堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
ーーーー咲人視点ーーーー
補助監督による捜索の成果もあり、草木美澄らしき人物がとあるド田舎の廃屋に住んでいることが分かった。さらに、俺と桔梗ちゃんの調査を進めるうちに、水仙ちゃんもそこに出入りしていることが判明した。
「2人一緒とは好都合なこったな」
愚妹たちが拠点にしているであろうその建物に俺たちは来ていた。
「油断するな」
「あぁ、分かってるよ、桔梗ちゃん」
「っ、名前でッ!!」
怒る桔梗ちゃんを適当にあしらい、俺は再度その建物と対峙した。廃屋と聞いたときにはボロ小屋をイメージしていたが、目の前のそれは予想に反してずいぶんと立派なお屋敷だった。使われなくなって長いのか外観こそ悪いが、それでも相当のものだ。
「で、ここに本当にいるのかよ?」
「十中八九、ここにいる」
「確かにそれなりの呪力は感じるが、ありゃあここに住み着いてるっていう呪霊のものだろ? 肝心の愚妹様の呪力は感じねぇな」
「……貴様の妹なのだ。結界も使えるのだろう? その手の結界もあると聞く。ならば、呪力を感じなくても不思議ではない」
なるほど。それもそうか。
つうか、俺の手の内は明かしてないはずだったんだが、総監部伝いで知られちまってるのな。
ともかく入るぞ。
監視役様のその一言で、俺はボロ屋敷へ足を進めた。
ーーーー屋敷内ーーーー
結論から言うと、屋敷の中には呪霊がいた。しかも、わんさかだ。だが、俺らにとってはただの雑魚。物の数分で片がつく。それに収穫もあった。
「桔梗ちゃんは拳銃を使うんだな」
「……なにか文句でもあるのか」
「いんや、ただ総監部側の呪術師にしては、ずいぶんと近代的なものを使うんだと思って言ってみただけ、他意はないぜ」
共闘する上で互いの手札を理解しておくことは重要なことだ。だから、指摘したんだが。
「…………」
明らかに不機嫌だ。どうやらその話題は地雷だったようで、桔梗ちゃんの機嫌を損ねてしまった。仏頂面で美人が台無しだ。
……俺としたことが。
「悪かったよ」
彼女の言動から総監部への深い忠誠心みたいなものを感じ取ってはいた。そんな彼女にとって、自分の戦い方はあまり好ましいものではないのだろうな。
頭を下げると、桔梗ちゃんはそもそも気にしていない、とだけ返してくる。まぁ、あからさまに気にしているんだろうが、とりあえずはその言葉を飲むことにするか。
「……ともかく進む。警戒を怠るなよ」
「了解」
……………………
屋敷を100mほど進んだところに、大きな扉が見えた。ここに来る前に見た屋敷の見取り図によると、この扉の向こうは広間のはずだ。
広い空間。しかも、遮蔽物がない場所だと、俺と桔梗ちゃんだと若干戦いにくい。それに、
「相手は妹様かどうかも分からんしな」
中身が草木福濁だとしたら厄介だ。俺は奴に一度敗れてもいる。
「もし草木福濁が相手だとしたら、俺は完全に奴にかかりきりになる。水仙ちゃんの方はーー」
役割を確認しようとして、言葉を飲み込んだ。扉の中、広間から壁越しでも伝わるほどの殺気を感じたからだ。
言葉を発さないが、桔梗ちゃんと意思の疎通は取れた。このまま、突入する。彼女が指でそう指示するのを見て、俺はその扉を蹴破った。
「…………はぁ、こうも嗅ぎ付けられると自信がなくなるんだけど」
俺と桔梗ちゃんを迎えたのは、我が妹・草木美澄だった。
彼女は広間の中央に陣取る大きな机の上に座っていた。
「……お前は、どっちだ?」
「あ?」
俺に見せる不機嫌な表情は確かに妹様のもの。だが、呪力が違う。今までのあいつのものでは決してない。
「草木美澄以外、誰に見えるわけ?」
「……福濁はどうしたよ?」
「あぁ……そういうことね。あいつは私が殺した」
俺の様子に得心がいったようで、妹様は即答する。自分が殺した、と。嘘を吐いているような気配はない。
……これは信じてもいいか?
「まぁ、咲人が疑う気持ちも分からないではないけど、事実は事実。私の体を奪おうとしたあの呪詛師はいないから」
信じるも信じないもそっちで勝手にして。
妹様はそう言って、俺たちから視線を外し、座っている机を飾る装飾に指を這わせている。
と、そこで俺の後ろにいた桔梗ちゃんが一歩前に進み出た。
「初にお目にかかる。草木美澄、だな」
「……だれ?」
また女を誑かしたのか、という俺への視線は無視して、桔梗ちゃんは話を進める。
「私は桔梗。呪術総監部直属の呪術師だ」
「…………」
「今日はお前に話があってここに来た。私達と一緒に来てもらいたい」
「…………」
「それからここにいるであろう呪詛師・東坊城水仙もだ」
「水仙……?」
「とぼけるな。東坊城天蓋の姉で、『五条』と名乗っていた呪詛師の女だ」
「……あぁ、あいつか」
そう言うと、妹は机から降りて自分の後ろにある扉を指差した。そっちにいる、ということなんだろう。
「勝手につれてけば」
水仙ちゃんにしても、福濁のことにしても、本当に興味がないんだろう。俺はそれを感じ取っていた。
対面してはっきりと感じる殺意と呪力に反して、妹様の言葉に感情と呼べるものが見当たらない。
……いや、違うか。恐らくだが、こいつは今までと変わっていない。こいつの執着の対象はたった1人。
「なぁ、妹よ。お前、雪ちゃんの居場所を知りたくはねぇか?」
「!」
目の色が変わった。
まぁ、そうだよな。お前はそういう奴だ。
「……ユキの居場所、知ってるのか」
「いんや、知らねぇよ」
「っ、ふざけてるのか……殺すぞ……」
「まぁ、落ち着けよ、妹。お前同様に俺らも雪ちゃんを探しているんだ。いずれ見つかる。だから、俺達と一緒に来いよ、って話だ」
言い方は悪いが、雪ちゃんを餌にすれば、妹様は必ず乗ってくる。そう考えての発言だった。
「分かった」
だから、妹が頷いた時に俺は少し安心しちまったんだ。そうして、俺は手を差し出した。友好の証としての握手をしようとして。
ーーグラッーー
「は……?」
俺は意識を失った。
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投稿頻度少し下がりますが、必ず完結させますのでお付き合いくださいませ。
そして、皆さんバッドエンド好きですね(ニッコリ)
私も大好物です。