
そんな私の心中とは裏腹に、ユキは静かに笑う。
「わたしね、美澄ちゃんが初めてのお友達だった……」
「ユキ?」
「親のいない、苛められてたわたしに手を差しのべてくれた大切なお友達。本当に美澄ちゃんにはありがとうって思ってるの」
だから、とユキは続ける。
「今度はわたしが美澄ちゃんを助けられたら、って思ってる」
「助けるって……」
「美澄ちゃんは嘘ついてないよって皆に分かってもらう。それに、今まで『呪霊』が見えて怖い思いをしてきた美澄ちゃんと一緒にいて安心させてあげたい」
わたしが美澄ちゃんに安心させてもらったみたいに。
そう言うユキ。偶然吹いた風に、ユキの長い前髪が揺れて、その隙間から真っ赤な眼が見えた。その眼はどこか決意に満ちたような眼で。
「あのね、美澄ちゃん。『呪霊』を倒す人のことを『呪術師』っていうんだって」
「……呪術師」
「わたしは『呪術師』になる。そして、美澄ちゃんを守ってあげるからね」
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そうして、ユキは私の前で決意した。
『呪術師』になる、と。
彼女曰く、それからユキの暮らす施設に出入りするという人から呪術に関することを学んでいった。その人が来るのは、月1回程度らしいから、そのときに沢山のことを聞いて、学んで。
その成果を、私の前でよく話してくれた。
正直、私にはよく分からなかったけど、それでも話しているユキが楽しそうだから、まぁいいかなって、そんな風に思っていた。
相変わらず『呪霊』は視える。
けど、今までと違うのは、ユキが一緒にいてくれること。
嘘つきだと言われようと、周りから腫れ物のように扱われようと、ユキが一緒にいていれる。それだけで私は少し救われていた。
けれど、ユキが転校してきて2年くらいが経ち、私たちが6年生になったその日、事件は起こったんだ。
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「……ユキ……?」
真っ暗な場所で目を覚ました私は、ゆっくりと立ち上がり、よろよろとユキを探す。
目を覚ます前、なにをしてたんだっけ?
…………えぇと、たしかいつもみたいに放課後、神社に集まって、遊んでいたはず。それで、そろそろ日が暮れるから帰ろうとして……。
「そうだ……階段を上がってくる『なにか』を視たんだ」
カツンカツンと階段を上がってくる『あれ』はきっと『呪霊』の類いだとは思う。けど、その正体を確かめる前に気を失っちゃったから。
「…………っ、ユキは!」
あれが『呪霊』だったとしたら。前に学校に出たみたいな奴だったとしたら、私を守るように前に出たユキはーー
「っ」
最悪の想像に、背筋が凍る。それを頭から追い出すように、ぶんぶんと頭を振って、再び周りを見渡す。暗さに目が慣れてきたこともあって、なんとなく周りの景色が分かる。たぶん神社、なんだと思う。でも、いつものところじゃない。
参道は苔むし、鳥居は半分崩れ落ちてる。電気も通っていないのか明かりらしい明かりもない。そんな酷い周りの有り様に反して、本殿らしき建物はなんの損傷もない。そのちぐはぐさがどこか気味が悪かった。
ーーガタッーー
「!?」
静まり返っていたこの場所に、急になにかの音が響く。反射的に体が跳ねた。怖い、けど、もしかしたら……。
「ユキ……?」
私は音のした本殿の方にゆっくりと歩を進めた。
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「ユキ、いるの……?」
小さな声で呼びかけながら、私は本殿の戸を開けた。
外側と同じように中も荒れている様子はない……そう気づいたのは全てが終わった後だった。
戸を開けた私の目に飛び込んできたのは、
「ユキ!!」
「………………」
ユキの姿。
ユキは虚ろな動きで、本殿の正面ーー御神体らしきものに触れようと手を伸ばしているところだった。
なにかヤバい。そう感じた私はそのままユキに駆け寄る。
「ユキ、やめてっ!!」
だけど、私がユキに触れるより前に、ユキはその御神体に触れた。
その瞬間、その御神体から赤黒い『なにか』が溢れ出し、彼女を包み込んだ。
包み込んだ『それ』はそのままユキに入り込んでいく。
そして、
ーーフラッーー
「ユキ!」
私が倒れたユキを抱きかかえると同時に、景色が暗転する。
そして、また意識を失った。
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気づいた時には、私とユキはいつもの神社にいて。
その周りには、何人もの大人がいた。それが私たちを引き取る花房家と草木家の人間だと分かるのは、後の話。
その後、私たちは別々に連れられて、花房家と草木家の養子になった。そして、『呪術師』となる。
それが私とユキが出会い、『呪術師』になるまでの話。
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あれ?
なにか足りない気がする。
そもそもこの記憶はーー
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