堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完)   作:藍沢カナリヤ

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第5話 破邪ー参ー

ーーーー独白ーーーー

 

 

私は結構色んなものを集めるタイプの人間だ。

ユキから貰ったものはもちろんだけど、それ以外にも紙袋とかお菓子の缶とかも案外とっておく。

なにかに使うかも、なんて思っちゃってさ。

 

ユキには結局使わないんだから、捨てたらいいのに、とも言われる。

まぁ、その通りなんだけど。

ユキに言われて部屋の整理するときもどこかで使いそう、そう思って、結局色々保管しちゃうんだよね。

 

 

 

ーーーー廃工場内ーーーー

 

 

 

ーーギュィィィィィィンーー

 

 

轟音が工場内に響き渡る。

要田がもっているその武器は、一級呪霊は捉えられない。

思ったよりも動きが速い。

 

 

「なんで人間と変わらない大きさであんなに速いのよ……」

 

 

目で追いきれない。

 

 

「大振りでは当たらないか。仕方がない」

 

 

そう言うと、要田はその武器を捨てる。

そして、懐からナイフを取り出した。

 

 

「……そんなのでどうにかなるわけ?」

 

「呪力を流せばそれなりにはやれる」

 

 

それを証明するかのように彼は動いた。

瞬間、姿が消え、そして、すぐに現れる。

 

 

『ぎィィぇェッ』

 

 

上半身と下半身が分かれた『父親』呪霊と共に。

今の一瞬で呪霊に攻撃をしていた。

しかも、あのナイフで。

…………なるほど、確かに私と同じくらいの力はあるみたいだ。

 

 

「こんなものか」

 

 

ナイフを拭う要田。

だが、その背後から操られている方の呪霊が襲い来る。

私の術式で倒す。

そう考えた時には、呪霊は崩れ落ちていた。

 

 

「そっちももう祓っている。心配するな」

 

 

そうして、彼は戦闘を瞬く間に終了させた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「もう1人はどうした? 死んだか?」

 

「あ? お前を殺すぞ」

 

 

そんなやり取りをして、私たちは用の済んだこの廃工場の出口へ向かう。

仲がよくなったとは一切言えないが、要田の中でどうやら私への評価は多少よくなったようだ。

私は正直、どう思われようが関係ないけど、ユキは他の術師とはある程度仲良くした方がいいと思ってるようだから、大きな収穫といえば収穫だったな。

 

 

「それでもう1人の女学生は?」

 

「工場の外にいる」

 

 

呪力感知能力が高いから、あんまり濃い呪力には当てられるんだ。

ユキの名誉挽回のためにそれを伝える。

任務の最初、ユキはこいつにその話をしようとしていたみたいだから、私が話しても問題はないだろう。

ついでに、ユキ自身に術式がないことも教えておく。

 

 

「草木、お前は?」

 

「あ?」

 

「お前の術式はなんだ?」

 

 

あぁ、そういえば教えてなかったか。

私にとってはユキが一番だから、私自身のことを伝えるのはよく忘れてしまう。

 

 

「私の術式は『廻』。呪力を廻せるってだけの術式」

 

 

足に纏わせ、呪力を高速で廻して破壊力を上げる。

それを聞いて、要田は納得したように頷いた。

曰く、女学生にも関わらずスカートではなく、ズボンなのが珍しいと感じたようだった。

まぁ、事実ユキもスカートだから、私もそうしようと思ったんだけど、どうしても戦闘形態の関係上スカートを選ぶわけにもいかなかった。

 

 

「ふむ……呪具に呪力は込められるのか?」

 

「……一応。得意ではないけど」

 

「なら、それを伸ばすのも必要だろう。お前が今後ももう1人の女学生と組むのならば、純粋な体術や破壊力だけではどうしようもない相手も現れる」

 

 

呪具ーー呪いを宿した武器ーーには特殊な術式効果を付与されているものも多い。

発動中の術式の強制解除。

呪力を炎へ変換する術式。

相手の術式を乱す効果。

その術式効果は多岐に渡り、1つ五億は下らないという代物もあるくらいだ。

 

 

「特に『生得領域』持ちの呪霊には尚更だ。肉弾戦にも限界はある」

 

「…………分かってるし」

 

「なら、いいが」

 

 

そう言って、彼は歩を進める。

と何を思ったのか要田は止まり、こちらへ振り向いた。

 

 

「なに?」

 

「『構築術式』」

 

「あ?」

 

「呪力を使い、0から物質を構築する俺の術式だ」

 

 

そちらにばかり情報を言わせるのはフェアではないだろう。

要田はそう言って、薄く笑った。

 

 

「…………さっき使ってたナイフとかチェーンソーもそれで?」

 

「あぁ、呪力消費は激しいが、術式解除後や術師の死後も物質が残るのが利点だ。事実、ナイフは数日前に構築して所持していたものだからな」

 

「ふぅん」

 

 

『構築術式』か。

なるほど。

そっか。

 

 

「…………」

 

「どうした? 草木」

 

「いや、なんでもない」

 

「なら、いいが」

 

 

彼はきっといい人なのだろうな。

実力を認めた相手には、敬意を払い、その上助言もするような。

いい呪術師なんだろう。

だから、少し残念。

 

 

 

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

 

呪霊が消滅し、一度は消えた『帳』。

それを再び下ろした。

この『帳』に追加した効力はただひとつ。

『呪術師の出入りの禁止』

その代わりに一般人からは視認され、侵入も許す。

これで足し引きは合う。

 

 

「…………」

 

「おい、草木。何の真似だ」

 

 

まさかあの呪霊に操られているのか。

そう訊ねてくる要田に、言葉は返さない。

いや。

念のためだし、『あれ』だけ話しておこうか。

 

 

「さっきさ、私の術式の話をしたじゃん」

 

「……あぁ」

 

「あれ、嘘。私の本当の術式はーー」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

ーーパキィィンッーー

 

 

『帳』が上がる。

その中から、美澄ちゃんが出てきた。

 

 

「美澄ちゃんっ!」

 

「ユキ!」

 

 

そのまま美澄ちゃんと2人で抱きしめ合う。

よかった……。

 

 

「突然、『帳』が下りたから……何かあったのかと思ってっ!」

 

「ダイジョブ。ただちょっと呪霊を倒し損ねてたみたいでさ」

 

 

急いで『帳』を下ろしたから、変な効果も着いちゃってたんだ。

そう言って、美澄ちゃんは笑った。

うん、いつも通りの美澄ちゃんの笑顔だ。

 

 

「それより、ユキは体調ダイジョブ?」

 

「うん。さっきよりだいぶいいよ」

 

「それならよかった!」

 

 

美澄ちゃんはわたしの頭を優しく撫でてくれる。

……この時間、とっても好き。

 

 

「って、ちがうちがう」

 

「?」

 

「美澄ちゃん、要田さんは?」

 

 

要田さんは廃工場から一向に出てきていない。

準一級って言っていたから美澄ちゃんと一緒なら大丈夫、だと思ったんだけど……。

 

 

「…………」

 

「もしかして……」

 

「うん。呪霊に殺された」

 

「っ、そっか……」

 

「ごめんね、ユキ」

 

 

仕方ないよ。

謝る美澄ちゃんにそう返す。

呪術師が死ぬ。それは決して珍しいことではないけれど。

それでも、悲しい。

例え、それがあったばかりの人だとしても。

 

 

「…………美澄ちゃん」

 

「うん、おいで」

 

 

わたしたちはしばらくその場を動けずにいた。

 

 

ーーーーーーーー

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